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228 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2008/12/12(金) 22:32:13 ID:bLO+MiFo
大久保忠隣の次男で、家康や徳川秀忠からの信任も厚かった、石川忠総の家臣に、
神田九兵衛と言う男がいた。
大阪の陣でも活躍し、「破れ船七人衆」の一人として称えられたほどの勇者であったが、
この男とにかく学がなく、読み書きも出来ず、すべてのことに荒っぽい男だった。
ある年の大晦日の事。この神田九兵衛が何を思ったか、城内で同僚達に
「俺は年賀の発句を作った」
と、大いに自慢している。「明日これでご褒美を頂くのだ!」
あまりに珍しい事なので、同僚達は、その発句を是非聞かせて欲しいと言ったが、
「いやいや、明日、殿の御前で話す。」と、断った。
その深夜、神田は自分の館を出て広間に行き、そこの柱に発句を張り付け、家老達が来るのを
見かけると呼び止めて、
「年賀の発句を作りましたので、殿へよろしく取り成してください!」と言った。
家老達がどれどれ、と見てみると、そこには下手なひらがなで
『ことしは うまのとし めでたいな』
と、大きく書いてあった。彼らは大笑いしたかったが、凶暴な事で有名な神田を怒らせては
何をするか解らないと、ぐっと笑いをこらえ、「め、めでたい句だな、殿に申し上げておこう。」と
忠総の元に行き、笑いながらそれを伝えた。
だが、それを聞いた聞いた忠総は、「めでたい、よい発句ではないか。」と言い、
正月のお目見えの折、神田をほめ、褒美として小袖を与えた。
神田は面目を施した。