09/07/30 18:18:30
プラモデルには組み立て工程が存在しないため、金型の精度がそのまま製品の精度に
直結する。型の精度は、すなわち型加工時の精度ということになるので、最小単位で
1000分の1mmぐらい。つまりそれが、ガンプラの部品の精度ということになる。「ガンプラの
部品の精度は数値に置き換えられないものだと考えています。勘合寸法そのものは、
現状では100分の1mmレベルで管理していますが、将来は1000分の1台を目指しています」
(大榎氏)。
■ 自分たちの守備範囲を明確に
ガンプラの部品データはすべて3次元CADで作成しているが、金型加工側では、設計側から
受け取ったデータを基に金型加工用データを作成するために何らかの加工をする必要が
出てくる。3次元CADのモデルから取り出す線データは、ぶつ切りになったり、重なったり、
スプラインの連続で曲線が表現されたりしているからだ。通常、金型加工するための
ワイヤカット装置に渡すデータは、すべて線がつながっていなければならない(一筆書き状態)。
しかし製品設計チームで最も重要なミッションは、とにかくアニメーション設定や製品企画の
意図通りに、モビルスーツをガンプラとしてリアルに具現化するための検討を行うこと。
その検討は複雑であり、容易ではない。大榎氏は、「加工しやすいデータを作るのは、
設計の仕事ではない」と考えている。
「仕事を切り捨てたのではなく、お互いに協議をしたんですよ。お互いのロスをできるかぎり
削減できるようにとデータ交換のテストも行いました。現在、協力メーカーさんは
ワイヤカットのデータも3次元モデルのデータから簡単に作ってしまいます」(大榎氏)。
■ でも、匠たちが退職したら、どうなるの?
「勘と経験」といわれると、いまメーカー各社で頭を抱える「人材不足」の問題が頭をよぎる。
例えば高度で特殊な技術を持つ熟練工が退職してしまうと、その跡継ぎが育っておらず、
結局いままで受注してきた部品が作れなくなってしまう、ひどければ工場を閉鎖しなければ
ならなくなる、など……。熟練技術者の勘と経験に頼りがちだったモノづくり業界では、
若手離れが進んでいて、跡継ぎが育ちづらいことが深刻な問題となっている。
匠の技術者たちはロボットではないので、永久にホビー事業部にいるわけではない。
いつかは退職する日が訪れる。もし、彼らの跡継ぎがいなかったら、もしくは後を継ぎたくても
技術が高度過ぎてそれがかなわなかったら……ガンプラはどうなってしまうのか?
しかし同事業部は、そんな問題にもきちんと対策をしている。
「製品設計・金型設計については、それぞれマニュアルや規定集が整備されており、
ナレッジを共有しながら業務を行います。新しい試みや起こったトラブルについても、
その結果で、随時改定・追記を行っています。匠の要素が非常に必要な金型製作は、
定期的な若手人材の投入と OJTをベースに育成計画を立て実施しています。設計データの
データベース化は行っています。例えば、コア側の共有構造のライブラリー化などを
しています」(大榎氏)。