FF・DQ千一夜物語 第413夜at FF
FF・DQ千一夜物語 第413夜 - 暇つぶし2ch600:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 05:12 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE23


パパス「くそ!金目のものが何もないときた。何か売れるようなものがないと
    いざというとき食べ物に困ってしまうかもしれん。」

サンチョ「だんなさま、このフライパンは?」
パパス「サンチョ、ふざけてる場合じゃないだろう。」
サンチョ「す、すみません・・・」

リュカ「ねーおとうさん、ボクの貯金いる?」
パパス「ははは、ありがとうリュカ。それはお前が大事に持っていなさい。」

サンチョ「しかし困りましたな、どれも金になりそうもない品ばかりで・・・」
パパス「やむを得ん、もしもの場合は私の指輪を売ろう。」
サンチョ「な、なんてこと言うんですか!奥さまとの結婚指輪を・・・!」

パパス「心配するな、そうやすやすとこの指輪は手放さん。私たちが餓死でもしないかぎりな。」
サンチョ「それはそうですが・・・」

パパス「そうだリュカ。」
リュカ「なに?」

パパス「この街とも最後かもしれん、今のうちにビアンカにお別れを言ってきなさい。
    しばらく会えなくなるだろうし・・・」

リュカ「あ・・・そうか・・・」


~~~~~~~~~~~~~~~~

601:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 05:13 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE24


サンタローズ 公園広場


リュカ「ビアンカ、ボクたちもう二度と会えないのかなぁ・・・」

ビアンカ「だいじょうぶよ、いつかきっとまた会えるわ。」
リュカ「ねぇビアンカ、今度会うときはボクがキミを・・・」

ビアンカ「なに?」

リュカ「ボクがキミを守ってあげられるようになるよ・・・」
ビアンカ「・・・・・」



ビアンカはポーランド人だったが、彼女はユダヤ人ではなかった。
もう会えなくなるのはとてもつらかったが、彼女までつらい思いをさせずに済んだと思えば
少しは気が楽になった。



ビアンカ「リュカ、私たちしばらく会えなくなるから、これをあげる。」

リュカ「何これ。」
ビアンカ「私のリボンよ。」

602:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 05:15 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE25


リュカ「ありがとう。・・・じゃあボクも。」

ビアンカ「?」

リュカ「ボクのターバンをあげる。」
ビアンカ「・・・あ、ありがとう。」
リュカ「ビアンカ、泣いてるの?」

ビアンカ「・・・・・」

リュカ「泣かないで、戦争が終わったらきっとキミに会いにいくよ。」
ビアンカ「うぅ・・・・」



このときビアンカは私には言わなかったが、彼女は知っていた。

東の収容所へ送られたユダヤ人は、誰一人として帰っては来なかったということを。
さんざん強制労働させられたのち、あとに待っているのは死のみ。
ドイツ軍は約40万人のユダヤ人を一人残らず消すつもりだった。



ビアンカ「リュカ・・・きっとまた一緒に遊ぼうね。」

リュカ「うん。」
ビアンカ「約束よ、必ずこのリボンを返してね。」
リュカ「わかった、キミもボクのターバンを・・・」

603:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 05:25 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE26


私たちはそれぞれリボンとターバンを交換し、再会を期しておたがいの約束を交わした。


いつの日か 再びこれを返しにくると。
いつの日か また一緒に遊ぼうと。

そしていつの日か私は 彼女を守ってあげられるようになると。


赤い糸で結ばれた約束は いつの日かきっと かなえられるときがくると。



――このリボンとターバンを交換するとき 



            それは 私たちが再会するときだと――




   第一章   ~赤い糸の幼年時代~

          完



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

604:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 05:35 tCdkuips
連投規制が激しくて全然書き込めないので第二章以降はまたあとにします

全部で5章までです。もうしばらくお付き合いを。


605:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:11 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE27



   第二章   ~灰色の少年時代~



サンタローズ公園広場   1939年


ジャミ中尉「<よーし、ではユダヤ人は全員そこに並べ。今から移送先をグループ別に分ける。>」

ゴンズ中尉「<おい、ゲマ大佐は?>」
ジャミ中尉「<間もなくお見えになるそうだ。>」

ゴンズ中尉「<そうか。>」



たくさんの住人が広場に集められ、私たち家族はこれから移送されることになる。



リュカ「おとうさん、ボクたちこれからどうなるの?」
パパス「シッ、黙ってなさい。大丈夫、私たちが離ればなれになることはない。」

606:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:13 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE28


サンチョ「だ、だんなさま・・・あそこを見てください。とんでもないヤツが現れましたぞ・・・」
パパス「何?・・・うっ!あ、あいつは・・・」

リュカ「(な、なんだろう、あのドイツ将校は・・・)」



私が‘そいつ’を初めて見たときの第一印象は、氷のような目をした悪魔にしか見えなかった。
ユダヤ人は「ゲマ大佐」という名を聞いただけで胃液が逆流してくるほど身の毛がよだつ。

それは泣く子もゲロを吐く冷酷非道のドイツ軍の指揮官、ゲマ大佐。通称‘氷のゲマ’。



ジャミ中尉「<ゲマ大佐、ユダヤ人すべて集合させました。>」

ゲマ大佐「<ほっほっほ、ごくろうさま。>」


やがてゲマの指示どうりにユダヤ人はいくつかのグループに分け、トラックに乗せられて
次々に移送させられていく。

当時は何を基準にゲマが私たちをグループに分けているのか理解できなかった。
おそらく‘働ける者’と‘そうでない者’を分けていたんだろう。

607:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:15 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE29


ゲマ大佐「<ふむ、あなたは向こうのトラックに乗りなさい。あなたはそっち。>」

住人A「<は、はい。>」
ゲマ大佐「<あなたたちはそちらのトラック、あなたは向こう。あなたは・・・>」
住人B「<はい・・・>」



やがてゲマ大佐は私たち家族の前へやってきた。



ゲマ大佐「<ふむ、あなたはそっちのトラックへ。>」
サンチョ「<は、はい。>」

ゲマ大佐「<そこのボウヤは向こうのトラック。>」
リュカ「・・・・・」

ゲマ大佐「<何をしているのです、早く行きなさい。>」
リュカ「え・・・?」
ゴンズ中尉「<おいガキ、お前はこっちだっての。>」

リュカ「サンチョさん・・・!」
サンチョ「(ぼっちゃん・・・お元気で・・)」

608:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:18 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE30


さよならの言葉もなく、サンチョとはここで別れることになった。
サンチョとは血はつながってはいなかったが、のちに戦後になっても彼の消息はつかめなかった。
おそらく始末されたのだろう。


ゲマ大佐「<では次、えーと・・・>」
パパス「・・・・・」

ゲマ大佐「<あなたはさっきのボウヤと一緒のトラックに。>」
パパス「(ほっ・・・)」
リュカ「(よ、よかった・・・)」


サンチョとは別れることになってしまったが、父は私と一緒のトラックのようだ。
私たちはお互いほっと胸をなでおろした、だがそのとき・・・


ゲマ大佐「<うん?待ちなさい。>」
パパス「ギクッ!」
ジャミ中尉「<どうかなされましたか、大佐。>」

609:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:26 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE31


ゲマ大佐「<そこのあなた、ちょっとこちらへ来なさい。>」
パパス「(ま、まずい・・・)」
リュカ「?」


ゲマ大佐は父を呼びつけた。
そして父はなぜかゲマとは目を合わせようとしなかった。だがゲマは父の顔をじっと見つめ
まるで不信な目で父を見据えた。


ゲマ大佐「<名を名乗りなさい、ユダヤ人。>」
パパス「<トンヌラ・エニクス・・・>」

ゲマ大佐「<トンヌラ・エニクス?ユダヤ人にしてはずいぶん変わった名ですね。>」
パパス「<・・・・・>」

ゲマ大佐「<だが不思議ですね、なぜか見覚えのある顔だ。このボウヤはあなたの子ですか。>」
パパス「<い、いいえ・・・私は独身です。>」
ゲマ大佐「<・・・・>」


父とゲマ大佐が何をしゃべっているのかはわからなかった。
だが父はこのとき異様なほど冷や汗をかいているのは分かった。

まるで自分の正体を見破られることを恐れているかのように。

610:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:28 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE32


ゲマ大佐「<念のためあなたにもう一つ質問しますよ、ユダヤ人。>」

パパス「<は、はい。>」
ゲマ大佐「<マーサという女性をご存知ですか?>」
パパス「(うっ・・・!)」



理解できないドイツ語の中で、私はこの「マーサ」という単語だけは何とか聞き取れた。
マーサとは死んだ私の母の名だ。

なぜこのゲマ大佐が母の名を知っている?



ゲマ大佐「<どうしました、答えなさい。>」
パパス「<・・・そ、そのような名は知りません。>」

611:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:30 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE33


ゲマ大佐「<・・・・・・>」
パパス「(うぅ・・・)」

ゲマ大佐「<ふん、まぁいいでしょう。行きなさい。>」

パパス「<は、はい。>」
リュカ「・・・・・」

パパス「さぁリュカ、トラックへ。」

リュカ「う、うん・・・」



とりあえず無事に私たち親子は難をのがれたようだ。

だが父はしばらく私の顔も正面から向いてくれようとせず、申しわけなさそうな態度だった。
あのゲマ大佐と何を話していたのかは知らないが、会話の中で母の名が聞こえたことに関して
父に聞こうとしたがやめた。


どんなことがあろうと私は父を愛しているし、信じている。
きっといつか真実を話してくれる、そのときが来るまで待ってあげようと決めたのだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

612:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:33 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE34



    1940年 2月



召使いのサンチョと別れて、もう一年が過ぎようとしていた。
私たち親子は何とか労働収容所で生き延びていく生活を続けていた。



ポーランド 東部労働収容所にて


リュカ「おとうさん、サンチョさん元気かなぁ。」

パパス「そうだな・・・」
リュカ「きっと生きてるよね、殺されてなんかないよね。」
パパス「あぁ、きっとサンチョも元気でやってるさ。」



石を懸命に運ぶ父や労働者のユダヤ人をながめながら、私はヒマさえあれば
ビアンカのリボンを出しては彼女のことを思い出していた。
.

613:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:37 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE35


リュカ「ビアンカも元気かなぁ・・・」

ユダヤ人O「おい坊や、どうしたボーッとして。」
リュカ「え?あ、いやなんでもないよ。」
ユダヤ人O「んじゃまたコレ頼むわ、コートのほころび。」

リュカ「あー、ずいぶんボロボロになっちゃっいましたね。」
ユダヤ人O「あぁ、もう穴だらけさ。まあもう少しすればあったかくなる季節だがな。」
リュカ「えーと、12ゴールドですね。」

ユダヤ人O「よし、じゃ頼む。」
リュカ「まいどありー。」



このときにはようやく私も働けることができるようになった。
といってもつくろい物の仕事だが、小遣いかせぎ程度はかせげる。
石を運んだりする肉体労働は、年齢的にまだ不適格だそうだ。
.

614:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:41 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE36


ドイツ兵「<よーし休憩だ!一時間の間に各自昼食をとっておけ!>」

パパス「ふぅ、やっと休憩か。」
リュカ「だいじょうぶ?」
パパス「あぁ、昼メシにしよう。配給係りへ行ってパンを二人分もらってきてくれ。」

リュカ「うん、わかった。」



すでに私の家族はもう父一人しかいなくなった。
だがこんなひどいところにいながらも私たち親子の絆はより深く、より強く結ばれたような気がした。

母も亡くしてサンチョもビアンカもいない。たった一人の父だけは失いたくはなかった。



~~~~~~~~~~~~

615:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:43 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE37


ユダヤ人H「パパスさん、一緒に昼メシ食わないか。」

パパス「あぁ、いま息子にパンを取ってきてもらっているところだよ。」
ユダヤ人H「そうか、じゃあ今のうちにちょっと話があるんだが。」
パパス「どうした?」

ユダヤ人H「なぁパパスさん、あのウワサを聞いたか?」
パパス「ウワサとは?」

ユダヤ人H「知らないのか?私たちユダヤ人はアウシュヴィッツ収容所へ移送されるそうだぞ。」
パパス「また移送か・・・次から次へと。」

ユダヤ人H「あんた何も知らないんだな、アウシュヴィッツ収容所がどんなところだか
      知ってるのか?」
パパス「知らないな、ここよりももっとひどいところなど想像もつかん。」

ユダヤ人H「なんでも俺たちユダヤ人はガス室へ送りこまれて皆殺しにされるそうだぞ。」
パパス「バカな・・・ドイツ軍はわれわれを一人残らず消す気なのか?」

ユダヤ人H「ここに送られてきたユダヤ人の数を見ろ、最初にいたときの半分ほどに
      減ってきているだろ。」
パパス「むぅ・・・」
ユダヤ人H「やつらドイツ兵は俺たちに何も言わないが、あのゲマ大佐がここへ来るときに
      決まってユダヤ人を10名ほど連れていく。そして彼らは二度と帰ってはこない。」

パパス「・・・・・」

616:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:47 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE38


ユダヤ人H「だが俺たちはあきらめてない、実は以前から仲間とこの収容所を脱走する計画を
      極秘に立てていたんだ。」
パパス「何だって?」
ユダヤ人H「これは謀反だよ。あんたも協力してくれないか、元軍人だろ?」

パパス「し、しかしそんな計画がドイツ兵に漏れたら大変なことになるぞ。」
ユダヤ人H「計画は厳重に内密進行させてきた、情報が漏れることはない。」
パパス「しかし・・・」
ユダヤ人H「あんたドイツ軍にこんな仕打ちをさせられて平気なのか?あんたや俺の家族も
      やつらに殺されただろ。」

パパス「私にはまだ一人息子がいる。」
ユダヤ人H「息子さんのためにもこのまま放っておくわけにはいかないはずだ。ヘタしたら
      あんたの息子さんもアウシュヴィッツ収容所へ・・・」

パパス「ま、待ってくれ。息子が戻ってきた、その話はやめよう。」
ユダヤ人H「わかった・・・」


リュカ「もらってきたよ、おとうさん。」
パパス「すまんな。」

617:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 10:50 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE39


ユダヤ人H「やぁリュカ、元気か。」
リュカ「こんにちは。」

ユダヤ人H「こんな小さな子でももう働いているもんなぁ、えらいな。」
リュカ「石を運ぶのはまだムリだけど、ズボンがやぶけたりしたらボクに言ってね。
    1cmにつき1ゴールドで直してあげるよ。」

ユダヤ人H「ははは、しっかりした坊やだ。」

パパス「さぁリュカ、お前も食べなさい。」
リュカ「はーい。」


わずかな安らぎのひとときの昼食を、私たちは楽しんでいた。


パパス「む・・・そうだリュカ、お前に渡しておくものがある。」
リュカ「なに?・・・もぐもぐ。」
パパス「この指輪はお前が持っていろ。」

リュカ「おとうさんこれ・・・おかあさんとの結婚指輪じゃないか。」
パパス「私にもしものことがあったときの場合だ、いざというときはそれを売って
    お金にしなさい。」

リュカ「や、やだよ・・・」
パパス「リュカ、気持ちはわかるが生き残るためだ。万が一ということもある。くれぐれも
    ドイツ兵たちにバレないように隠しておくんだぞ。」

リュカ「・・・・・」

618:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 10:52 50K1Eh7d
支援カキコ
がんがってください

619:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 11:01 50K1Eh7d
遅かったか?(;´Д`)

620:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:16 tCdkuips
ありあとうございまs
連投規制でもうしにそうです

621:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:19 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE40


父は大切にしていた母との結婚指輪を私にゆずった。
このときから私はイヤな予感がしていたのかもしれない、父を失ってしまうんじゃないかと。



パパス「売るのがイヤだったらお前がずっと持っているだけでもいい。だがドイツ兵たちには
    見つかるなよ、できればどこかへ隠しておいてほしいんだが。」

リュカ「なんでそんなにこの指輪を隠したがるの?」
パパス「い、いやその・・・」
リュカ「?」

パパス「あぁそうそう、知ってるか?その指輪は‘炎のリング’といってな、炎の聖霊が
    宿っているという伝説があるのだよ。」

リュカ「ふーん・・・」

パパス「母さんがつけていた指輪は‘命のリング’といってな、命の聖霊が宿っているという
    似たような伝説があったんだ。」
リュカ「ほかにも同じような指輪があるの?」

パパス「あぁ、詳しくは知らんが‘水のリング’という水の聖霊の指輪があるらしい。」

リュカ「へぇー。」

622:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:20 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE41


パパス「お前が炎のリングを持っているとすれば、いつかこの世界のどこかにいる
    ‘水のリング’を持った人に出会うときが来るかもしれんな。」
リュカ「だとしたら何なの?」

パパス「ははは、お前のお嫁さんになる人のことだ。」
リュカ「えぇ?」
パパス「お前のお嫁さんはどんな娘なんだろうな、私も見てみたい。」

リュカ「や、やだよ。今からそんな・・・」
パパス「ははは。」



わずかな休憩時間、昼食をとっている私たちの前に数名のドイツ兵と
あのゲマ大佐がジープでやってきた。

ブロロロロ・・・・キキキィィッ!

ガチャリ



ユダヤ人H「ゲッ、またあのゲマの野郎が・・・」
パパス「まずいな・・・リュカ、向こうのほうへいってろ。」

リュカ「う、うん。」

623:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:22 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE42


ジャミ中尉「<労働者は全員そこに並べ!ぐずぐずするな!>」

パパス「何事だ・・・?」
ゴンズ中尉「<ゲマ大佐からお前らユダヤ人にお話があるそうだ!さっさと集まらんか!>」

ジャミ中尉「<おい小僧、お前もだよ。>」
リュカ「うわ!な、なにするんだ・・・!」
パパス「<乱暴はよせ!まだ子供なんだぞ!>」

ジャミ中尉「<黙って集合しろ!まったくトロトロしやがって!>」


ゲマ大佐「<ほっほっほ、全員集まったようですね。>」

ユダヤ人H「いったい何事だ?」
ユダヤ人I「さあな、どうせロクな用じゃない。」

ゴンズ中尉「<ゲマ大佐、どうぞ。>」



ゲマが私たちの前に現れるときは、決まって悪いことが起きる。
また例によってムチで虐待するか、気に入らないユダヤ人を射殺するかのどれかだ。

だがこの日はそんなことよりも、もっと非道な仕打ちにやってきたのだ。

624:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 11:24 50K1Eh7d
>>620
よかった。初のリアルタイムで楽しみながら読ませてもらってます

625:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:25 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE43


ゲマ大佐「<あなたたちユダヤ人の中で謀反をたくらんでいるとの情報をつかみました。
      これはかなり確かな情報です。>」

ユダヤ人H「!」

ユダヤ人T「謀反だと・・・そんなバカなことをするやついるのか?」
ユダヤ人R「お、おれじゃないぞ・・・」

パパス「・・・・・」
リュカ「おとうさん、あいつ何をしゃべっているの?」
パパス「シー、だいじょうぶ。お前には関係のないことだよ。」

ゲマ大佐「<そのような愚かな計画を単独で犯すとは思えません、おそらく犯人は複数でしょう。
      犯人を一人一人捜し出すのもかまいませんが、私は面倒なことが嫌いです。>」

パパス「・・・・・」

ゲマ大佐「<謀反をたくらんでいる輩は今すぐ名乗り出なさい、さもないとこの場にいる
     すべてのユダヤ人を一人ずつ射殺していきます。>」
ユダヤ人H「!!」
ユダヤ人E「な、何だって・・・?!」
ユダヤ人J「バ、バカなことを!」
ユダヤ人K「ヤ、ヤバイぞ!あいつマジで殺る気だ・・・!」

リュカ「な、なに?どうしたの?」


わけがわからない間に、幼い私の目の前で信じられない光景が繰り広げられた・・・・
.

626:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:28 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE44


ゲマ大佐「<まず一人目。>」


ダーン!

ユダヤ人E「うあっ!」


ドタリ


ゲマ大佐「<二人目。>」


ダーン!

ユダヤ人J「がっ・・・!」


ドタリ

.

627:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:29 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE45


ゲマ大佐「<はい三人目。>」


ダーン!

ユダヤ人K「げっ・・・!」


ドタリ


ゲマ大佐「<つぎ四人目。>」


ダーン!

ユダヤ人U「うぉぉっ・・・!」


ドタリ


ゲマ大佐「<なかなか犯人が名乗り出ませんねぇ、ぐずぐずしていると全員
      死んでしまいますよ?>」


リュカ「うわああああ・・・お、おとうさん・・・!」
パパス「な、なんてひどいことを・・・!」

628:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:31 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE46


まるで人をゴミのように撃ち殺していくゲマ大佐の目は、これっぽっちも
良心の呵責などなかった。



ゲマ大佐「<続いて五人目。>」

ユダヤ人H「うぅぅ・・・!」

パパス「<ま、待ってくれ!>」
ゲマ大佐「<ん?>」

パパス「<わ、私が犯人だ・・・・だからもうみんなを殺すのはやめてくれ・・・>」
ゲマ大佐「<ほぅ、やっと名乗り出ましたか。>」

ユダヤ人H「(パパスさん・・・!)」

ゲマ大佐「<あなた一人の犯行とは思えません、仲間の名を言いなさい。>」
パパス「<仲間などいない・・・私一人の計画だ。>」
リュカ「おとうさん!いったい何をしゃべってるんだよ!」

パパス「リュカ!頼むから向こうへ行ってろ!」

629:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:32 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE47


そのときユダヤ人Hが突然その場から逃げ出した。



ユダヤ人H「くっ・・・!」


ダダッ!


ジャミ中尉「<ゲマ大佐。>」
ゲマ大佐「<ふん、こんなことだろうと思っていました。撃ち殺しなさい。>」

ジャミ中尉「<はっ。>」


ダーン!


ユダヤ人H「うあっ・・・・!」


ドタリ


パパス「ひ、ひどい・・・ひどすぎる・・・。」
リュカ「うわあああん・・・」

630:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 11:33 50K1Eh7d
(・∀・)ドキドキ

631:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:34 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE48


次々に人が殺されていく光景を目にした私は、もはや足もガタガタに震え
立っていられないほど恐怖感に怯えた。



ゲマ大佐「<さて、もう一度聞きます。あなたも謀反の仲間なのですか?>」

パパス「<き、貴様らなど・・・貴様らナチスなど地獄へ堕ちろ!人間の皮をかぶった悪魔め!>」
ゲマ大佐「<おや?あなたの顔をどうも見覚えがあると思ったら・・・>」

パパス「(し、しまった・・・!)」

ゴンズ中尉「<どうかしたのですか、大佐。>」

ゲマ大佐「<ほっほっほ、私もモウロクしていました。このユダヤ人はあのグランバーグですよ。
      あなたは元軍人パパス・グランバーグですね。>」
パパス「!!」

ジャミ中尉「<グランバーグ?もしやあのマーサ様の・・・!>」
ゴンズ中尉「<本当ですか!大佐!>」

リュカ「(な、何の話を・・・?)」

ゲマ大佐「<あなたウソをつきましたねユダヤ人。トンヌラ・エニクスなんて偽名を使って
      この私を騙そうと?マーサとはあなたの妻のこと、そしてそこにいるボウヤは
      あなたの息子さんですね?>」
パパス「う、うぐ・・・!」

632:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:37 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE49


ゲマ大佐「<わがナチス・ドイツ軍の総統閣下から命令を受けています。マーサ様の夫を
      見かけたら、ただちに殺せとの総統じきじきのご命令です。>」

パパス「<た、頼む・・・息子だけは見逃してくれ!こ、この子だけは・・・>」
リュカ「おとうさん!」




     ダァーンン!!




パパス「うあああっ・・・!」

リュカ「!!」
      


パパス「リュ、リュ・・カ・・・!」


ドタリ


リュカ「うわああああああああ!!」

633:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:40 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE50


ゲマ大佐「<ほっほっほ、子を想う親の気持ちというのはいつ見てもいいものですね。」
ジャミ中尉「<こ、このユダヤ人があのマーサ様の夫だったとは・・・>」
ゴンズ中尉「<大佐、こいつまだ息があるようです。>」

ゲマ大佐「<何ですって?>」


目の前で撃たれた父を前に、私は父の最期の言葉を聞いた。
そしてその信じがたい事実に驚愕した。


パパス「リュ、リュカ・・・聞こえるか。」
リュカ「お、おとうさん!」

パパス「リュカ・・・本当にすまない、実は・・・お前の母さんは生きているんだ・・・
    私にかわって母さんを・・・」

リュカ「おとうさん!しっかりして!」

パパス「本当にすまない・・・す、すべてユダヤ人である私がいけなかったのだ・・・・」
リュカ「ど、どうして・・・!」

パパス「リュカ、よく聞け・・・実はお前の母さんはドイツ人なのだ・・・」
リュカ「!!」

634:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:41 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE51


パパス「そもそもナチスドイツ人とユダヤ人が恋に落ちることがいけなかった・・・・
    すまん・・・すべて私たちの責任だ・・・お前にはつらい思いを・・・」

リュカ「お、おとうさん!」


ダァーンン!!


パパス「うあっ・・・!」


ガクリ


パパス「・・・・・・・」

リュカ「うわあああああ!!」


ゲマ大佐「<ほっほっほ、パパス・グランバーグよ、安心なさい。お前の息子は
      わがナチス・ドイツ軍のアウシュヴィッツ収容所で死ぬまでドレイとして
      総統閣下のために働いてもらいます。>」

リュカ「お、おとうさん・・・・!」

635:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:43 tCdkuips
     戦場の花嫁    PAGE52


こうして幼い私は 間もなくアウシュヴィッツ収容所へ送られることになる。


父が殺されたこの日 忘れもしない1940年2月13日のことだった。


父の最期の言葉を聞いたその事実 当時の私にはあまりにも重く あまりにも残酷だった。



     母は生きている そして母はナチス=ドイツ人。



だがそんな父の言葉もむなしく 私を待っていた運命は 過酷なドレイの日々だった。




     第二章   ~灰色の少年時代~

           完



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


636:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 11:47 tCdkuips
ちょっと休憩。
このぶんだと午後で終わりそうだ

もう規制がうるさくてやんなる
間に書き込みがあるとめちゃくちゃ助かります。

637:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 11:47 50K1Eh7d
GJでした。(・∀・)
続き期待してまってます。とりあえず飯食ってきます。

638:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:35 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE53



  第三章   ~闇の思春期時代~



ベルリン  ナチス・ドイツ軍本部 総統室にて


ゲッベルス「<総統、ゲマ大佐が戻ってきたようです。>」

総統「<ここへ呼べ。>」
ゲッベルス「<はっ。>」


ガチャリ


ゲッベルス「<大佐、入りたまえ。>」
ゲマ大佐「<はっ、失礼します。>」



ナチス・ドイツ軍の総統ヒトラーの前に、ゲマ大佐がやってきた。


639:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:37 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE54


ゲマ大佐「<ハイル ヒトラー!ゲマ大佐、任務より一時帰還してまいりました。>」

総統「<ご苦労。では任務報告を聞こう。>」
ゲマ大佐「<は、ポーランド東の収容所にてユダヤ人パパス・グランバーグを発見。
      ただちに命令どうり任務を遂行いたしました。>」

総統「<ふむ。で、例のものは?>」
ゲマ大佐「<は、それが・・・どこを探しても見あたらなくて・・・>」

総統「<パパスには確か息子がいたはずだ、子供のほうも調べたんだろうな。>」
ゲマ大佐「<は、ですがボウヤのほうも・・・>」
総統「<そんなはずはないぞ、あの指輪を手放すバカがどこにいる。>」

ゲマ大佐「<も、申し訳ございません・・・>」

総統「<いいか大佐、あの指輪を何としても探し出すんだ。この世界には伝説の三つの
    指輪が存在する。‘炎のリング’‘水のリング’そしてこの私が持っている
    ‘命のリング’だ。」

ゲマ大佐「<はっ、充分心得ております。>」

総統「<ではもう一度おさらいするぞ、よく聞け。>」
ゲマ大佐「<ハイル ヒトラー!>」


640:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:38 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE55


総統「<三つのリングを手にした者は!>」
ゲマ大佐「<世界を手に入れることができます!>」

総統「<三つのリングを制する者は!>」
ゲマ大佐「<世界を制する者であります!>」

総統「<三つのリングを所有する者は!>」
ゲマ大佐「<世界の覇者であります!>」

総統「<三つのリングを持つ資格のある者は!>」
ゲマ大佐「<ナチス・ドイツ軍ヒトラー総統であります!>」

総統「<よし、わかったら何としても指輪を探してこい。もう下がれ。>」


ゲマ大佐「<ハイル ヒトラー!>」



~~~~~~~~~~~~~~~


641:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:40 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE56


アウシュヴィッツ収容所   1944年


リュカ「よいしょ、よいしょ・・・」

ドイツ兵A「<おら何をしてんだ、それで力入れてんのか?>」
リュカ「うぐ・・・」



地獄というものが本当に存在するとしたら、それは私にとってここ以外にありえない。

亡き父を想いながら毎日石を運ぶドレイ生活。
‘炎のリング’は今となっては父の形見になってしまった。

あのときゲマ大佐が父を殺した直後、死体を調べて何かを探していたようだった。
今思えばやつらは父の指輪を探していたようだ、やつらの目的は父の命だけではなく
この指輪が目的だったとは・・・。

だがどんなに父の死体や私を調べたところで指輪が出てくるはずもない。
なぜなら父が殺される直前、私はとっさに危機を察して指輪を飲み込んで腹の中へ隠したのだ。

のちに吐き出して今は肌身離さず持っているが。


642:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:43 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE57


ドイツ兵A「<おらおら、こんな石の量じゃとてもじゃないが足りないぞ!>」

ユダヤ人S「うぅ・・・」
ユダヤ人L「はぁはぁ・・・・」

リュカ「ふぅ・・・」

ドイツ兵A「<モタモタするな、日が暮れてしまうぞ。>」


ともかくここへ来てから時の感覚は失われた。
政府が私たちに何をしてくれているのか知らないが、外の世界にいたときよりも
過酷な日々を送っていた。

この当時で私はすでに15歳。


ヘンリー「リュカ、大丈夫か。手伝ってやるよ。」
リュカ「あ、あぁ・・・ありがとうヘンリー。」

ヘンリー「お前はいつまでたってもドレイになりきれないやつだな、その点俺は
     自分でもドレイとして身についたと思うよ。」
リュカ「ははは・・・」

ドイツ兵「<よーし!今日はここまでだ!各自部屋へ戻れ!>」

ヘンリー「おっと、ようやく作業終了か。行こうぜリュカ。」
リュカ「うん。」


643:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:48 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE58


だがここでできた友人もいる、彼の名はヘンリー・ラインハット。

私と同い年ほどの少年で、少し口は悪いが根はいいやつだ。
見かけによらず教養も身につけており、もともとは貴族の長男だったという。
彼の言うことだからどこまでが事実かは知らないが。

私はこの収容所でドイツ語は彼から教わった。
さらに収容所の仕事についても彼からいろいろと教えてもらい、ときには
ドレイとしての実生活まで学ばされた。



ヘンリー「ほら、一本やるよ。」
リュカ「ど、どうしたんだいタバコなんか・・・」

ヘンリー「仕事あとの一服は最高だぞ、ドイツ兵に見つかるなよ。」
リュカ「う、うん。」



ヘンリーは収容所の中でも盗み、商売、闇売買、なんでもやった。
ユダヤ人は商売にすぐれた人種だとは聞くが、彼の場合はそれ以上だ。


644:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:50 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE59


リュカ「ゴホッゴホッ・・・!」
ヘンリー「はっはっは、お前いいかげんにタバコぐらい吸えるようになれよ。」
リュカ「だ、だってこんなものどこがおいしいんだか・・・ゴホッ。」

ヘンリー「いいかリュカ、この収容所にいるかぎり敵はナチスだけだと思うな。」
リュカ「どういうことだい?」

ヘンリー「考えてもみろ、ユダヤ人同士とはいえここは堀の中だ。ここじゃ社会主義も
     独裁政治もヘッタクレもない、外で何が起こってようと関係ない。
     敵はすぐ隣にいるんだ。」

リュカ「あいかわらずだな、キミは。」

ヘンリー「俺たちがもともと住んでいたユダヤ人居住区も閉鎖されたそうだが、考えてみりゃ
     あのカベに囲まれたわずか0.24平方kmのせまいとこに押し込められているよりゃ
     ここのほうがずっとマシさ。」

リュカ「こんなとこがいいなんてよく言えるな、キミはどうかしてる。」

ヘンリー「俺こそ普通の人間さ、まいにち女っ気のないこんなところで強制労働だぞ。そりゃあ
     男としてタマるものはタマるだろ。」
リュカ「??」


645:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:52 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE60


ヘンリーは私と同い年のくせして変なところにカンが鋭く、悪知恵も働けば機転もきくやつだった。

おかげでむさくるしいドレイ仲間の攻撃から、シャワー室でケツを防備することだけは覚えた。
確かにここにいる以上、敵はナチスだけではなかったのだ。



リュカ「ヘンリー、そういえばゆうべかなり歳くったおっさんのドレイに
    寝込みを襲われそうになったよ。」

ヘンリー「ほう、お前ねらわれやすそうな顔してるもんな。」
リュカ「ど、どんな顔だよ。」
ヘンリー「だいたいお前さ、そんな高価そうな指輪してるから狙われるんだよ。」
リュカ「あ、これ?」

ヘンリー「親父さんの形見とはいえ、肌身離さず持っているとしまいにゃドイツ兵に
     取り上げられるぞ。」
リュカ「大丈夫だよ、この指輪だけは相手が誰であろうと絶対に手放さない。」

ヘンリー「指輪だけならまだしも、貞操だけは守っておけよ。飢えた野獣どもがたくさんいるし。」
リュカ「またそれか・・・」
ヘンリー「なんかアレだな、お前はオッサンに好かれるタイプなんかな。」

リュカ「やめてくれよ・・・」


646:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:55 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE61


私は夜の防備として、ヘンリーからこんなことを学んだ。

毎晩ベッドの中には鉄パイプを仕込ませ、洗濯室へは決して一人では行かないこと。
仮に複数で襲いかかれた場合は「助けてくれ」などと叫んでもドイツ兵は来ない。
そういう場合は「脱走だ!」と叫ぶのが一番の安全策だとのこと。

ともかく私はムスコの使い方を学ぶよりも前に、ケツの穴を守ることを真っ先に学習した。
輝かしい15歳の闇の思春期をむかえるとともに、純白の青春時代を夢に描く毎日。



ヘンリー「男ってのは性の限界点に達すると、異性だろうと同性だろうと関係ないんかな。」
リュカ「・・・・・」
ヘンリー「まぁせいぜい仲間にケツを狙われないようお互い気をつけようぜ。」

リュカ「でもヘンリー、ついこないだ女の子のドレイが入ってきたじゃないか。」
ヘンリー「知ってるよ、けっこうかわいい子だったな。」

リュカ「なんであんな子がドレイに?彼女どう見てもユダヤ人じゃないだろ。」


647:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:56 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE62


ヘンリー「なんでもいいが彼女の場合はケツだけじゃ済まないぞ。ヘタすると・・」
リュカ「だからヘンリー、どうしてキミはそういう基準しかものの見方ができないんだよ。
    ケツだの何だのって・・・」

ヘンリー「ははは、そういうお前だって男なんだぞ。ムリせずに困ったときは俺に言え。
     ドイツ兵から買ったポルノ雑誌を何冊か持ってる。」

リュカ「ちょ、ちょっと待てよ。キミはドイツ兵からそんなものを・・・」



こんな時代において、ヘンリーのような人間が案外生き残れるのかもしれない。

戦争というのは始まりと終わりだけを注意していれば安全だと彼は言う。
中間はいかに目立たずに、いかに上手に立ち回れることが生きるための教訓とのこと。
長いものには巻かれろってやつだ、何とも彼らしい生き方だ。


だがそんな個人主義のヘンリーが、思いもよらぬ行動をとったときの事件がある。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


648:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 12:58 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE63


ある日のこと、いつものように労働をしていたときのことだ。


ヘンリー「おいリュカ、あそこ見てみろ。」
リュカ「え?」
ヘンリー「あれだろ?お前が言ってた女は。」

リュカ「あ・・・」


そこにはむさくるしいドレイ男たちの中、ただ一人だけ女の子がいた。

マリア「<ふぅ・・・>」


ヘンリー「くぁー、ドイツ兵も残酷なことしやがるよな。こちとら女日照りで苦しんでるってのに
     あんなかわいい女のドレイを見せつけやがって。」
リュカ「よ、よせよヘンリー。聞こえるぞ・・・」

ドイツ兵A「<何をブツブツ言ってる、お前ら。>」

ヘンリー「<あ、いえ何でもないっす。>」
リュカ「・・・・・」


649:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:00 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE64


事件はそのとき起こった。
その少女が重い石を運んでいるところ、あやまってドイツ兵の足に石を落としてしまったのだ。


ドスン!


ドイツ兵C「<ぐあっ!>」
マリア「<はっ!い、いけない・・・!>」

ドイツ兵C「<こ、この小娘!俺は堤防じゃねえぞ!足の上に石を落としやがって!>」
マリア「<す、すみません!うっかり手がすべって・・・>」

ドイツ兵C「<うるせえ!女だからって容赦しねえぞ!>」


バシ!バシ!


マリア「<ああああ・・・!>」



相手が子供だろうと女だろうとドイツ兵にとってはただのドレイにしかすぎない。
その少女はドイツ兵にムチでさんざん痛めつけられていた。


650:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:01 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE65


ヘンリー「ひ、ひでえ・・・」
リュカ「・・・・」


ドイツ兵C「<その腐った根性たたき直してやる!>」

マリア「<ど、どうかお許しください・・・!>」
ドイツ兵C「<いーやだめだ、確かお前はドレイになったばかりだったな。この際だから
      自分の立場というものを徹底的に思い知らせてやる!>」


バシ!バシ!バシ!


マリア「<ひぃぃっ・・・!>」



ユダヤ人V「ひどいもんだ・・・誰か何とかしてあげられないもんかねぇ。」
リュカ「なんてことを・・・」
ヘンリー「・・・・・」


私は父が死んだその日から、すでに理性というものは失いかけていた。
ここでの虐待も黙って見過ごすほど、もう私の堪忍袋のヒモはとっくにゆるんでいた。


651:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:04 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE66


リュカ「ヘンリー、悪いけどボクはもうガマンできな・・・あ、あれ?」


驚いたことに私がドイツ兵に向かっていくよりも前に、ヘンリーに先をこされた。


ドイツ兵C「<なんだお前、何か文句があるのか。>」
ヘンリー「<あぁ、大いにあるね。女は殴るためにあるんじゃない、抱くためにある。>」
ドイツ兵C「<ほぅ、抱いたこともないくせにイッパシの口をきく生意気なガキだな。>」


気がつくと私も足が勝手に動いていた。


リュカ「大丈夫かい?キミ。」
マリア「<い、いけません・・・私にかまうとあなたまで・・・>」
リュカ「(ドイツ語・・・?)」

マリア「<お、お願いですから私にかまわないで・・・あなた方のためです・・>」
リュカ「<悪いけどその頼みはきけないや、ボクたちそれほどガマン強くないんでね。>」


652:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 13:04 50K1Eh7d
もう始まってたか。支援カキコと。

653:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:06 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE67


ドイツ兵C「<どいつもこいつもユダヤ人の風情で逆らいやがって!少しは学習できんのか!>」

ヘンリー「<あいにく俺たちはもの覚えが悪いんでな。>」
リュカ「<殺すことしか能のないドイツ兵よりはマシだけどね。>」


ドイツ兵C「<こ、この口のへらねえガキどもめ・・・!おい!こいつらにたっぷりと
       教育してやるぞ!>」
ドイツ兵X「<フン、覚悟しろ。>」
ドイツ兵Y「<ユダヤ人め・・・>」


ヘンリー「おいリュカ、今さら降りるなんて言うなよ。」
リュカ「キミこそ、命は大切にしたほうがいいよ。」


マリア「<や、やめてください・・・その人たちは関係ないです・・・>」


654:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:07 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE68


この乱闘さわぎでドイツ兵を二名ほどぶちのめしてやったが、お釣りはそれ以上に返ってきた。

血ヘドを吐くほど殴られ、ヘンリーは鎖骨を骨折、私はあばらを二本ほどやられた。
だがそれだけで済んで奇跡といえよう。
本来ならば私たちのこめかみに銃でズドンと一発、それで終わりだ。

私はもはや最終的に意味のない戦いを挑むようなバカに成り下がったというべきだろうか。
ここにいるドイツ兵たちと戦ったところで、何の得にもならないのだ。


意識ももうろうとしながら、やがて私たちの前に一人のドイツ将校が現れた。



リュカ「うぅ・・・・」
ヘンリー「ぐっ・・・・」


ヨシュア大尉「<何だ何だ、この騒ぎは。>」

ドイツ兵C「<は、ヨシュア大尉。ご苦労様です。>」
ヨシュア大尉「<ご苦労様じゃない、この騒ぎはいったい何だ。>」

ドイツ兵C「<は、この二人のドレイが歯向かってきて・・・>」


655:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:09 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE69


ヨシュア大尉「<この女は?>」
ドイツ兵C「<は、その・・・ドレイ女も反抗的だったので・・・>」

ヨシュア大尉「<・・・・・>」

マリア「<(お、お父さん・・・)>」
ヨシュア大尉「<(マリア・・・・)>」

リュカ「(だ、誰だ・・・?)」



この男はどこかで見覚えのある顔だった。だがどこで会ったのかはすっかり忘れていた。
そのドイツ将校は私たちをじっと見据え、やがて淡々と指揮を執りはじめた。



ドイツ兵C「<大尉、処分のほうは?>」
ヨシュア大尉「<まぁいい、この女の手当てをしてやれ。>」
ドイツ兵C「<はっ。>」

ヨシュア大尉「<こっちの二人は牢屋に閉じ込めておけ、だがその前にそいつらも
        手当てしてやれ。かなりの重傷だ。>」

ドイツ兵C「<は、はい。わかりました。>」


~~~~~~~~~~~~~~~~


656:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:11 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE70


牢屋内


リュカ「ヘンリー、大丈夫かい。」

ヘンリー「あぁ・・・何とかな。お前は?」
リュカ「あばらをやられたけど大丈夫だよ、手当てもしてある。」
ヘンリー「まいったな、けど石を運んでいたよりはマシかな。」

リュカ「ボクたちまでどうして手当てしてくれたんだろ、昔はこんなんじゃなかったはずだ。」
ヘンリー「あぁ、状況が良くなってきたって証拠さ。」
リュカ「状況?」

ヘンリー「頭つかえよリュカ、やつらどうして俺たちを殺さなかったと思う?」
リュカ「さぁ・・・」

ヘンリー「たまには新聞よめ、イタリアもソ連も宣戦布告してるんだ。ドイツ軍はすでに
     味方なんていない、もはやナチスが落ちるのも時間の問題さ。もう意味なく
     ユダヤ人を殺すようなマネはおおっぴらにできなくなったってことさ。」

リュカ「でもドイツ軍のヒトラー総統はまだ政権をにぎってるよ。」

ヘンリー「だがヤツはこないだの演説で暗殺されかかったって記事を読んだ。けっきょく
     未遂に終わったけど、どうやら犯人は内部の犯行ともウワサされてる。
     ドイツの中には反ナチス派もいるってことさ。」


657:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:13 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE71


リュカ「ヒトラーが生きているうちはまだ平和なんて言えないよ・・・」
ヘンリー「もうすぐだ、もうすぐでドイツは必ず降伏する。戦争ももうじき終わる。」

リュカ「ヘンリー、ボクこの収容所で妙なウワサを聞いたんだけど。」
ヘンリー「なんだよ。」
リュカ「ここで働かされているユダヤ人は、全て抹殺されるって・・・」

ヘンリー「そんなのただのウワサさ、現に俺たちまだこうして生きてるだろ。」

リュカ「でもここにはガス室が設備されていて、そこにユダヤ人を入れて殺すらしいよ。
    ここにいたユダヤ人の数が日に日に減っていくじゃないか。」

ヘンリー「仮にそれが本当だとしたら、なおさら早いとこ・・・ん?」
リュカ「どうしたんだい。」

ヘンリー「しっ、誰か来たみたいだぞ・・・ドイツ兵か?」

リュカ「どれどれ・・・」



収容所の牢屋に先ほどの少女がやってきた。
そして驚くことに、あのドイツ将校も一緒に・・・・


658:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:15 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE72


マリア「<さ、先ほどは助けていただき、ありがとうございました。>」

リュカ「<キミはさっきの子か・・・ケガは大丈夫?>」
マリア「<はい・・・申し遅れました、私はマリアと申します。>」
ヘンリー「<マリアか、かわいい名前だ。>」

マリア「<そしてこちらはヨシュア・ローゼンヴェルグ大尉です。>」
ヘンリー「<げ、こいつがあのヨシュア大尉だったのか・・・>」

ヨシュア大尉「<・・・・・>」


その将校は何も言わず、黙って私たちの牢屋のカギを開けた。

ガチャガチャ・・・・カチャン
キィィーーー


ヨシュア大尉「<出ろ。>」

リュカ「<は、はい。>」
ヘンリー「<どうも。>」


659:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 13:15 50K1Eh7d
カキコ

660:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:16 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE73


マリア「<お父さん、やっぱり危険じゃないかしら・・・>」
ヨシュア大尉「<そんなこと言ってられるのかマリア、急がないと手遅れになるぞ。>」

リュカ「!」
ヘンリー「<お、おとうさん?>」

マリア「<ご紹介できなくてすみません、実はヨシュア大尉は私の父なんです・・・>」
リュカ「<ということは・・・>」
マリア「<はい、私はマリア・ローゼンヴェルグ。ドイツ人です。>」

ヘンリー「まいったな・・・彼女がドイツ人だったとは。」
リュカ「よ、よせよヘンリー・・・」

ヨシュア大尉「<娘のマリアを助けてくれたそうだな、お前たちがユダヤ人であろうと
        何であろうと恩人には違いない。礼を言う。>」

リュカ「<あの・・・>」
ヨシュア大尉「<何だ。>」
リュカ「<い、いえ。何でもないです。(どうもこの人見覚えがあるような・・・)>」


661:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:19 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE74


ヨシュア大尉「<時間がないので手短に話す、実はわがドイツ政府は危機に陥っている。
        ソ連軍の攻撃も押さえられないどころか、イタリア軍まで参戦してきた。
        それに総統閣下の暗殺をもくろむ輩も日に日に増えていくいっぽうだ。
        残念だがドイツ降伏は時間の問題だろう。>」

ヘンリー「(バーロ、人殺しの政権なんぞつぶれちまえばいいんだ。)」

ヨシュア大尉「<お前たちも感づいているかもしれんが、実はこの収容所には毒ガスを
        設備しているガス室がある。>」

リュカ「!」
ヘンリー「<げげ!ウワサは本当だったのか!>」
ヨシュア大尉「<ユダヤ人は全て抹殺しろとの総統の命令だ。だが娘のマリアまで一緒に・・・>」
ヘンリー「<独裁者め・・・>」

リュカ「<あなたの娘さんはドイツ人じゃないですか。どうして彼女までドレイに?>」

ヨシュア大尉「<マリアは反逆罪としてドレイにさせられたのだ。>」

マリア「<だってお父さん!こんな政治は間違っているわ!戦争ですべて事が解決するわけ
     ないじゃないの!お願いだからヒトラーには従わないで!>」


662:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:23 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE75


ヨシュア大尉「<マリア、私は軍人だ。何がどうあろうと上官の命令は絶対なのだ。>」

マリア「<上官がユダヤ人を殺せと命じれば、お父さんも殺すのね・・・>」
ヨシュア大尉「<・・・・・>」

リュカ「<それで大尉、どうする気なんですか。>」

ヨシュア大尉「<娘を連れてここを逃げてほしい。>」
ヘンリー「<まじかよ・・・>」

ヨシュア大尉「<ここにお前たちの荷物も用意した、脱出の手口と経路はすべて地図に書いた。
        それから収容所のマスターキーを渡す、きっと成功するはずだ。>」

リュカ「・・・・・」
ヘンリー「ど、どうするリュカ。」

リュカ「・・・行くよ、やるしかないだろ。」
ヘンリー「そ、そうだな・・・」


663:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:25 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE76


ヨシュア大尉「<さぁマリア、この二人についていけ。>」
マリア「<お父さんも一緒に・・・>」
ヨシュア大尉「<だめだと言っただろう、私は任務を離れるわけにはいかん。>」

マリア「<お父さん・・・>」

ヨシュア大尉「<マリア、戦争はもうじき終わる。お前は平和な時代に生きて幸せをつかむんだ。>」
マリア「<うぅ・・・>」

ヨシュア大尉「<お前の言うとうり、私は悪い父親だったよ・・・だがもうあとには引けん。
        いつまでも元気でな・・・私はいつでもお前を愛している。>」

マリア「<お、おとうさん・・・!>」



私はその父娘のやりとりを聞いて複雑な想いがよぎった。
憎きナチスでも、中には彼らのように家族を愛して懸命に生きていこうとしている人もいると。

だがそれはそれ、これはこれ。父がナチスに殺された恨みは今でも忘れてはいない。


664:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:27 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE77


ヘンリー「<おい、行くなら早くいこうぜ。>」
リュカ「<マリア、さぁ行こう・・・>」
マリア「<は、はい・・・>」

ヨシュア大尉「<娘を頼む、それから・・・>」
リュカ「<何ですか。>」
ヨシュア大尉「<お前のその指にはめている指輪のことだが・・>」
リュカ「(し、しまった・・・)」

ヨシュア大尉「<・・・・・・>」
リュカ「<あ、あの・・・これはただの安物の指輪で・・>」

ヨシュア大尉「<総統閣下がそのリングを狙っている、くれぐれも気をつけることだ。>」
リュカ「<え・・・>」

ヨシュア大尉「<お前は不思議なやつだな、ナチスに対して敵意を持っているのは感じるが
        なぜか私やマリアに対しては敵意を感じられん。こんな形でお前たちと
        出会いたくはなかった・・・。>」
リュカ「・・・・」
ヨシュア大尉「<お前の目はどことなくマーサ様に似ている、気をつけて行けよ。>」

リュカ「<え?い、今なんと・・・?>」


ヨシュア大尉「<さぁ行け!ぐずぐずするな!>」

リュカ「<あ・・・は、はい!>」


665:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:29 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE78


ヘンリー「おいリュカ!行くぞ!」
リュカ「う、うん。」

マリア「<さようなら、お父さん・・・>」



こうして私とヘンリー、そしてマリアの三人は収容所脱出を図った。



ヨシュア大尉「<生き延びてくれ・・・マリア・・・>」





私が幼いころに出会ったあの将校、それが彼だったと気づいたのは脱出してからのこと。

のちに戦後になってから知ったのだが、このヨシュア大尉は翌年の1945年の4月に戦死したそうだ。
胸には聖母マリアの十字架を抱いたまま、ソ連軍の砲撃によって地に伏した。
ナチス・ドイツ軍の将校として享年45歳、その生涯を閉じることになる。


666:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:32 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE79


一方、私たち三人は無事アウシュヴィッツ収容所から脱出に成功。

マリアはカトリック教の教えを学んでいたため、とりあえず安全な町に隔離させ
近くの教会にシスターとして身を捧げた。



ヘンリーも同様に、マリアとともに戦争が終わるまで同じ町にとどまることにした。
のちに彼ら二人はその恋が実り、戦後1952年の春に結婚。翌年に長男を出産する。
息子の名はコリンズ・ラインハット。



そして私は戦争がまだ終わらない時代に、生存を確認するべく実の母を捜すことになる。
ナチス・ドイツ人の母マーサを捜し始めてから、すでに二ヶ月がたとうとしていた。



私の生まれ育った街サンタローズはすでに崩壊、住人どころかドイツ兵の一人として
誰もこの街にはいなかった。

.

667:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:34 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE80


この国のどこかにいる母マーサに会ったところで、私はどういう態度で再会すればいいのか。
私の父を殺した憎むべきナチス・ドイツ軍、そして母もドイツ人。

父と母の間にどんな出会いがあって 私が生まれたのかは知らない。



だが私は父を信じている。「生きてくことが最も大事」「この世で一番の宝物は家族」。



戦争という時代において 敵対している者同士が 愛し合ってはならぬという決まりはない。



どんなことがあろうと 私は私の家族を 信じて生きていくだけだ・・・・。




    第三章   ~闇の思春期時代~

         完



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


668:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:37 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE81



   第四章  ~青きその青春時代~



    1945年  2月  


ポーランド 西の都 サラボナの街にて


リュカ「ふぅ、とりあえず今夜はこの街にとどまることにするか。」



アウシュヴィッツ収容所から脱出したのはいいものの、母を捜し出すための情報が
何もなかったため、最初の二ヶ月間は国中をさまよい歩いた。



リュカ「どこか働けそうなところがあればこの街にしばらくいてもいいんだけどなぁ。」

*「おいそこの兄ちゃん、野菜買っていかないか。どれも新鮮だぞ。」
リュカ「あ、いえけっこうです・・・」
*「そこのあなた、ニワトリはいかが。タマゴも生めるしお肉も最高よ。」

リュカ「あ、あの・・・けっこうですので。」


669:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:39 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE82


路上で売りつけようとする商人たちをよけながら、私はふらふらと
街の商店街を歩いていると、ある一人の少女に出会った。いや、ぶつかった。


ドスン!


リュカ「うわ!」
フローラ「きゃっ!」


ドテ!


リュカ「す、すみません。大丈夫ですか。よそ見しながら歩いていたもので・・・」
フローラ「い、いえ、私こそごめんなさい・・・」



それはいかにもどこぞの富豪の令嬢のような気品ある少女だった。

そして倒れた少女を起こしてあげようと、私が手を差しのべたそのときだ。
これが運命的な出会いだとは、あまりにもベタな展開で今思い返すと吹き出してしまう。

指輪をめぐるこの少女との出会いが のちに‘運命的な再会’を果たすことになるとは・・・


670:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:40 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE83


リュカ「ほんとにゴメン、さぁつかまって。」
フローラ「は、はい・・・ハッ!」

リュカ「?どうしたの。」

フローラ「・・・・!」


このときは少女が何に対して驚いているのかわからなかった。
あとから知ったが、どうやら私の手の指に光る指輪を見て驚いたそうだ。


フローラ「あ、あの・・・ごめんなさい!失礼します!」
リュカ「ね、ねぇちょっと・・・」


足早に走り去っていった少女を、私はぽかんと口を開けたまま見ていただけだった。


リュカ「なんだよあの子・・・」


~~~~~~~~~~~~~~


671:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:41 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE84


宿屋 受付にて


リュカ「すみません、部屋あいてますか。」

ダンカン「お一人さまですか?」
リュカ「そうです。」
ダンカン「空いてますよ、少々お待ちください。」
リュカ「はい。」



年月というものはあっという間だと言うが、それとともに記憶のほうは
すぐに忘れてしまうものだ。
悲しい思い出は忘れることはできないが、それ以外のことはすっかり忘れてしまう。

このとき私とこの宿屋主人は、お互いまだ誰なのか気づいていなかった。
私たちは知り合いだったというのに・・・


672:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:43 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE85


ダンカン「・・・・あんた、身分証明書見せてもらっていいかい?」

リュカ「え?どうしてですか。」
ダンカン「いいから早く。」
リュカ「ごめんなさい、証明書はドイツ兵に取り上げられてしまって。」
ダンカン「ほぅ。」

リュカ「あの、お金なら足りると思うんですけど。」
ダンカン「すまんな、部屋はもう一杯だよ。他をあたってくれ。」
リュカ「え?」

ダンカン「ほらほら、そんなとこに立ってたらお客さんのジャマだろ。」

リュカ「ま、待ってくださいよ。さっき部屋空いてるって・・・」
ダンカン「知らないね。」
リュカ「・・・・・・」


戦時中はレストラン、ホテル、喫茶店はおろか、ろくに店で買い物ができなかった。
どいつもこいつもユダヤ人だとわかるとケムたがって追い払う。


673:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:44 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE86


ダンカン「おい、早く出て行ってくれないか。」
リュカ「ふーん、あんたボクがユダヤ人だと気づいて・・・」
ダンカン「面倒なことには関わりたくない、この街だってドイツ軍の領域なんだ。」

リュカ「あんたドイツ軍でもないくせに人種差別か、同胞として恥ずかしくないんですか?」

ダンカン「おい、いい加減にしないと警察へ通報するぞ。電話一本でかけつけてくるぞ。
     それともドイツ兵に連行されたいか?」

リュカ「何だと・・・おい、ちょっとこっちへ出て来い。」
ダンカン「な、なんだ。やるのかボウズ。」



長いことドレイ生活をしいられてきたおかげで、頭に血が昇るのも早くなってしまった。
昔はおとなしい子だったのだが・・・



ダンカン「このガキめ!通報されたいのか!」
リュカ「うるさい!ボクはおまえみたいな偽善者を見るとムカついてくるんだよ!」


674:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 13:46 50K1Eh7d
sage

675:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:46 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE87


もみあっているうちに、やがて宿屋の二階から一人の女の子が降りてきた。



ビアンカ「どうしたのお父さん、何を騒いで・・・」

ダンカン「あ、ビアンカ!すぐに警察を!」
リュカ「わかったよ!出ていけばいいんだろ!」

ダンカン「あぁそうさ、出ていけ!ユダヤ人は迷惑だ!こっちまで殺されてしまう!」
ビアンカ「お父さん、そんな言い方しなくても・・・あら?」

リュカ「ばかやろー!こんなとこもう二度とくるもんか!」

ビアンカ「・・・・」
リュカ「なんだよ、どいてくれ。」

ビアンカ「・・・・・・」

リュカ「どいてくれって言っ・・・ん?」


ビアンカ「そ、そんな・・・まさか・・・」


リュカ「え・・・・」


676:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:48 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE88


ビアンカ「あ、あなたなのね・・・」



リュカ「あ・・・あ・・・」



赤い糸の約束は果たされることになった。

その女の子は首に紫色の布を巻きつけていた。その布には見覚えがある。

母を見つけるよりも前に、この日は一つの願いがかなった。
その女の子はみすぼらしい格好をした私を前に、目に涙をためながらこう言った。



「私の大切な リボンを盗られました ドイツ兵のしわざでしょうか。」



そして私も目をうるませて彼女にこう答えた。



「いいえ 犯人はユダヤ人です ボクもターバンを没収されました。」


677:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:50 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE89


どんなに年月が経とうと、私たちの間に再会の言葉はいらなかった。

赤い糸の再会は今日、果たされた。
気がつくと私は使い果たしたはずの涙をこぼし、彼女を抱きしめていた。



リュカ「ビ・・ビアンカ・・・!」

ビアンカ「リュカ・・・!」



ダンカン「え?え?い、いったい何がどうなってるんだ・・・?」



~~~~~~~~~~~~~~~


678:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:51 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE90


宿屋 事務所にて


ビアンカ「もう、お父さんったら。リュカのことすっかり忘れて・・・」

ダンカン「いやーすまない、こんなに大きくなっていたから気がつかなかったよ。」
リュカ「ボクもダンカンさんだとは気づかなくて・・・」
ダンカン「ははは、私もフケたからなぁ。」

ビアンカ「リュカ、私はずっと信じていたわ。あなたがきっと生きていると。」
リュカ「うん・・・」

ビアンカ「パパスさんは?」
リュカ「・・・・・」
ビアンカ「そう・・・・」

ダンカン「・・・そ、そうか。さぞ苦労してきたんだろうな。うちでも母さんが
     ドイツ兵に殺されてね。」

リュカ「でもダンカンさんたちがこの街に住んでいたなんてビックリしたよ。」
ダンカン「あぁ、あれからあちこちの街をてんてんとしてな。ようやくこの街で
     小さな宿屋を経営することができたんだ。」


679:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:54 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE91


ビアンカ「リュカ、今日は泊まっていけるんでしょ?」
リュカ「そのつもりだったんだけど・・・」

ビアンカ「・・・お父さん。」

ダンカン「わ、わかってるさ。もちろん泊まっていってくれ。い、いや金なんて
     払わなくてもいいさ。ユダヤ人だろうと関係ない。」

ビアンカ「ごめんねリュカ、実は私のお母さんが殺されたのはユダヤ人を泊めて
     しまったからなの。だからお父さんもそのことで・・・」

リュカ「そうだったのか・・・。わかった、ボクやっぱり他のとこへ行くよ。」
ビアンカ「い、いえいいのよ。私たちは大丈夫だから。」

ダンカン「そ、そうだよリュカ。頼むから気にせんでくれ。」

リュカ「でも・・・」

チリン チリーン!

ビアンカ「あ、お父さん。お客さんよ。」
ダンカン「おっとまずい、じゃあビアンカ。リュカを頼むよ。」

ビアンカ「うん。」

~~~~~~~~~~~~~


680:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:55 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE92


宿屋 受付前


ダンカン「いらっしゃいませ、お二人さまですか?」

ルドマン「いや、悪いが客じゃない。ちょっとお尋ねしたいことがあってな。」
フローラ「・・・・・」

ダンカン「はぁ、何でしょう。」
ルドマン「この近くでみすぼらしいユダヤ人の少年を見かけなかったかね。髪は黒髪で
     黒の瞳、身長は・・・」
フローラ「お父様、たしか170と少しくらいだったと思います。」

ダンカン「あ、あのぅ・・・あなたは警察の方で?」
ルドマン「いやいや、ご心配なさるな。ドイツ軍の使いなどではない。」

ダンカン「(黒髪で黒の瞳、身長170と少し・・・リュカのことだな・・・)」

ルドマン「ここに泊まっている客でそういう少年はおりますかな?」
ダンカン「・・・・・」

ルドマン「・・・どうなされた、ご主人。」


681:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:57 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE93


ダンカン「あ、い、いえ・・・申しわけありませんが、そのような少年は
     ここには泊まっておりませんが。」
ルドマン「そうですか、邪魔しましたな。フローラ、行くぞ。」
フローラ「はい・・・」

ダンカン「(ふぅ・・・何なんだこいつら・・・)」

リュカ「ねぇダンカンさん、やっぱりボクほかのとこで泊ま・・」
ダンカン「バ、バカ!出てくるんじゃない!」
リュカ「え・・・」


フローラ「あ!」
ルドマン「どうした、フローラ。」
フローラ「お父様、あの方です!」
ルドマン「なに・・・?」

リュカ「あれ、さっきの女の子じゃないか。どうしてここに・・・」

ルドマン「ちょっと失礼、きみの手を見せてもらえないか。」
リュカ「?」
ルドマン「噛みつきはせん、きみの手を見るだけだ。」

リュカ「な、なんですかあなたは・・」

ルドマン「おぉ!本物だ!本物の‘炎のリング’だ!」
リュカ「!」
フローラ「お父様・・・」


682:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 13:59 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE94


ルドマン「き、きみ。この指輪をどこで?」
リュカ「これは父の形見ですけど。」

ルドマン「いやー!これは驚いた!まさに運命的な出会いとはこのことだ!きみ、ちょっと
     私の別荘まで来てくれんか。」

リュカ「ちょ、ちょっと・・・」
ルドマン「フローラ、何を恥ずかしがっておる。こっちへ来なさい。」
フローラ「は、はい。」

ルドマン「紹介しよう、私の娘のフローラだ。」
フローラ「は、はじめまして・・・」

リュカ「あのぅ・・・」

ルドマン「いやーこんなに早く娘のいいなずけが見つかるとは思わなかった!」
リュカ「はぁ?」


683:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:00 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE95


ダンカン「ちょ、ちょっとあなた。どこの方が知りませんけど何を一人で勝手に・・」
ルドマン「ええい離せ、私を誰だと思っている。」

ビアンカ「どうしたの?さっきから騒いで・・・」

リュカ「あ、ビアンカ。」
フローラ「!」


ルドマン「きみきみ、その指輪は炎のリングといってな。・・・まぁいい、面倒な説明は
     あとだ。娘の指を見てみなさい。」
リュカ「え?」
ルドマン「いいから私の娘の手に光るものをごらんなさい。フローラ、ほらお見せして。」

フローラ「はい・・・」

リュカ「あれ?これは・・・」


684:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:01 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE96


何がなんだかわけがわからなかったが、のちに改めて紹介された。

まずこの富豪の紳士はルドマン・カルバートという名のフランス人だそうだ。
そしてその娘がフローラ・カルバート。

ヨーロッパ各地にいくつもの別荘を所有しており、このポーランドにも二つほど
別荘を持っているそうだ。

そんなことはどうでもいいが、なぜこの私に興味を持ったのかが疑問だった。
あとから聞いた話によると、正確には私ではなく私の持っていた「指輪」が目的だったそうだ。

父の形見であるこの‘炎のリング’にどれほどの興味を持っていたのか知らないが、
これはあんたらのような富豪に売る気はないとはっきり言ってやった。


ところがそうではなかった。この指輪が欲しいわけではなかったのだ。
私はこのフローラという娘の指にはめていた指輪の正体を聞いて驚いた。

彼女がはめていたのは‘水のリング’という指輪だそうだ。

そういえば昔、父からこんな話を聞いたことがある。


685:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:01 50K1Eh7d
ガンガレー

686:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:02 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE97



     あぁ、詳しくは知らんが‘水のリング’という
               水の聖霊の指輪があるらしい。
             
          へぇー

    お前が炎のリングを持っているとすれば、いつかこの世界のどこかにいる
          ‘水のリング’を持った人に出会うときが来るかもしれんな。

         だとしたら何なの?

             ははは、お前のお嫁さんになる人のことだ。

                   えぇ?

         お前のお嫁さんはどんな娘なんだろうな、私も見てみたい。

                 や、やだよ。今からそんな・・・

                         ははは。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~


687:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:03 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE98


まったくバカげた話だった。

彼女は小さいころから‘水のリング’をはめていたそうだ。
大きくなっていつか結婚するとき、‘炎のリング’を所有している者に
嫁ぐのが夢だったとのこと。

親バカのルドマンはそんな娘がかわいくてしかたなく、今まで言い寄ってきた
フランス人の金持ち坊ちゃんたちのプロポーズを次々に蹴っ飛ばしてきたという。

親子そろって夢見るお星さまのイカれたフランス人だった。

私はこの世間知らずのフローラお嬢さまに、面と向かってこう言ってやりたかった。

「あのね、おじょうちゃん。サンタクロースなんてほんとはいないんだよ。」と。

ともかくこの日はいろいろなことがありすぎて、なんとも疲れた日だった。
ビアンカとの再会、フローラとの出会い。

私には母を捜すという大事な目的があるが、実は前から少し考え始めてはいた。
父を失った今、戦争が終わったら私も将来のことを考えねばと。

私にも家庭が持てるだろうか。
こんなユダヤ人に誰が嫁に来てくれるんだろうかと、まだ16歳のころから
真剣に考え始めていたのだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


688:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:05 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE99


ダンカンの宿屋 二階にて


ビアンカ「だいじょうぶ?。」

リュカ「あーもう疲れたー。」
ビアンカ「うふふ、さんざんだったわね。ルドマンさんたちは別荘へ帰ったらしいわ。」

リュカ「かんべんしてほしいよ、なんでボクがこの指輪をしてたってだけで
    いいなずけなんてさ。」
ビアンカ「素敵じゃない、小さいころから夢見てた指輪をした王子さまを待ち続けて・・・」

リュカ「あのねビアンカ、ひとごとだと思って勝手な想像しないでよ。」
ビアンカ「いいじゃない、女の子ってそういうものにあこがれるものよ。」

リュカ「この指輪はもともと父さんのだよ、もしこの指輪をボクじゃなくて他の誰かが・・・
    例えば男じゃなくて女が持っていたとしたら、彼女どうする気だったんだろ。」
ビアンカ「さぁね、知らないわ。」

リュカ「相手が女でも結婚するつもりだったのかな。」
ビアンカ「しーらない。男の子って夢のないことばかり言うのね、あなたも昔はそんな子じゃ
     なかったのに。もっとかわいかったよ。」

リュカ「長いことドレイ生活で男を相手に貞操を守ってきたせいかな。」
ビアンカ「え??」
リュカ「あ、い、いや・・なんでもないよ。」


689:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:06 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE100


ビアンカ「あ、そうそうリュカ。夕食のお買い物につきあってくれない?」

リュカ「え、でもボクは・・・」
ビアンカ「泊まっていくんでしょ、遠慮することないのよ。それにあなたちょっとやせすぎよ、
     もっと栄養のあるもの取らないと。」

リュカ「そ、そうかな・・・」

ビアンカ「ほら早く、行くわよ。」
リュカ「わ、わかったよ。そんなに引っぱるなって。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


690:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:07 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE101


一方そのころ―――ベルリン  ナチス・ドイツ軍本部 総統室


一人のドイツ士官が総統室へやってきた。

ガチャリ


ドイツ士官「<ハイル ヒトラー!西区から受けた連絡をご報告にきました!>」

総統「<言ってみろ。>」

ドイツ士官「<は!西の都サラボナの街において、水のリングを所有しているフランス人の
       家族を発見したとのことです!>」

総統「<何だと?>」

ドイツ士官「<ジャミ中尉とゴンズ中尉が現場に向かっています!>」
総統「<よし、指輪を入手したら連絡をよこせと伝えろ。>」

ドイツ士官「<ハイル ヒトラー!>」


~~~~~~~~~~~~~~~~~


691:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:08 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE102


サラボナの街  商店街通り


リュカ「ビアンカ、まだ買うつもりなのかい。」

ビアンカ「えーと、ジャガイモにタマネギでしょ。トリ肉にパセリと・・・」
リュカ「そんなにたくさん買ってどうするんだよ。」

ビアンカ「あなた毎日なに食べてたのよ。」
リュカ「豆だよ。」
ビアンカ「ダメよ、もっと栄養つけないと。今夜は私がおいしいもの作ってあげる。」
リュカ「そっか、それは楽しみだな。」

ビアンカ「えーと、あとは・・・あら?」
リュカ「どうしたんだい。」

ビアンカ「ちょ、ちょっとリュカ・・・あれ見て。ルドマンさんたちじゃない?」
リュカ「え?」


そこには先ほどのルドマンと奥さん、それにフローラもいた。
彼らはなぜかドイツ兵に捕らえられていた。


692:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:09 50K1Eh7d
支援

693:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:09 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE103


ルドマン「<ま、待ってくれ。話せばわかる。私たちはただ・・・>」
妻「あ、あなた・・・!」

ジャミ中尉「<三人ともそこへひざまずけ。>」
ゴンズ中尉「<おい、お嬢ちゃんもだよ。そこへひざまずけ。>」

フローラ「う、うぅ・・・助けて・・・」


私はひとめ見てわかった、こいつらの顔は忘れない。
ドイツ士官のジャミ中尉とゴンズ中尉だ。


ジャミ中尉「<もう一度聞くぞ、お前ら家族は水のリングを持っているはずだ。>」
ルドマン「<し、知らない・・・>」
ジャミ中尉「<ウソつくな!お前ら家族が指輪を持っていると連絡を受けている!>」

フローラ「(お、お父様・・・もう指輪を出したほうが・・・)」
ルドマン「(バ、バカを言うな・・・あの指輪は家宝なんだぞ・・・)」
フローラ「(でもこのままじゃ私たち殺されて・・・)」

ゴンズ中尉「<おい!何をゴチャゴチャ言ってる!さっさと指輪を出せ!>」

ルドマン「<だ、だからそんな指輪は知らないと・・・>」

~~~~~~~~~~~~~~


694:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:10 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE104


リュカ「ビアンカ、ここで待っていてくれ。あの人たちを助けにいく。」
ビアンカ「だ、だめよリュカ。あなたまで殺されるわよ。」

リュカ「そうはいかない、ほっといたらあの人たち殺されてしまうよ。」
ビアンカ「お願いだからバカなことしないで、せっかく助かった命なのに・・・」

リュカ「バカなのはあの家族さ。」
ビアンカ「え・・・」
リュカ「ここを動くなよ。」

ビアンカ「ま、待って!リュカ!」



私は銃を突きつけながらも指輪を出そうとしないルドマンに腹が立ったのだ。

娘まで殺されてしまうかもしれないのに・・・



ルドマン「<指輪なんか知らない!本当だ!>」

ジャミ中尉「<どう思う?ゴンズ。>」
ゴンズ中尉「<ウソくせえな、隠してるに違いない。>」


695:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:11 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE105


ジャキン!


フローラ「きゃあ!」
ルドマン「フローラ!」

ジャミ中尉「<10秒待ってやる、指輪を出さないとこの娘の頭を撃ちぬく。>」
ルドマン「<や、やめてくれ!指輪なんか知らないと言ってるだろう!>」
フローラ「お父様!」

ジャミ中尉「<どこまでもしぶといオヤジだ、まぁいい。じゃこの小娘を殺す>」

フローラ「いやああああ!!」

リュカ「<待ってくれ!>」

ジャミ中尉「<ん?>」
ゴンズ中尉「<なんだお前。>」

リュカ「<指輪はその女の子が持っている、たぶんポケットの中を探せばあると思う。>」

ジャミ中尉「<何だと?>」
フローラ「リュ、リュカさん・・・!」
ルドマン「き、貴様どういうつもりだ・・・!」

リュカ「・・・・・」


696:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:12 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE106


ゴンズ中尉「<おい、おじょうちゃん。ちょっと失礼するぞ。>」
フローラ「うぅ・・・」
ジャミ中尉「<どうだ、あったか?>」

ゴンズ中尉「<ゲ、ほんとにあったぞ・・・これが水のリングに違いない。>」
ジャミ中尉「<ほぅ。>」

ルドマン「く、くそぉぉおおお・・・!わが家宝の指輪が・・・!」

ジャミ中尉「<おい兄ちゃん、どこのどいつか知らんが教えてくれてありがとよ。>」
リュカ「・・・・・」
ジャミ中尉「<ん・・・おい、お前どこかで会ったか?>」

リュカ「<さぁね・・・>」

ジャミ中尉「<ふん・・・まぁいい。おいゴンズ、もう行くぞ。指輪を本部へ届けねば。>」
ゴンズ中尉「<あぁ、わかった。>」



ようやく二人のドイツ士官はその場を去っていった。
.

697:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:17 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE107


リュカ「・・・・・」

ビアンカ「リュカ!大丈夫?!」
リュカ「大丈夫だよ、なんともない。」
ビアンカ「よかった・・・!」

フローラ「あ、あの・・・」
リュカ「ケガはない?フローラ。」
フローラ「は、はい・・・」

ルドマン「おい!どういうつもりだ!わが家宝の指輪を!なぜドイツ野郎に引き渡させた!」
リュカ「・・・・」
ルドマン「おい何とか言え!このままで済むと思っているのか!あの指輪は貴様のような
     ユダヤ人が一生かかっても買うことのできない高価な・・」

リュカ「うるさいね・・・」
ルドマン「な、なぬ??」

リュカ「そんなことよりも奥さんや娘さんの心配でもしたらどうですか。」

ルドマン「な、なんたる無礼なやつだ!そうか!貴様はドイツ軍の手先に成り下がった
     ユダヤ人だな!この非国民め!」

リュカ「そんなに指輪が欲しければボクのをあげますよ。」
ルドマン「?!」
ビアンカ「リュカ!」


698:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:18 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE108


今日まで大事にしてきた父の形見である炎のリング、私はあっさりとルドマンにゆずった。

だがもし父が生きていたら私と同じ行動をとっていたような気がしたのだ。
娘や奥さんまで銃を突きつけられていたのだ、迷わず指輪よりも命のほうを選んでいただろう。

私や父パパスにとって、本当の誇りというものはこのような犬死ではない。
たとえ他人事でも生きていくことが何よりも大事なのだ。



ルドマン「お、おい待て!なぜ私に炎のリングをそうやすやすとくれるのだ!」

リュカ「ビアンカ、行こう。」
ビアンカ「え、えぇ・・・」

ルドマン「ま、待ってくれ!お前はいったい・・・!」


フローラ「・・・・・・」



~~~~~~~~~~~~~~~~


699:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:19 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE109


――その夜 ダンカンの宿屋にて


リュカ「ごちそうさまー。」

ビアンカ「よく食べたわね。」
ダンカン「ははは、男の子はたくさん食べなきゃな。」

リュカ「ビアンカ、ほんとにおいしかったよ。キミがこんなに料理が上手だったなんて。」
ビアンカ「あらなによ、私は女らしくないっていうの?」
リュカ「い、いや・・・」

ダンカン「はっはっは。リュカ、こんな娘でもよかったらもらってやってくれないか。
     毎日おいしいスープを作ってもらえるぞ。」
ビアンカ「ちょ、ちょっとお父さん。こんな娘ってなによ。」

リュカ「ははは・・・」

チリン チリーン

ダンカン「おっとお客さんか。」
ビアンカ「いいわ、私が出る。」

~~~~~~~~~~~~~~


700:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:21 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE110


受付前


ビアンカ「いらっしゃいませー。あら、あなたは・・・」

フローラ「こんばんは・・・」
ビアンカ「フローラさんね、何かご用?」

フローラ「すみません、ちょっとリュカさんに・・・」
ビアンカ「リュカー!フローラさんが来てるわよー!」


リュカ「そ、そんなに大きな声出さなくても聞こえるよ。」
ビアンカ「うふふ、じゃあごゆっくり。」

リュカ「どうしたの、フローラ。」
フローラ「あの・・・」
リュカ「ん?」

フローラ「ごめんなさい、あの・・・ちょっと外へ出ませんか。」

リュカ「あ、あぁ・・・うん、わかった。」


~~~~~~~~~~~~~~~


701:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:22 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE111


サラボナの街 商店街通り


フローラ「先ほどは助けてくれてありがとうございました。」

リュカ「いいんだよ、それより無事でよかったね。」
フローラ「あの・・・ビアンカさんという方はリュカさんとはどういうご関係で?」

リュカ「あ、うん・・・幼なじみだよ。」
フローラ「素敵な方ですね。」
リュカ「そ、そう?」

フローラ「リュカさん、私あのときのあなたの行動が信じられなかったんです。」
リュカ「あのときって?」
フローラ「何のためらいもなく指輪をドイツ士官に差し出したじゃないですか。」

リュカ「うん、ごめんね。ああでもしなきゃルドマンさん指輪を出そうとしなかったよ。」
フローラ「でもおかげで私たち助かりました。」
リュカ「命は大切にしないとね。」

フローラ「私、小さいころからあの指輪をずっと大切にしてきたんです。でもドイツ兵に
     銃を突きつけられたら、いくら私でもやっぱり・・・」
リュカ「そうさ、それが当たり前なんだよ。ちっとも恥ずかしいことじゃないよ。」


702:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:23 EO4JwW6H
ガンガレ

703:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:24 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE112


フローラ「でもそのあとリュカさんは私の父にあっさりと自分の指輪をゆずったじゃないですか。
     あなたのお父様の形見を・・・」
リュカ「うん、でも・・・父さんがもし生きていたら、ボクと同じことしてたんじゃ
    ないかなぁって思ってさ。」

フローラ「リュカさん・・・あなたがあの高価な指輪を命と引き換えにあっさりとドイツ士官に
     ゆずったこと、そしてそのあと自分の父の形見をあっさりと他人にゆずった行動、
     うまく言えませんけど・・・私なんか感動しました。」
リュカ「そ、そうかな・・・」

フローラ「あなたは私に‘生きる’という意味を教えてくださったような気がします。
     どんな学校の先生でも教えてもらえることのできない貴重な体験をしました。」

リュカ「・・・・」

フローラ「やっぱり私まだ子供でした、夢ばかり見てた世間知らずの女です。
     リュカさん、これはあなたにお返しします・・・」


フローラは‘炎のリング’を私に差し出した。


リュカ「フローラ・・・」
フローラ「大丈夫です、父には言ってありますから。かなり落ち込んでいたようですけど。」


704:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:25 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE113


リュカ「ありがとう・・・キミは素敵な子だと思うよ。」
フローラ「うふふ、ほめても何も出ませんよ。」

リュカ「ははは・・・」

フローラ「私そろそろ帰ります、付き合ってくださってありがとうございました。」
リュカ「あ、送っていこうか。」
フローラ「大丈夫ですよ、別荘はすぐ近くですから。」

リュカ「フローラ、お父さんを大事にしてね。」
フローラ「えぇ、もちろんです。」
リュカ「・・・・・」

フローラ「リュカさん。」
リュカ「なに?」


フローラ「ビアンカさんは本当に素敵な女性だと思います、大事にしてあげてくださいね。」

リュカ「え・・・」


705:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:26 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE114


フローラ「うふふ、戦争が終わったらいつか将来、ご結婚なさるんでしょうね。
     ビアンカさんを幸せにしてあげてください。」


リュカ「ちょ、ちょっと待ってよ。ボクたちはそんな・・・」


フローラ「じゃあおやすみなさい。」


リュカ「あ・・・」





この年の4月、ソ連軍戦車隊がベルリン市街に突入した。

いよいよもってナチス・ドイツ軍の敗退が余儀なくされた。
総統アドルフ・ヒトラーは‘水のリング’を手に入れたが、彼の暗殺をもくろむ者が
次々と現れ始めた。

この当時でヒトラー暗殺未遂事件は40件を超える。


706:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:28 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE115


カルバート一家は数日後にサラボナを離れ、故郷フランスへと帰国した。
やがて私はフローラとは二度と会うことはなかった。

戦後何年もあとになってから新聞で読んだが、フローラはフランスの青年実業家と
結婚したそうだ。青年の名はアンディ・R・ジュネ。

幸せな家庭を築いて、夫はのちに名誉市民として表彰されたそうだ。



そして私は依然として母の情報は何もつかめないまま、とりあえずダンカンの宿屋で
世話になることにした。

このサラボナも安全とはいえないが、ビアンカを守るためにも
この街にとどまっておいたほうがいいと思ったのだ。


707:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:29 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE116


だがそれもつかの間、この二ヵ月後にサラボナは戦場と化す。
反ナチス派がドイツ軍に戦いを仕掛けてきたのだ。

結果は反ナチス派が勝利を勝ち取ることになるが、建物はほとんど崩壊し
見るも無残なホロコーストと化す。

この当時で殺されたユダヤ人の数は20万人を超える。


私の将来は どんな未来があるのか どんな運命が待ち受けているのか。 



戦火の中で迎える青春時代 青く燃え上がった炎とともに 



     指輪はじっと時代を見つめ 戦場の炎の調べを唄うようだった。



    第四章  ~青きその青春時代~

          完


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


708:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:31 EO4JwW6H
わくわくさん。

709:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:31 0olQCRLU
hu- tukareta

間に書き込んでくれている人ありがとお。
いよいよ最終章とエピローグのみでs

710:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:32 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE117



   最終章   ~純白の明日~



     1945年  4月



サラボナの街  ダンカンの宿屋にて


ビアンカ「おはようリュカ、今日は起きるの早かったね。」

リュカ「ふぁー・・・おはよ、ダンカンさんは?」
ビアンカ「お父さんは用事があって今朝はやくから街へ出かけたわ。」
リュカ「そう。」



フローラたちが帰国してから早二ヶ月が経とうとしていた。
私は結局この宿屋の仕事を手伝いながら住みこませてもらうことになった。


711:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:33 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE118


リュカ「おー、おいしそうだね。朝ごはん?」

ビアンカ「だめよつまみ食いは、座って待ってなさい。」
リュカ「これちょっとだけちょうだいね。」

ビアンカ「あ、こら!だめだって言ってるのに!」



私とビアンカは、もうこのころにはお互い昔以上に仲も進展していた。
言ってみれば友達以上、恋人未満というやつだ。

彼女のことは好きだが、どうもまだそれ以上の感情を伝えられないというか
微妙な年頃だったのだ。

今はお互いこれでいいのかもしれない。



ビアンカ「さぁリュカ、できたわよ。」

リュカ「あーおなかすいた。」
ビアンカ「まだお客さんも来ないみたいだから先に食べてて。」

リュカ「いただきまーす。」


712:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:35 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE119


ここでの生活にもようやく慣れ始めてはきたが、実は頭の中は母のことで一杯だった。

今ごろどうしてるのだろうか、ちゃんと食べるものは食べているんだろうか。
寝るとこや住む家はちゃんとあるのだろうか・・・と。

だがそんなことを考えながら食事を続けていると・・・


ビアンカ「・・・ねぇリュカ、大事なお話があるんだけど。食べながらでいいから
     聞いてくれる?」
リュカ「なに?・・・もぐもぐ。」

ビアンカ「あのね、もしあなたに再会したら、これ話していいのかどうかずっと悩んで
     いたんだけど・・・」
リュカ「だから何。」

ビアンカ「あなたお母さんを捜しているって言ったよね。」
リュカ「うん・・・ボクたちがまだ小さかったころは死んだなんて聞かされてたけどね。
    実は生きているんだって、父さんが死ぬ間際に言ってたんだ。」

ビアンカ「・・・・・」


713:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:35 50K1Eh7d
(´ー`)y─┛~~

714:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:36 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE120


リュカ「大丈夫だよ。戦争ももうじき終わるし、きっとこの国のどこかにいるさ。」
ビアンカ「あ、あのねリュカ・・・」

リュカ「なんだよ、どうしたの。」


ビアンカ「わ、私・・・あなたのお母さん、実はどこにいるか知ってるの。」

リュカ「えぇ?!」



朝早くからビアンカの口から思いもよらぬ発言を聞いて、一気に目が覚めた。
どうしてそれを早く言わないのかと。



ビアンカ「ごめんなさい、私あの手紙を読んでしまったの・・・」

リュカ「ビ、ビアンカ。母さんの居所を知ってるのかい?教えてよ!」

ビアンカ「で、でもリュカにはつらすぎると思って・・・」
リュカ「手紙って何のことだよ!誰の手紙?!」


715:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:39 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE121


ビアンカ「あなたのお父さんのパパスさんよ、息子のリュカへって書いてあるわ。
     リュカたちがサンタローズの街を去ったあとに、あなたの焼けた家から
     手紙を見つけたの。」
リュカ「ビアンカ、頼むよ。その手紙を読ませて。」
ビアンカ「でも・・・」

リュカ「父さんからの手紙なんだろ?大丈夫だよ、ボクはもうどんな事実でも
    受け止められる覚悟はとっくにできてるんだ。」
ビアンカ「リュカ・・・」
リュカ「お願いだよ、その手紙を見せてくれ。」

ビアンカ「わかったわ・・・。」


ビアンカはそう言うと、焼けかかった一枚の手紙を持ってきた。
私はこの父からの手紙にどんな事実が書いてあろうと、すべて受け止められる覚悟は
できていたつもりだった。
父が死ぬ間際に言い残した言葉は今でも頭に残っている。

だが母がナチス=ドイツ人だからって、それがなんだというのだ。
悪いのは総統ヒトラーなのだ、この国を侵攻しユダヤ人を虐殺する憎きナチスなのだ。
そう言い聞かせ、そう信じてきた。


だがこの手紙は それ以上のことが書いてあった・・・

~~~~~~~~~~~~~~


716:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:39 EO4JwW6H
ヽ(゚∀゚)ノ

717:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:40 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE122


わが息子リュカへ――

リュカよ、この手紙を読んでいるということは、私は何らかの理由で
お前のそばにはいないのだろう。

お前には全てを話すときが来るまで、真実はまだ伏せておいたほうが良いと思ったのだ。
今まで何も話してやれなかったことを許してくれ。


すでに知っているかもしれんが、お前の母マーサは純血のナチス=ドイツ人だ。

もう聞き及んでおろう、悪名高きナチス・ドイツ軍の総統アドルフ・ヒトラーの名を。
そしてお前の母の旧姓はマーサ・ヒトラー。そう、ヒトラーの実の妹なのだ。
つまり私にとってヒトラー総統は義理の兄なのだ。


お前の気持ちはわかっているつもりだ、だがどうかマーサを憎まないでやってくれ。
マーサは国を亡命しようとわがポーランドへ逃げてきたのだ。
兄であるヒトラーが政権を握る前から、マーサはヒトラーとは意見が合わなかったらしい。

マーサと出会ったころは私は当時軍人だった、私たちは敵国同士だったが恋に落ち
ついに駆け落ちまでして二人でポーランドへ逃げた。


718:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:41 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE123


だがナチスはそれで黙ってはいない、すぐに追っ手を差し向けられ
私たちは亡命者として国を追われる身となった。

ヒトラーは私とマーサの結婚が決まったころ、私への暗殺命令を下したらしい。
そのときに暗殺命令を受けたのがゲマ大佐だ。

ゲマは血まなこで私を追っていたようだが、かんじんの情報が不充分だったため
私たちは何とかドイツ士官にも身元がバレずにサンタローズの街に住むことができた。



そして何とかお前を無事出産することができ、ようやく私たちは幸せをつかんだと
心の底から思っていた。

しかしお前を出産させてすぐのことだ、私の留守中にマーサはドイツ兵に身柄を拘束された。
私は赤ん坊のお前を抱いたまま身を隠すのが精一杯で、マーサを救ってやれなかった・・・。

本当にすまない、いいわけがましいが今私が捕まれば殺されるだけだったのだ。


719:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:42 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE124


しかもヤツらの狙いはこの私だけではなかった、私の持つ「指輪」が狙いだったのだ。
この世界には三つの伝説の指輪があるそうだ。

‘炎のリング’‘水のリング’そして‘命のリング’。

この三つのリングを手にした者は、覇王のチカラを手に入れるという言い伝えがある。
確かにどの指輪もかなりの値打ちはあるが、指輪のチカラというのはただの迷信だと思う。
だがお前がもしその指輪を手にしていたら充分気をつけろ。ヒトラーはそれを狙っている。

早めに売ってしまうか捨てるかどちらかにしろ。それは私たちユダヤ人にとって危険な指輪だ。



リュカよ、お前の母マーサはおそらくヒトラー総統のもとにいるはず。
反逆者は殺される運命にあるが、いかにヒトラーといえど身内を死刑にするとは思えん。


720:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:45 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE125


戦争が終わったら、一度母さんに会ってやってくれまいか。
マーサはつらい思いをさせたお前に対して、心から謝罪したいそうだ。
息子によってどんな仕打ちも受けると。

だがこれだけはわかってくれ、リュカ。


私もマーサも、お前を産んだことに関して 少しも後悔などしていなかった。
私もマーサも、お前のことは心から愛していた そしてこれからも。

私たちにとって かけがえのない 愛する家族なのだ。



―――パパス・グランバーグより



~~~~~~~~~~~~~~~~


721:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:46 50K1Eh7d
。・゜・(ノД`)・゜

722:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:46 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE126


この手紙を読んで間もなく、私は食欲がなくなった。

母がヒトラーの妹だと知って急にめまいが起こり、今朝食べたものをすべて吐き出してしまった。
あの悪魔の親玉の妹が母マーサだなんて・・・・

この私の身体にもあの総統ヒトラーの血を受け継いでいると思うと、ますます胸クソ悪くなり
一日中便器とにらめっこをした。

最後には吐くものがなくなって胃液に血がまざっていた。

伝説の三つの指輪のことなどどうでもいいが、じゃあ母は今どこで何をしているというのだ。
ベルリンのナチス本部で、ヒトラーと一緒に次の攻撃目標でも相談してるとでもいうのか。


私はこの日から何を信じていけばいいのかわからなくなり、道を失うことになる。
間もなくサラボナの街は戦場と化す運命にあるが、もう母のことを考えるのはやめた。

目の前にある現実だけ見て生きてゆこう、そうでも考えないかぎり生きていけない。


私はもはや 生きていく理由を探すために 生きているようなものだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

723:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:48 EO4JwW6H
。゚(゚´Д`゚)゜。

724:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:48 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE127


ベルリン  ナチス・ドイツ軍本部 総統室


コンコンコン


ゲッベルス「<誰だ。>」

*「<私です、総統にお話があります。>」

ゲッベルス「<総統、マーサ様が・・・>」
総統「<入れろ。>」

ゲッベルス「<はっ。>」


ガチャリ


ゲッベルス「<どうぞ。>」
マーサ「<失礼します。>」


725:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:49 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE128


ヒトラー総統の前にマーサがやってきた。


総統「<何しに来た。>」

マーサ「<総統、連合軍がノルマンディーに上陸したとのことです。>」
総統「<知っている、それがどうした。>」

マーサ「<ソ連軍の侵攻を止められないそうです、このままだと防衛ラインを
     突破されると思います。>」

総統「<何が言いたい、はっきり言ってみろ。マーサ。>」

マーサ「<兄さん・・・もう降伏なさってください、これ以上戦ったところで・・・>」
総統「<黙れ!指輪を手に入れるまでは絶対に降伏などせんぞ!>」

マーサ「<あんなもののためにいったい何万人のユダヤ人が殺されたと思っているんです!
     窓の外を見てください!今にもクーデターが起こりそうなんですよ!>」

総統「<お前があんな男と駆け落ちなどしなかったらこんな事態にはならなかった!
    身内じゃなかったらお前をとっくに撃ち殺しているところだぞ!>」


726:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:50 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE129


マーサ「<ではいっそのこと殺してください!私はもう耐えられないんです!>」

総統「<ほぅ、お前までもが私を裏切る気か。>」


ヒトラー総統はワルサーPPKを抜いた。

ジャキン!


マーサ「<う、うぅ・・・さぁ殺しなさい!>」

総統「<私にお前を殺すことはできないと思っておろう。違うか?>」
マーサ「<うぅ・・・>」

ゲッベルス「<閣下!>」
総統「<お前は黙ってろ!>」

マーサ「<私の夫を殺しただけでも飽き足らず、何十万人というユダヤ人を虐殺・・・
     どのみちベルリンが落ちるのは時間の問題です・・・兄さんの政権も
     ここまでです・・・。>」


727:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:53 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE130


総統「<私にどうしろと言うのだ、え?>」

マーサ「<無条件降伏を・・>」
総統「<ふざけるな!>」


バシ!


マーサ「<うぐっ・・・!>」

総統「<いいか・・・もう一度そのようなふざけたことを言ってみろ。妹のお前でも
    脳天に風穴を開けて、夫パパスの死体ともども海へ放り込んでやるぞ・・・>」

マーサ「<うぅぅ・・・>」


728:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 14:57 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE131


総統「<連れ出せ。>」
ゲッペルス「<は、はい。>」


マーサ「<に、兄さん・・・あなたは自分が殺されでもしないかぎり、戦争をやめようとは
     しないのですね・・・>」

総統「<だったらどうしたというのだ、お前が私を殺すか?>」

マーサ「<たとえ血を分けた兄妹といえど、そうするしかないのなら・・・>」

総統「<フン、笑わせるな。・・・おい、早く妹を連れ出せ。>」
ゲッベルス「<はい。>」


マーサ「<うぅぅ・・・>」

ゲッペルス「<マーサ様、こちらへ・・>」


マーサ「(兄さん・・・やはり私があなたを殺すしかないのね・・・)」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~


729:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:58 EO4JwW6H
(((( ;゚Д゚)))

730:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/03/05 14:59 50K1Eh7d
( ̄○ ̄;)

731:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:01 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE132


サラボナの街  ダンカンの宿屋にて


ビアンカ「リュカ!リュカ起きて!」

リュカ「う~ん・・・」
ビアンカ「さっさと起きなさい!大変よ!」

リュカ「な、なんだどうしたの?」

ビアンカ「反ナチス派の残党がこの街に逃げ込んだらしいの!ドイツ軍が戦車で
     この街へ向かってるらしいわ!」

リュカ「なんだって?!」



この日、東の地区で激戦を繰り広げていた反ナチス派の連中がサラボナの街へ
逃げ込んできた。ドイツ軍は装甲車まで用意してこの街を砲撃してきた。

戦争ならよそでやってくれと言いたいが、そうもいかないのが今の時代だ。

私たちには武器も戦うすべも何もなかった。
ただ生き残るということだけで精一杯だったのだ。


732:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:02 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE133


ビアンカ「早く逃げるのよ!建物の中は危険だわ!」
リュカ「わ、わかった!」

ダンカン「ビアンカ!私のサイフを知らんか!」

ビアンカ「お父さん!今はお金より逃げることが先よ!」
ダンカン「し、しかし金は少しくらい持っておかないと・・」



だがドイツ軍の攻撃はさっそく開始された。

ズガァァンンッ!! ――ッドォォンン!!



ビアンカ「きゃああ!!」
リュカ「ビアンカ!こっちだ!早く!」

ダンカン「うひゃああああ!!」


~~~~~~~~~~~~~


733:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:03 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE134


商店街大通り



反ナチス派A「<死ねやあああああ!!>」


ズダダダダダダ!!


ドイツ兵P「<うああっ!>」

ジャミ中尉「<こ、この野郎!>」


ダダダダダダ!!


反ナチス派A「<うおぁぁっ!>」


734:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:04 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE135


ゴンズ中尉「<おいジャミ!残党はまだ残ってるのか!>」
ジャミ中尉「<わからん!それほど残ってはないと思うが・・・!>」


反ナチス派B「<バカめ!>」


ゴンズ中尉「<ハッ!危ない!ジャミ!>」
ジャミ中尉「<!!>」


ガツン!


ジャミ中尉「<うあああっ・・・!>」



~~~~~~~~~~~~~~~


735:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:07 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE136


商店街裏通り


リュカ「大通りは危険だ、銃撃戦の流れ弾に当たってしまうよ。」

ビアンカ「街の人たちは無事に逃げられたのかしら・・・」
ダンカン「わからん、もうこの街のどこも安全な場所などない。」

リュカ「しばらくここに隠れていよう、ドイツ兵もそれほど残ってはない。
    もしかしたら反ナチス派が勝つかもしれないよ。」

ビアンカ「そうだといいけど・・・」



この日の戦いでたったの半日で建物は崩壊され、ドイツ兵はもちろん
街の住人も何人か犠牲者が出た。

だが反ナチス派は勇敢にも最後まで戦いぬき、ついにドイツ軍の装甲車まで破壊した。

彼らの戦いは火炎ビンやわずかな機関銃だけだった。
だが作戦が良かったのだろうか、生き残ったドイツ兵たちは囚われ、街の広場に全員
集められて見せしめの処刑が行われた。

~~~~~~~~~~~~~~~~


736:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:08 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE137


公園広場


ビアンカ「リュカ、もう安全よ。」

リュカ「ビアンカ、あそこ見てみなよ。」
ビアンカ「え?」

ダンカン「ドイツ野郎が処刑されるようだな、自業自得だ。」



反ナチス派「<おい、何か言ったらどうだ。クソ野郎。>」

ジャミ中尉「<フン・・・>」
反ナチス派「<何も言うことはなしか。>」


ダーン!


ジャミ中尉「<がっ・・・>」


ドタリ


737:K ◆6VG93XdSOM
04/03/05 15:10 0olQCRLU
      戦場の花嫁  PAGE138


反ナチス派「<お前はどうだ?このユダヤ人殺しが。>」

ゴンズ中尉「<さっさと殺せ。>」
反ナチス派「<言われるまでもねえよ、ブタ野郎。>」


ダーン!


ゴンズ中尉「<うぐっ・・・>」


ドタリ




リュカ「・・・・・」

ビアンカ「ね、ねぇリュカ。もう行きましょ。」
リュカ「・・・・・」



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch