04/02/02 23:18 oj1mfFph
助けなければ良かった。
そうすれば今あいつはここにいなかった。
優しくしなければ良かった。
そうすればあいつのことなんて何も知らなかった。
好きにならなければ良かった。
……今さらそんなこと言っても、遅すぎるけど。
最初は、なんだかワケの分かんない奴だった。
自分は千年前に滅びたはずの街からやって来たんだーって言って聞かなかったし、
寺院のこともスピラのことも、全然分かってなかった。
アルベドのことも、覚えてなかった。
だからかもしれない。あたしたちを「偏見」のこもった目で見なかったから。
好意はそこから始まって、だんだん恋に変わっていった。
傾きかけた寺院からあいつを助け出して、飛空挺の引き上げ作業を(なかば強制的に)手伝ってもらって、
そして、シンに襲われてあいつが消えたあの夜。
あの夜から、何かにつけてあいつの顔がちらちらと浮かんでくるようになった。
その時はまだ、好きとかそういう言葉で表せるような気持ちを抱いていたワケじゃない。
だけど、もう一度会いたい、とは思っていた。
シンに呑み込まれた人が無事に戻ってくる確率なんてほんのわずかだったし、
(一回あいつは呑み込まれて戻って来れたみたいだったけどラッキーなんてそうそう続かないものだよね)
いつか毒気が抜けたら、あいつはアルベドに助けられたことを最悪の体験だと思うかもしれない。
そういうことを考えると、あたしがあいつにもう一度会って楽しく話ができる可能性なんて、
寺院がアルベドと仲直りするぐらいあり得ないものだった。
だけど、あたしは頭のどこかで、もう一度会えることを予感していたのだと思う。
そしてあり得ないほどの偶然の連続を重ねてあいつが再びあたしの目の前に現れた時。
あたしは、運命から偶然から、とりあえずあたしとあいつを引き合わせた全てを恨んだ。
それと自分の「女のカン」を恨んだ。