08/12/04 21:54:28
中国の急成長地区の深セン、広州で住宅価格が急落し、世界のGDP(国内総生産)成長率を半減させる
心配が出てきた。
不動産会社サヴィルズの調査によると、上海の住宅価格は7~9月に前四半期比で19.5%下落した。
中国の輸出品の約3割を生産する広東省で、最も急速な成長を続ける深センや広州では、集合住宅の
価格が下げ足を早めている。
マッコーリー証券によると、中国の民間建設は10月に前年同月比32.5%増を記録してから少なくとも
16.6%減に落ち込んだ。景気後退局面にある日本や欧米諸国向けの輸出需要が減る中で、すでに
成長の伸びが鈍化している中国経済に建設ブームの冷え込みが追い打ちをかけている。中国にとって
建設は成長の最大の牽引(けんいん)役であり、GDPの4分の1に相当。
7700万人の雇用を支えている。
中国人民銀行(中央銀行)は11月26日、政策金利の1年物基準貸出金利をアジア通貨危機以来、
ほぼ11年ぶりの大幅な引き下げを実施した。政府は想定外の急速な景気の落ち込みを食い止める
ために強力な対策が必要と説明している。ただ、世界経済が減速する中、メリルリンチが予想するように
来年の中国の成長が世界の成長の60%を担うとの予測は怪しくなった。
メリルリンチによる来年の中国の成長見通しは8.6%。これを基に世界経済の成長率を1.5%と予想
している。この見通しは、中国政府が11月9日に公共事業を中心とした4兆元(約54兆6800億円)相当
の景気刺激策を公表してから12日後の21日に発表したものだ。
≪外需に依存できず≫
2004年までの11年間、地域別のベスト・エコノミストに選出されているアジアノミクスの主席エコノミスト、
ジム・ウォルター氏は「中国は今や世界の景気減速の中心的存在となった。世界の成長が来年は恐らく
ゼロに近い水準に落ち込むという意味だ」と警告。同氏は来年の中国の成長率をゼロから4%と予想。
30%の確率でマイナス成長の可能性もあるとみている。
中国は過去30年間、年率平均9.9%の成長を続け、05年には英国を抜き世界4位の経済大国となった。
1978年にトウ小平氏が改革開放政策の下で自由市場を導入してからGDPの規模は69倍に拡大。
昨年の世界の成長の27%を占めるまでになった。
中国がもはや外需に多くを依存できないとして、世界銀行は先週、同国の成長見通しをほぼ20年ぶりの
低水準の7.5%に下方修正した。シニアエコノミスト、ルイス・クイジス氏(北京在勤)は「不動産の停滞が
目立つ。不動産投資の伸びは今はゼロに近い」と指摘した。
国際的な金融危機で中国製の玩具や繊維、コンピューターの需要が低下する中、11月の輸出受注や
生産は統計開始以来、最低の水準に落ち込んだ。現在、アナリストとして活躍するアンディ謝・元モルガン・
スタンレー・アジア担当主席エコノミストは、中国のGDP成長率に占める輸出と不動産の寄与度は約半分に
相当すると試算する。謝氏は「成長要因はなくなった。政府は何で穴埋めするのか。極めて難しい状況だ」
と語った。
≪追加の大型刺激策も≫
中国の経済週刊紙『経済観察報』は11月24日、消費拡大を目的に第2弾の景気刺激策の実施が目前に
迫っていると報じた。
メリルリンチのエコノミスト、ルー・ティン氏(香港在勤)は、中国政府の債務の対GDP比率が15.7%と低いこと
に加え、2兆ドル規模と世界最大の外貨準備を持っていることなどを挙げ、中国にはさらなる財政出動余地が
あると指摘。「投資家は大規模な景気刺激策に備えるべきだ」と語った。
マッコーリー証券のエコノミスト、ポール・カーベイ氏(香港在勤)は来年の中国の経済成長を6.6%とみており、
「政府が公共事業にいくら投じようと、不動産部門が30%縮小すれば、景気はまだかなり軟調ということになる。
不動産は景気低迷の震源地だ」と述べた。
シティグループのアジア担当の主席エコノミスト、ファン・イーピン氏(香港在勤)は、中国の成長が1%高まるごと
に他のアジア諸国の成長が0.5%押し上げられる、と指摘する。UBSは、中国の減速のあおりを受ける国として、
昨年、中国向け輸出割合の高かった台湾(ほぼ36%)、韓国(25%)、日本(19%)を挙げている。建設分野の
低迷で政府による景気刺激策も台無しになりかねない。(Kevin Hamlin)
ソース:Bloomberg 2008/12/3 「牽引役一転。世界の重荷 中国、不動産低迷 来年ゼロ成長も」
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