05/08/24 02:07:48 lL3ZLAgZ
「なー、すばるー」
後ろから急に声を掛けられて、昴は反射的に振り向く。
声の主は、自分よりやや小さな背丈の少女――リカ。
「ん…どうしたんだい?」
少しだけ目線を下げて、リカに尋ねる。
目前の少女はいつも通りの格好。
だけど、いつもと少しだけ雰囲気が違う。
その理由は、きっと――
「これ、どうすればいいんだ?」
リカは昴に向かって手を突き出す。
その手に握られていたのは、小振りの花束。
花束は赤やピンクで纏められていて、暖かな印象を受ける。
「リカ…それ、どうしたんだい?」
昴は少しだけ怪訝そうな顔で尋ねる。
花束なんて、リカには似つかわしくない。
手にしているのならば、ハンバーガーやホットドッグの方がリカには合っているだろう。
「これはな、さっき楽屋でもらった」
「ああ…成る程ね」
少々舌足らずな説明だったが、昴には合点がいった。
つまり、リカはファンにこのプレゼントを貰ったのだろう。
それは昴も何度も経験のある事、すぐに察する事が出来た。
しかし、リカに花束とは少し誤った選択だった。
贈り主は、花束ならば万人受けすると思ったのだろう。
だが、リカへのプレゼントならば食品が一番適している。
(ふっ…この贈り物をした奴は、まだまだリカの事が分かってないんだな…)
昴は花束を弄ぶリカを見ながら、心の中で呟いた。
「なー、すばるー…リカ、これどうしていいのか分からないぞ」
匂いをかいだり、頭上にかざしてみたりしていたリカだったが、しびれをきらしたのか昴に再び疑問をぶつける。
「そうだね…リカの好きにすればいいんじゃないのかな」