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■ 今後求められるのは,能動性を刺激する「分かりやすく簡単だが奥が深い」ゲーム
そして話題は,会場に集まった聴講者達の最大の関心事であろう,堀井氏から見た現在の
ゲーム業界についての話へ。堀井氏は「ゲーム業界は今,大変厳しい」とズバリ核心を突く。
というのも,そもそもゲームは暇つぶしの道具として商品価値を築いてきたからである。
しかし現在では,ネット上の無料ゲームや携帯電話で遊べる安価なゲームが溢れており,
暇つぶしには事欠かなくなっている。
そうした中で,堀井氏のようなクリエイターが作るゲームは「本当にやりたいと思って
もらえないと,遊んでもらえない」という状態に陥っているのだ。
ここで,堀井氏は重要なポイントとして「いかにプレイヤーを能動的にさせるか」を挙げる。
すなわち,「ここをこうすればこうなる,ならば次は,ここをこうすればいいんじゃないか」
という事象を段階的に発生させることで,プレイヤーが能動的に遊べるよう配慮した
というわけである。
さらに堀井氏は往年のファミコンソフト「頭脳戦艦ガル」の例を挙げた。当時堀井氏は,
実のところ,このゲームをどうにも面白いと思えなかったそうだが,一緒に仕事をしていた
チュンソフトの中村光一氏が一生懸命遊んでいる姿を見て「どんなゲームでも,プレイヤーが
能動的に遊ぶことができれば面白くなる」と実感したという。
「何をすればいいのか分かりやすい」観点から見た場合の優れた例として,堀井氏は
「トモダチコレクション」と「ラブプラス」を挙げた(ちなみに堀井氏は,最近「ラブプラス」を
プレイし始めたそうだ)。
また堀井氏は,「トモダチコレクション」や「ラブプラス」が多額の予算をかけていないのに
ヒットしたことを指摘し,まだまだ新しく面白いアイデアが出てくる可能性を示唆する。
■ 頭の中にあるうちは,どのゲームも傑作。実際に形にしていく過程を経験せよ
最後に堀井氏は,ゲーム業界を志す会場の学生に向けて,いくつかアドバイスを提示した。
曰く,今は大資本・大人数で作るゲームが主流になり,個人制作のゲームは商品に
なりにくいが,その一方では少人数で作ったFlashのゲームもヒットしている。そうした
状況の中,まずは自分の頭の中にあるゲームを,何でもいいから1本作ってみてほしいという。
というのは,どんなゲームでも頭の中にあるうちは大傑作で,実際に作ってみるといろいろ
問題が発生するからだ。そうした問題を何とか解消したり,当初考えていた要素を泣く泣く
削ったりしながら形にしていく過程が大事と堀井氏は述べる。そして,若い世代がゲーム業界に
新たな息吹を吹き込むことを期待しているとして,対談を締め括った。