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作家の司馬遼太郎さんには、四十歳以上の人と会っているときに<その人の顔をながめて、その人の人生を見学する
秘(ひそ)かな愉(たの)しみ>があった。『顔の話』という題の随筆に出てくる
▼リンカーンの故事を思い浮かべる人もいよう。司馬さんも紹介している。閣僚の人選で悩んでいた時、参謀からある人を
推薦されたが、「顔がよくない」と拒否した話である
▼戸惑っている参謀に対し、リンカーンは言ったという。<人間、若い間はまだ生な顔だが、四十を過ぎると、その人間の
経験、思想、品様のすべてが第二の顔を作りはじめる。四十を過ぎた人は自分の顔に責任をもたねばならない>と
▼司馬さんの筆によれば<その人が過ごしてきた人生が、一個の彫刻師として顔を作りあげる>のである。口では何とも
言えるが、顔はごまかしが利かないということなのか
▼顔といえば、自民党の新しい顔がようやく誕生した。六十八歳の麻生太郎氏。五人で争った総裁選だったが、圧勝だった。
国民に一番人気があると思われたのである。総選挙近し、と誰もが感じている
▼自民党と政権を争う民主党の顔となる代表の座には、一足早く小沢一郎氏が三選を決めている。六十六歳。二人とも
自分の顔に責任をもつには、十分な年齢である。司馬さんが生きていたら、どちらが首相にふさわしい顔なのか、秘かに
聞いてみたかった。
ソース(東京新聞・筆洗) URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)