03/05/08 23:13 uakOzuNy
と、言うわけで飛空艇機関室。
甲板で交わされたセッツァーとロックの仏頂面会談の事実など知る由もなく、
エドガーは黙々とエンジンの基盤と向かい合って作業に没頭していた。
趣味と実益を兼ねたマシーナリー―技師としての腕は一級品で、飛空艇のメ
ンテナンスは彼とセッツァーが分担して引き受けていた。ブラックジャックと多
少構造の違いはあるものの、ファルコンの仕様にも慣れ、久々の点検作業も仕上
げの段階に入ろうとしていた。
「機械いじるのってそんなに楽しいか?」
以前、機関室で一人作業に没頭するエドガーにロックが尋ねた事があった。
楽しい―と言うのも確かにそうなのだが、エドガーがこういう作業に没頭する
時は、表に出さなくとも何かしらの理由があったりする。
まさに今日がその良い例だった。
弟マッシュとは約10年間離れて暮らしていたし、ケフカに蹂躙され退廃しきっ
た世界で「明るく生きろ」なんて言う方が無理なのかも知れない。だがそれでも
マッシュはいつも前向きで、笑顔を絶やす日はなかった。
だからこそエドガーは、今日のマッシュをまともに見る事ができずにいたのだ。
あれほど肩を落とした弟の姿は、これまで一度も見たことがない。父王がこの世
を去った時でさえ、あんな風に落ち込んだりはしなかったのに。
(……いや、そうじゃない)
心の中に次々とわき起こる思いを振り払うかのように、エドガーは大きく頭を
振った。
(そうじゃないんだ……)
マッシュが肩を落としている原因は言うまでもない。けれど、ああまでして彼
がガウと父親を引き合わせようとした理由は?
(…………)
そして、苦しいであろう胸の内を誰にも―兄である自分にさえ―打ち明け
る事なく、一人抱え込んでいる本当の理由は……。
(……“父親”……)