08/12/11 23:36:55
「共に暮らす隣人」発信 「在日」聞き書き7年 福岡市のフリーライター大野さん 来秋には出版も計画
在日韓国・朝鮮人の2、3世の聞き書きに7年間取り組んでいるフリーライターがいる。
福岡市中央区の大野金繁さん(53)だ。「在日」の彼らが生き生きと暮らす姿を伝える作業を通して、
偏見や一方的な同情ではなく、共に暮らす隣人として付き合ってほしいと、メッセージを発信し続けている。
「在日コリアン無年金福岡訴訟」の原告団の聞き書きも進めており、来秋の出版を目指している。
大野さんが在日韓国・朝鮮人を意識し始めたのは、1992年にガイドブック製作の取材で韓国を訪れた
時のこと。船内では日本語で話していた人々が、釜山港に着くと、「内国人」と書かれた韓国籍者の専用口
を通っていたのを見てからだ。
翌年から韓国語講座に通った。在日韓国・朝鮮人との交流が深まり、聞き書きを思い立った。
01年からの7年間で、県内在住者を中心に、高校生や屋台店主など約30人の在日2、3世に、
国籍や名前への思いなどを尋ねた。日本名で生きる人もいれば、韓国・朝鮮人の民族意識を強く
持つ人もいた。朝鮮籍から韓国籍に変えた人もいた。その記事と写真は、同市・天神や韓国・釜山市で
計3回展示した。
印象的だったのは、取材した飲食店の店主が「国籍は日本で、血は韓国」と胸を張って語ったことだという。
取材をする中で、大野さんは、一般社会の意識と「在日」の現実との間に、ギャップを感じるようになった。
一般的に、戦時中の強制連行の被害者や被差別者というイメージが根強く、良心的な人も「かわいそう」という
言葉で片付けがちだ。しかし、実際に生きる在日韓国・朝鮮人は、そんな負の印象とはかけ離れた、明るく
前向きで多様な生活を送っているではないか、と。
大野さんは「在日を“かわいそう”と一くくりにする必要はまったくない。これからもあるがままの姿を書いて、
そのギャップを埋めていきたい」と話す。
そんな思いも込めて11月からは、無年金訴訟の原告団の聞き書きをスタートさせた。
「今までの聞き書きは2、3世だったが、今度は1世。これまでとは違った話や感情があると思う」。
そう気を引き締めている。
ソース:=2008/12/11付 西日本新聞朝刊=
URLリンク(www.nishinippon.co.jp)
▼執筆した記事と取材相手の写真を眺める大野さん
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