FFの恋する小説スレPart2at FF
FFの恋する小説スレPart2 - 暇つぶし2ch485:名前が無い@ただの名無しのようだ
04/01/10 10:05 ImIItvs7
ではお次は480KB(約残り40レス)踏んだ方が立てればいいのかな?

486:雫夜 ◆sizukTVGK.
04/01/11 01:29 1eqR4Gnq
ツッコミのあった部分を訂正し、かつ>>466さんの現在ある関連スレを加えたテンプレで新スレ立てました。
>>466さん乙

FFの恋する小説スレPart3
スレリンク(ff板)l50

487:ドリル装備で埋立工事中 ◆Lv.1/MrrYw
04/01/24 23:19 kZCmASeK
“埋め立て地”……ある程度察してやって下さい。









これ以下そうとう“中途半端”なネタの為、色々覚悟して読むことをお薦めします。
カプネタではありません。

488:罪業の名1
04/01/24 23:22 kZCmASeK
FF6・崩壊前の飛空艇(ブラックジャック)入手イベントを掘り下げて妄想してみた話。

------------------------------------------------------------------

「お願いエドガー……」
 懇願するセリスを目の前にして、エドガーはその申し出を拒むことは出来なか
った。求めに応じてそれを手渡す。
「ありがとう」
 自分の手から離れるコインに、僅かだが一瞬ためらったように手が震えた。
 一礼して背を向け、セリスは受け取ったコインで世界一のギャンブラーに勝負
を挑む―四方を海に囲まれた帝国領へ乗り込む為には、彼と飛空艇の協力が不
可欠なのだ―これは、やむを得ず選ばれた最終手段。
 本当は、そんな姑息な真似をしたくはなかった。
 それ以上に、隣にいる弟に10年前の真相を知られたくはなかったのだ……。



『エドガー、どんな事情があっても嘘をつくのは良くないわ。そんな男、最低よ』
 ―初めて恋い焦がれた女性の言葉。
『嘘をついてしまったら、責任を持ってそれを貫け。相手を思うなら尚更だ』
 ―厳格だが、優しい父王。
 そして。

『ウソつきなんて大嫌いだ!』




489:罪業の名2
04/01/24 23:28 kZCmASeK
 心の奥にしまわれた大切な思い出と、小さな痛みを抱えながら。エドガーは
セリスの投じたコインの軌跡を目で追った。
 決してセリスが負ける事はないその賭の行方を、ただ黙って見守る。
「……私の勝ちね。約束通り手を貸してもらうわ」
 ―オペラ女優だろうがイカサマろうが、何だってやってやる―元帝国将軍
と言うには若すぎる少女の声に垣間見えたのは気丈さと、覚悟。
 それを目の当たりにして、エドガーは思う。
(私も、腹をくくらなければならないか……)
 それでもまだ、一部の望みを捨てきれずにいた。
 ―願わくば。
「貴重な品だな、これは」
 ―そのコインには触れないで欲しい、と。
 セッツァーはコインを拾い上げて苦笑する。
 ―何も言わず、見過ごしてくれないだろうか?
 声に出せぬ願いに反して、目の前の男は。

「両表のコインなんて初めて見たぜ」

 エドガーが最も恐れていた言葉を、会ったばかりのギャンブラーは
いとも簡単に吐き捨てた。
 それは10年もの間、明かされることのなかった嘘が露見した瞬間。

「そのコインは……!? 兄貴!」

 ウソつきが嫌いだと言われたあの日の出来事が、昨日のことのように甦る。
 内心を貫く痛いほどの罪悪感に、エドガーは顔を上げることができなかった。

490:罪業の名3
04/01/24 23:40 kZCmASeK
                    ***

 世界に唯一の飛空艇・ブラックジャック号は空飛ぶカジノである。所有者
セッツァー=ギャッビアーニという男は派手好きで、予告状まで出して舞台公演中に
主演女優を浚おうという破天荒な振る舞いがそれを物語っている。揚げ句に艇(ふね)
と引き替えに女を買おう、などと平然と言ってのける男だ。
 しかし。そんな数々の信じがたい悪行とは対照的に彼の顔立ちは秀麗で、黙って
さえいれば品性を備えた―それこそ美男と形容しても支障のない―容姿をしている。
「で?」
 あからさまに不機嫌を露わにした声でセッツァーは問い返す。
 睨み付ける様な鋭い視線の先には、つい先刻知り合ったばかりの『フィガロ国王』だと
いう青年の姿があった。彼は賭博場の隅の壁に背を預け―何事かを考えているの
だろうか―腕を組み、静かに佇んでいた。
「なんだ?」
 エドガーは何も口に出していない。それでも何故、問い返すような口調を向け
られているのか理解し難い。それに加えて不機嫌を隠さない相手の声には、こちらの
気分まで不愉快にさせられる気がした。
「お前さ、俺に対して敵意もってねーか?」
「べつに」
 エドガーはセッツァーの顔を見ずに答える。―敵意は持っていないが興味も
ない―できれば、あまり深く関わり合いにはなりたくない人物だ、とは思っていたが。
 もちろん、本音を口に出すような事はしなかった。

491:罪業の名4
04/01/25 23:25 /okAb/zU
 ここで無用な混乱を招いたとあっては元も子もない。
「ふーん。ま、どうでも良いけど」
 そんな事情を知っているとでも言いたいように、エドガーに向けられた視線と
声音には、どこか含みがあるものに思える。
「…………」
 それにしても、どうでも良いのなら話しかけないで欲しい物だ。と、内心でエドガーは
反論を呈す。
「言いたいことがあるなら口に出せば良いだろう?」
「…………」
 セッツァーの実に的を射た指摘にも、エドガーは一切の反応を示さない。
 これは面白いといった具合に、セッツァーはさらに続ける。
「なんだ? それが国王サマの性分ってか?」
「…………」
 煽るような口調にも反応する事なく、エドガーはただ沈黙を守り続けている。
「ま。アンタぐらいのポーカーフェイスじゃないと、イカサマ仕組むなんてマネ
は到底ムリだろうな。納得したぜ」
「…………」
 その言葉に、冷ややかな視線だけが向けられた。
「何だよ?」
「…………」
 自分に向けられる物言いたげな視線に問うてみるも、相変わらず返答は得られ
なかった。

492:罪業の名5
04/01/25 23:29 /okAb/zU

「……言っておくがイカサマとウソは見破られるもんだ。仕組む方はそれを覚悟
でやるモンんだぜ?」

 不敵に笑んでみせるセッツァーに、ようやくエドガーは重たい口を開いた。
「……『イカサマ』? それは心外だね」
 その口から紡がれる言葉はどこまでも冷たく、相手を突き放す。
「イカサマじゃないって言うんなら、何だってんだ? 一般庶民の俺にも分かる
ように説明してもらいたいモンだな、フィガロの国王さんよ」
 冷淡なエドガーの口調に負けず、セッツァーの言いぐさはやけに刺々しい。
「手段、だ」
「奇策ねぇ」
 物は言いようだな。と皮肉るセッツァーから、エドガーは視線を逸らした。
「まぁ良いじゃねぇか。俺はお前らに協力する。お前らは帝国領へ乗り込める。
その為に俺とこの艇(ふね)が必要だった、結果的に望みは叶ったわけだろ?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ問題ない。なのにどうして……」
 そして最初の質問に戻る。
「お前は俺を咎めるような目で見る?」
「……そんなつもりはない。だが、仮に君がそう感じる様な挙動をとっていたの
なら謝ろう。すまなかった」
「……誰も謝れとは言ってない」
「じゃあ何だ?」
 静かな中にも、エドガーの声には僅かばかりの怒気が伺える。
「その理由を聞いている」
「…………」
 しばしの沈黙を経て。
「理由なんて何もないさ」
 言い残して、エドガーは賭博場を後にしようと出口へ向けて歩き出した。
 そんな彼の背中に向けて、セッツァーは言い放つ。
「忘れるな国王サマよ。……協力した礼とやらは必ず頂くからな!」
 返答の代わりに、賭博場の扉が閉じられる音が響いた。

493:罪業の名6
04/01/28 01:18 FiB399mL



 どうも気分が悪い。それは初めて乗る飛空艇にも原因があったのかも知れない
が―気を紛らわすため風にでも当たろうと、エドガーはその足で甲板へと赴いた。
 眼下に広がる大地と、手の届きそうな位置にある雲が流れていく様は、初めて
空を飛ぶエドガー達にとっては非日常の光景だった。
 顔にまとわりつく後れ毛を手で押さえながら、目の前の光景に暫し見入っていた。

 ―それはかつて、幼い頃に憧れた大空。
    俺はあの頃、大空を飛ぶことを夢見ていた―

 風に逆らい前進を続ける飛空艇。その身の横を通り過ぎる風と共に、エドガーの
記憶は過去へと遡る。

494:罪業の名7
04/01/28 01:23 FiB399mL

                    ***

 機械弄りは好きだが。
「……この城の基幹を成す仕組みが完成したのは……」
 こういう退屈な話はどうも好きになれない。目の前で懇々と語り続ける神官長
の姿を見ながら、そんな風に思った。
(まるで「寝てくれ」って言ってるみたいだな……ばあやの話はいつも……)
 話半分でエドガーは窓外に目を転じた。外には雲一つない青空が広がっている。
その中央では、己の存在を十分すぎるほどに主張している太陽が輝いていた。
(……外、行きたいな)
 半ば軟禁とも言える状況に置かれた少年の目には、窓の外に広がる青空は
いちだんと眩しく見えるものだ。
 はぁ。
 小さく漏れた溜息の音に、神官長は話を止めて視線をおろした。
「エドガー様。ちゃんと聞いておられますか?」
「はい」
 神官長の問いかけに、幼いエドガーは室内に視線を戻すとにっこりと微笑んで
みせる。愛くるしさと社交性をバランス良く兼ね備えたその笑顔に。
「では、続けますよ?」
 敵う者はいなかった。

495: ◆I.gzBQjvh2
04/01/29 06:23 K+6vZGMB
スラムダンク32巻発売決定キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
URLリンク(unyuu.yoll.net)

496: ◆x835gPWO5A
04/01/29 06:30 XYRasS6i
スラムダンク32巻発売決定キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
URLリンク(unyuu.yoll.net)

497:鈴 ◆BELLSBdFOI
04/02/02 23:16 oj1mfFph
埋めたて支援。
最初はネタだったはずが何時の間にか続きものになってますた。
リュックファンの方には正直おすすめできない。


498:(題名未定)
04/02/02 23:18 oj1mfFph
助けなければ良かった。
そうすれば今あいつはここにいなかった。
優しくしなければ良かった。
そうすればあいつのことなんて何も知らなかった。
好きにならなければ良かった。
……今さらそんなこと言っても、遅すぎるけど。

最初は、なんだかワケの分かんない奴だった。
自分は千年前に滅びたはずの街からやって来たんだーって言って聞かなかったし、
寺院のこともスピラのことも、全然分かってなかった。
アルベドのことも、覚えてなかった。
だからかもしれない。あたしたちを「偏見」のこもった目で見なかったから。
好意はそこから始まって、だんだん恋に変わっていった。
傾きかけた寺院からあいつを助け出して、飛空挺の引き上げ作業を(なかば強制的に)手伝ってもらって、
そして、シンに襲われてあいつが消えたあの夜。
あの夜から、何かにつけてあいつの顔がちらちらと浮かんでくるようになった。
その時はまだ、好きとかそういう言葉で表せるような気持ちを抱いていたワケじゃない。
だけど、もう一度会いたい、とは思っていた。
シンに呑み込まれた人が無事に戻ってくる確率なんてほんのわずかだったし、
(一回あいつは呑み込まれて戻って来れたみたいだったけどラッキーなんてそうそう続かないものだよね)
いつか毒気が抜けたら、あいつはアルベドに助けられたことを最悪の体験だと思うかもしれない。
そういうことを考えると、あたしがあいつにもう一度会って楽しく話ができる可能性なんて、
寺院がアルベドと仲直りするぐらいあり得ないものだった。
だけど、あたしは頭のどこかで、もう一度会えることを予感していたのだと思う。
そしてあり得ないほどの偶然の連続を重ねてあいつが再びあたしの目の前に現れた時。
あたしは、運命から偶然から、とりあえずあたしとあいつを引き合わせた全てを恨んだ。
それと自分の「女のカン」を恨んだ。


499:(題名未定)
04/02/02 23:19 oj1mfFph

そして分かった。
人生なんて、何が起こるか分かんないものだって。
それから、運命も偶然もロクでもないものだって。
けど一番ロクでもないのは、希望を捨てきれずに旅に同行した、あたしだったのかもしれない……


500:(題名未定)
04/02/02 23:24 oj1mfFph
書き忘れました。
カプはティユウで、ティーダに片思いのリュック。

テーマは女の業やら嫉妬やら…(ゴニョ


501:マリスゴールド 3
04/02/04 01:21 Axpha1lj
前回は>>498-499

「あっ!?リュック、リュックだよな!?」

二度目に会ったあいつは、ユウナのガードをやっていた。
ユウナはあたしのイトコで召喚士。おとなしくて、清楚で、可愛い。およめさんにしたいタイプって感じのコ。
で、当時召喚士を助けるためにいろんな活動をしていたアルベドのあたしに課せられた任務は、
ユウナをホームまで連れて行くこと、だった。もちろん手段は問わず。
幻光河で待ち伏せしてユウナを連れて行こうとしたんだけど、そこにあいつが血相を変えて飛び込んできた。
あいつは瞬く間にあたしの乗ってる機械をコテンパンにして、ユウナを助け出しちゃった。
別に、あたしの操縦が悪かったワケじゃないからね。
でもその時のあいつの表情ったら!メチャクチャ真剣で、怖かった。
モンスター相手にへっぴり腰で戦ってた頃とは気迫が違うみたいだった。
ああ、記憶取り戻しちゃったんだね、やっぱりチイもアルベドギライなんだね、ってその時は切なくなったけど、
実はそうじゃなかったんだ。
河原で顔を合わせた時は全然普通だったし、むしろ「顔色悪いよ」なんて心配しちゃってくれたし。
「毒気」は相変わらずみたいだった。
あたしは文句の一つも言いたかったけど、いつもオヤジやアニキにぶつけてる量の十分の一くらいしか言えなかった。
やっぱり再会できて嬉しかったのと、ケガが痛かったのと、それから、ムカついたのと……ちょっぴり、切なかったのかな。
ユウナを取り戻そうと向かってきたあいつのまなざし。ガードが召喚士に向ける……以上のもの。
大事な召喚士を取り戻そうとして向かってきた奴らはいっぱいいたけど、あいつほど強いまなざしをぶつけてきた奴は初めてだった。
なんでかなぁ。ピンときたんだ。
こいつ、絶対ユウナのこと好きだな、って。
自慢じゃないけどあたし、推理力とカンには自信があるんだ。でも、それって必ずしもイイことじゃない。

ユウナのガードになろうと思ったのは、ちょうどその時だ。





502:マリスゴールド 4
04/02/04 01:23 Axpha1lj

もちろん、ユウナのことは純粋に守りたいと思ってた。
今まで一度も会ったことはなかったけど、あたしと同じ年頃のイトコだし、こう……なんて言うのかな、
守ってあげたくなるタイプ?だったんだ。
それに想像以上にイイ子だった。
っていうのは一緒に旅を初めてから段々分かったことなんだけどね。
あたしにとってたとえ会ったことのないイトコでも、ユウナの話はオヤジに耳からオクトパスが出てきそうなくらい聞かされてたから、
あたしの中でユウナは家族同然だった。
アルベドは家族を大事にしたいっていう気持ちをすんごく大事にする。
だからほとんど決めてたんだ。だけど決定打はあいつとの再会。
ユウナのことが好きだろうと何だろうと構わない。ただ、一緒にいたかった。一緒に肩を並べて戦いたかった。
っていうのはタテマエで、そこに……もしかしたら、もしこのまま偶然が続いて、
あいつがあたしを好きになってくれたらっていう、都合のイイ想像が存在していたのは確かだった。
そうだ、思い出した。あたしはあいつが好きなのかなって気付いたのも、その時だったんだ。
その時から、あたしは自分の気持ちを巧妙に隠し始めた。
いつも明るく、ニギヤカにしてれば気付かれないだろうって思って。いずれ熱も冷めるだろうって思って。
アーロンにじっーと見つめられた時にはもしかしてフジュンな動機を見抜かれた!?とか考えて一瞬冷や冷やしたけど全然違った。
アルベドのことだって分かってむしろ安心したくらいだ。頭の中がごっちゃになってる時には、ホントに変なことを思いついちゃうみたい。
頭の固そうなオッサンに、そんな芸当とてもできそうにないしね。
ともかく、ユウナも、ユウナのお姉さん役のルールーも、他のガードの仲間も、あたしのメンバー加入を拒まなかった。
むしろ歓迎してくれた。ユウナを守りたいという思いが、より強くなったんだから。
あたしの目的はみんなとはちょっと違って、ユウナを守って旅をやめさせること、だったけど。
そのころは……ユウナを守ることが、あたしにとっての何よりの優先事項だったんだ。
少しずつ燃え始めた火種を、確実に消し止められると思っていたころ。



503:ドリル装備で埋立工事中 ◆Lv.1/MrrYw
04/02/06 23:21 +33H8YHY
>>497-502
なんて言うんだろう? ティーダと共に正面きって「ユウナを死なせない方法」を
考えていた……と、言うことはこの二人は“対究極召喚”という見方では共同戦線を
組んでいた訳で、物語はティーダ(あるいはユウナ)視点だったから描かれなかった
もう片方の面が描かれて(゚д゚)ウマー。
……埋め立て地なので、チョット変な事を口走りますが、皆さんなんで一人称が上手い
んですか!?





思っていたよりマトモな作品(“オチが正常”という意味)になりそうだけど、書く手が
止まった罠(w。

504:罪業の名8
04/02/06 23:25 +33H8YHY
(前話>>488-494)
-------------------------
 フィガロ城の一室で、二人の王子は日々勉強に勤しんでいる。教育係として彼らに
ついていたのは、知識豊富な熟年の神官長だった。
 彼女は再び話を始めようとしたのだが、隣に座っていた今一人の様子に気付いて,
僅かに肩を落としながら声を発した。
「……。マッシュ様。マッシュ様」
 いくら人生経験を積んできた彼女とて、やんちゃ盛りの幼い男子二人には少々
手を焼いている、というのが本音だった。
 兄エドガーは一見まじめに聞いているかと思えば、いつも違う事を考えている
し。弟マッシュはすぐに寝てしまう。
「……? ……。あ!」
 ―大人でさえ退屈だと感じる物だから、仕方ない事かも知れない―とは思
いながらも、そう言うわけにはいかない。
 彼らはこの先、フィガロを背負う事を宿命づけられた子なのだから。
「お願いですから、私のお話をお聞き下さいますよう……」
「ご、ごめんなさい」
 眠い目を必死に瞬かせながら、マッシュは素直に詫びた。
「それではお二人とも、先を続けますがよろしいでしょうか?」
「はい」
「うん」
 こうして、今日もフィガロ城の一室では幼い双子の兄弟がそれぞれ睡魔と戦って
いるのであった。

505:罪業の名9
04/02/06 23:28 +33H8YHY


「ねえ」
「なんだい?」
 あの長い話から解放され、二人は回廊を歩いていた。
 フィガロ城が砂中へ沈む時ここは姿を消すのだが、地上に滞在している間は外に
迫り出て、灼熱の太陽と紺色に近い青空と共に、まとわりつくような暑さを満喫できる
のだ。
 その回廊の中程まで来た所で弟は立ち止まり、頭上に広がる空を見上げて
こう言った。
「……おれ、空を飛びたい。『砂の中に潜るお城』より、『空を飛ぶお城』の方が
かっこいいよ絶対!」
「…………」
 真顔で訴える弟の姿には、さすがのエドガーも苦笑を禁じ得なかった。
 この城の潜航技術が完成したのは今からおよそ200年前―ついさっきの神官長
の話ではないが―以来、数えきれぬ技術者達が、熱意と使命感をもってフィガロ
城の改修と機能向上に力を注いだ。
 いわば、この城そのものがフィガロの歴史―過去を生きた者達―の結晶、
なのである。幼くもマシーナリーとしての才に目覚めつつあったエドガーには、
やや皮肉とも受け取れる言葉だった。
 けれど、エドガーが弟に向けて口に出したのは。

「どうして空を飛ぶ城の方がかっこ良いと思うんだ?」

 そんな疑問だった。


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