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e株リポート:特集 アジア沈没
アジアの成長に赤信号が灯り始めている。海外からの資金流入が細り、米欧への輸出も急減。2009年、
世界経済は米国に代わる唯一の牽引車をも失う可能性が出てきた。【週刊エコノミスト編集部・金山隆一】
◇資金流出、輸出急減、政情不安の三重苦でアジアは失速
国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は昨年12月15日、「2009年の中国の成長は5%台に
減速する可能性がある」と発言した。
米国発の金融危機の影響が世界に波及し始めた今年、先進国の多くはマイナス成長に陥ると予測
されている。そのなかで、唯一の下支え役と期待されているアジアの大国・中国の「失速懸念」のニュースは
世界を駆け巡った。だが、それはいま現実味を帯びてきている。中国の09年の成長に関して、悲観的な
見通しが次々と出始めたのだ(表1、2)。世界経済に誰一人として下支え役がいなくなり、世界経済全体が
マイナス成長に突入するかもしれない。UNCTAD(国連貿易開発会議)によると、最も悲観的なシナリオ
では09年の世界の実質成長率はマイナス0・4%に落ち込む可能性があるとしている(表1、図1)。
中国を含むアジアは今年、世界経済の下支え役を担うことができるのか。
◇アジアを襲う資金大逆流政情不安も重なる
08年9月のリーマン・ショック以降、日米欧の金融機関や投資ファンドなどは、アジアから資金を急速に
引き揚げており、この“血流不足”が、アジアの株価や不動産価格の急落、資金繰り悪化による企業活動の
停滞、倒産などを続発させている。
08年11月頃からはこれに、米国を最終消費地とするアジア全体の輸出の減速が加わり、実体経済も
悪化し始めた。また、昨年はタイで反政府市民デモによる空港占拠事件、インドでは外国人ビジネスマンを
巻き込んだ同時多発テロ事件が勃発。中国では広東省などで、工場の相次ぐ倒産により失業者が急増、
給与の未払いなどを原因とした労働争議も多発している。
こうした政治・社会不安の高まりは、消費や投資、企業活動を減退させ、さらなる景気悪化の悪循環へと
進ませることになる。
◇韓国の通貨危機 シンガポールは大マイナス成長
大和総研の田代秀敏・主任研究員は、中国人民銀行が発表する中国の金融機関の資金調達統計に
注目してきたが、08年11月は、日米欧などの外銀や国際機関などからの借り入れが前月から一気に
2ケタ減となった。11月は前月比で18%減、前年同月比では21・4%の減少である。「この数字の裏
には、もっと膨大な、あらゆる形で中国に流入してきた資金の急激な縮小があるはずだ」と、田代氏は
推測する。
アジアを含む世界の新興国は、世界的に過剰流動性が拡大した02年以降、海外の銀行からの借り
入れを急速に積み上げてきた。国際決済銀行(BIS)の統計によれば、その規模は02年3月末の
8478億ドルから、08年3月末には2兆7533億ドルと3倍強に拡大した。
しかし、アジアを含む新興国市場では、08年1~3月期からシンジケートローン市場、国際債券市場、
株式市場での資金調達が急減し始めた。日本総合研究所の高安健一上席主任研究員は、「今後
さらに資金の逆流は加速していく」と予想する。
この洗礼をアジアで最も早く受けたのが韓国。05年頃から巨額の海外マネーが流入し、不動産や
株価が急騰していたが、米国発の金融危機で一気に逆流が始まり、株価と不動産が急落、08年8月
からは原油高騰による経常赤字が拡大し、10月には通貨ウォンが対ドルで一時、アジア通貨危機で
混乱した1998年8月以来の安値をつけるまで売り込まれ、通貨危機の再来も懸念された。
(続く)
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