FF・DQ千一夜物語 第413夜at FF
FF・DQ千一夜物語 第413夜 - 暇つぶし2ch671:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:41 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE84


宿屋 受付にて


リュカ「すみません、部屋あいてますか。」

ダンカン「お一人さまですか?」
リュカ「そうです。」
ダンカン「空いてますよ、少々お待ちください。」
リュカ「はい。」



年月というものはあっという間だと言うが、それとともに記憶のほうは
すぐに忘れてしまうものだ。
悲しい思い出は忘れることはできないが、それ以外のことはすっかり忘れてしまう。

このとき私とこの宿屋主人は、お互いまだ誰なのか気づいていなかった。
私たちは知り合いだったというのに・・・


672:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:43 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE85


ダンカン「・・・・あんた、身分証明書見せてもらっていいかい?」

リュカ「え?どうしてですか。」
ダンカン「いいから早く。」
リュカ「ごめんなさい、証明書はドイツ兵に取り上げられてしまって。」
ダンカン「ほぅ。」

リュカ「あの、お金なら足りると思うんですけど。」
ダンカン「すまんな、部屋はもう一杯だよ。他をあたってくれ。」
リュカ「え?」

ダンカン「ほらほら、そんなとこに立ってたらお客さんのジャマだろ。」

リュカ「ま、待ってくださいよ。さっき部屋空いてるって・・・」
ダンカン「知らないね。」
リュカ「・・・・・・」


戦時中はレストラン、ホテル、喫茶店はおろか、ろくに店で買い物ができなかった。
どいつもこいつもユダヤ人だとわかるとケムたがって追い払う。


673:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:44 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE86


ダンカン「おい、早く出て行ってくれないか。」
リュカ「ふーん、あんたボクがユダヤ人だと気づいて・・・」
ダンカン「面倒なことには関わりたくない、この街だってドイツ軍の領域なんだ。」

リュカ「あんたドイツ軍でもないくせに人種差別か、同胞として恥ずかしくないんですか?」

ダンカン「おい、いい加減にしないと警察へ通報するぞ。電話一本でかけつけてくるぞ。
     それともドイツ兵に連行されたいか?」

リュカ「何だと・・・おい、ちょっとこっちへ出て来い。」
ダンカン「な、なんだ。やるのかボウズ。」



長いことドレイ生活をしいられてきたおかげで、頭に血が昇るのも早くなってしまった。
昔はおとなしい子だったのだが・・・



ダンカン「このガキめ!通報されたいのか!」
リュカ「うるさい!ボクはおまえみたいな偽善者を見るとムカついてくるんだよ!」


674:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 13:46 50K1Eh7d
sage

675:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:46 0olQCRLU
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もみあっているうちに、やがて宿屋の二階から一人の女の子が降りてきた。



ビアンカ「どうしたのお父さん、何を騒いで・・・」

ダンカン「あ、ビアンカ!すぐに警察を!」
リュカ「わかったよ!出ていけばいいんだろ!」

ダンカン「あぁそうさ、出ていけ!ユダヤ人は迷惑だ!こっちまで殺されてしまう!」
ビアンカ「お父さん、そんな言い方しなくても・・・あら?」

リュカ「ばかやろー!こんなとこもう二度とくるもんか!」

ビアンカ「・・・・」
リュカ「なんだよ、どいてくれ。」

ビアンカ「・・・・・・」

リュカ「どいてくれって言っ・・・ん?」


ビアンカ「そ、そんな・・・まさか・・・」


リュカ「え・・・・」


676:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:48 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE88


ビアンカ「あ、あなたなのね・・・」



リュカ「あ・・・あ・・・」



赤い糸の約束は果たされることになった。

その女の子は首に紫色の布を巻きつけていた。その布には見覚えがある。

母を見つけるよりも前に、この日は一つの願いがかなった。
その女の子はみすぼらしい格好をした私を前に、目に涙をためながらこう言った。



「私の大切な リボンを盗られました ドイツ兵のしわざでしょうか。」



そして私も目をうるませて彼女にこう答えた。



「いいえ 犯人はユダヤ人です ボクもターバンを没収されました。」


677:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:50 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE89


どんなに年月が経とうと、私たちの間に再会の言葉はいらなかった。

赤い糸の再会は今日、果たされた。
気がつくと私は使い果たしたはずの涙をこぼし、彼女を抱きしめていた。



リュカ「ビ・・ビアンカ・・・!」

ビアンカ「リュカ・・・!」



ダンカン「え?え?い、いったい何がどうなってるんだ・・・?」



~~~~~~~~~~~~~~~


678:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:51 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE90


宿屋 事務所にて


ビアンカ「もう、お父さんったら。リュカのことすっかり忘れて・・・」

ダンカン「いやーすまない、こんなに大きくなっていたから気がつかなかったよ。」
リュカ「ボクもダンカンさんだとは気づかなくて・・・」
ダンカン「ははは、私もフケたからなぁ。」

ビアンカ「リュカ、私はずっと信じていたわ。あなたがきっと生きていると。」
リュカ「うん・・・」

ビアンカ「パパスさんは?」
リュカ「・・・・・」
ビアンカ「そう・・・・」

ダンカン「・・・そ、そうか。さぞ苦労してきたんだろうな。うちでも母さんが
     ドイツ兵に殺されてね。」

リュカ「でもダンカンさんたちがこの街に住んでいたなんてビックリしたよ。」
ダンカン「あぁ、あれからあちこちの街をてんてんとしてな。ようやくこの街で
     小さな宿屋を経営することができたんだ。」


679:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:54 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE91


ビアンカ「リュカ、今日は泊まっていけるんでしょ?」
リュカ「そのつもりだったんだけど・・・」

ビアンカ「・・・お父さん。」

ダンカン「わ、わかってるさ。もちろん泊まっていってくれ。い、いや金なんて
     払わなくてもいいさ。ユダヤ人だろうと関係ない。」

ビアンカ「ごめんねリュカ、実は私のお母さんが殺されたのはユダヤ人を泊めて
     しまったからなの。だからお父さんもそのことで・・・」

リュカ「そうだったのか・・・。わかった、ボクやっぱり他のとこへ行くよ。」
ビアンカ「い、いえいいのよ。私たちは大丈夫だから。」

ダンカン「そ、そうだよリュカ。頼むから気にせんでくれ。」

リュカ「でも・・・」

チリン チリーン!

ビアンカ「あ、お父さん。お客さんよ。」
ダンカン「おっとまずい、じゃあビアンカ。リュカを頼むよ。」

ビアンカ「うん。」

~~~~~~~~~~~~~


680:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:55 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE92


宿屋 受付前


ダンカン「いらっしゃいませ、お二人さまですか?」

ルドマン「いや、悪いが客じゃない。ちょっとお尋ねしたいことがあってな。」
フローラ「・・・・・」

ダンカン「はぁ、何でしょう。」
ルドマン「この近くでみすぼらしいユダヤ人の少年を見かけなかったかね。髪は黒髪で
     黒の瞳、身長は・・・」
フローラ「お父様、たしか170と少しくらいだったと思います。」

ダンカン「あ、あのぅ・・・あなたは警察の方で?」
ルドマン「いやいや、ご心配なさるな。ドイツ軍の使いなどではない。」

ダンカン「(黒髪で黒の瞳、身長170と少し・・・リュカのことだな・・・)」

ルドマン「ここに泊まっている客でそういう少年はおりますかな?」
ダンカン「・・・・・」

ルドマン「・・・どうなされた、ご主人。」


681:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:57 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE93


ダンカン「あ、い、いえ・・・申しわけありませんが、そのような少年は
     ここには泊まっておりませんが。」
ルドマン「そうですか、邪魔しましたな。フローラ、行くぞ。」
フローラ「はい・・・」

ダンカン「(ふぅ・・・何なんだこいつら・・・)」

リュカ「ねぇダンカンさん、やっぱりボクほかのとこで泊ま・・」
ダンカン「バ、バカ!出てくるんじゃない!」
リュカ「え・・・」


フローラ「あ!」
ルドマン「どうした、フローラ。」
フローラ「お父様、あの方です!」
ルドマン「なに・・・?」

リュカ「あれ、さっきの女の子じゃないか。どうしてここに・・・」

ルドマン「ちょっと失礼、きみの手を見せてもらえないか。」
リュカ「?」
ルドマン「噛みつきはせん、きみの手を見るだけだ。」

リュカ「な、なんですかあなたは・・」

ルドマン「おぉ!本物だ!本物の‘炎のリング’だ!」
リュカ「!」
フローラ「お父様・・・」


682:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:59 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE94


ルドマン「き、きみ。この指輪をどこで?」
リュカ「これは父の形見ですけど。」

ルドマン「いやー!これは驚いた!まさに運命的な出会いとはこのことだ!きみ、ちょっと
     私の別荘まで来てくれんか。」

リュカ「ちょ、ちょっと・・・」
ルドマン「フローラ、何を恥ずかしがっておる。こっちへ来なさい。」
フローラ「は、はい。」

ルドマン「紹介しよう、私の娘のフローラだ。」
フローラ「は、はじめまして・・・」

リュカ「あのぅ・・・」

ルドマン「いやーこんなに早く娘のいいなずけが見つかるとは思わなかった!」
リュカ「はぁ?」


683:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:00 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE95


ダンカン「ちょ、ちょっとあなた。どこの方が知りませんけど何を一人で勝手に・・」
ルドマン「ええい離せ、私を誰だと思っている。」

ビアンカ「どうしたの?さっきから騒いで・・・」

リュカ「あ、ビアンカ。」
フローラ「!」


ルドマン「きみきみ、その指輪は炎のリングといってな。・・・まぁいい、面倒な説明は
     あとだ。娘の指を見てみなさい。」
リュカ「え?」
ルドマン「いいから私の娘の手に光るものをごらんなさい。フローラ、ほらお見せして。」

フローラ「はい・・・」

リュカ「あれ?これは・・・」


684:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:01 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE96


何がなんだかわけがわからなかったが、のちに改めて紹介された。

まずこの富豪の紳士はルドマン・カルバートという名のフランス人だそうだ。
そしてその娘がフローラ・カルバート。

ヨーロッパ各地にいくつもの別荘を所有しており、このポーランドにも二つほど
別荘を持っているそうだ。

そんなことはどうでもいいが、なぜこの私に興味を持ったのかが疑問だった。
あとから聞いた話によると、正確には私ではなく私の持っていた「指輪」が目的だったそうだ。

父の形見であるこの‘炎のリング’にどれほどの興味を持っていたのか知らないが、
これはあんたらのような富豪に売る気はないとはっきり言ってやった。


ところがそうではなかった。この指輪が欲しいわけではなかったのだ。
私はこのフローラという娘の指にはめていた指輪の正体を聞いて驚いた。

彼女がはめていたのは‘水のリング’という指輪だそうだ。

そういえば昔、父からこんな話を聞いたことがある。


685:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:01 50K1Eh7d
ガンガレー

686:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:02 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE97



     あぁ、詳しくは知らんが‘水のリング’という
               水の聖霊の指輪があるらしい。
             
          へぇー

    お前が炎のリングを持っているとすれば、いつかこの世界のどこかにいる
          ‘水のリング’を持った人に出会うときが来るかもしれんな。

         だとしたら何なの?

             ははは、お前のお嫁さんになる人のことだ。

                   えぇ?

         お前のお嫁さんはどんな娘なんだろうな、私も見てみたい。

                 や、やだよ。今からそんな・・・

                         ははは。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~


687:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:03 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE98


まったくバカげた話だった。

彼女は小さいころから‘水のリング’をはめていたそうだ。
大きくなっていつか結婚するとき、‘炎のリング’を所有している者に
嫁ぐのが夢だったとのこと。

親バカのルドマンはそんな娘がかわいくてしかたなく、今まで言い寄ってきた
フランス人の金持ち坊ちゃんたちのプロポーズを次々に蹴っ飛ばしてきたという。

親子そろって夢見るお星さまのイカれたフランス人だった。

私はこの世間知らずのフローラお嬢さまに、面と向かってこう言ってやりたかった。

「あのね、おじょうちゃん。サンタクロースなんてほんとはいないんだよ。」と。

ともかくこの日はいろいろなことがありすぎて、なんとも疲れた日だった。
ビアンカとの再会、フローラとの出会い。

私には母を捜すという大事な目的があるが、実は前から少し考え始めてはいた。
父を失った今、戦争が終わったら私も将来のことを考えねばと。

私にも家庭が持てるだろうか。
こんなユダヤ人に誰が嫁に来てくれるんだろうかと、まだ16歳のころから
真剣に考え始めていたのだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


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04/03/05 14:05 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE99


ダンカンの宿屋 二階にて


ビアンカ「だいじょうぶ?。」

リュカ「あーもう疲れたー。」
ビアンカ「うふふ、さんざんだったわね。ルドマンさんたちは別荘へ帰ったらしいわ。」

リュカ「かんべんしてほしいよ、なんでボクがこの指輪をしてたってだけで
    いいなずけなんてさ。」
ビアンカ「素敵じゃない、小さいころから夢見てた指輪をした王子さまを待ち続けて・・・」

リュカ「あのねビアンカ、ひとごとだと思って勝手な想像しないでよ。」
ビアンカ「いいじゃない、女の子ってそういうものにあこがれるものよ。」

リュカ「この指輪はもともと父さんのだよ、もしこの指輪をボクじゃなくて他の誰かが・・・
    例えば男じゃなくて女が持っていたとしたら、彼女どうする気だったんだろ。」
ビアンカ「さぁね、知らないわ。」

リュカ「相手が女でも結婚するつもりだったのかな。」
ビアンカ「しーらない。男の子って夢のないことばかり言うのね、あなたも昔はそんな子じゃ
     なかったのに。もっとかわいかったよ。」

リュカ「長いことドレイ生活で男を相手に貞操を守ってきたせいかな。」
ビアンカ「え??」
リュカ「あ、い、いや・・なんでもないよ。」


689:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:06 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE100


ビアンカ「あ、そうそうリュカ。夕食のお買い物につきあってくれない?」

リュカ「え、でもボクは・・・」
ビアンカ「泊まっていくんでしょ、遠慮することないのよ。それにあなたちょっとやせすぎよ、
     もっと栄養のあるもの取らないと。」

リュカ「そ、そうかな・・・」

ビアンカ「ほら早く、行くわよ。」
リュカ「わ、わかったよ。そんなに引っぱるなって。」


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04/03/05 14:07 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE101


一方そのころ―――ベルリン  ナチス・ドイツ軍本部 総統室


一人のドイツ士官が総統室へやってきた。

ガチャリ


ドイツ士官「<ハイル ヒトラー!西区から受けた連絡をご報告にきました!>」

総統「<言ってみろ。>」

ドイツ士官「<は!西の都サラボナの街において、水のリングを所有しているフランス人の
       家族を発見したとのことです!>」

総統「<何だと?>」

ドイツ士官「<ジャミ中尉とゴンズ中尉が現場に向かっています!>」
総統「<よし、指輪を入手したら連絡をよこせと伝えろ。>」

ドイツ士官「<ハイル ヒトラー!>」


~~~~~~~~~~~~~~~~~


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04/03/05 14:08 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE102


サラボナの街  商店街通り


リュカ「ビアンカ、まだ買うつもりなのかい。」

ビアンカ「えーと、ジャガイモにタマネギでしょ。トリ肉にパセリと・・・」
リュカ「そんなにたくさん買ってどうするんだよ。」

ビアンカ「あなた毎日なに食べてたのよ。」
リュカ「豆だよ。」
ビアンカ「ダメよ、もっと栄養つけないと。今夜は私がおいしいもの作ってあげる。」
リュカ「そっか、それは楽しみだな。」

ビアンカ「えーと、あとは・・・あら?」
リュカ「どうしたんだい。」

ビアンカ「ちょ、ちょっとリュカ・・・あれ見て。ルドマンさんたちじゃない?」
リュカ「え?」


そこには先ほどのルドマンと奥さん、それにフローラもいた。
彼らはなぜかドイツ兵に捕らえられていた。


692:名前が無い@ただの名無しのようだ
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支援

693:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:09 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE103


ルドマン「<ま、待ってくれ。話せばわかる。私たちはただ・・・>」
妻「あ、あなた・・・!」

ジャミ中尉「<三人ともそこへひざまずけ。>」
ゴンズ中尉「<おい、お嬢ちゃんもだよ。そこへひざまずけ。>」

フローラ「う、うぅ・・・助けて・・・」


私はひとめ見てわかった、こいつらの顔は忘れない。
ドイツ士官のジャミ中尉とゴンズ中尉だ。


ジャミ中尉「<もう一度聞くぞ、お前ら家族は水のリングを持っているはずだ。>」
ルドマン「<し、知らない・・・>」
ジャミ中尉「<ウソつくな!お前ら家族が指輪を持っていると連絡を受けている!>」

フローラ「(お、お父様・・・もう指輪を出したほうが・・・)」
ルドマン「(バ、バカを言うな・・・あの指輪は家宝なんだぞ・・・)」
フローラ「(でもこのままじゃ私たち殺されて・・・)」

ゴンズ中尉「<おい!何をゴチャゴチャ言ってる!さっさと指輪を出せ!>」

ルドマン「<だ、だからそんな指輪は知らないと・・・>」

~~~~~~~~~~~~~~


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04/03/05 14:10 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE104


リュカ「ビアンカ、ここで待っていてくれ。あの人たちを助けにいく。」
ビアンカ「だ、だめよリュカ。あなたまで殺されるわよ。」

リュカ「そうはいかない、ほっといたらあの人たち殺されてしまうよ。」
ビアンカ「お願いだからバカなことしないで、せっかく助かった命なのに・・・」

リュカ「バカなのはあの家族さ。」
ビアンカ「え・・・」
リュカ「ここを動くなよ。」

ビアンカ「ま、待って!リュカ!」



私は銃を突きつけながらも指輪を出そうとしないルドマンに腹が立ったのだ。

娘まで殺されてしまうかもしれないのに・・・



ルドマン「<指輪なんか知らない!本当だ!>」

ジャミ中尉「<どう思う?ゴンズ。>」
ゴンズ中尉「<ウソくせえな、隠してるに違いない。>」


695:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:11 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE105


ジャキン!


フローラ「きゃあ!」
ルドマン「フローラ!」

ジャミ中尉「<10秒待ってやる、指輪を出さないとこの娘の頭を撃ちぬく。>」
ルドマン「<や、やめてくれ!指輪なんか知らないと言ってるだろう!>」
フローラ「お父様!」

ジャミ中尉「<どこまでもしぶといオヤジだ、まぁいい。じゃこの小娘を殺す>」

フローラ「いやああああ!!」

リュカ「<待ってくれ!>」

ジャミ中尉「<ん?>」
ゴンズ中尉「<なんだお前。>」

リュカ「<指輪はその女の子が持っている、たぶんポケットの中を探せばあると思う。>」

ジャミ中尉「<何だと?>」
フローラ「リュ、リュカさん・・・!」
ルドマン「き、貴様どういうつもりだ・・・!」

リュカ「・・・・・」


696:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:12 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE106


ゴンズ中尉「<おい、おじょうちゃん。ちょっと失礼するぞ。>」
フローラ「うぅ・・・」
ジャミ中尉「<どうだ、あったか?>」

ゴンズ中尉「<ゲ、ほんとにあったぞ・・・これが水のリングに違いない。>」
ジャミ中尉「<ほぅ。>」

ルドマン「く、くそぉぉおおお・・・!わが家宝の指輪が・・・!」

ジャミ中尉「<おい兄ちゃん、どこのどいつか知らんが教えてくれてありがとよ。>」
リュカ「・・・・・」
ジャミ中尉「<ん・・・おい、お前どこかで会ったか?>」

リュカ「<さぁね・・・>」

ジャミ中尉「<ふん・・・まぁいい。おいゴンズ、もう行くぞ。指輪を本部へ届けねば。>」
ゴンズ中尉「<あぁ、わかった。>」



ようやく二人のドイツ士官はその場を去っていった。
.

697:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:17 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE107


リュカ「・・・・・」

ビアンカ「リュカ!大丈夫?!」
リュカ「大丈夫だよ、なんともない。」
ビアンカ「よかった・・・!」

フローラ「あ、あの・・・」
リュカ「ケガはない?フローラ。」
フローラ「は、はい・・・」

ルドマン「おい!どういうつもりだ!わが家宝の指輪を!なぜドイツ野郎に引き渡させた!」
リュカ「・・・・」
ルドマン「おい何とか言え!このままで済むと思っているのか!あの指輪は貴様のような
     ユダヤ人が一生かかっても買うことのできない高価な・・」

リュカ「うるさいね・・・」
ルドマン「な、なぬ??」

リュカ「そんなことよりも奥さんや娘さんの心配でもしたらどうですか。」

ルドマン「な、なんたる無礼なやつだ!そうか!貴様はドイツ軍の手先に成り下がった
     ユダヤ人だな!この非国民め!」

リュカ「そんなに指輪が欲しければボクのをあげますよ。」
ルドマン「?!」
ビアンカ「リュカ!」


698:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:18 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE108


今日まで大事にしてきた父の形見である炎のリング、私はあっさりとルドマンにゆずった。

だがもし父が生きていたら私と同じ行動をとっていたような気がしたのだ。
娘や奥さんまで銃を突きつけられていたのだ、迷わず指輪よりも命のほうを選んでいただろう。

私や父パパスにとって、本当の誇りというものはこのような犬死ではない。
たとえ他人事でも生きていくことが何よりも大事なのだ。



ルドマン「お、おい待て!なぜ私に炎のリングをそうやすやすとくれるのだ!」

リュカ「ビアンカ、行こう。」
ビアンカ「え、えぇ・・・」

ルドマン「ま、待ってくれ!お前はいったい・・・!」


フローラ「・・・・・・」



~~~~~~~~~~~~~~~~


699:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:19 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE109


――その夜 ダンカンの宿屋にて


リュカ「ごちそうさまー。」

ビアンカ「よく食べたわね。」
ダンカン「ははは、男の子はたくさん食べなきゃな。」

リュカ「ビアンカ、ほんとにおいしかったよ。キミがこんなに料理が上手だったなんて。」
ビアンカ「あらなによ、私は女らしくないっていうの?」
リュカ「い、いや・・・」

ダンカン「はっはっは。リュカ、こんな娘でもよかったらもらってやってくれないか。
     毎日おいしいスープを作ってもらえるぞ。」
ビアンカ「ちょ、ちょっとお父さん。こんな娘ってなによ。」

リュカ「ははは・・・」

チリン チリーン

ダンカン「おっとお客さんか。」
ビアンカ「いいわ、私が出る。」

~~~~~~~~~~~~~~


700:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:21 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE110


受付前


ビアンカ「いらっしゃいませー。あら、あなたは・・・」

フローラ「こんばんは・・・」
ビアンカ「フローラさんね、何かご用?」

フローラ「すみません、ちょっとリュカさんに・・・」
ビアンカ「リュカー!フローラさんが来てるわよー!」


リュカ「そ、そんなに大きな声出さなくても聞こえるよ。」
ビアンカ「うふふ、じゃあごゆっくり。」

リュカ「どうしたの、フローラ。」
フローラ「あの・・・」
リュカ「ん?」

フローラ「ごめんなさい、あの・・・ちょっと外へ出ませんか。」

リュカ「あ、あぁ・・・うん、わかった。」


~~~~~~~~~~~~~~~


701:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:22 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE111


サラボナの街 商店街通り


フローラ「先ほどは助けてくれてありがとうございました。」

リュカ「いいんだよ、それより無事でよかったね。」
フローラ「あの・・・ビアンカさんという方はリュカさんとはどういうご関係で?」

リュカ「あ、うん・・・幼なじみだよ。」
フローラ「素敵な方ですね。」
リュカ「そ、そう?」

フローラ「リュカさん、私あのときのあなたの行動が信じられなかったんです。」
リュカ「あのときって?」
フローラ「何のためらいもなく指輪をドイツ士官に差し出したじゃないですか。」

リュカ「うん、ごめんね。ああでもしなきゃルドマンさん指輪を出そうとしなかったよ。」
フローラ「でもおかげで私たち助かりました。」
リュカ「命は大切にしないとね。」

フローラ「私、小さいころからあの指輪をずっと大切にしてきたんです。でもドイツ兵に
     銃を突きつけられたら、いくら私でもやっぱり・・・」
リュカ「そうさ、それが当たり前なんだよ。ちっとも恥ずかしいことじゃないよ。」


702:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:23 EO4JwW6H
ガンガレ

703:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:24 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE112


フローラ「でもそのあとリュカさんは私の父にあっさりと自分の指輪をゆずったじゃないですか。
     あなたのお父様の形見を・・・」
リュカ「うん、でも・・・父さんがもし生きていたら、ボクと同じことしてたんじゃ
    ないかなぁって思ってさ。」

フローラ「リュカさん・・・あなたがあの高価な指輪を命と引き換えにあっさりとドイツ士官に
     ゆずったこと、そしてそのあと自分の父の形見をあっさりと他人にゆずった行動、
     うまく言えませんけど・・・私なんか感動しました。」
リュカ「そ、そうかな・・・」

フローラ「あなたは私に‘生きる’という意味を教えてくださったような気がします。
     どんな学校の先生でも教えてもらえることのできない貴重な体験をしました。」

リュカ「・・・・」

フローラ「やっぱり私まだ子供でした、夢ばかり見てた世間知らずの女です。
     リュカさん、これはあなたにお返しします・・・」


フローラは‘炎のリング’を私に差し出した。


リュカ「フローラ・・・」
フローラ「大丈夫です、父には言ってありますから。かなり落ち込んでいたようですけど。」


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04/03/05 14:25 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE113


リュカ「ありがとう・・・キミは素敵な子だと思うよ。」
フローラ「うふふ、ほめても何も出ませんよ。」

リュカ「ははは・・・」

フローラ「私そろそろ帰ります、付き合ってくださってありがとうございました。」
リュカ「あ、送っていこうか。」
フローラ「大丈夫ですよ、別荘はすぐ近くですから。」

リュカ「フローラ、お父さんを大事にしてね。」
フローラ「えぇ、もちろんです。」
リュカ「・・・・・」

フローラ「リュカさん。」
リュカ「なに?」


フローラ「ビアンカさんは本当に素敵な女性だと思います、大事にしてあげてくださいね。」

リュカ「え・・・」


705:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:26 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE114


フローラ「うふふ、戦争が終わったらいつか将来、ご結婚なさるんでしょうね。
     ビアンカさんを幸せにしてあげてください。」


リュカ「ちょ、ちょっと待ってよ。ボクたちはそんな・・・」


フローラ「じゃあおやすみなさい。」


リュカ「あ・・・」





この年の4月、ソ連軍戦車隊がベルリン市街に突入した。

いよいよもってナチス・ドイツ軍の敗退が余儀なくされた。
総統アドルフ・ヒトラーは‘水のリング’を手に入れたが、彼の暗殺をもくろむ者が
次々と現れ始めた。

この当時でヒトラー暗殺未遂事件は40件を超える。


706:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:28 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE115


カルバート一家は数日後にサラボナを離れ、故郷フランスへと帰国した。
やがて私はフローラとは二度と会うことはなかった。

戦後何年もあとになってから新聞で読んだが、フローラはフランスの青年実業家と
結婚したそうだ。青年の名はアンディ・R・ジュネ。

幸せな家庭を築いて、夫はのちに名誉市民として表彰されたそうだ。



そして私は依然として母の情報は何もつかめないまま、とりあえずダンカンの宿屋で
世話になることにした。

このサラボナも安全とはいえないが、ビアンカを守るためにも
この街にとどまっておいたほうがいいと思ったのだ。


707:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:29 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE116


だがそれもつかの間、この二ヵ月後にサラボナは戦場と化す。
反ナチス派がドイツ軍に戦いを仕掛けてきたのだ。

結果は反ナチス派が勝利を勝ち取ることになるが、建物はほとんど崩壊し
見るも無残なホロコーストと化す。

この当時で殺されたユダヤ人の数は20万人を超える。


私の将来は どんな未来があるのか どんな運命が待ち受けているのか。 



戦火の中で迎える青春時代 青く燃え上がった炎とともに 



     指輪はじっと時代を見つめ 戦場の炎の調べを唄うようだった。



    第四章  ~青きその青春時代~

          完


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


708:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:31 EO4JwW6H
わくわくさん。

709:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:31 0olQCRLU
hu- tukareta

間に書き込んでくれている人ありがとお。
いよいよ最終章とエピローグのみでs

710:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:32 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE117



   最終章   ~純白の明日~



     1945年  4月



サラボナの街  ダンカンの宿屋にて


ビアンカ「おはようリュカ、今日は起きるの早かったね。」

リュカ「ふぁー・・・おはよ、ダンカンさんは?」
ビアンカ「お父さんは用事があって今朝はやくから街へ出かけたわ。」
リュカ「そう。」



フローラたちが帰国してから早二ヶ月が経とうとしていた。
私は結局この宿屋の仕事を手伝いながら住みこませてもらうことになった。


711:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:33 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE118


リュカ「おー、おいしそうだね。朝ごはん?」

ビアンカ「だめよつまみ食いは、座って待ってなさい。」
リュカ「これちょっとだけちょうだいね。」

ビアンカ「あ、こら!だめだって言ってるのに!」



私とビアンカは、もうこのころにはお互い昔以上に仲も進展していた。
言ってみれば友達以上、恋人未満というやつだ。

彼女のことは好きだが、どうもまだそれ以上の感情を伝えられないというか
微妙な年頃だったのだ。

今はお互いこれでいいのかもしれない。



ビアンカ「さぁリュカ、できたわよ。」

リュカ「あーおなかすいた。」
ビアンカ「まだお客さんも来ないみたいだから先に食べてて。」

リュカ「いただきまーす。」


712:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:35 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE119


ここでの生活にもようやく慣れ始めてはきたが、実は頭の中は母のことで一杯だった。

今ごろどうしてるのだろうか、ちゃんと食べるものは食べているんだろうか。
寝るとこや住む家はちゃんとあるのだろうか・・・と。

だがそんなことを考えながら食事を続けていると・・・


ビアンカ「・・・ねぇリュカ、大事なお話があるんだけど。食べながらでいいから
     聞いてくれる?」
リュカ「なに?・・・もぐもぐ。」

ビアンカ「あのね、もしあなたに再会したら、これ話していいのかどうかずっと悩んで
     いたんだけど・・・」
リュカ「だから何。」

ビアンカ「あなたお母さんを捜しているって言ったよね。」
リュカ「うん・・・ボクたちがまだ小さかったころは死んだなんて聞かされてたけどね。
    実は生きているんだって、父さんが死ぬ間際に言ってたんだ。」

ビアンカ「・・・・・」


713:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:35 50K1Eh7d
(´ー`)y─┛~~

714:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:36 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE120


リュカ「大丈夫だよ。戦争ももうじき終わるし、きっとこの国のどこかにいるさ。」
ビアンカ「あ、あのねリュカ・・・」

リュカ「なんだよ、どうしたの。」


ビアンカ「わ、私・・・あなたのお母さん、実はどこにいるか知ってるの。」

リュカ「えぇ?!」



朝早くからビアンカの口から思いもよらぬ発言を聞いて、一気に目が覚めた。
どうしてそれを早く言わないのかと。



ビアンカ「ごめんなさい、私あの手紙を読んでしまったの・・・」

リュカ「ビ、ビアンカ。母さんの居所を知ってるのかい?教えてよ!」

ビアンカ「で、でもリュカにはつらすぎると思って・・・」
リュカ「手紙って何のことだよ!誰の手紙?!」


715:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:39 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE121


ビアンカ「あなたのお父さんのパパスさんよ、息子のリュカへって書いてあるわ。
     リュカたちがサンタローズの街を去ったあとに、あなたの焼けた家から
     手紙を見つけたの。」
リュカ「ビアンカ、頼むよ。その手紙を読ませて。」
ビアンカ「でも・・・」

リュカ「父さんからの手紙なんだろ?大丈夫だよ、ボクはもうどんな事実でも
    受け止められる覚悟はとっくにできてるんだ。」
ビアンカ「リュカ・・・」
リュカ「お願いだよ、その手紙を見せてくれ。」

ビアンカ「わかったわ・・・。」


ビアンカはそう言うと、焼けかかった一枚の手紙を持ってきた。
私はこの父からの手紙にどんな事実が書いてあろうと、すべて受け止められる覚悟は
できていたつもりだった。
父が死ぬ間際に言い残した言葉は今でも頭に残っている。

だが母がナチス=ドイツ人だからって、それがなんだというのだ。
悪いのは総統ヒトラーなのだ、この国を侵攻しユダヤ人を虐殺する憎きナチスなのだ。
そう言い聞かせ、そう信じてきた。


だがこの手紙は それ以上のことが書いてあった・・・

~~~~~~~~~~~~~~


716:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:39 EO4JwW6H
ヽ(゚∀゚)ノ

717:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:40 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE122


わが息子リュカへ――

リュカよ、この手紙を読んでいるということは、私は何らかの理由で
お前のそばにはいないのだろう。

お前には全てを話すときが来るまで、真実はまだ伏せておいたほうが良いと思ったのだ。
今まで何も話してやれなかったことを許してくれ。


すでに知っているかもしれんが、お前の母マーサは純血のナチス=ドイツ人だ。

もう聞き及んでおろう、悪名高きナチス・ドイツ軍の総統アドルフ・ヒトラーの名を。
そしてお前の母の旧姓はマーサ・ヒトラー。そう、ヒトラーの実の妹なのだ。
つまり私にとってヒトラー総統は義理の兄なのだ。


お前の気持ちはわかっているつもりだ、だがどうかマーサを憎まないでやってくれ。
マーサは国を亡命しようとわがポーランドへ逃げてきたのだ。
兄であるヒトラーが政権を握る前から、マーサはヒトラーとは意見が合わなかったらしい。

マーサと出会ったころは私は当時軍人だった、私たちは敵国同士だったが恋に落ち
ついに駆け落ちまでして二人でポーランドへ逃げた。


718:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:41 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE123


だがナチスはそれで黙ってはいない、すぐに追っ手を差し向けられ
私たちは亡命者として国を追われる身となった。

ヒトラーは私とマーサの結婚が決まったころ、私への暗殺命令を下したらしい。
そのときに暗殺命令を受けたのがゲマ大佐だ。

ゲマは血まなこで私を追っていたようだが、かんじんの情報が不充分だったため
私たちは何とかドイツ士官にも身元がバレずにサンタローズの街に住むことができた。



そして何とかお前を無事出産することができ、ようやく私たちは幸せをつかんだと
心の底から思っていた。

しかしお前を出産させてすぐのことだ、私の留守中にマーサはドイツ兵に身柄を拘束された。
私は赤ん坊のお前を抱いたまま身を隠すのが精一杯で、マーサを救ってやれなかった・・・。

本当にすまない、いいわけがましいが今私が捕まれば殺されるだけだったのだ。


719:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:42 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE124


しかもヤツらの狙いはこの私だけではなかった、私の持つ「指輪」が狙いだったのだ。
この世界には三つの伝説の指輪があるそうだ。

‘炎のリング’‘水のリング’そして‘命のリング’。

この三つのリングを手にした者は、覇王のチカラを手に入れるという言い伝えがある。
確かにどの指輪もかなりの値打ちはあるが、指輪のチカラというのはただの迷信だと思う。
だがお前がもしその指輪を手にしていたら充分気をつけろ。ヒトラーはそれを狙っている。

早めに売ってしまうか捨てるかどちらかにしろ。それは私たちユダヤ人にとって危険な指輪だ。



リュカよ、お前の母マーサはおそらくヒトラー総統のもとにいるはず。
反逆者は殺される運命にあるが、いかにヒトラーといえど身内を死刑にするとは思えん。


720:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:45 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE125


戦争が終わったら、一度母さんに会ってやってくれまいか。
マーサはつらい思いをさせたお前に対して、心から謝罪したいそうだ。
息子によってどんな仕打ちも受けると。

だがこれだけはわかってくれ、リュカ。


私もマーサも、お前を産んだことに関して 少しも後悔などしていなかった。
私もマーサも、お前のことは心から愛していた そしてこれからも。

私たちにとって かけがえのない 愛する家族なのだ。



―――パパス・グランバーグより



~~~~~~~~~~~~~~~~


721:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:46 50K1Eh7d
。・゜・(ノД`)・゜

722:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:46 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE126


この手紙を読んで間もなく、私は食欲がなくなった。

母がヒトラーの妹だと知って急にめまいが起こり、今朝食べたものをすべて吐き出してしまった。
あの悪魔の親玉の妹が母マーサだなんて・・・・

この私の身体にもあの総統ヒトラーの血を受け継いでいると思うと、ますます胸クソ悪くなり
一日中便器とにらめっこをした。

最後には吐くものがなくなって胃液に血がまざっていた。

伝説の三つの指輪のことなどどうでもいいが、じゃあ母は今どこで何をしているというのだ。
ベルリンのナチス本部で、ヒトラーと一緒に次の攻撃目標でも相談してるとでもいうのか。


私はこの日から何を信じていけばいいのかわからなくなり、道を失うことになる。
間もなくサラボナの街は戦場と化す運命にあるが、もう母のことを考えるのはやめた。

目の前にある現実だけ見て生きてゆこう、そうでも考えないかぎり生きていけない。


私はもはや 生きていく理由を探すために 生きているようなものだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

723:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:48 EO4JwW6H
。゚(゚´Д`゚)゜。

724:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:48 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE127


ベルリン  ナチス・ドイツ軍本部 総統室


コンコンコン


ゲッベルス「<誰だ。>」

*「<私です、総統にお話があります。>」

ゲッベルス「<総統、マーサ様が・・・>」
総統「<入れろ。>」

ゲッベルス「<はっ。>」


ガチャリ


ゲッベルス「<どうぞ。>」
マーサ「<失礼します。>」


725:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:49 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE128


ヒトラー総統の前にマーサがやってきた。


総統「<何しに来た。>」

マーサ「<総統、連合軍がノルマンディーに上陸したとのことです。>」
総統「<知っている、それがどうした。>」

マーサ「<ソ連軍の侵攻を止められないそうです、このままだと防衛ラインを
     突破されると思います。>」

総統「<何が言いたい、はっきり言ってみろ。マーサ。>」

マーサ「<兄さん・・・もう降伏なさってください、これ以上戦ったところで・・・>」
総統「<黙れ!指輪を手に入れるまでは絶対に降伏などせんぞ!>」

マーサ「<あんなもののためにいったい何万人のユダヤ人が殺されたと思っているんです!
     窓の外を見てください!今にもクーデターが起こりそうなんですよ!>」

総統「<お前があんな男と駆け落ちなどしなかったらこんな事態にはならなかった!
    身内じゃなかったらお前をとっくに撃ち殺しているところだぞ!>」


726:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:50 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE129


マーサ「<ではいっそのこと殺してください!私はもう耐えられないんです!>」

総統「<ほぅ、お前までもが私を裏切る気か。>」


ヒトラー総統はワルサーPPKを抜いた。

ジャキン!


マーサ「<う、うぅ・・・さぁ殺しなさい!>」

総統「<私にお前を殺すことはできないと思っておろう。違うか?>」
マーサ「<うぅ・・・>」

ゲッベルス「<閣下!>」
総統「<お前は黙ってろ!>」

マーサ「<私の夫を殺しただけでも飽き足らず、何十万人というユダヤ人を虐殺・・・
     どのみちベルリンが落ちるのは時間の問題です・・・兄さんの政権も
     ここまでです・・・。>」


727:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:53 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE130


総統「<私にどうしろと言うのだ、え?>」

マーサ「<無条件降伏を・・>」
総統「<ふざけるな!>」


バシ!


マーサ「<うぐっ・・・!>」

総統「<いいか・・・もう一度そのようなふざけたことを言ってみろ。妹のお前でも
    脳天に風穴を開けて、夫パパスの死体ともども海へ放り込んでやるぞ・・・>」

マーサ「<うぅぅ・・・>」


728:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:57 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE131


総統「<連れ出せ。>」
ゲッペルス「<は、はい。>」


マーサ「<に、兄さん・・・あなたは自分が殺されでもしないかぎり、戦争をやめようとは
     しないのですね・・・>」

総統「<だったらどうしたというのだ、お前が私を殺すか?>」

マーサ「<たとえ血を分けた兄妹といえど、そうするしかないのなら・・・>」

総統「<フン、笑わせるな。・・・おい、早く妹を連れ出せ。>」
ゲッベルス「<はい。>」


マーサ「<うぅぅ・・・>」

ゲッペルス「<マーサ様、こちらへ・・>」


マーサ「(兄さん・・・やはり私があなたを殺すしかないのね・・・)」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


729:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:58 EO4JwW6H
(((( ;゚Д゚)))

730:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:59 50K1Eh7d
( ̄○ ̄;)

731:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:01 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE132


サラボナの街  ダンカンの宿屋にて


ビアンカ「リュカ!リュカ起きて!」

リュカ「う~ん・・・」
ビアンカ「さっさと起きなさい!大変よ!」

リュカ「な、なんだどうしたの?」

ビアンカ「反ナチス派の残党がこの街に逃げ込んだらしいの!ドイツ軍が戦車で
     この街へ向かってるらしいわ!」

リュカ「なんだって?!」



この日、東の地区で激戦を繰り広げていた反ナチス派の連中がサラボナの街へ
逃げ込んできた。ドイツ軍は装甲車まで用意してこの街を砲撃してきた。

戦争ならよそでやってくれと言いたいが、そうもいかないのが今の時代だ。

私たちには武器も戦うすべも何もなかった。
ただ生き残るということだけで精一杯だったのだ。


732:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:02 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE133


ビアンカ「早く逃げるのよ!建物の中は危険だわ!」
リュカ「わ、わかった!」

ダンカン「ビアンカ!私のサイフを知らんか!」

ビアンカ「お父さん!今はお金より逃げることが先よ!」
ダンカン「し、しかし金は少しくらい持っておかないと・・」



だがドイツ軍の攻撃はさっそく開始された。

ズガァァンンッ!! ――ッドォォンン!!



ビアンカ「きゃああ!!」
リュカ「ビアンカ!こっちだ!早く!」

ダンカン「うひゃああああ!!」


~~~~~~~~~~~~~


733:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:03 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE134


商店街大通り



反ナチス派A「<死ねやあああああ!!>」


ズダダダダダダ!!


ドイツ兵P「<うああっ!>」

ジャミ中尉「<こ、この野郎!>」


ダダダダダダ!!


反ナチス派A「<うおぁぁっ!>」


734:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:04 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE135


ゴンズ中尉「<おいジャミ!残党はまだ残ってるのか!>」
ジャミ中尉「<わからん!それほど残ってはないと思うが・・・!>」


反ナチス派B「<バカめ!>」


ゴンズ中尉「<ハッ!危ない!ジャミ!>」
ジャミ中尉「<!!>」


ガツン!


ジャミ中尉「<うあああっ・・・!>」



~~~~~~~~~~~~~~~


735:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:07 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE136


商店街裏通り


リュカ「大通りは危険だ、銃撃戦の流れ弾に当たってしまうよ。」

ビアンカ「街の人たちは無事に逃げられたのかしら・・・」
ダンカン「わからん、もうこの街のどこも安全な場所などない。」

リュカ「しばらくここに隠れていよう、ドイツ兵もそれほど残ってはない。
    もしかしたら反ナチス派が勝つかもしれないよ。」

ビアンカ「そうだといいけど・・・」



この日の戦いでたったの半日で建物は崩壊され、ドイツ兵はもちろん
街の住人も何人か犠牲者が出た。

だが反ナチス派は勇敢にも最後まで戦いぬき、ついにドイツ軍の装甲車まで破壊した。

彼らの戦いは火炎ビンやわずかな機関銃だけだった。
だが作戦が良かったのだろうか、生き残ったドイツ兵たちは囚われ、街の広場に全員
集められて見せしめの処刑が行われた。

~~~~~~~~~~~~~~~~


736:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:08 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE137


公園広場


ビアンカ「リュカ、もう安全よ。」

リュカ「ビアンカ、あそこ見てみなよ。」
ビアンカ「え?」

ダンカン「ドイツ野郎が処刑されるようだな、自業自得だ。」



反ナチス派「<おい、何か言ったらどうだ。クソ野郎。>」

ジャミ中尉「<フン・・・>」
反ナチス派「<何も言うことはなしか。>」


ダーン!


ジャミ中尉「<がっ・・・>」


ドタリ


737:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:10 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE138


反ナチス派「<お前はどうだ?このユダヤ人殺しが。>」

ゴンズ中尉「<さっさと殺せ。>」
反ナチス派「<言われるまでもねえよ、ブタ野郎。>」


ダーン!


ゴンズ中尉「<うぐっ・・・>」


ドタリ




リュカ「・・・・・」

ビアンカ「ね、ねぇリュカ。もう行きましょ。」
リュカ「・・・・・」


738:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:11 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE139


ビアンカ「リュカ、もう行きましょうってば。」

リュカ「ははは、脳みそぶちまけてら。いい気味だ。」
ビアンカ「え・・・」
リュカ「あっはっは、ざまぁみろってんだ。ドイツ野郎め。」

ビアンカ「や、やめてリュカ。何を言ってんのよ・・・」


リュカ「あーーーーっはっはっはっは!!」



私はユダヤ人をさんざん虐殺してきたジャミ中尉とゴンズ中尉の最期を見届けた。

不思議と何の感動も安心感も得られなかった。
ただ胸が悪くなるだけだった、もう笑うしかなかった。

あの悪魔どもが死んだというのに、やってることはやつらと結局変わらなかった。
銃を頭に突きつけて引き金を引く、一瞬のうちにバタリバタリと倒れていくその様は
幼いころ目に焼きついた虐殺と何ら変わりはなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~


739:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:12 50K1Eh7d
(;´Д`)

740:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:14 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE140



―――その夜



ダンカンの宿屋にて


ダンカン「いやー、ハデに崩壊されたけどまだ何とか住めるようだ。よかったよかった。」

ビアンカ「ひどいわね・・・水は出るかしら。」
ダンカン「出るみたいだぞ、風呂もまだ使えそうだ。ビアンカ先に入ったらどうだ。」

ビアンカ「そうね。ねぇリュカ、シャワーでもあびたら?」
リュカ「いいよボクは・・・あとで。」

ビアンカ「リュカ・・・」

ダンカン「どうしたんだリュカのやつ、なんだか元気ないな。」
ビアンカ「・・・・・」


~~~~~~~~~~~~


741:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:15 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE141


宿屋 二階


コンコンコン


*「ねぇリュカ。私だけど、入るわよ。」


ガチャリ


ビアンカ「あ、横になってたの。もう寝るとこ?」

リュカ「べつに・・・・」
ビアンカ「・・・・・」

リュカ「何か用かい。」
ビアンカ「い、いえ・・・なんか元気なさそうだから。」
リュカ「そんなことないよ。」

ビアンカ「リュカ、まだ寝ないのならちょっと散歩にでも行かない?今日はめずらしく
     星が見えるわよ。」
リュカ「今日は晴れてたんだから夜に星くらい見えて当たり前じゃんか。」

ビアンカ「・・・・・」

742:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:17 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE142


リュカ「悪いけど今日は疲れてるんだ、部屋にいるよ。」
ビアンカ「そう・・・」
リュカ「ビアンカ、火もってる?」

ビアンカ「え?・・・あぁ、マッチならそこのテーブルにあるけど。」
リュカ「ちょっともらうよ。」


シュボッ  ボボボ・・・


ビアンカ「ちょ、ちょっとあなたタバコなんて吸うの?」

リュカ「ヘンリーからもらったタバコがまだ一箱あまってたんだ。」
ビアンカ「ヘンリー?」
リュカ「なんでもないよ、キミも吸うかい?」

ビアンカ「い、いらないわよ。」



この夜はなぜか私は気分がイラつき、何もする気になれなかった。
そんな私を見てビアンカはさらに話しかける。



743:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:18 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE143


ビアンカ「フローラさんってきれいな子だったよね、すごく上品で気品があって・・・
     私とは大違いよね。」
リュカ「・・・・・」

ビアンカ「リュカってああいう子が好き?」
リュカ「・・・・・」
ビアンカ「ねぇ。」

リュカ「うるさいな、ボク疲れてるんだよ。」

ビアンカ「・・・・リュカ、いい加減にスネるのやめなさいよ。」
リュカ「なに?どうしてボクがスネるんだよ。」

ビアンカ「あなたが考えてることくらいわかるわよ、昼間処刑されたドイツ士官のことで
     頭がいっぱいなんでしょ。」

リュカ「うるさい!あんなクソ野郎は死んで当然なんだよ!」
ビアンカ「じゃあどうしていつまでもスネてんのよ!あんた男でしょ!」

リュカ「ビアンカ!あの処刑を見て何とも思わなかったのか!あいつらがどれだけ罪もない
    人たちを虐殺したか知ってるだろ!」

ビアンカ「知ってるわよ!」


744:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:19 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE144


リュカ「おかしいんだよ・・・あの処刑を見てボクは何の感動もなく何の喜びも得られなかった・・
    ただ気分が悪くなるだけだったんだよ・・・」

ビアンカ「リュカ・・・それが正常の人間なのよ、あなたは間違ってないわ。」

リュカ「正常だって?こんなのマトモじゃない!ボクがこの数年でキミよりもどれだけ
    地獄を見てきたか知っているのか!」
ビアンカ「わ、わかってるわよ・・・」

リュカ「いーやわかってない、この際だから笑える話を聞かせてあげるよ。」
ビアンカ「や、やめて。私が悪かったから・・・」

リュカ「ボクがアウシュヴィッツ収容所から脱走したのは知ってるだろ、その道中にある川で
    一人のユダヤ人の女性を見かけたんだ。」
ビアンカ「やめて・・・!」

リュカ「彼女いったい川で何をしていたと思う?なんと自分の赤ん坊を生きたまま川に
    沈めていたんだよ。」

ビアンカ「いや!もうやめてったら!」


745:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:21 0olQCRLU

リュカ「なぜこんなことしてるんだろうとボクも思ったよ、でも次の瞬間その理由がわかった。」
ビアンカ「うぅ・・・」

リュカ「ビアンカ!その理由をボクに聞いてみろ!聞け!」

ビアンカ「リュ、リュカ・・・」


リュカ「女性の後頭部にマシンガンをつきつけたドイツ兵がいたからだよ!赤ん坊を沈めたあと
    彼女も脳天ブチ抜かれて自分も川に落とされたんだよ!!」


ビアンカ「うぅ・・・」


リュカ「わかるか!あのナチどもが処刑されたってのに気分がよくなるどころか、
    ますますイラついてくるボクの気持ちが!」


ビアンカ「お願いだからやめて!」


746:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:22 0olQCRLU


リュカ「必死で捜していた自分の母親は実は悪魔の妹だったと知らされた気持ちがわかるか!」



ビアンカ「もうやめてったら!必死で生きようとしてるのはあなただけじゃないのよ!!」


バタン!


ビアンカは部屋を出ていってしまった。



リュカ「・・・・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~


ビアンカ「うぅ・・・・」

.

747:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:23 EO4JwW6H
(゚Д゚;≡;゚д゚)

748:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:24 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE145


ビアンカに八つ当たりをしてただけなのはわかっていたつもりだ。

だがどうしようもなかった。
どこにこの怒りをぶつけたらいいのかわからず、このやりきれない気持ちを押さえられなかった。

私には戦うすべも武器もない、ただ生きていくことが精一杯だ。
確かにユダヤ人である私のほうが、ビアンカの10倍は地獄を味わってきたかもしれない。

だが彼女のほうがよっぽど‘生きる’という意味を理解していた。

私は「死」というものの恐怖感から「生」を守り続けてきただけだ。
それにくらべてビアンカの場合は、「人生」を守るための「生」だった。

うまく言えないが、これが私とビアンカの決定的な違いだった。


だが人間はそれほど強くはない、まだ10代の私にとって恐怖に立ち向かえるほど
勇気もないし力もない。


人生の半分も生きていない私にとって、‘戦争’というものはあまりにも巨大な敵すぎた。


遠くのほうでかすかに鳴り響く砲撃の音を耳にしながら、私はベッドに横たわって
目を閉じていると、やがてビアンカが再び部屋に戻ってきた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~


749:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:26 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE146


コンコン・・・・


*「ねぇリュカ・・・起きてる?」

リュカ「・・・・なんだい。」

*「入るね・・・」


ガチャリ


ビアンカ「・・・・・」



ビアンカは服を着替えて部屋へ戻ってきた。



リュカ「なんだい、今度は夜這いにきたのかい。」

ビアンカ「リュカ、あなたっていつまでたっても子供ね・・・」
リュカ「・・・・」


750:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:27 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE147


服を着替えてきたビアンカの目は、涙をふきとったあとがうっすらと見えた。
今まで別室で泣いていたようだ。

それを見た私は急に自分がなさけなくなり、こっちまで泣けてくる思いだった。


リュカ「ビアンカ、さっきはゴメンね・・・」
ビアンカ「うぅん、いいの・・・」

リュカ「わかっているんだけど、どうしようもないんだ・・・」

ビアンカ「リュカ、人はそれほど強くはないのよ。私だって泣くし、あなただって泣くの。
     でもそれが何だっていうの?」

リュカ「・・・・・」

ビアンカ「戦争があろうとなかろうと、人は誰だって必死に生きていこうとしてるのよ・・・」

リュカ「ビアンカ・・・・」



やがてビアンカはみつあみをほどき、ベッドに横たわっていた私の隣へ来た。
彼女は私の隣で横たわりながら、そっと話しかけてきた。


751:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:28 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE148


ビアンカ「リュカ、今のあなたの気持ちが私はわかるとはもう言わないわ。
     でもあなただって私の気持ちがわかる?」


リュカ「・・・・・」


ビアンカ「愛する人のために生きていこうとする人もいるのよ、どんな家族だって
     愛があったからこそ生まれた家族なんだし・・・」



リュカ「ビアンカ・・・」



ビアンカ「あなたのお母さんだって、好きでドイツ人として生まれたわけじゃないよ・・・」



リュカ「わかったよ、もういい・・・もういいよ・・・」


752:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:30 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE149


戦火の中で迎える私の少年時代、やがて迎える青年時代。

震えるビアンカの手を握りながら 背中にそっと手をまわしながら私は思う。



    ‘愛する者のために生きていこう’と。



戦場の時代でビアンカを抱いたそのぬくもりは、今でも私の心に焼きついている。


破壊の時代に生まれた私たちの愛 いつかきっとくる純白の明日を祈ることにした。




やがてこの年、1945年4月30日、ナチス・ドイツ軍 総統アドルフ・ヒトラー自殺。

指に‘水のリング’をはめたまま、頭部を撃ちぬいて死亡した。
母マーサが持っていたはずの‘命のリング’は発見されなかったそうだ。


753:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:31 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE150


歴史上ヒトラーは自殺とあるが、本当のところは身内によって殺害されたという説もある。
私はなぜかこの事件の裏に、母マーサが関わっているような気がした。


ちなみに父パパスを殺害したゲマ大佐は、ついに指輪を見つけることなく
1945年4月31日に味方のドイツ将校によって殺害される。

ソ連軍との激戦を繰り広げていたさなか、その指揮を執っていた最中に
背後からあっさりと頭部を撃ち抜かれたという。動機は不明。

ゲマを殺したドイツ将校の名は、ヨシュア・ローゼンヴェルグ大尉。
だがその殺害直後、彼もソ連軍の砲撃によって地に伏す。(第三章のエピソードより)



同年5月2日、ベルリン陥落 第三帝国の崩壊。


ナチス・ドイツ軍は完全に敗退し、ついに5月8日ドイツは無条件降伏。


――第二次世界大戦終結である。

.


754:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:33 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE151


ドイツが無条件降伏宣言をしたこの2年後、ビアンカが妊娠した。

結婚式を挙げたかったが、故郷サンタローズはまだ廃墟のままだったので
子供はサラボナの街で出産させた。

産まれた子供は双子の兄妹だった。
男の子のほうはティミー・グランバーグ、女の子はポピー・グランバーグと名づけた。

出産のちビアンカの体力が回復してから、私たちは赤ん坊を連れて
故郷サンタローズの街へ帰ることにした。



だがその道中、ついに私にとって最後の運命の出会いが待ち受けていた。
なんとソ連軍が捕らえたドイツ軍の捕虜の中に、母マーサを見つけ出した。


母は国境近くで50名ほどのドイツ兵とともにロシアの兵に捕らえられ、
ソ連の収容所へ移送されようとしていたところだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~


755:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:34 EO4JwW6H
Σ(゚Д゚)<カアチャン!?

756:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:35 50K1Eh7d
∈(・ω・)∋

757:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:35 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE152


ポーランド 国境近くにて


リュカ「ねぇビアンカ、そろそろ代わってくれないかな。」

ビアンカ「何言ってんのよ、あなたパパでしょ。」
リュカ「でも二人も抱いてるから重くて・・・」

ティミー「バブバブ・・・」
ポピー「オギャー」



私たちが子供を抱いて、歩いてサンタローズの街へ戻っていたときのこと。



ダンカン「かわいいなあ、二人とも。おとうさんとおかあさんにそっくりだ。」
リュカ「そ、そうかな・・」

ビアンカ「サンタローズまではまだかなり距離があるわ、このぶんじゃあと一週間は
     かかりそうね。」

リュカ「えぇ?一週間も赤ちゃんを抱いて歩くの?」
ビアンカ「ほらほら、早くしないと日が暮れるわよ。パパ。」


758:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:37 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE153


リュカ「あーあ、もうやんなっちゃうな・・・ん?」
ビアンカ「どうしたの?」

リュカ「ビアンカ、あれなんだろ。」
ビアンカ「え?」


そこには鉄条網で囲まれた捕虜用のキャンプがあった。


ダンカン「あぁ、ソ連軍に捕まったドイツ兵の残党だよ。」
リュカ「・・・・・」

~~~~~~~~~~

ソ連兵A「{持ち物を全て出せ。}」

マーサ「{これで全部です・・・}」
ソ連兵A「{なんだこの指輪は?}」

マーサ「そ、それは・・・!」

ソ連兵A「{おい、この指輪は没収しておけ。}」
ソ連兵B「{了解。}」

マーサ「うぅ・・・・」

~~~~~~~~~~


759:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:38 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE154


そこにいた50名ほどのドイツ兵の中に、たった一人だけ女性の捕虜がいた。


ビアンカ「女の人までいる・・・」
ダンカン「怖いねぇ、女のナチか。」

リュカ「・・・・・」

ビアンカ「リュカ、早く行こうよ。」


リュカ「ま、まって・・・まさかあれ・・・あの人・・・」


ビアンカ「どうしたの?」


私は母の顔は知らない、だが不思議なことに私はその女性が母マーサであることが
なぜかひとめ見てわかった。


760:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:39 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE155


リュカ「ま、まさかそんな・・・そんなバカな・・・!」

ビアンカ「ど、どうしたのリュカ!」
リュカ「か、母さん!」



私は鉄条網の向こう側にいる母に向かって叫んだ。



リュカ「か、母さん!あなたが母さんだよね!そうでしょ?!」

ソ連兵A「{おい、なんだあいつは。}」
ソ連兵B「{なんかこっちに向かって叫んでるぞ。・・・おい女、お前の知り合いか?}」
マーサ「え・・・」

リュカ「母さん!ボクだよ!リュカだよ!」

マーサ「・・・!(リュ、リュカ・・・!)」



まさかこんな形で出会うとは思わなかった。
あまりにも残酷な再会、そして悲劇の運命だった。


761:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:40 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE156


リュカ「ね、ねぇ母さん!なんとか言ってよ!ほ、ほら見てこの子!ボクの子だよ!
    ねえ!母さん!」

マーサ「う、うぅ・・・!」



母は必死に泣きそうなのをこらえながら、こっちを見ようとしない。



ソ連兵A「{おい女、あいつはお前の身内か?}」
マーサ「{い、いえ・・・}」



鉄条網の向こう側にむかって叫ぶ私を、母は無視するだけだった。



リュカ「ど、どうしてこんなとこに・・・待って母さん、ボクが何とかする。」

マーサ「(だ、だめ・・・お願いだから向こうへ行って・・・)」


762:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:42 0olQCRLU

ソ連兵A「{おいお前、何をしている。}」

リュカ「すみません、この人はボクの母なんです。お、お願いです、どうか助けてあげて
    ください。このとうりです!」

ソ連兵A「{向こうへいけ、このドイツ人たちはソ連へ移送される。}」

リュカ「お願いです!この人を助けてください!お願いします!」



マーサ「(う、うぅ・・・リュカ・・・お願いだから行って・・・)」



言葉の通じないソ連兵に、私は必死で無駄な説得を続けた。
頭を地につけて土下座しながら私は必死に頼んだ、彼女を助けてあげてくれと。


763:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:43 0olQCRLU


だが鉄条網の向こうにいる母は、涙を流しながら私に言った。



「私はあなたの母などではない 赤の他人だ」と。



それでも私は叫んだ、叫び続けた。


「ようやくあなたを母さんと呼べるようになったんだ。」と。
「あなたの孫の顔を一度だけでもいいから見て。」と。


私は声が枯れるまで鉄条網の向こう側にいる母マーサにむかって叫び続けた。



母は涙ながらに訴える。「あなたなんて知りません 人違いです。」



だが私にはこう聞こえる。「本当にごめんなさい 幸せになってね。」


764:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:44 0olQCRLU

やがて母はソ連の捕虜収容所へ移送され、このときを最後に私は二度と母とは会えなかった。

私がこの世に生まれて 最初で最後の 母との会話だった。



そして1950年 母マーサはソ連捕虜収容所で銃殺されたとのこと。



遺体は焼却されたが、指輪と一緒に遺骨の一部を回収させてもらい、故郷サンタローズへ持ち帰る。
今私の手元にあるのは父の形見‘炎のリング’そして母の形見‘命のリング’。


私とビアンカの結婚式にはこの指輪は使わなかった。
これはもともと両親のもの、いつか父と母のお墓へ戻すと決めていた。



ようやく私たちがサンタローズの街へたどり着いたのは、これより一週間後のことだった。
そしてこの6年後、私とビアンカのささやかな結婚式を挙げることとなる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


765:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:46 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE157



    1953年  春



サンタローズの街


ティミー「おとうさーん、おかあさーん。早くしないと式はじまっちゃうよー。」

ポピー「まったくおそいんだから、二人とも。」


リュカ「ご、ごめんごめん。あ、ビアンカ、ショール持った?」
ビアンカ「え、えっと・・・あるわ!大丈夫!」

リュカ「じゃ急ごう!式がはじまっちゃうよ!」

ポピー「おとうさんサイフ持った?」
リュカ「え、あ・・・しまった!忘れてた!」
ビアンカ「早く早く!急いで持ってきて!」

リュカ「わ、わかった!」


766:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:47 0olQCRLU

ティミー「あーあ、やんなっちゃうよなー。」
ポピー「ほんと、まったくグズなんだから。」

ティミー「でもさ、なんで結婚する前にぼくたち生まれたんだろ。」
ポピー「ばーか、あれよあれ。できちゃった結婚ってやつよ。」

ティミー「そっかぁー、やることは早いんだね二人とも。」

ポピー「ほんとよね、ふだんはグズなくせして。」


ビアンカ「な、なんてこと言うの二人とも!どこでそんな言葉覚えてきたの!」


ティミー「あはは!逃げろ逃げろ!」
ポピー「きゃはははーーー!」


ビアンカ「こら!待ちなさい!」


767:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:48 0olQCRLU


私たちの未来に ようやく春がおとずれようとしていたこの年。


希望に満ちた純白の明日は 矢のように年月は経ち 60年の歳月が流れた。


たった一つのかけがえのない 家族というものを築いて・・・・




    最終章   ~純白の明日~

         完


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


768:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:49 50K1Eh7d
。・゜・(ノД`)・゜ マーサ

769:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:49 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE158    ~エピローグ~



――そして現在へ戻る。



     2004年  7月



ポーランド 南の田舎町の墓地にて


老人は孫を前に語り終えると、一息ついた。


リュカ「ふぅ・・・・」

アダム「・・・・おじいちゃん、つらい思いをしてきたんだね。」
リュカ「うむ、でも今は違うぞ。かわいい孫もいるし、息子たちもいる。」

アダム「うん。」

リュカ「アダム、お前はお父さんとお母さんは好きか?」
アダム「当たり前じゃんか。」
リュカ「そうか、それはよかった。」


770:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:51 EO4JwW6H
長編乙ですた。
マーサー・・・せつねぇ・・・・

771:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:51 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE159


アダム「あ、でも・・・ときどき学校のテストの点が悪かったりするとすごく怒るよ。
    そういうときは嫌いだな。」

リュカ「はっはっは、そういうときもあるだろうな。」



やがて息子と娘がようやく墓地へやってきた。
息子は車イスに乗った老婆を押していた。



ティミー「いやー、ようやく着いたか。」

アダム「おそいよー、何してたんだよティミー伯父さん。」
ティミー「ははは、すまんすまん。駐車場が込んでたもんでな。」

ポピー「アダム、いい子にしてた?」
アダム「あ、ママ。」


772:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:52 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE160


ポピー「ちゃんとおじいちゃんのお手伝いした?」
アダム「したよ、ちゃんとお墓にお花もそえたよ。」

ビアンカ「アダムや、ごほうびにお菓子を買ってきたよ。」

アダム「やったー!おばあちゃんありがとう!」
ビアンカ「あんまり食べ過ぎちゃだめですよ、ママにしかられるわよ。」

アダム「はーい。・・・ところでおばあちゃん足の具合どう?」

ビアンカ「大丈夫よ、今日は天気もいいから具合がいいわ。」



グランバーグ一家はこのとき一ヶ月ぶりに再会した。
ビアンカは足の具合が悪く、車イスのまま墓参りにきていた。

大人になったティミーとポピーが墓参りをしている間、
やがて老婆のビアンカは老人のリュカのそばへやってきた。


773:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:54 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE161


ビアンカ「あなた、指輪は・・・」

リュカ「あぁ、お墓の中に埋めたよ。」
ビアンカ「そう・・・」
リュカ「もう私たちには必要ないからな。」

ビアンカ「あれからもう60年になるのね・・・」
リュカ「そうだな、時代も変わった・・・」

ビアンカ「そうですね、あの時代のときよりもはるかに文明が栄えましたねぇ。」
リュカ「うむ、変わりすぎてワシらではとうてい追いつかん。」

ビアンカ「でも、いつまでも変わらないものもあるわ。」

リュカ「ほぅ、なんだね。」


ビアンカ「家族よ、私たち家族の絆があるわ。」



リュカ「そうだな・・・家族か・・・」



暑い日々が続くポーランドの7月、空は雲ひとつない晴々とした青空だった。


774:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:55 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE162


ティミー「さぁ、お墓参りも終わったしそろそろ戻ろう。」

アダム「伯父さん、今日は遊園地に連れてってくれるんだよね。」
ポピー「あら何よ、そんな約束したの?」
ティミー「ははは、そういやすっかり忘れてたなぁ。」

アダム「なんだよ、約束したじゃないかー。」

ティミー「わかったわかった、とりあえず下山しよう。・・・お母さん、車イス押してあげるよ。」
リュカ「あぁ待ってくれ、ばあさんは下まで私が押していく。」

ビアンカ「あら、どういう風の吹き回しかしら。」
リュカ「お前の車イスを押すぐらいの力はまだ残っている、心配せんでもいい。」

ビアンカ「うふふ、はりきりすぎるとまたギックリ腰になりますよ、おじいさん。」


リュカ「バカにするな、こう見えても私は・・・」


ポピー「はいはい、お二人さん。もうそのくらいにしてそろそろ行きましょう。」


アダム「ねぇ早く早く!遊園地いこうよ!」


775:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:56 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE163


すさんだ時代を生き延びてきたが、それでも私たちは一つの家族を築くことができた。
だがどのような時代でも、人はやはり生きていくことを誇りに持つだろう。


私たちにとって名のある高価な指輪なんていらない。
家族という名の絆のリングがある。



生きていくことが大事、家族というものが宝物。
私にとっては これだけで充分生きる理由が成り立っている。



残りわずかな余生 されどかけがえのない人生。
人は遅かれ早かれ いずれ死を迎える。


776:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:57 0olQCRLU



だが人生の出会いの中で その愛が芽生えれば そこに新しい家族ができよう。



命に終わりはあっても 家族に終わりはない。



それは希望に満ちた 終わりなき未来であろう。







       戦場の花嫁

         完




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


777:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 15:58 EO4JwW6H
ってまだエピがあったーーーー!
すんませんすんません・・・・

改めて乙でした。
最後ほのぼの家族になれてよかたー・・・。・゚・(ノ∀`)・゚・。

778:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:58 0olQCRLU
      <おことわり>


本作で登場した人物、ナチス=ドイツ軍のアドルフ・ヒトラー及びゲッベルス大臣。

この二人以外はドラゴンクエスト5に登場するキャラクターを引用したものです。
実在する人物とは何の関係もありません。

物語のストーリーも架空でありフィクションです。


また、舞台となったポーランドにおいても、ワルシャワをモデルとした
サンタローズという架空の街です。その他のサラボナなどもドラゴンクエスト5から
引用したものです。そのような街は存在しません。


ただしアウシュヴィッツ収容所は実在したものです。

ちなみにこのアウシュヴィッツ収容所の「ガス室」については
当時の関係者の証言だけで、実際にそのような毒ガスを装備したガス室が
あったかどうかは未確認だそうです。

ユダヤ人大量虐殺においても、本作で出したような殺人シーンはあくまで架空の話です。
実際に起こった虐殺はこのようなものではなく、もっとひどいものだったそうです。


第二次世界大戦によって、たくさんの犠牲者を出した全ての人々にご冥福を祈ります。


779:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:59 0olQCRLU
    戦場の花嫁  <登場人物>


     リュカ・グランバーグ
     ビアンカ・アンドリュース

     パパス・グランバーグ

     ティミー・グランバーグ
     ポピー・グランバーグ
     アダム・グランバーグ

     ヘンリー・ラインハット
     マリア・ローゼンヴェルグ

     フローラ・カルバート
     ルドマン・カルバート
     ダンカン・アンドリュース
     サンチョ・ゴブリン

       ゲマ大佐
       ジャミ中尉
       ゴンズ中尉

   ヨシュア・ローゼンヴェルグ大尉
     マーサ・グランバーグ


      アドルフ・ヒトラー
      ゲッベルス大臣


780:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 16:00 50K1Eh7d
GJでした。長編でしたが楽しませて読ませていただきました。



ただ主人公の性格が変わりすぎたのはビックリでした。

781:鬼畜兄貴@あとがき ◆6VG93XdSOM
04/03/05 16:01 0olQCRLU
現代版の「指輪物語」があるとしたら、ドラクエの世界で
それが生かせないだろうかと思って書きました。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」とはまるっきり違いましたが。

過激な暴力シーンが多いところから、「シンドラーのリスト」や
「戦場のピアニスト」のほうがかえって近い雰囲気を持っているのかもしれません。

ドラゴンクエスト5のストーリーの流れに乗せながら、第二次世界大戦を舞台に
描くというのは、難しいようでそうでもなかったように思えます。

なぜならドラクエ5はもともとこの戦争に近いようなテーマを感じる気がしました。

今回のテーマは‘家族’と‘生きる’といったとこですが、ドラクエ5も
同じようなテーマだと思います。

笑えるようなシーンはほとんどなく、全編にかけてシリアスものに挑戦しましたが
こういう話に少しでも共感してくれる人がいたらいいなと思います。

しかし決していい話だとは思ってませんし、戦場の時代に生きたこともない自分は
戦争というものがどういうものかわかってないし、戦争について語れるほど知識もありません。

自分としては歴史の勉強が少しできただけでも、書いた価値があったと思ってます。


読んでくださったかたがた ありがとうございました。 書き込みを協力してくれた
人たちに感謝です。


782:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 16:05 0olQCRLU
オワリ

783:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 16:07 50K1Eh7d
>>781
乙でした。今までにないパターンだったし大変興味深かったです。
最後はほのぼの感でえがった。
ヽ(´ー`)ノ

784:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 17:41 vi09853h
この話で、DQのキャラを使う必然性って何?

785:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/05 20:51 Srp3jQVm
>781
 なるほど、この内容は萌えスレ向きじゃないでしょうね。
大作、乙でした。

786:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 22:44 EcQ65yql
>>784
DQ5好きの想いが高じて自分にこの話を書かせるに至った、ということではないでしょうか

787:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 03:16 D/8AtCnK
>>784
俺も途中まではそう思っていた。
だが、最後まで見てたらそんなのどうでも良くなってきた。

最後に、この言葉をKさんに。
「お疲れさま、ありがとう」

788:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 07:37 teDF/9o2
萌えとかは関係無しに、非常に良かったよ。こんなのは初めて見た。
DQ5のストーリーとナチスの話を重ね合わせるという離れ技にびっくりした。
話の流れや登場人物の配役に違和感が無いのにもびっくり。

Kさん、長編お疲れ様でした。ありがとう!

789:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 08:28 SATgEZ0X
>ビアンカ「大きな声で‘ハイル ヒトラー’って言うの。やってごらん。」
>リュカ「ハイル ヒトラー!」

ここだけは萌えた(w
ナチヲタ大喜び

790:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 15:45 gwW1VmuF
>>784
強いて言えばDQ5は家族がテーマの一つだからじゃないかね。

#ヒトラーはイブールでもよかったのではとも思う。

791:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 20:03 xM9SSlEO
Kさん、昨日、リアルタイムで読ませていただいてました!
なぜかアク禁になっていた為、支援できず(泣)申し訳無い。
現代版?DQ5でしたね!
感動しました(゚∀゚)

792:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/06 23:18 YxgcfasV
すごくよかったよ(・∀・)イイ!!

793: ◆qeFFDQ/roc
04/03/09 01:44 kDnZnGg5
>ラトームさん

やっぱダメだったかー( ̄ε ̄)>サバイバ
まあシャレなんで怖がらんでくださいw

794:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/12 02:36 PCtRZqoE
保守

795:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/12 22:45 ps/ew6Hg
>>793
 おひさしぶりです。
 あれを読んで怖がらない人は少数派では (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 
今度は怖くないものをきぼん……。

796:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/16 07:40 2Feyd2wC
3日に1レスの人が来ない…

797:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/16 19:07 Vcb/N9aJ
あげ

798:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/16 19:15 ryVyQn+G
>>796
叫んでみよう。きっと来てくれるはずさ。

(ノ゚Д゚)ノ カコイイホシュマッテルヨー

799:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/16 21:51 l1J/S6wN
応用編

たぶん七日バージョンでくるんだと思うね

800:K ◆6VG93XdSOM
04/03/17 02:29 yRNWMHle
sinnsurega tattara atarasiinokaite nokketemo iidarooka

801:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/17 19:59 iJbv6I1o
 ひっさびさに千一夜サイト、更新しました。
 容量増加依頼がやっと通りましたよー。何か手違いがあったそうで、料金サービス
してもらいましたヽ(´∀`)ノ ワーイ
 アグスレ、千一夜前スレ、恋するFF小説スレ、本当はクリアリが好きスレからで
合計29本。今までの累計は518本になったようです。目標までの折り返しに達し
ましたね。あと何年くらいで目標に達するのやら。
URLリンク(www3.to)(ブックマークはこのページにお願いします)

 保守人な方を初めとして、皆様いつもありがとうございます~。

>>800 次回作ではもう少し空白行を少なくしてレス数を減らしていただいた方が
読み易いのですが…。upするのも大変でしょうし。こう感じたのは私だけかな?
 作品は楽しみにお待ちしていますです。

 もしかして801ゲト?

802:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/17 20:10 iJbv6I1o
あと、ログも更新しています。
エロパロ板が人大杉でログを拾いにくくなっていたりするのですが
どうしましょう、と思いつつ。
宿題はまだ終わっていないので、しばし更新モードになる予定…です。
いつも予定は未定ですみませんが。

803:雫夜 ◆sizukTVGK.
04/03/17 21:57 roHvCkEQ
>ラトームさん
更新乙(*^д゚)bです。

SSの作者名なのですが、FFT『ライオネルの小唄』は雫夜ではなく、鈴さん作です。
訂正お願いします。

804:昼寝士 ◆BIdtzyaiEw
04/03/17 22:35 YBuatuEL
更新お疲れさまでした。そろそろこちらも溜まってるログ整理を再開しようと思います。

ところで、サイトの方でテンプレ作り直しの話が出ていましたが、特に作り直す
必要はないように思いますが……

805:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/17 23:17 iJbv6I1o
>>803
 訂正しておきました。スミマセン

>>804
 注意書き部分の訂正がちょっと気になっているのです。フォルダ名には
日本語を使わないでください程度かな。
 テンプレ自体も、検索ロボットよけタグを入れようかと思ってますが。
訂正といっても其の程度です。
 ただ、長篇テンプレ含めて一気にダウンロードできた方が良いだろうと
思うと、作り直した方が便利なのかな、と。

806:K ◆6VG93XdSOM
04/03/18 01:53 45zJogs5
改行にこだわりがあるのでこのけいしきは変えられないや
つめると逆に読みにくいと思ってるんですよ。

しかたない ほかでアップしよう

807:K ◆6VG93XdSOM
04/03/18 02:12 45zJogs5
…←これ初めて学んだ たしかにこっちのほうがぜんぜんいい。

・・・←これずっと前からすごくやだったので勉強になた

808:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/18 02:40 o0KbHNNy
>>801
               ∧_∧
オツカレチャ━━━(´∀` )━━━ソ!!!!!
              /     ヽ
             / 人   \\   彡
           ⊂´_/  )   ヽ__`⊃
                / 人 (
               (_ノ (_)

809:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/18 14:48 3U1skcpJ
この板で専ブラ入れてる椰子はいないのか…

810:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/18 16:24 LTtA0zr5
どういうことですか?>>809

811:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/18 23:28 lCneaMRR
>K ◆6VG93XdSOMさん
 別に私が空白行が気になるだけですので(それについて他の方の
賛否は特に書かれてないですし)無理にほかでアップしようと思われなくても…
と思いますが。

>>809
 ? 専ブラ使いですが何かありましたか??


812:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/19 01:31 n3csk0Co
>ラトームさん
更新お疲れさまでしたー!
保管人の皆様もお疲れさまです。

すみません、訂正をお願いしたい箇所が……。
「今は居ぬ犬、今そこに居る君」がギコガードさんの作品で、
「A dog meets boys」と「惑いの城」が拙作になります。
あと、「ある部屋での出来事」もギコガードさんの作品だったと
思います。

ちなみに、「女の子組談話室」も実は拙作だったり……。
あ、これは直さなくて全然構わないのですが。
保管対象になるとは思ってなかったので、今回見つけて
驚きました(更新時は見落としていたようです)。
ただでさえSSが膨大なのに、あんな即興ネタまで。
ありがとうございます。

813:ナナシクラゲ ◆Sj469/wPAw
04/03/19 02:12 n3csk0Co
あわわわ、名乗り忘れました。
812はナナシクラゲでございます。

814:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/20 19:06 88c8rk0I
>ナナシクラゲさん
 スミマセン! あとで訂正を入れておきますm(._.)m。
 女の子談話室の作者も訂正しておきますね。

815:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/24 05:17 /9+h0DfR
4日に1レス。これ応用。

816:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/25 18:56 ZwFF8VnH
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!! >3日に1レスの人

817:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/25 18:58 2vj5uOHS
>>816
違いますよ。

818:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/25 21:16 BcT8Xt0c
>>815-817
ワロタ

819:K
04/03/26 04:18 KFcCbv6I
新しいのが完成したのでupするまえに宣伝しにきました
このスレは1000近いからこの↓クソスレを再利用しようかとおもいます
スレリンク(ff板)l50

また前みたいにちょっと長いので、リアルタイムで書き込みを手伝ってくれる人を
募集したいです。upは28日の夜11時ごろからスタートします。(日にち変更可能)
その時間帯にもし誰かいれば、良ければ誰か一文字でもいいのでよろしくおねがいします

今回はDQ4を使ったネタです

820:K
04/03/26 04:20 KFcCbv6I
と思ったらこのクソスレ書けないや。

当日までに何か地下スレをさがします

821:K
04/03/28 14:36 3fuWbHQR
スレリンク(ff板)l50

ここにしよう。なんかよくわかんねえスレだし使ってないみたいだし。
でもなんか一人もこなそうな気がしてきた。あまりにも人がいなかったら中止にしよう
とにかく今晩スタート

822:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/28 18:35 vw5s0UQ0
>Kさん
 一応スレのっとりの礼儀(?)として、誰もいなそうなスレでも
「ここのっとっていいですか?」と聞いて、数日待つべきだとは
思いますが。前に聞いたら、実は住人さんのいたスレがあるので。
 でも、今夜一晩使って終わり、という企画なら、構わないでしょうか?

 ちなみに、連投支援は、他のスレへの書き込みでも可能です。
小説のレスを切らない分、その方がいいかもしれません。ってことで、
支援を考えている人は、自分の常駐スレなどへの書き込みを、夜まで
待って、Kさんの小説投下に揃えると美しいかもです。

823:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 00:08 dZfyMqRe
23時過ぎよりK氏孤軍奮闘中

824:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 00:09 dZfyMqRe
しまった。ageちゃいました。ごめんなさい

825:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 01:16 dZfyMqRe
AM1時過ぎ。3人ほど支援者がいる模様

826:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 02:19 dZfyMqRe
AM2時過ぎ。「4章」までうp完了。どこまで続くのか…

827:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 02:55 dZfyMqRe
3時。K氏によれば7章まであるとのこと。

828:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/29 03:44 dZfyMqRe
もうすぐ4時。6章の途中。いい場面ですが、もう眠いので寝るぽ…

829:K ◆6VG93XdSOM
04/03/29 04:47 VOOEF+dg
>>823-828
どうもありあと!ぶじ終わりました!

830:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/30 00:19 Vgqr1iVC
昨日リアルタイムで読んでいた者です。K ◆6VG93XdSOMさんお疲れ様でした。
感想など、こっちに書くとこれから読む人の邪魔かもしれないので、
あっちに書きます。
これからも良い作品、期待しています。

831:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/30 10:55 iPcmJKYi
あの~このスレにくるのは初めてなんですが、この先は条件に当てはまっていても
>>1のサイトにはエロパロ板からのSSは保管しないんですか?最近の更新見ているとそんな気が。
単純に更新作業が追いついていないだけなら急かすような事言って申し訳ありません。
ただ少し気になったもので…管理人様、お疲れ様です。

832:ラトーム ◆518LaTOOcM
04/03/31 20:22 RKNvU/zc
 サイト更新しましたが、過去ログやらスレリンクやらのみです。
 それと、テンプレを新しくしましたので、保管人の皆さん、ご参照くださいませ。

>Kさん
 お疲れ様でした! 当日眠ってしまってお手伝いできなかったのが心残りです……。

>831さん
 ご想像のとおり、追い付いていないのでありまして。次はFF官能小説で更新となります。
今回サイトに入れたエロパロのスレの場合は、エンディングに到達していなかったり、
規定に照らし合わせて掲載に至らなかったり……でした。
 それと、エロパロ板のスレは独自に保管庫を作られている事も多いような? 気のせい
でしょうか? そういう場合にはこちらで保管しないようにしています。

833:831
04/04/01 13:59 nHeGuwbF
あ、やはりそうでしたか。ご都合もあることでしょうし、無理をなさらず頑張って下さい。

834:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/01 18:17 33h6bWGs
危険な匂いがするので保守

835:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/02 01:24 bSxOn22o


836:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/02 06:36 oSp2ryA/


837:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/02 11:23 ekaEpfGZ


838:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/02 12:37 ZwZ/xpx9
保守隊。危ないようなので。

839:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/03 20:54 IqTAi+C5
名スレ発見

840:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/04 01:04 Aqmv9C5u


841:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/04 20:32 1WK+foVb


842:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/04 22:32 Z3T1568Z


843:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/05 03:27 KH6xYOWu


844:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/05 09:25 tItMi0q/
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

845:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/05 20:34 xgBvkbtk


846:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/06 03:12 /9eT3xFY


847:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/06 08:34 D/8AtCnK


848:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/06 20:28 tSjzUVpd
>>847
違うYO

ほぼまりもんばめる で次は


849:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/06 23:31 /9eT3xFY
>>848
 メル欄メル欄



850: ◆2CDckY/JG6
04/04/07 11:02 PqeJ/q4T
たまにはこんなのも良いかなと思って、書いてみました。

「ね・え・さん!今夜もアレしましょ♪」
そういいながらレナは俺の部屋に入ってきた。これで一週間続けて、だ。
「え~、もう勘弁してくれよ・・・今夜ぐらい、ゆっくり寝かせてくれよ」
俺の反論にもめげず、レナはどアップで迫ってきた。
「いいじゃない。こんな楽しい事、教えてくれたの姉さんでしょ。
 ・・・それとも、私の事嫌いになったの?」
・・・まただ。こうやって、俺は断れずに始める事になっちまうんだ。
まあ、俺も嫌いじゃない(むしろ好きな方だ)からな・・・


ぱしっ ぱしっ

「どう?姉さん、すごいでしょ」
「うう・・・レ、レナ・・・それきついよ」

ぱしっ ぱしっ

「あら・・・姉さんも頑張るわね」
「ふん、いつまでもやられっぱなしじゃないさ」


851: ◆2CDckY/JG6
04/04/07 11:04 PqeJ/q4T
ぱしっ ぱしっ

「うぇ・・・もう勘弁してくれよ」
「あら、姉さんだってそんな我慢しなくてもいいのに」

ぱしっ ぱしっ

「ふふっ・・・それじゃ、そろそろ行くわよ。覚悟してね」
「えっ、そ、そんな・・・ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
「だ~め。もうじらすの飽きちゃったもん」

ぱっし~ん

「うふっ、決まったわ・・・五光よ!200ギル頂くわ!」
「うう・・・やられた・・・」
「おとなしく猪鹿蝶で終わっとけば良かったのよ。
 無理に青短狙うからいけないんでしょ」
「だって手札にあるんだから・・・くっそー、取り返してやる!」


━━━こうして、タイクーンの夜は更けていくのである━━━


ううう・・・結局この一週間で、一ヶ月の稼ぎがパーになっちまった・・・

852:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/07 11:54 hl9J8J2y
DQとFFを繋げるスゴイ夢を
スレリンク(ff板)


853:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/07 18:57 a/DdDAyU


854:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/07 20:02 k7lHcS3R
>851 青丹じゃない?

855:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/07 20:06 k7lHcS3R
ごめん 花札の短冊だから青短だったんだね

856: ◆2CDckY/JG6
04/04/10 09:04 XO2jNYCh
3日に1レス。これ基本。

857:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/11 18:24 gjRPAS9J
 

858: ◆2CDckY/JG6
04/04/14 04:05 lQVCcUK8
3日に1レス。これ基本。

859:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/15 19:12 KzoCc4Gu
SS投下しても良いでしょうか?

860:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/15 19:31 HxK0CHjd
どうぞ

861:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/16 21:47 0dNB1MxA
agetoku

862:邪教略記(1)
04/04/17 10:58 Fr92+f8P
ロンダルキアの一神官に過ぎなかったハーゴンが『神の破壊力』を著してより、
固定化した信仰を打破する洗浄思想は文人・知識人の間に徐々に賛同を得、
南方を中心として新信仰ともいえる、ひとつの運動を形成していった。
土着の精霊信仰や英雄信仰と習合した教義を本来の信仰とはかけ離れた虚妄と断じ、
詭弁を以て教理を論じ、蓄財にのみ執する教会と聖職者を糾弾、
宗教の真相を神秘主義と魔法の体験に求めたハーゴン派運動は青年に熱烈な支持を受け、
幾度にわたる論難と弾圧、そして異端指定にも関わらず、依然として拡大を続けた。
人文解放を叫んだインテリの知的活動に始まったハーゴン派運動は、
農村部では王権と教会の二重搾取にあえぐ貧農層を吸収、
逆に都市部では閉鎖的経済の打開をはかる新興富商と結合し、
潜在的な、しかし巨大な実働力をもった組織へと変化していた。
全世界の教父と世俗諸王の集まる公会議で「邪教」と認定されたとき、
運動の中心存在となっていたハーゴンはこれをせせら笑い、自ら邪教大神官と称した。
「腐った神からの邪教呼ばわりは、むしろ我々の誇りとするところだ」
強力な実践性と戦闘性を内在していたハーゴン派運動は、
事態が社会と邪教との対立構図になったとき、速やかに実戦へと移行したのである。

かつてのハーゴン派、いまの邪教徒は、仮面と長衣の祭儀装束をまとい、
人骨で作ったおぞましい神像を掲げて各地の官庁を襲撃、略奪を繰り返した。
初期の邪教蜂起は数百からせいぜい数千人の規模で、散発的に発生するように見えた。
しかし、その背後には運動時代に構築された緊密な組織があり、
各地の襲撃、暴動、テロは地下で巧妙に連携していた。
たとえ一個の蜂起を鎮圧しても、その主体は即座に分散し、捉えることができない。
制圧された邪教徒は周辺地域に散り、受け皿となる現地の端末組織と合流、
そしてふたたび蜂起する。
個別に出動する諸侯や個々の教会は、流動的な邪教のネットワークに対抗できなかった。
敵は全世界的な「邪教団」なのだと認識され始めた頃、事態は既に次の段階に移っていた。


863:邪教略記(2)
04/04/17 10:59 Fr92+f8P
邪教団のネットワークの中枢には、秘儀に通じ魔法力を有する神官たちがいた。
戦闘の拡大と激化に際し、また諸王の強力な戦士団に対し、彼らは一つの決断を下した。
すなわち、暗黒の神々を魔界より召喚し、その強大な威力を実戦に投入したのである。
ハーゴン的実践主義の恐るべき極点であった。

血の祭儀によりロンダルキアの邪悪な祭壇上に現れた魔界の生物たちは、
大神官の要請に狂喜して叫んだ。「地上に破壊と、殺戮を!」
魔界の存在の参戦により、戦闘は重大な転換を迎える。
邪教団の戦列に、翼や尾をもつ異形の者どもの姿が加わる。
彼らの戦闘能力は単独で人間を遥かに凌駕し、腕力は地を裂き魔力は天を掻き乱す。
さらに彼らは獣に対する支配力を持ち、野生動物を操り尖兵とすることができた。
軍団化した魔獣の群れは、人間の戦士団を蹴散らし、踏み潰した。

いまや実力で諸侯の軍を圧倒する邪教団は、ゲリラ戦を捨て大侵攻を開始した。
邪教に従わぬ南方の諸都市では、徹底した虐殺が行われた。
町を破壊し、焼き払う。戦士をも敵とせぬ魔物たちが人間を弄ぶ。
邪教団の行軍のあとは、魔界の瘴気に汚染され、二度と再生せぬ毒沼と化した。
蝟集した邪教の軍勢は数十万、かつて人間であった邪教徒たちは、
魔界との接触によって身体と精神を徐々に変容していた。
彼らは自らを魔族と自覚しはじめていた―。


864:邪教略記(3)
04/04/17 11:00 Fr92+f8P
邪教団は各地で寇略を繰り返しつつ北上し、遂に最大の戦地ムーンブルクに至る。
勇者ロトの血統を受け継ぐ最も高貴な王国の首都、最も美しい王城を、
悪魔と獣と人間の成れの果てが幾重にも包囲し、怒号をあげる。
軍勢の中からひとりの神官が現れ、王の名を呼んだ。
精霊像と勇者ロトの証の撤去。邪教の容認と拘束された活動家の解放。
解毒税・解呪税・復活祭税と諸々の教会特権の撤廃。
以上三箇条を、神官は声高に要求した。
王宮は拒絶した。
そして戦闘が始まった。

最大の戦地ムーンブルクにおける、戦闘そのものは一時間足らずで終結した。
翼ある悪魔の上空からの攻撃により、弓弩の兵は十分足らずで沈黙した。
単眼の巨人たちが無造作に殴ると、城壁は五分で崩壊した。
そして獣の群れと、獣的な人間の群れが城内に雪崩れ込んだ。
大軍の移動と展開に、約四十分を要した。
月の紋章をもつ戦士団は、五分ほど持ちこたえ、全滅した。

王国の莫大な財宝は運び出された。黄金の山が積み上がるたび、
邪教徒たちはただ轟々と吠えた。
官吏と宮女は裸に引き回され、順番に魔獣の餌となった。
セレモニアルな虐殺には、何時間もかかった。

殺戮儀礼の終わりに、城門の前にギロチンが据えられた。
精霊の加護を受けた勇者の末裔、王族がひとりずつ引き出される。
首がひとつ落ちるたび、魔族たちは大歓声をあげた。


865:邪教略記(4)
04/04/17 11:01 Fr92+f8P
儀式が終わると、彼らは城を焼き払った。


城壁が崩壊する直前、十五歳になる美しい王女に
魔法使いが魔法をかけた。
王女のすがたは縮小し、いっぴきの白い小犬に変わった。
王国の滅亡を見届けて、小犬は城を脱け出した。
数十万の魔族たちは、小犬をあえて襲おうとしなかった。
(古伝にいう、低級の悪鬼は犬の吠声を怖るためである、云々、)

身を焼き焦がし、煤にまみれて、たくさんの傷を負いながら、
よろよろ体を引きずって、小犬は歩いた。
天を焦がす炎と地を覆う魔族の哄笑を背に、小犬は歩いた。
幾たび倒れても歩き続け、やがて深い森の中へと姿を消した。

(邪教略記 おわり)


866:魚
04/04/17 11:06 7Iu7nH4o
邪教の発生、最盛と、その没落のはじまる瞬間まで。


867:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/04/17 14:14 7Iu7nH4o
時間があるのでもう一本。


868:新窮鼠伝(1)
04/04/17 14:16 7Iu7nH4o
今となっては昔のことだが、それほど昔のことでもない。地名は思い出せないが、
サマルトリア市に近い山中に、いっぴきの大ねずみが住んでいた。
このねずみ、生まれついての夢想癖で、性格は尊大、ねずみ仲間と交わろうとせず、
幼きより人間の言語を学び、人間の書物を読み耽っていた。
当節流行の変身物語を愛読し、特にシュタインヴァルトの『仮面騎士』などは
ねずみの嗜好に強く訴え、読み返し繰り返し読むうちに、
やがて自分が、特殊な生体改造を施された超ねずみであり、
ねずみの自我と戦闘機械の運命を併せ担った、宿命の戦士であるという
驚くべき妄想を抱くに至ったのである。
そして、このような宿命をもつ戦士たる自分が、自己一個の煩悶に囚われず、
望まざるも得た戦闘能力を、より大きな全体、生きとし生ける生命一般の
幸福のために資することは、変身したねずみにはまことに相応しいことと思われた。
世界に悪と不幸をばら撒き、破滅のみを企む秘密結社が確かに存在しており、
命を賭けてこれと戦うことが自分の使命であると堅く信じ込むようになったのは、
こうした異常な状況にあるねずみとしては、全く自然なことであった。


869:新窮鼠伝(2)
04/04/17 14:17 7Iu7nH4o
宿命の戦いへの決意を固めるや、ねずみの執念は高速移動手段の獲得に移った。
およそ戦士たる者が、救いを求める弱者の元へ、また暴虐者との戦いの場へ、
風のごとく颯爽と現れるための高速移動マシーンを持つことは、
これはじつに合理的な要求であり、また変身物語の常識なのである。
ねずみは大変な努力を払って二匹のはぐれメタルを捕獲し、頑丈な紐を結わえ
スリッパ状に仕立てて両足に履いた―この発想と工作は、ねずみの肥大した
欲求を、たいへんよく満たすように思われた―が、いざ走り出した瞬間、
この高速走行する両足は、ねずみの意図を無視して暴走をはじめ、
無残にもねずみを地面に引きずったまま、数時間、数十キロを引きずり回した。
最終的に両足は、一本の樫の木の根元で進行方向を二つに分け、
ねずみを木に引っ掛けたまま、恐ろしい力で左右に引き裂き始めた。
ねずみは絶叫した。

体が真っ二つになる寸前に、幸いにも両足を縛る固紐が千切れ、
ねずみは九死に一生を得た。この痛手はねずみを半月の間寝込ませたが、
その執念を弱めたり、損なったりすることはなかった。ねずみはより慎重に、
とくに制御の観点から、高速移動手段を再検討し始め、無数の試行錯誤の結果、
自律判断能力をもった知性マシーンこそが、宿命の戦士の乗物として適切であり、
また不可欠であるという結論に、至らざるを得なかったのである。


870:新窮鼠伝(3)
04/04/17 14:19 TrV2th3q
独立孤高の節を捨て、ねずみは一匹のキリキリバッタを尋ねた。
ねずみの唯一の知己ともいえるこの巨大昆虫は、遠く速く跳ねることにかけては
ねずみの乗物として必要欠くべからざるものと思われたし、
バッタにとっても、ねずみは代々の旦那筋に当り、要求を断る理由もなかった。
(小動物と昆虫の関係は、けして無情な、機械的なものではなかった)
プライドを曲げて頭を下げるねずみに、彼を知るバッタは驚愕した。
「頭を上げてくだせえ、旦那」
バッタは恐々縮々し、乗物兼従者としてねずみに仕えることを承諾した。

さて主従関係が決まってみると、バッタに名がないことが、ねずみにはいかにも
不足なことと思われてきた。およそ理性ある生物には、その性質と任務を表す
いわくの名前を持つことが理にかなっているのである。
ねずみは記憶と想像と言語を駆使し、高速戦闘バッタに相応しく
『バトロンパ』と呼ぼうと決めた。
「おら、名前なんかいらねえだよ」
「そうはいかない。たとえ遠く離れていても、呼べばすぐさま現れるのが、
半自律戦闘マシーンの不可欠な条件だ。呼ぶために名前は必要だ。
それに、知性を持ってしまった以上、自分の名前を持つことは、理屈なのだよ」
「それはおかしいだ。おらに名前をつけるくせに、
ご主人様には名前がないってのが、理屈にかなってねえだよ」

これは全く正当な指摘であり、バトロンパと呼ばれるバッタが
あながち愚鈍な昆虫ではないことを如実に示していた。成る程とねずみは納得し、
一週間を費して自分自身の名前を考えた。一週間の間、ねずみとバッタは
宿命と、先に待ち受ける戦いの数々について、楽しく議論を繰り返した。
この交歓の中から、あるひとつの名前がねずみの脳中に、はじめはぼんやりと、
やがて燃えるように輝いて、確固とした主張を伴って現れてきたのである。



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