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「スタジオのお菓子は全部不二家にしますから」
もちろん報道番組がバラエティ化することによる利点もある。難しい政治・経済の話題を
庶民にも分かりやすく解説するという点では、これらの報道バラエティは大いに貢献している
だろう。しかし、同時に報道番組がバラエティ化することによって本来、報道番組に必要な
倫理というものが失われていることを指摘せざるを得ない。
ここに一例として取り上げるのはTBS系列の朝の番組『朝ズバッ!』であるが、この番組が
昨年、不二家が賞味期限切れチョコレートを回収後、溶かして新しい製品にして販売していた
として追及し、その根拠自体が不確かなものであったことが発覚した後も正式に謝罪しなかった
ことは広く知られている。
問題の追及時にはメインキャスターのみのもんた氏が「古くなったチョコを集めてきて、
それを溶かして新しい製品に作り直すような会社はもうはっきり言って廃業してもらいたい」
とまで述べていたのに、そのことが指弾されると「誤解を招きかねない表現があった」と
アナウンサーが釈明するだけで、「やらせ捏造」は否定した。
加えて問題なのは、みの氏がこのアナウンサーによる釈明の後、不二家の主力商品の
ミルキーを頬張りながら、前日に販売を再開した不二家の製品を宣伝し、「スタジオの
お菓子は全部不二家にしますから」と発言したことである。
この問題を追及してきた桐蔭横浜大学教授の郷原信郎氏は「TBSのやり方は、
公共の電波を使って、損害賠償請求をする可能性のある相手方に『無償広告』を行うことで
賠償の代替措置をとろうというものであり、まさに『電波の私物化』である」(『中央公論』
2008年3月号)と指摘している。
しかし、このようなおちゃらけた「無償広告」ができるのは、まさにこの番組が純粋な
報道番組ではないことに起因するものであり、また、逆にバラエティであるがゆえに
一企業に明確な根拠もなく廃業を求めることもできたのであろう。
硫化水素自殺はテレビも同罪だ
今年の3月、4月と、硫化水素による自殺が全国で相次いだが、この問題にもこの番組は
深く関わっている。
3月18日、まだ硫化水素による自殺が広く知られていない時、この番組はニュースコーナーで
大学生の自殺事件を取り上げ、記者の「目張りがされていて、入浴剤と洗剤の容器が
見つかったということです」という言葉の後にご丁寧にも入浴剤と塩素系の洗剤の容器の映像を
詳細に映し、「警視庁と東京消防庁はインターネット上でこうした手口を知った可能性もあるとして
注意を呼びかけています」とアナウンサーが述べた。また、このニュースは番組の中で繰り返し
流された。
要するに硫化水素による自殺の方法を視聴者に詳細に教え、詳しくはインターネットを
調べるようにと示唆したということである。この時、スタジオではみの氏がインターネットを
取り締まるようにと述べるだけで、この番組のニュースの伝え方自体に問題があるとは
考えてもみないようだった。
しかし、この番組での報道以後、硫化水素による自殺が全国で相次ぐことになる。
そして、4月28日、今度は「敢えてこの問題を取り上げました」とのみの氏の発言をスタートとして、
4月だけで全国で硫化水素自殺が74件発生し、76人が死亡したと、この問題を神妙な顔をして
取り上げたのである。
つづく
SAPIO
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