08/09/14 03:31:35 tmNbkrW20
小田嶋隆「大日本観察」5
第一に、ストライクゾーンに投げられるピッチャーがいないし、
第二に、一塁に投げる送球の半分以上が悪送球だからだ。
ついでに申せば、第三に、そもそも二つのチームを作るだけの
頭数が絶対に集まらない。まあ、集まってもフォアボールとエラーと
悪送球と振り逃げで、一回の表が終わらないわけだが。
運動能力の問題ではない。
サッカーのボールリフティングを器用にこなす子供はたくさんいるし、
水泳のエキスパートもいる。
体操教室に通っていてバック転ができたりする子供もいる。
なのに、その彼らが、マトモにボールを投げられないのである。
ルールも知らない。
私の息子も含めて、今の小中学生のほとんどは、
ヒットエンドランの戦略的な意義を正確にわかっていない。
フォースアウト(つまり、タッチプレーとフォースプレーの違い)を
理解している少年もほとんどいない。
ということは、野球をすることのみならず、見ることさえ、
事実上、彼らにはできないのである。
野球というのは、失われてみてはじめてわかったことだが、
あれはひとつの言語だったのである。
だから、その肉体言語としての文化的伝習であるところの野球が
衰退してみると、われわれの一世代下の子供たちは、
インフィールドフライで帰塁することさえしない、
まるっきりの野球音痴に育ってしまっている。