08/10/08 01:12:51
Q:「一生懸命努力しているのになかなか成果が出ない」と感じているビジネスパーソンにアドバイスをお願いします。
A:まず、「努力は必ず報われる」なんてウソです。確かに努力すれば報われる時は多いですが、直接の要因は努力じゃない。
成功したのは、成功するようなことをしたからであって、「努力=成功」ではないんです。
だって考えてみてください。もし成功が努力に比例するなら、そして成功を金銭で定義するなら、ビル・ゲイツは我々の何百倍
も努力したのか?次に成功を地位で定義するなら、ブッシュ大統領は一般の米国民よりうんと努力したのか?そうでもないよ。
成功なんて交通事故と同じで無数の偶然の産物なんです。たまたまパソコンに触れた。たまたま政治家の家庭に生まれた。
様々な運不運が重なり、どれか1つ欠けても成功しなかった。チャンスをつかむといったことも含めて、成功は確率の問題なんです。
もちろん、無数の偶然の中に努力がなければ水の泡ですが、成功とイコールではない。
Q:では成功の確率を高める努力とは何ですか。
A:どうやったら目標までたどり着けるかを考え抜くこと。しかも最も近い道、最も効率的な方法を見つけること。それが
正しい努力です。目標に到達することが目的なのであって、それに必要なことをやる。
(中略)
あきらめなければならない場合もあります。孫子の兵法でも、逃げるのは最上の策だと言っている。逃げることは決して
敗北ではなく、次に勝つために準備をして、実力を温存するということ。
ところが、日本人はただただ逃げずに前進あるのみ。明らかに赤字の事業なのに、「もう何十億円も使ったから」とか
「苦労したから撤退するわけにはいかない」と言って退かない。それ、もう終わった話でしょう?
つまり逃げないというのは、実は過去にこだわっている。後ろ向きの発想なんです。ところが、日本人は逃げることを
後ろ向きだと思っている。逃げないのは一見勇敢ですが、玉砕してしまったら何にもならない。
(中略)
Q:宋さんが成功したのは正しい努力をしたからですか?
A:多くの人は、「なぜ中国人が日本に来て成功したのか」と不思議がるけど、僕は特別なことは何もしていない。
皆ストーリーを作りたがるんだよ。「さぞかし苦労したんでしょうね」って。僕は自分が苦労したとも思っていないし、努力して
いるとも意識したこともない。大きな自由のために、より小さな自由を手放しただけ。
僕は中国ではいくら頑張っても出世はできなかった。あらゆるチャンスが閉ざされていて、家族は努力する自由さえ奪われ、
底辺から這い上がれなかった。だから「努力は必ず報われる」なんて言葉、笑っちゃうよ。そんな状況だと、せいぜい言える
のは「努力しないことが努力」。だって努力すればするほどムダなんだから。
Q:そこからどうやって這い上がったのですか。
A:そういう環境にいたからこそ、チャンスが来た時にチャンスだとわかるんです。その時にすかさず正しい努力をする。
そういう意識がないと、どんな時でもただがむしゃらに頑張っちゃうんです。だけど実際は、成功に対して逆方向にガンガン
走っていたりする。そうすると、いくら努力しても成功できなくて、だんだん周囲のせいにし始めるんです。格差社会のせい
なんかにしちゃいけないですよ。間違った努力をしているせいなんです。
日本人の努力って、何か悲壮感があるよね?ムリをするのは努力ではない。そもそも人間はムリができないんです。
ムリをするとかえって力を発揮できず、才能をダメにしてしまう恐れすらある。「やればできる」んじゃなく、「できることをやれば
できる」んです。
(以下略。全文は「日経ビジネスアソシエ」でご確認下さい。)
ソース(日経ビジネスアソシエ 10/21号 48~51ページ ソフトブレーン創業者・宋文洲氏)