08/12/09 14:43:52 tmFFs4Tx
>>254
人間を矮小化してはならぬ
先日、狭山市の柏原地区に自衛隊の練習用ジェット機が墜落しました。たまたま私
は、○田先生と共に、あの近くを走っていましたので、立ち寄ることにしました。
すでに付近は閉鎖されていて、近くまで行くことはできませんでしたが、それほど遠
くないあたりに、白煙の立ち上るのが見えました。
見上げると、どのような状態であったものか、高圧線がかなり広範囲にわたって切
断されています。高圧線は、あの太くて丈夫な電線ですから、切れるときはぷつんと
切れそうなものですが、多数の細い線の集まりからできているらしく、ぼさぼさに切
れています。
何カ所にもわたって、長くぼさぼさになった高圧線が鉄塔からぶら下がっている様
は、まさに鬼気迫るものがありました。
聞くと、操縦していた二人は助からなかったそうです。二佐と三佐と言いますか
ら、相当地位の高いパイロットだと言えます。二人とも脱出を試みたのですが、高度
が足りなく、パラシュート半開きの状態で地面に激突し命を失った模様です。
以前、現在防衛大学の学生である本校の卒業生が、防大合格後航空コースを選ぶと
いうのを聞いて、私がとめたことがあります。「あんなに危ないものに乗るな」と。
彼の答えはこうでした。
「先生、戦闘機は旅客機より安全なのです。万一の場合脱出装置が付いており、座席
ごと空中に打ち出されるのですから」と。
212 :専守防衛さん :03/11/09 20:51
その安全な戦闘機に乗りながら、この二人の高級将校は、何故死ななくてはならな
かったのでしょうか。それは、彼らが十分な高度での脱出を、自ら選ばなかったから
です。
おそらく、もう百メートル上空で脱出装置を作動させていれば、彼らは確実に自らの
命を救うことができたでしょう。
47歳と48歳と言いますから、家族に取りかけがえもなく尊い父親であったでしょ
う。それなのに、何故彼らはあえて死を選んだのでしょうか。
実は、あの墜落現場である入間川の河川敷は、その近くに家屋や学校が密集してい
る場所なのです。柏原の高級住宅地は、手を伸ばせば届くような近距離ですし、柏原
小、中学校、西武文理高等学校もすぐそばです。
百メートル上空で脱出すれば、彼らは確実に助かったでしょうが、その場合残され
た機体が民家や学校に激突する危険がありました。
彼らは助からないことを覚悟した上で、高圧線にぶつかるような超低空で河川敷に接
近しました。そうして、他人に被害が及ばないことが確実になった段階で、万一の可
能性に賭けて脱出装置を作動させたのです。
死の瞬間、彼らの脳裏をよぎったものは、家族の顔でしょうか。それとも民家や学
校を巻き添えにせずに済んだという安堵感でしょうか。
他人の命と自分の命の二者択一を迫られたとき、迷わず他人を選ぶ、この犠牲的精
神の何と崇高なことでしょう。皆さんはどうですか。このような英雄的死を選ぶこと
ができますか。
私は、おそらく皆さんも同じコースを選ぶと思います。私も必ずそうするでしょう。
実は、人間は、神の手によって、そのように作られているのです。
人間はすべてエゴイストであるというふうに、人間を矮小化、つまり実存以上に小
さく、卑しいものに貶めようとする文化が今日専らです。しかし、そうではありませ
ん。