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清水直行投手「夢は一歩一歩」
2009年03月06日
子どもたちにどんな話をしようか、どんなことが喜んでもらえるだろう―。頭の中で何度も考え
ていた。そんな時間が楽しかったという。
春季キャンプの最後の休みとなった２月１９日、清水直行投手（３３）は、選手宿舎から歩いて１
０分の距離にある石垣市の市立小学校を訪問。５、６年生の児童１４０人に「夢」というテーマの講
演を行った。
「どういう話をすれば、子どもの心にダイレクトに伝わるのかなって考えていると本当にワクワク
して眠れなかった。学校訪問をしようと思ったのは、自分が子どもたちと話をして、何かが子どもた
ちの心に残ってくれたらと思ったから」
自発的に行った学校訪問だった。「夢」は清水にとってはこだわりのあるテーマ。子どもたちに心
の底から伝えたいと思って選んだ。
「夢をいきなり叶（かな）えることなんて誰だって無理。一つひとつの積み重ねで、夢は叶うと思
う。ただその一つひとつを積み重ねる作業をしないことにはなにも始まらない。最初の一歩を踏み出
さないことには目標には到達しない。それは忘れないで欲しい。出来ることならば一日でも早くその
一歩を踏み出して欲しい」
子どもたち一人ひとりの顔をしっかりと見ながら、優しく、そして熱く話した。何度も「分かるか
なあ？」と聞き返した。子供たちは目を輝かせながら、「分かる」と力強く返事をすると、またうれ
しそうに話を続けた。
「オレなにも努力しないでプロ野球選手になったよ。だって走ることも投げることも練習をするこ
ともつらいとか思わないから。だから努力なんて思っていない。好きなことをして、目標に向かって
行動をしている。苦しいなんて思うはずがない。それが苦しかったり嫌だったりと思うのだったら、
そんな時は違う夢を見つけてもいいと思う」
目標に向かって頑張ることを決して努力というちょっと苦しさを連想する言葉で片付けたくはない
。好きなことに向かって突き進む途中にある作業は、本来は楽しいはずなのだ。だから何度も「努力
はしていない。好きなだけ」と口にした。子どもたちにも夢に向かっていく日々を楽しんで欲しいと
願って熱弁した。
そして、夢を持つ上でもう一つ子どもたちに伝えたいことがあった。それは、支えてくれる周りへ
の感謝だ。
「応援してくれている人、支えてくれている人。それは親であり、友達。手と手を合わせてお互い
が夢を叶えるということも大事。野球だってそう。オレという投手だけがいても駄目。ボールをとっ
てくれるキャッチャーがいて、守って打ってくれる野手がいないと勝てない。人生もそれと一緒だと
思う」
３０分足らずだったが、限られた時間で相手の心に訴えかけるように話した。子どもたちの心にど
こまで通じたかを知る術はない。この子たちの長い人生において、なにかのキッカケとなってくれれ
ばと願う。大きな拍手に包まれながら清水は会場の体育館を後にした。
「多くの子どもたちの夢が叶えば、その分、いい社会になるはずだよね」。青い海が見える道を通
って２人で宿舎まで帰った。空もきれいに晴れ渡っていた。夢を語るには絶好の日だった。
文・千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章
朝日新聞
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