09/01/31 10:04:51
ガイトナー米財務長官が先週、中国を為替操作国と名指し人民元の上昇容認を求めたこと
を契機に、元をめぐる米中間の摩擦が再燃しているなか、市場関係者の間にも米国の要求
を支持する声が出てきた。元高は米国だけでなく、中国経済を強力に後押しするという。
中国の温家宝首相は29日、ベルリンでメルケル独首相との会談後、記者団に対し、元は
妥当な水準で維持すべきだと語った。ガイトナー長官が先週、オバマ大統領は中国が元
相場を操作していると判断していると明らかにし、対中政策がこれまでより強硬になる
可能性を示唆したことに、反論した格好だ。
温首相は、元は安定しており2005年のドル・ペッグ(連動)制廃止以降、ドルに対
する上昇率は20%を超えていると指摘。「現在の経済状況を考慮すれば元相場は妥当で
バランスの取れた水準にあるべきだ」と主張した上で「為替相場はローラーコースターの
ように振れが大きいが、この責任は中国にはない」と、暗に米国を批判した。
一方、米国側はバイデン副大統領が同日のCNBC放送のインタビューで中国による為替
操作について「操作があったという判断は米政権内にはない。この言葉は貿易協定にある
一定の反応を引き起こすからだ」と説明。ガイトナー長官の強硬発言を修正する姿勢を見
せた。
その上で、米国は「中国に対し、より率直」になると述べ、中国は「ルールに従って行動
する」必要があると主張した。
◆内需拡大に寄与
元相場をめぐる両国政府の応酬が続くなか、英資産運用会社アバディーン・アセット・
マネジメントのストラテジスト、ピーター・エルストン氏は、中国は輸出減少をカバーし
企業や消費者による輸入品の消費を促すため、元高政策に取り組む必要があると指摘する。
中国が経済成長を維持するには内需拡大が一段と重要になっており、元高は内需拡大を促
す材料になるというのだ。
同氏は「中国が輸出を拡大したいと考えるのは自然だが、一方で自国通貨が強くなれば、
輸入品が安く買えるようになり、国内の購買力が高まる」と元高の利点を説明。「中国が
輸出に頼ることはもうできないと理解しているのは確実だ。もし、元が10%安くなった
としても、中国経済の救いにはならない。値段の問題ではなく、需要の問題だからだ」と
語った。
同氏は元が少なくとも30%過小評価されているとみている。
◆「重要な合図」
一方、米モルガン・スタンレーは29日発表したリポートで、米中間の“雰囲気”を考え
ると、今年は元がドルに対し、2.8%上昇し、1ドル=6.65元になるとの見通しを
示した。
モルガンの通貨ストラテジスト、イーリン・ニー氏はリポートで、「今後、元に関して、
さらなる積極的な動きがあるとは思えないが、ガイトナー長官は、通貨の変動を高い関心
を持って見守るという重要な合図を送った」と分析した。
(Patricia Lui、Patrick Donahue)
フジ産経ビジネスアイ 2009/1/31
URLリンク(www.business-i.jp)
写真
URLリンク(www.business-i.jp)