09/01/04 10:01:27
「昔の話がいちばんキライ!」。ソウルで会った日本人女子学生の言葉である。少し説明を要する。
1年近い語学留学の結果、彼女は地元の親切な男子学生たちとかなり意思疎通できるようになった。
すると時々、歴史認識をめぐる日韓摩擦の話題が出る。興奮気味に話す韓国人学生の主張は一方的
だと思えるのだが、反論できない。
「だって学校でも習わなかったし、昔のこと、あまり知らないから……」
変化球で議論をかわすには会話能力が不足なので、もどかしいばかり。言いたいことを言って再び友
好的な笑顔に戻る韓国人学生に怒りが募り、仲たがいはしないものの思い出すと嫌な気分になるという。
実はかなり頻繁にあるケースだ。
日本の若者、いや戦後世代の多くが、明治から太平洋戦争敗戦までの歴史知識に乏しい。あえて言
えば根底には日米関係がある。米国で今月20日(日本時間21日未明)、オバマ新大統領が就任する
のに向けて、この問題を考えてみたい。
◇同盟の懸念材料
国際情勢から始めよう。オバマ氏の使命は重い。世界を揺るがしている経済危機だけでなく、テロや中
東紛争での果てしない流血、北朝鮮に象徴される大量破壊兵器拡散の恐怖、食糧やエネルギー資源
の争奪戦など、極めて深刻な課題が待ち受けている。
もちろん期待も高い。ブッシュ大統領は身勝手な外交や大義なきイラク戦争で世界の信頼を失ってし
まったが、「チェンジ」を叫んで人種の壁を破ったオバマ氏なら流れを変えられるのではないか。米国の
文化的、精神的なソフトパワーを発揮して、心に響く国際協調のハーモニーを奏でてくれるのではないか。
だが日本では懸念も広がっている。イラクからアフガニスタンに軸足を移す予定の対テロ戦で、オバマ
政権が同盟国に支援を求めるのは確実だろう。この要請に日本は応えられるか。
アフガンの治安はひどく悪化している。イラクのような自衛隊派遣はできないとなった場合、米国は巨
額の費用負担を求めるという見方がある。
その金額に、不況に苦しむ日本国民が驚き、さらにオバマ政権が北朝鮮の核問題や日本人拉致問題
で日本への配慮を欠いたりすると、対米感情が悪化するのは避けられまい。
(中略>>2-5のあたり)
◇まず知ることから
結論を述べよう。悩ましい側面があっても日米同盟は重要である。北朝鮮が核計画を放棄せず、ロシ
アや中国の野心的な動向が目立つ現状ではなおさらだ。ところが日米同盟の実態と意味について一般
国民の関心は十分でない。オバマ政権との付き合いを機に認識を深めることが望ましい。
同時に進めるべきは、日本と世界の近現代史の基礎を学校でしっかり教え、大人も学ぶことだ。弱肉
強食の帝国主義時代、日本がどのように興隆し、敗亡したのかを正しく把握しておきたい。その知識が
ないと、偏った情報を根拠に怒りをたぎらせ、かつて日本を滅ぼしたようなナショナリズムに陥る危険がある。
米国との関係を、もっとのびやかなものにしたい。そのためには、わだかまりを解かねばならない。お
そらく長い年月がかかる。まずは「昔の話」をきちんと知ろうという提言である。
ソース:毎日新聞<オバマ政権 のびやかな日米関係に>
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