09/06/08 12:40:04
■文化は政府が保護・発展させるべき
アニメやマンガは単なる娯楽ではない。今や文化なのである。文化である以上、政府が
維持・保護・発展に関与するのは当然である。ハリウッドの有名監督が来日して日本の
アニメやマンガを堪能できる場所が本屋しかないというのは、国として恥ずかしいと
思うべきである。
同じような過ちが過去の映画文化にもあったことを思い出してほしい。日本映画の巨匠である
黒沢監督が不遇の時代、彼を応援していたのは日本人や日本政府ではなく、スピルバーグなどの
外国人だったのである。そして、同じことがアニメの世界で起きている。優秀な人材は
どんどんハリウッドに流出してしまう。アニメ映画で有名な米ピクサー・アニメーション・
スタジオでは数十人の日本人が働いているそうである。
私の結論は簡単である。「アニメの殿堂」が今まで日本になかったことの方が問題なのであり、
そのための117億円は無駄な補正予算でも何でもない。民主党はむしろ、政府の対応が
遅かったことを問題視すべきではなかったか。「国営マンガ喫茶」というネーミングの妙には
敬意を表するが、やはり問題の本質を外していると言わざるを得ない。
しかし、民主党以上に問題なのは自民党である。何故、上記のような事実を淡々と説明して
堂々と必要性を主張しないのだろうか。かつ、どうやら建設後の運営については独立採算が
基本で国費を投入しないらしいが、大事な文化の維持のためにそれで本当によいのだろうか。
もし民主党に攻撃されたくらいで独立採算の方向になったのだとしたら、これほど嘆かわしい
ことはない。政策についての信念がない証左である。
■ワイズ・スペンディングを実現させない政治
私はこれまで、テレビや雑誌などで今回の補正予算を散々批判してきた。実際、「100年に
1度の経済危機」という呪文を使って「100年に1度の霞が関バブル」を引き起こしたのは
問題である。経済危機に対応すべく、思い切った財政出動に踏み切った政治決断は
評価すべきである。しかし、その中身を霞が関の官僚任せにした結果、無駄遣いや
バラマキの山となり「ワイズ・スペンディング」という掛け声とは正反対の内容になってしまった。
繰り返しになるが「アニメの殿堂」は無駄遣いやバラマキの代表ではない。他に問題とすべき
予算は山ほどあるのだから、民主党はそれらの正しい事例を挙げて攻撃すべきでは
ないだろうか。
例えば、補正予算は日本の将来の成長性を高める分野に使うべきなのに、羽田空港の
滑走路拡張は65億円の一方で、短期的な経済効果がなく中長期な成長性にもほとんど
貢献しない、肉牛農家への補助やサラブレッド生産者の経営を支援する基金には計130億円も
積まれているのである。日本の将来のためには羽田空港より牛や馬の方が大事と
判断されたのである。
しかし、今回の「アニメの殿堂」騒ぎを見て、改めて財務省が可哀想になってしまった。
財務省は補正予算の総額を大きくしろという政治の要請と、知恵のない各省庁からの陳腐な
予算要求の狭間で、短い時間の間にかなり不本意な予算査定を強いられたはずである。
それだけでも気の毒だが、それに加え、補正予算批判の筆頭で正しい予算があげつらわれる
のだから、踏んだり蹴ったりだろう。日本を悪くしているのは官僚だけではない。
政治の貧困がそれを加速しているのである。