08/10/12 23:18:34
米国のブッシュ政権が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したことに対し、米国政府でかつて北朝鮮問題を担当してきた
専門家2人が11日、産経新聞とのインタビューで、いずれもこの解除措置やその根拠とされる米朝間の検証をめぐる合意が
不適切だとして反対する見解を明らかにした。
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チャック・ダウンズ氏
テロ支援国家指定解除はきわめて無謀な措置であり、その根拠とされた検証関連の枠組みも含めて論理にあまりに反している。
国務省主導の最近のブッシュ政権はとにかく外交面、とくに北朝鮮核問題に関して何かを成し遂げたという「成果」を誇りたい
あまり、譲歩や妥協を重ね、北朝鮮にいかに最小限でも、何かを受け入れさせることに腐心してきた。
今回の合意でもブッシュ政権は北朝鮮の核兵器開発計画の全体像を無視している。どこにどのような核物質があり、核ミサイル
の配備がある、という諸点を把握しているとは思えない。それなのに北朝鮮に最大限の報奨を与えてしまった。
北朝鮮はいまも韓国にスパイや刺客を送りこみ、脱北者の暗殺をはからせている。これだけでもテロ支援国家の要件は十二分だ。
しかも金正日総書記の消息も明確ではない。
こんな時期に米国政府が貴重な同盟国・日本の拉致事件の解決努力を痛めつける形で、「北朝鮮はテロ国家ではない」という
手続きをとることはあまりに不適切だといえる。
今回の検証枠組みは、基本的には米側が北朝鮮の言辞に依存することが前提となっている。北朝鮮の言葉がいかに現実の
行動とはかけ離れているか、これまでの実際の行動や考察により、あまりに明白だろう。
チャック・ダウンズ氏
先代のブッシュ政権や現ブッシュ政権の国防総省、国務省で北朝鮮核開発を含む朝鮮半島問題を担当
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デービッド・アッシャー氏
今回のテロ支援国家指定解除は、米側が北朝鮮の申告する核施設を検証できるとする合意を根拠としているが、まずこの
合意がご都合主義であり効果がない。
北朝鮮の核兵器開発に対し米国や日本が求めるのは、核物質の兵器化や核弾頭ミサイルの配備、核兵器や関連技術の
拡散のはずだが、今回の合意はそのいずれも阻止できず、北朝鮮を事実上の核兵器保有国として認知してしまうことに等しい。
兵器化や核ミサイル配備に対する予防や阻止の措置も「検証の枠組み」に含まれていないのだ。
北朝鮮は現在も間違いなく主要な「テロ支援国家」だといえる。シリアへの核兵器開発の技術や施設の拡散だけでなく、
イランの「イスラム革命防衛隊」への軍事支援一つをとってもテロ支援国家に相当する。
その北朝鮮の指定を解除することは日本にとって二重の危険を生むだろう。第一は米朝間の効果のない「核検証枠組み」
により、北朝鮮が日本に照準を合わせて核弾頭装着のミサイルの配備を着実に進めることであり、第二は北朝鮮が日本人
拉致問題の解決に努める動機を失うことだ。
北朝鮮への対処には確かに関与が必要だが、同時に封じ込めや抑止も欠かせない。今回のブッシュ政権の動きはその関与
だけを先行させ、しかもその関与の内容が空疎となっている。
デービッド・アッシャー氏
2001年から第一次ブッシュ政権で国務省東アジア太平洋局顧問として北朝鮮の核問題などを担当
ソース(MSN産経ニュース) URLリンク(sankei.jp.msn.com)