09/02/20 19:43:52
―なぜ日本で仕事をしようと考えたのですか。金銭的な面を含め、ハリウッドのほうがいい環境で仕事が
できるような気がするのですが。
マイケル 確かに、ハリウッドで仕事をしていれば、お金持ちになっていたかもしれない(笑)。それに日本
映画よりも、ハリウッドやヨーロッパ映画のほうに自分の好きな作品も多いですからね。でも大前提として、
僕は日本が大好きなんです。仕事が人生のすべてではないので、住みやすく、好きな場所にいたいという
思いから、日本を選びました。
それに、自分にしかできない仕事は何かと考えると、日本で働くのがよかったんです。生まれ育った国では
ないからこそ、日本人にとって見慣れた風景も、僕には“刺激”として映る。例えば、電線や電柱。人工物
なのか、自然なものなのか分からない講造をしていて、限りなく複雑な感じがする。
日本では、美しいと感じる人が少ないからか、どんどん地下に埋められていますが、それって、とても
寂しく感じるんです。隠すのではなく、見えていたため、電線を引きちぎったり、鉄塔をなぎ倒したりする
『ゴジラ』の映画も成立したと思うんです。
ちょっと話はずれてしまいましたが、そういったモノの見方や感じ方ができるので、周囲と違った目線を
持てるし、表現方法もハリウッドとは異なってくる。日本にいるからこそなんです。だから、『鉄コン筋クリート』
を作ることができた。日本以外では作れなかったでしょう。
―日本以外では作れない?
マイケル 日本以上のクオリティーでアニメを作れる国はなく、原画マンガやアニメーターなど、個々の技術
レベルからして、ほかの国とは違うんです。人物が走るシーン1つとっても、本当に走っていると感じるし、
人が描いた絵なのに、原画の段階で“生きている”と思えてしまう。こういった素晴らしい技術がなければ、
作品は完成しませんでした。そして、強い作家性を変更することなく、そのまま生かせられる点も大きい。
実は、『鉄コン~』のプロジェクトがスタートする何年か前に、パイロット版を作って、ハリウッドへ持っていった
ことがあるんです。その際、ハリウッドのプロデューサーから言われたのは、主人公の2人を女の子に変え
ようとか、ティーンエイジャーにしてみたらとか、原作に反することばかりだった。そこにある作家性ではなく、
売れることを真っ先に考えたわけです。それも大事なことですが、『鉄コン~』に関しては、そこまでするくらい
なら、原作を映画化する意味はないだろう、と。
(記事一部引用。インタビュー対象は「鉄コン筋クリート」監督のマイケル・アリアスさん。)
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