08/11/03 17:57:22
大日本帝國とドイツ両海軍が数十年も前に敢行した潜水艦戦術に、米軍がまたも悩まされることになりそうだ。もっとも、今次の脅威は
「台湾有事」における中国海軍で、日本の自衛隊は米軍を強力に支援する以外に選択肢はない。かかる事態は、日本の国力が未曾有の
衰退に見舞われるか否かの「日本有事」に他ならないからだ。
軍縮条約で主力艦を制限された帝國海軍の場合、潜水艦の主任務は艦隊決戦前に敵主力艦の戦力を削り、味方艦隊による本戦を
有利に導く「漸減作戦」にあった。従って、狙いは主に戦艦や空母であった。もっとも、太平洋島嶼(とうしよ)の守備部隊が孤立すると、
物資・兵の隠密輸送を担い「漸減作戦」には専心できなかった。
時代は移り今、中国軍は、台湾有事で来援するはずの米空母機動艦隊を阻止せんと、特定海域を支配する「アクセス拒否」兵器に
巨額投資を図っている。その中核は潜水艦が担う。特に機関・スクリュー音を抑えた高隠密性の新型潜水艦30隻は探知が難しく、
対潜水艦能力が低下している米軍には侮り難い。米海軍では2010年までに攻撃型原子力潜水艦の60%を太平洋に配し対抗するが、
今後10年以内に、全般的能力では勝るものの数では圧倒される。搭載する対艦ミサイル・魚雷の性能も次第に脅威の度を増すだろう。
実際、ロシアから取得した12隻のキロ級通常型潜水艦の多くが装備する露製対艦巡航ミサイルを、米軍は「防御できない」(キーティング
米太平洋軍司令官)。
「アクセス拒否」戦術は特定海域を支配できないまでも、敵牽制(けんせい)だけで戦果を生む。政治的配慮や軍事的劣勢故に、
中国軍が米空母機動艦隊を攻撃せずとも、行く手に潜水艦が潜むだけで、機雷敷設の可能性もあり、機動艦隊はその海域への進出
を躊躇(ちゆうちよ)する。空母は建造と艦載機調達で1兆円前後もする高額兵器で、運用経費も年最低200数億円もかかる。
長期教育・投資を続けてきた操縦者をはじめ5千人以上が暮らしてもいる。沈没は論外で、深刻な破損をきたすだけで米戦略に多大な
影響を及ぼす。従って、潜水艦を無力化・駆除しない限り前進しないのが原則で、台湾有事に間に合わない、戦略レベルでの大誤算
をも引き起こしかねない。
帝國海軍顔負けの「漸減作戦」により米空母機動艦隊来援が遅滞すれば、中国海軍は次の一手・独海軍流の「通商破壊」を仕掛けて
来るのではないか。
ドイツは第一・二次世界大戦を通し、Uボートによる「通商破壊」を徹底した。標的は英国ー植民地間や米国ー欧州間をつなぐ商船など。
特に、第二次大戦における「通商破壊」は、英首相チャーチルをして「真に私に不安を与えたものは(英本土への連夜の空襲ではなく、
島国の英本土を食料・資源・武器のあらゆる面で飢えさせる)Uボートの危険だった」と、著書「第二次世界大戦」で告白させている。
実に、商船1350万トン(2603隻)、軍用艦艇175隻が撃沈されたのだ。
台湾有事で台湾が中国に占領され、中国軍の潜水艦・ミサイル基地が台湾東岸に設けられれば、日本の原油・天然ガス輸送の
ほとんどが集中するバシー海峡の「通行権」が中国の手に落ちる。台湾西岸にも建設されれば対岸・中国本土の同種の既存基地と
台湾海峡を東西から挟み撃ちできる。かくして東・南シナ海のシーレーンは中国が生殺与奪の権を握る。占領を経なくても、台湾の
親中政権が「高度な自治容認」などと引き換えに中国軍駐留を認めれば、日本は外交・経済上、中国の極めて強い影響下に入るか、
経済上の壊滅的打撃を覚悟して迂(う)回(かい)航路を選択せざるを得なくなる。
帝國海軍の「漸減作戦」、独海軍の「通商破壊」は時代と形を変えて尚、健在だ。ただ、日独潜水艦は結局、連合軍の対潜兵器の
発明・改良などで大損害を被った。米軍は「中国アクセス拒否」戦術をくじく切り札として冷戦時、ソ連海軍潜水艦と互角に対峙した
海上自衛隊の高い対潜能力に期待している。その際「集団的自衛権行使は憲法が禁じている」などといえようか。かかる“対米協力”は、
日本の国益に直接かかわる「個別的自衛権行使」に限りなく近いのである。
ソース(MSN産経ニュース) URLリンク(sankei.jp.msn.com)