08/12/06 08:40:22
★“中印神話”無惨な結末 期待の分だけ犠牲も大きい
中国やインドに投資していた人たちはこのところ、少しむち打ち症を患っているような気分かもしれない。
つい3カ月前、アジアの新興国である両国は先進国を襲う信用収縮には無縁といわれ、両国の経済発展が
世界経済を安定させると期待されていた。しかし突然、両国は内向きとなり、景気減速がもたらす影響を
心配している。
2008年が逆張りの年であることを思い起こさせる事態だ。今年に入り世界的なリセッション(景気後退)
が懸念されても、ブラジルとロシア、インド、中国のいわゆるBRICsの経済が世界を救うはずだった。
インドではここ15年で最悪の同時テロが発生し、この影響を同国経済はまだ織り込み始めていない。
シン首相は今週、財務相を兼任する決定を下したが、これは同国の成長見通しをいかに懸念している
かを示している。
エコノミストでもあるシン氏は、財務相として1990年代に国内経済を外国人投資家に開放した人物だが、
ムンバイでの同時テロ実行犯がやってきたといわれるパキスタンとの対立を回避しようとするだけで十分
に忙しいのではないだろうか。
中国は最善を尽くしているが、その対応は堅実な政策というよりパニックに陥っているように見える。
中国人民銀行は先週、11年ぶりの大幅な利下げを実施。政府は予想以上に大きい景気減速を抑える
には「強力」な措置が必要だとしている。
LGTグループ(シンガポール)のストラテジスト、サイモン・グロースホッジ氏は「中国とインドは世界経済の
救世主として騒がれていたが、ものすごいペースで第三世界の国に戻ってしまったようだ。だから、投資家
が焦って逃げ出している」と語る。
◆見掛け倒しの計画
中国が最近発表した4兆元(約54兆円)規模の景気刺激策は強力な措置と思えるかもしれないが、GDP
(国内総生産)の約2割を投じるこの計画は実は、既存措置の寄せ集めにすぎない。中国の重要性には
疑う余地がない。同国経済が来年、世界のGDP成長の6割を占めるとのメリルリンチの予想を待つまでも
ない。しかし、来年の世界成長率を1.5%とするこの見通しの前提にある中国の成長率は8.6%だ。
アジアノミクスの主任エコノミスト、ジム・ウォーカー氏(香港在勤)らが「中国は現在、世界的な景気減速の
真っただ中にある」とする判断は正しい。中国の当局者は、同国経済の奇跡が米国発の危機に中断された
と怒っているだろうが、それこそ、本質的に強みが一つしかない経済から発生するリスクだ。重商主義的な
中国の経済モデルは恐ろしいほど米国の消費に依存しているが、米国民はそれを大きく引き締めている。
中国はまた、同国に欠ける内需を刺激するための人民元切り上げの機会も逸した。
来年の中国成長率が、4%以下とのウォーカー氏の見通しに近いものになれば、同国は多大な問題を抱える。
同氏はマイナス成長に陥る確率も30%あるとみているが、世界最大の人口を抱える中国は社会不安を
抑える上で必要な雇用を創出するのに10%近い成長率を必要としている。
(中略)
中国とインドはその驚くべき潜在力を誇っているが、現在のところ、投資家は両国から「経済がもたらす
むち打ち症」の基礎講座を学んでいるようなものだ。教訓その1は先進国が新興国に過度に依存した場合
のリスクで、その2は経済大国が失墜しても新興国は栄えるという愚考だ。世界では相互依存があまりに
進んでいたのだ。
今回の混乱は米国から始まったが、最も大きな犠牲を払うのは、アジアで経済発展を最も期待されていた
国々かもしれない。勝ち組は、首の痛みを治療するセラピストだけだろう。(William Pesek)
(Bloomberg FujiSankei Bussiness i 2008/12/6)
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