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無実の罪を着せられた主人公、リチャード・キンブルが警察の追っ手から逃れながら、真犯人を追う―米国のドラマ・映画
『逃亡者』のあらすじだが、中国版「逃亡者」はもっと凄い。真犯人は、追っ手である警察なのだから。
上司の汚職を告発した警官が、逆に警察当局に拘束されてしまう。そこで彼は、なんと拘束先から逃げ出し、腐敗の実態から
逃亡の様子までの一部始終をインターネットに書き記したのだ。
今年8月、中国インターネット掲示板にある書き込みが投稿され、中国のネットユーザーの間で大きな反響を呼んだ。男の名は
「陽暁東」。河南省●川県(●はさんずいに「黄」)で公安局刑事大隊長を務めていた。陽は、警察内部の腐敗を、告発しようと
したのだ。
陽が所属する●川県公安局では、多くの警察官が違法犯罪に手を染め、汚職が蔓延していた。とくに○暁輝(○は「烏」に
おおざと)・副局長は地元マフィアと結託し、私設の賭博場を開設していたというのだ。今年3月、陽は内部告発を決意し、犯罪を
告発する文書をしたためた。ところが、4月になりやってきた調査チームは突然調査を中断し、引き揚げてしまったのだ。
陽に対しては「上層部からこの件については調査しないようにと指示があった」との説明があっただけだった。
調査が打ち切られた後、内部告発を行なった人物が陽であることが露見するには、時間はかからなかった。以後、“マフィア”
からは匿名の電話で脅しを受け、“警察の顔をしたマフィア”の○暁輝・副局長からは捜査権を利用して携帯電話や住まいまで
監視されたという。その一方で○暁輝は説得役をよこし、陽に交渉を求めてきた。「これ以上、暴露しないなら50万元やっても
いいぞ」
誘いを拒絶した後の7月25日夜11時頃、陽は、●川県公安局局長から出頭命令を受けた。陽いわく、「ファシスト的手段」による
「凄まじい報復攻撃」がはじまったのだ。陽が「双規」の名目で連行されたのは、●川県から車で約3時間かかる山間部の施設
だった。(「双規」とは、蔓延する汚職に対する特別措置として定められた特殊な身体拘束制度で、事実確認が終了するまで、
被疑者を無制限に拘束することができる)
> 昼夜の区別がつかない。食事の時間も一定しておらず、ただドアの隙間から差し入れられるだけ。お湯はない。今日も洗面
>用具は支給されなかった。汗臭くてたまらない。俺は考えていた。“双規”措置とは、監獄に入れられることを遥かに上回っている。
>ここではわずかな人権すら保障されることはない。(中略)
> 時の感覚がなく、時間の流れが非常に遅く感じられる。空気は澱み、窒息しそうなぐらいだ。(中略)やつらの会話から、26日の
>午後4時ごろであることがわかった。
施設では肉体的な拷問はなく、尋問が行われることすらなかった。だが、水は食事の時にコップ1杯が提供されるだけで、顔を
洗うこともできない。そして、家族が送ってくれた着替えも渡されず、行政や司法機関に対して異議を申し立てることもできないのだ。
拘束から6日経った8月1日、陽は脱走を決意した。
陽は脱走に成功する。だが、建物を逃げ出したところで、汚職の容疑者のレッテルを貼られている。食べ物も水も、身分証もない。
ポケットに入っていた205元(約3000円)、それが全財産だった。ところが陽は、ここで思わぬ幸運に恵まれる。体力を使い果たし
気を失ったところを、通りがかりの大学生に助けられ、食事やカンパまで与えてもらったのだ。
8月3日、上海にたどり着いた陽は、警察のホームページを見て愕然とした。いつの間にか陽は違法行為や規律違反を犯した
悪徳警官として、指名手配されていたのだ。
> まずは生きなければならない。この町にいる、警察の友人を探そう!電話番号を思い出さなくては。そして物乞いをして何元か
>得て、電話をするのだ。
資金獲得の手段が物乞いという発想も驚きだが、陽は実際に物乞いをして19元(約300円)を手に入れる。空腹をこらえながら、
陽は頼りになる友人の電話番号を探し続けた。そして、早朝、あと残り2元という段階で、ついに友人の電話番号を探し当てた。
(>>2以降に続きます)