03/11/14 22:38
昔は日本にも秋があったらしいが、今の11月中旬はまだ汗ばむ日が続く。
そういえば、昔の人は夏は半袖で過ごしてたらしいが、紫外線による皮膚ガンなんてものはなかったんだろう。
2072年の東京大震災からもう31年。
新首都に住んでた俺の両親が言うには、当時もう東京復興は無理だと言われてたそうだ。
そんな話を思い出しながら、プレゼンデータ作りに煮詰まった25の俺は、お台場上空を飛び交うクルマの列をぼーっと眺めてた。
今日は木曜、これさえ仕上げれば明日から休みなんだが…。
うらめしそうにモニターを一瞥してから、IDカードを首から下げて部屋の外に飛び出した。
「飯にしよう」
79階の食堂街。「YOSHINOYA」の看板が掛かってるブースへ向かう。ブースの入り口にあるメニューを手に取り、メニューに注文を打ち込む。
「えーと、牛丼大盛り。つゆの量=だくx1、タマネギの割合=通常。
サイドーダーは生卵とお新香…。で[OK]」。
カウンターでメニューをスロットに入れると、間髪おかずに、コンベアからトレーに乗って牛丼と卵とお新香が出てきた。
IDカードを持ってるからもう支払いは終わってる。
と言うか、カードがないとメニューが反応してくれないんだが。
IDカードのDNA情報とメニューパッドに触れる指が合致してると入力は有効になる。
入力を決定した時点で全自動で牛丼が盛られると言う寸法だ。
横に置いてある紅生姜と七味をこれでもかと言うくらいどんぶりにかけてテーブルに座る。
そういや、牛丼って昔は名前の通り牛肉だったらしいが、今は合成タンパクがメインの具材だ。
動物プランクトンから肉を合成してるらしいが、俺は食品は専門外なのでよくわからない。
卵は昔と同じらしいけど。
でも、仕事中の食事なんてこんなもんだよ。これだけは昔と同じじゃないか?
仕事はとっととケリつけて、週末はうまいものでも食いに行こう、
と、どんぶりに目を落として一心不乱にかき込んだ。