08/11/12 22:48:31
台湾の陳水扁前総統が12日、総統府機密費横領やマネーロンダリング(資金洗浄)などの容疑で逮捕さ
れた。逃亡の恐れもない前総統に手錠をかけるなど、与野党の根深い対立を反映した政治ショーの色合い
も濃厚だ。一足先に民主化した韓国で、2人の大統領経験者が逮捕された歴史を想起させる。
しかし、中国の統一攻勢にさらされる台湾には島内抗争にかまけている余裕はないはずだ。
1990年代初頭、筆者はひょんなことから台北市内の陳水扁氏宅を訪ねたことがある。陳氏が民主進歩党
の若手立法委員(国会議員)として、めきめき頭角をあらわしていたころだ。
テロの疑いのある事故で下半身不随になった妻の呉淑珍氏の治療のために著名気功師を招き、夫妻で
一心に回復を念じているところだった。気功師の助言に謙虚に耳を傾けている姿は、選挙運動での激しい
弁舌ぶりとは別人のようだった。
それから10年もたたない2000年5月、李登輝氏に続く2人目の本省人(日本統治時代からの台湾住民と
その子孫)総統となった。しかし政権発足当初は80%近かった支持率は半年後には30%台に急落した。
議会多数派の中国国民党との意思疎通を欠き、与野党の抗争が日常化した。2004年の総統選では投票
日直前の銃撃事件で負傷して同情票が集まり、奇跡的な逆転劇を演じた。
ところが2期目に入ったころから親族、家族など周辺の金銭スキャンダルが相次ぎ、退陣を求める大規模な
抗議行動が長引いて政治が空転した。陳氏は求心力の低下を台湾ナショナリズムの鼓吹によってカバーし
ようとの動きを強め、中国の反発はもちろん日米との摩擦も強まった。
5月末の退任からわずか半年での逮捕劇には、「水に落ちた犬をたたく」華人社会の苛烈(かれつ)さを感じ
ざるを得ない。近く夫人や子弟も逮捕されるもようだ。
真相の徹底究明は司法に委ねるとしても、総統職を2期8年続けた要人や家族に対しては相応の紳士的対
応が必要だろう。陳氏は手錠をかけられたうえ、連行の際に警官から暴行を受けたと主張している。
陳水扁政権下で“冷や飯”を食わされた親中派外省人(中国大陸出身で戦後台湾に渡来した住民とその子孫)
勢力の報復を思わせる。
しかしこうした行為、対応は台湾の民主政治をおとしめる。与野党(国民党対民進党)や、本省人対外省人
の根深い対立を増幅することになりかねない。
馬英九総統ら外省人を中心に構成する現政権は20%台の低支持率にあえいでいる。このため「前政権の
スキャンダルを徹底的に追及することで不満の矛先をかわし、政権の浮揚を図ろうとしている」(民進党関
係者)との指摘もある。
これが本省人の台湾人意識を刺激し、政局の混迷を加速しかねない。台湾民主政治の混迷は、中国の共
産党独裁政権を喜ばせることになる。
韓国は1988年に盧泰愚氏が初の民選大統領に就任して民主体制に移行したが、後任の金泳三大統領
の時代に全斗煥、盧泰愚の元・前大統領が逮捕された。
その後任の金大中政権以降は政権交代に伴う報復はなくなり、民主政治が定着したようだ。
強大化する中国と対峙(たいじ)する台湾には韓国のような回り道をしている時間はないはずだ。
(編集委員 山本勲)
ソース:産経新聞 2008.11.12
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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▼台北市内で12日、横領などの疑いで台湾最高検に逮捕され、拘置所に入る陳水扁前総統(左)(ロイター)
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