05/11/21 20:26:55 RkRrw7+d0
しばらくすると、悟は妙な音に気づいた。蛙を足で半分踏みつけたような、
水風船がしぼむ時のような、妙な音である。
悟は音の方向に目を向けた。
薄暗い店内の奥で、二つの影が動いている。
悟は目をこらした。影は先ほどの男女だった。
椅子に腰掛けた男の影の腰のあたりで、女の頭と見えるもう一つの影が動いている。
「ぐちゅっ、ぶちゅっ…」
悟はすべてを察した。暗くて客がいない、誰とも接する必要がないから好きだったこの店を、
奴らはその動物的行為のために好都合だと考え、入ってきたのだ。
余計な苦しさ、寂しさ、悲しさがこの空間にだけはなかった。
唯一の安らぎの場だった。
さっきまでは…。