08/12/14 00:21:42
時間の経つのが速く、もう年末が近づいてきた。振り返ると、今年は夏休みが1日もなかった。8月14、15日は
大学の定めた夏休みだったので、土日を含めると4連休になる予定だった。でも、結局この4日のうち2日は
出勤したので、夏休みは全くなかった勘定だ。
毎年仕事が増えるので仕方ないと思っていたが、休めなかった直接的な理由は、9月に卒業する中国人
留学生の指導だった。もっと早くから研究してくれていればいいのだが、ずっとアルバイトと就職活動が
忙しくて、修士課程の1年生の時も2年生の時も大学にあまり来ないまま時間が過ぎていく中国人留学生
も多い。そうして卒業間際に指導教員にすがってくるのだ。
まともな研究を行っていないのだが、「卒業できなければ、ビザも切れて、私の日本での2年間は無駄に
なります!」と、脅すような口調で教師に向かってくる留学生も中にはいる。米国やドイツの大学なら、
こういう学生は卒業させない。
しかし、日本ではそういう風土がない。彼らを捨てると、「冷たい先生」と言われてしまう。私も「冷たい先生」に
なりたくなくて、夏休みをなくしてしまった。でもまだ後悔している。
勉強しない学生、成果を出す能力の低い学生を卒業させないことも私の責務の1つではないのか、と。
■日本の留学生教育の問題点は戦略性がないこと
すべての大学、すべての学部に当てはまるわけではないが、私の所属する専攻の大学院では、教員が学生を
選ぶことはできない。入学試験に合格すれば学生が指導教員を選び、試験の点数が高ければその教員の
研究室に所属することになる。大学院の試験科目は英語と簡単な数学だから、語学の得意な中国人学生が
合格することは難しくない。
東京大学には約700人の中国人留学生がいて、毎年増加している。ところが優秀な学生は年々減ってきている。
中国の大学ランキング100位以下の大学卒業生が東大の大学院を受けて合格してしまうからだ。
東大を含めて日本の大学の大きな問題点は、留学生教育に戦略性がないことと、社会人教育に対する努力が
ないことだ。両方とも私学の方がまだましだ。国立大学法人の経営の悪さは日本の成長にブレーキを踏んで
いる状態と言ってもいいくらいだ。
中国の大学ランキング上位20校の学生たちにとって、日本の大学は留学先としてほとんど考慮の対象外である。
多くは米国へ向かい、次は欧州連合(EU)だ。
■永続性の強い師弟関係を築くことができた例 (中略) >>2以降で
■留学生の“数を増やすこと”を目指すのではダメ
文部科学省の「留学生政策」は根本的に見直すことが必要だろう。奨学金を与えたり、生活費の面倒を見たり、
特別枠を設けたりすれば、つまり入り口を広げさえすれば、優秀な学生が来ると思っているような施策は改め
ねばならない。優秀な学生は、どんなに金銭的な問題があっても、それを解決して将来のために今一番大切な
スキルアップできる国、大学、教員を選ぶ。残念ながら、アジアの優れた若者にとって日本の大学には魅力が
ないのだ。
留学生の“数を増やすこと”が外務省と文部科学省の政策になっているのでは国家としての戦略性がない。
師弟間や、学生間の信頼と尊敬の関係を継続できるような、質の高い留学生教育を実現するための大学経営を
支援しなければならない。
留学生教育システムを再構築して、日本の大学の国際競争力を高め、アジアのポテンシャルの高い若者にとって
魅力的にすることが喫緊の課題である。
ソース:NB online 2008年12月12日
宮田秀明の「経営の設計学」:中国から優秀な留学生が来ない EUや米国の大学との競争で敗北感
URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)
関連スレ:【国内】日本の教育界、中国人留学生を歓迎~「優秀な人材が多い」[12/13]
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