06/11/20 05:06:28 C54J6U1L
「俺の妹が結婚するんだ――」
「めでたいな」
「この前、メールがあってな。実家には一年近く足を運んでないんだが、今度帰ってみるよ。俺が妹を、祝ってやらんとな」
「いい兄貴だな。妹さんも喜ぶんじゃないか？」
「兄ちゃんも早く結婚しないとね、だとさ。あいつときたら、余計なこと言いやがる。そう思わねぇかい？」
「そうだな」
「そうだろう――」
言いながら、男は天井を見上げた。
「一つ教えてくれるかい」
「何だ？」
「妹さんの結婚は、あんたにとって、嬉しいことなのか？」
「――」
「別に構わんだろ」
「もちろん嬉しいことさ」
天井に顔を向けたまま、はっきりとそう言った。
「そんなこと聞いてどうするんだい」
「どうもしない。ただ――」
「ただ？」
「淋しそうにも見えたんでな。なんとなく、聞いてみたくなっただけさ」
「そうかい――」
相も変わらず上を見ていた。
目から熱いものが溢れていた。