08/09/28 19:40:49
社内の不正行為を告発したら、仕事を取り上げられ、不当に出向させられたとして、三菱
重工業(本社・東京)の男性社員が同社に、出向の取り消しと慰謝料など110万円の支払
いを求める労働審判を神戸地裁に申し立てた。男性は「善意の内部告発に対する明らかな
報復行為だ」と主張。同社は「業務上の都合によるもので、内部告発とは関係ない」と反論
している。
男性は現在、関連会社に休職派遣(出向)中の西村茂さん(54)。申し立ては8月4日付。
申立書などによると、西村さんは同社神戸造船所(神戸市兵庫区)に勤めていた04年7月、
同造船所の複数の社員が虚偽の実務経験証明書を国土交通省の外郭団体に提出し、「監
理技術者」の資格者証を不正に取得したとして、社内のコンプライアンス委員会にメールで
通報した。
その3カ月後、西村さんは設計補助担当を外されて約半年間仕事を与えられず、その後は
書類整理などを命じられた。コンプライアンス委員会は04年12月、適正な実務経験を確認
できない事例があることを認めた上で、「該当者は監理技術者として起用しない」と西村さん
に回答した。
西村さんは同委員会にこの事実を国交省に報告し、不正取得した資格者証を返すべきだ
と求めたが、同委員会は拒否。そのため、西村さん自らが05年3月、国交省に通報した。
その後、上司から「統一行動がとれない者は会社から出ていってほしい」と退職を迫られた
ため、同年11月、報道機関にも知らせた。出向を命じられたのは07年6月。仕事は社宅の
清掃などだった。
国交省は06年7月、三菱重工に対して全事業所を対象に調査を指示。その結果、すでに
神戸造船所で明らかになっていた28人の他にも、資格者証の取得者のうち約4割に当たる
計11事業所の234人が不正取得していた事実が判明した。西村さんは「不正取得の社員
を罰せず、告発した公益通報者に不利益になる仕打ちをするのは本末転倒だ」と訴えている。
三菱重工業神戸造船所は「社員の労務管理や人事異動は本人の適性、能力、事業環境を
勘案して、法的にも社会的にも適切に行っている」などと説明している。
内部告発者を解雇や降格など不利益に扱うことを禁じる公益通報者保護法が06年4月に
施行された。今回はそれ以前の通報だったため、適用外という。(千葉正義)
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公益通報支援センター(大阪市)事務局長の阪口徳雄弁護士の話 通報は社内から行政
庁、報道機関と正当な手順を踏んでいる。いわばモデルケースであり、内容も客観的に真実
だったことが証明されている。今回の通報が06年4月の公益通報者保護法の施行前だとし
ても、労働審判では、その趣旨が当然考慮されるべきであり、企業側の扱いは許される行為
ではない。
ソース:朝日新聞
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