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北米での日本マンガの売上げに急ブレーキがかかってきたようだ。米国ポップカルチャー
業界情報のICv2は4月16日、シカゴで開かれた大型ポップカルチャーイベントE2C2で
毎年恒例の業界分析「ICv2 WHITE PAPER」を発表した。
この発表によれば、2009年の北米での日本マンガおよびマンガスタイルの単行本売上高は
1億4000万ドルと推定され、前年の1億7500万ドルから20%減の大幅減少となった。これは
2008年の17%減に続くもので、2年続きの減少、2007年のピークからおよそ1/3、7000万ドルの
市場が失われことになる。
ICv2はマンガ市場縮小の理由として、少女マンガブームを築いた女性層が成長してマンガ離れ
したこと、スキャンレーションと呼ばれる海賊版がインターネット上で増加していること、
長編シリーズが多く購読者の負担になっていることを指摘している。
一方、マンガと米国コミックスの双方を含むグラフィックノベルは同じ時期に6%の減少なったと
している。グラフィックノベルの減少分のほとんどがマンガと見られるが、マンガは依然
同ジャンルの38%を占めるとICv2は報告する。
2009年の北米市場の不振はこれまでにも指摘されており、マンガ売上高の減少自体は多くの
業界関係者にとっては驚きでないだろう。しかし、2割減という数字の大きさは多くの人にとって
想定以上のものでないだろうか。
これまでアニメDVDの売上げの急激な落ち込みの一方で、北米における日本ポップカルチャーの
盛り上がりをマンガの人気で説明することが多かった。マンガ市場の縮小は、そうした見方に
再考を促すことになりそうだ。
またアニメとの関係では、ICv2のレポートでは触れられていなかったが、過去数年間、
日本アニメのテレビ放映が急減したことも見逃せない。米国ではテレビでアニメを視聴し、
マンガを手にするケースが日本以上に多く、アニメとマンガの連動が強い。近年はこれが
失われつつある。古いファンがマンガを卒業する一方で、新規のファンの獲得が十分
出来ていないとみられる。
レポートで指摘があったスキャンレーションの影響も見逃せない。過去数年、英語翻訳の
海賊版マンガの量とスピードは急激に勢いを増し、そうした海賊版ファイルをまとめるサイトも
盛況となっている。しかし、その多くは権利者からの警告もないまま、野放し状態となっている。
ファンの一部がそちらに移行している可能性も考えられる。
数年前のアニメDVDと同じ状況となっており、実際に事業を大幅に縮小する中小の出版社も
現れている。スキャンレーションは今後、マンガ業界に大きな影響を与えそうだ。
2010年に目を移すと北米に関する限り、引き続き厳しい状況である。特に、現在北米で
マンガの取り扱いが最も大きいボーダーズの経営不安定化が注視されている。一度は、
経営破たんの可能性もあると報道された同社の行方次第で、マンガ出版社は商品流通の
維持や現在出荷されている商品の在庫管理などの対応を取る必要も生じるからだ。
一方で、作品の権利を管理する日本の出版社は、好調とされるヨーロパにより目を向けることに
なりそうだ。確かな数字が把握出来ない市場ではあるが、既にフランス、ドイツの2カ国の
マンガ売上げだけで北米のそれを上回り、その差は一段と開いたとみられる。アニメと伴に
マンガについても、北米は難しい市場になりつつあるようだ。
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