03/04/29 14:20 wkGnUcio
>>269
そうですよね。確かにあんまり(・A・)イクナイ!スレタイですけど
この良スレ、潰したくないです。
というわけで今まで千一夜スレで投稿させてもらってた
「スニフの恋人」はこちらにお引越しさせていただきます。
今までの既投稿分はこちらにまとめました。
URLリンク(ane2ch.hp.infoseek.co.jp)
このアドレスは後日変更予定がありますのでもしもエラーが
出たらこちらをから入って下さい。↓
URLリンク(ane2ch.hp.infoseek.co.jp)
273:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/04/29 22:16 6pWo4I38
良スレ~
274:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:38 buxyirmS
■ ■ ■
午前中に手続きは済んだ。お昼からは希望の時間割を作る事と部屋の片付けに割り当てられた。
食堂で時間割を作っているとエマさんが来た。
「どう、何かわからない事ある?」
「いくつか授業内容がよくわからないのがあるんです」
「どれ」
エマさんは丁寧に説明してくれた。
「ところでご飯は食べたの?」
エマさんは私の前にコーヒーのカップしかないのを目敏く見つけた。
「パンを買いに行ったんですけど、売り切れでした」
「あらー、体壊すわよ?」
エマさんは私を連れてカウンターの隅っこに行った。
そこには誰もいない。
「すみませーん。適当に何か見繕ってくださーい」
エマさんは奥に向かって声をかける。
「おや、エマちゃん。アンタさっき日替わり食べてなかったかい?」
食堂のおばさんが手をふきふき現れた。
「新入生がパン買いそびれてお昼食べてないんです」
「あらあら。気の毒に。ちょっと待ってて」
ほどなくトレイにいろんな料理をちょっとずつ盛り合わせたセットが目の前に差し出された。
「ここのパンは人気があるからね。向こうが売り切れだったらこっちにおいで」
おばさんはにこにこ笑って言った。
「支給された食券があるでしょ?一枚渡して」
エマさんの説明のとおり、私は食券を差し出す。
「ありがとうございます。無理お願いしてすみません」
私はおばさんにお礼を言った。
おばさんはきょとんとしてから笑い出した。
275:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:39 buxyirmS
「ずいぶん育ちのいいお嬢さんだねえ。
始終食いもんよこせって悪ガキに怒鳴られてるからお礼なんて言われるとこそばゆいよ」
「オリーの従妹で妹みたいな子なんです」
エマさんが説明するとおばさんはまた笑った。
「おやおや。兄ちゃんは妹を見習った方がいいんじゃない?」
おばさんは笑いながら手近にあった苺を幾つか私のお皿に載せた。
「じゃあ、これはアタシからのおまけ」
「すみません」
私が慌ててもう一度頭を下げると、エマさんとおばさんはまた笑った。
「向こうのブースが売り切れって言う時は正規のメニューが終わりました、って事なの。
だから奥のおばさんに声をかけたら半端な料理や残りの材料で作ったおまかせで良ければ何か食べさせてもらえるから」
ガーデンの料理はわりとおいしくて、エマさんはコーヒーを片手に私の時間割編成に付きあってくれた。
なんだか今日はツイている気がしてうれしかった。
小一時間で履修希望の時間割が出来た。
「ありがとうございました。早速提出してきます」
「教官控え室わかるわね?荷解きも手間取りそうだったら言ってね。1900には部屋にいると思うから」
エマさんは部屋番号を私のノートのはしっこにメモしてくれた。
授業があるというエマさんと別れ、時間割を提出して寮に戻った。
私が割り当てられた寮の部屋は二人部屋なんだけど、同室の人はいなかった。
案内してくれた先輩が言うには他のガーデンから転校してくる予定の人がいるので空けているらしい。
ここのガーデンの寮は収納スペースの関係で、入寮時に持ち込み可能な荷物の量と内容が決められている。
指定サイズのコンテナに三つまでと言うのが決まりだった。
もっとも、授業に関係ある資料や道具は後から別口で持ち込みすればいいらしいので私は最低限の身の回りの
道具だけを持ってきた。
276:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:40 buxyirmS
一般学生の部屋は共有スペースにテーブルとテレビ(ビデオなんかのAV機器が一通り付属している)があって、
シャワー、トイレ、洗面スペースが付いている。
寝室はそれぞれ独立してドアが付いているので一応プライバシーが保たれている。
私は寝室に付いている小さいクローゼットに着替えを収めた。
さほど荷物の量は多くなかったので夕方には荷解きは終わった。
夕食の時にはエマさんにもお兄ちゃんもいなかったので少し寂しかった。
部屋に戻ると、先輩が私に支給される一般学生の制服を届けてくれた。
「ありがとうございます」
私はいつもの通り頭を下げた。すると先輩は困ったように笑った。
「あの……私、一年早く入学したけれどあなたと同い年で、明日から同じクラスなんです」
「そうなんですか?」
「ええ、だから敬語を使っていただかなくても普通に喋ってもらえたら……」
「わかりました……よろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ。女の子があんまりいないクラスなのでうれしいです」
「よかったら、いろいろ教えていただけませんか」
「ええ、もちろん」
そこまで言って私たちは顔を見合わせて吹き出した。
お互い敬語を止めようと言っておきながら一向に止める気配がないんだもの。
「なんだか、変。私たち」
「本当にね」
私は部屋に入ってもらってお話する事にした。
電気ポットのお湯が沸いたのでティンバーの人がよく飲む薄荷入りの香草茶を入れた。
「わあ、すごくいい香り」
先輩改め明日からのクラスメートのアリシアさんはカップの湯気の香りを嗅いで目を輝かせた。
アリシアさんはお茶好きだそうで、このお茶もすごく気に入ってくれた。
「シグネさんは何の専攻なの?」
アリシアさんは私の本棚を見て不思議そうに言った。
気持ちはわかる。およそ女の子らしくないタイトルの本が並んでるから。
277:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:43 buxyirmS
「機械類全般が好きなんだけど、目標は爆発物処理資格取得かなぁ」
「すごーい。私、物理とか工科苦手なの」
アリシアさんは睫の濃い瞼をぱちぱちと動かした。
「アリシアさんは?」
「私は従軍医療士になりたいの」
「え、そっちの方がすごくない?私、怪我とか見ると貧血起こすんだもん」
アリシアさんがくすっと笑う。
「私もそうだったわ。病理解剖とかさせられてるうちに少しは慣れたけど」
「じゃあクラスは一緒でも専門授業はあんまり一緒じゃないのかな」
「そうね。あ、でも私空き時間は大抵図書館にいるから」
「本が好きなの?」
「それもあるけど、私図書委員なの。だから苦手分野でもどんな本があるかは知ってるから何かあったら聞いてね」
「それってすごく助かる~。ありがとう」
それからしばらくアリシアさんに授業の事や行事の事をいろいろ教えてもらった。
すごく楽しくて、気が付いたら消灯時間が近くなっていた。
「大変。もう帰らないと。ごちそうさまでした」
「こっちこそいろいろ教えてくれてありがとう」
ドアから出掛けにアリシアさんが振り返った。
「私の事、よかったらアリスって呼んでね。友達は皆そう呼ぶから」
「うん、わかった。私の事もシグって呼んでくれるとうれしいな」
アリスはまた瞼をぱちぱちさせてからちょっと小首を傾げた。
「シグ?わかったわ。じゃあおやすみなさい、シグ」
「また明日ね、アリス」
ドアが閉まってまもなく点呼があった。
点呼の後、私はシャワーを浴びてベッドの上にころんと転がった。
不安もあったけど、良い事の方がいっぱいあった。
なんだか一日中誰かに助けてもらってた気がする。
おまけに早速友達まで出来てしまった。
ラッキーすぎて怖いくらいだ。
私は本棚から日記を取った。
278:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:44 buxyirmS
おじいちゃんが私の13歳のお誕生日にくれた日記帳だ。
綺麗な地紋の浮いた赤い革張りの表紙で、10年使える日記帳だ。
「これを毎日付けるようにしなさい。使いきった時、きっとお前の財産になるよ」
おじいちゃんはそう言った。
時々、本当に時々、病気の時は書けなかった事もあるけれどほぼ毎日私はこの日記を開いた。
今日のページを開いてペンを取る。
この日記は1ページを10段に区切ってどの年も同じ日付は1ページに書くようになっている。
去年までの三段にはきちんと書きこんである。そして去年の今頃の日記の最初にはこう書いてある。
「スニフへ」
ティンバーからバラムへ来た日、私は列車の中で「スニフ」を見つけた。
バラムのお父さんやお母さんは良い人で、お兄ちゃんは私を可愛がってくれるけれどそれでも
本当の家族が誰もいなくなった事がつらくて、不安なまま私はあの列車に乗っていた。
「スニフ」を見た時、不思議とほっとしたのを覚えている。
同じ年くらいの男の子が一人で列車に乗ってどこか行こうとしているのを見て安心したのと、
あの綺麗な人を見る「スニフ」はとても幸せそうで、うらやましかったのだ。
バラムに来た最初の日、私はほんの冗談で日記に手紙を書いた。
「スニフへ
はじめまして。今日あなたを列車で見ました。
バラムで一緒に降りたけど、どこに行くつもりだったんですか?
旅行?それとも家に帰ろうとしていたのかな。
あの綺麗な人はあなたの恋人?それとも片思いなのかなあ。
でもとっても好きな人だという事はわかりました。
うまく行くといいですね 」
279:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:44 buxyirmS
すごく、くだらなくて幼稚な手紙。
けれど「スニフ」がどんな人か想像して、恋の行方だとかを予想している限り私は幸せだった。
だからこちらの生活に慣れるまでの日記は全部「スニフ」に宛てて書いている。
バラムの生活に慣れてからはそんなに思い出す事もなかったけれど、それでも何かあった時に思い出すのは
不思議とあの日の「スニフ」の事だった。
まさか、再会するなんて。
しかもお兄ちゃんの友達で、話までするとは思わなかった。
私はちょっとだけお兄ちゃんのお節介にお礼を言いたくなった。
「お兄ちゃんありがとう」
私は男子寮の方を向いて一応お礼を言った。
そして今日の日記にはこう書いた。
「スニフへ
まさか会ってお話できるとは思いませんでした。
今日はどうもありがとうございました。
今度からはちゃんと「先輩」って呼ぶようにします。」
私は日記を閉じて照明を落としベッドに潜り込んだ。
280:姐 ◆ane/8MtRLQ
03/04/29 23:46 buxyirmS
というわけでシグネの長い入学初日は終わりです。
しかし書けば書くほどガーデンでの生活って謎が多い…。
>>268
ありがとうございます。
思っていた子で良かった…。
281:砂漠の王と風の覇者43
03/04/30 00:48 a5BSPjko
「…………」
「何で? なんでいっつもそうなんだよ! ……あたし達がどんだけ心配したと
思ってるんだよ……」
―なのにどうして、そんな風に笑うの?
やり場のない怒り。なぜエドガーに辛く当たっているのか、実のところリルム
自身もよく分からない。
けれど思考よりも早く溢れ出る言葉を止める術を、リルムは持ち合わせていなかった。
「セッツァーやマッシュは、あんたを助けたいから飛空艇で乗り込んで来たんだ!
その時から多少の無茶は覚悟してる! それでも……」
荒くなる口調に混じる、僅かの戸惑い。
「それでも絶対、助け出したかった! だから謝られる筋合いはないんだよ!!」
句を繋ぐうち、次第にその正体が見えてくる。
「……残される人が抱える痛みがどんだけツライか、分かってる筈でしょ……?」
多くの命を呑み込んだ大地、引き裂かれた仲間。
そして、平和と引き替えにシャドウを失ったあの日の記憶。
「もう、あんな思いはしたくないのに……」
「だから」
最後の言葉を消え入りそうな声で呟いたリルムに、咎めるようなエドガーの声が重なる。
「え?」
「だからって、君はあんな無謀な事をしたのかい?」
その口調に顔を上げたリルムが見たエドガーの表情は、今まで見たことが無い
程の険しさで。
「だ、……だって」
「セッツァーやマッシュならまだしも、リルム。君はあの時何を考えて飛び出した? それこそ命を捨てるのと同じ行為だ」
「…………」
リルムに返す言葉はなかった。
「君に先立たれて、残された者達はどう思う? ストラゴスさんやサマサの人々、
それに仲間達だって同じ事を思うだろう」
「…………」
まるでシャドウの二の舞だ。
でも。
「……じゃあエドガーは?」
282:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/04/30 00:59 a5BSPjko
途中、改行が無くて見づらい所があると思いますがご容赦下さい…。
どうしても、この一場面は1レスに収めたかったので、つい。
>>271
好みの問題ですが、漏れは先に挙げた一行の部分がちょうど良い案配で
読み手に想像させる余地があって(・∀・)イイ!と思ったんです。
自分ではそういう物が書きたいのだけれど、どうしても入れてしまう余計な言葉とかが
あるので、逆に好きなんですが…。って、余計な話ですたスマソ。
いずれにせよ、雷神に萌えた事は変わりないのですが。(w 時間があったらまた
読ませて下さい。
>>スニフの恋人
すっかり術中にハマった感がありますが、食堂のおばちゃんの描写なんか
ガーデン生徒の日常がありありと出ていて良いですね。
これを読んだ今、Disc2の校内放送で「食堂のパンを確保しろ」って選択肢を
迷わず選びそうになる漏れがいます。(w (選択肢、記憶違いだったらスマソ)
283:白 ◆SIRO/4.i8M
03/04/30 19:28 mMw5Zv2Z
推敲全然しないまま(待て( ゚Д゚)ゴルァ)コソーリ(゚Д゚≡*゚д゚)カキコ
あ、トリップ変えましたです。
284:浮金石(1)
03/04/30 19:29 mMw5Zv2Z
重力風が、大気の水分を凍らせる。
漆黒に金や白の斑を絡めた、浮金石の天空。
オーロラ色の、淡い緑の光が、森の深奥で沸き上がる。
魔晄の結晶が森に鏤められ、水に溶け、光る。
雪渓に、ちいさな子供が転がり落ちる。氷の薄い、凍てついた川へ向かって。
背の高い男の、長い指が大木の幹を捉え、子供の衿を掴んだ。
「──大丈夫か?」
「ニイちゃん、ありがと!」
村には不似合いな、黒の三つ揃いの男が、金髪の子供を背負う。
「…どうして…あんな所にいた?」
「星!星、木に登って見たー」
長身の男の、端正な容貌。紅の瞳が天を見上げる。
ニブルヘイムに辿り着くと、子供の母親が待っていた。
「この馬鹿!チビが夜中にウロチョロすんなって云ってっだろ!
とっととウチへぇんな!」
悪鬼羅刹も退散しそうな勢いで、小奇麗な母親が子供を家に押し込む。
「あ、あら、すいませんねぇ。ウチの豚犬がお世話になりました。
哥いさん、えらく良い男じゃありやせんか。お名前は?」
「……ヴィンセント。御子息が御無事で、何よりです。失礼」
長身の男が、神羅屋敷へ踵を返す。
母親はうっとりと頬を赤らめ、子供はジト目で母を見た。
風の中の氷が、光の柱となり、玲瓏たる氷河を照らし出す。
「…何をしている?…おまえ、名前は?」
「ペットボトルロケットー!おれ、シドってんだ」
「このままでは危険だ…貸せ」
285:浮金石(2)
03/04/30 19:30 mMw5Zv2Z
雪に、淡い花の香りが混ざる。雪の精霊が、笑っている。
「珍しいじゃない、ヴィンセント。子守なの?」
「今日は非番だ…ルクレッツイアこそ、無理をするな」
「あかんぼうがうまれんの?」
ルクレッツイアが、幼いシドの頭を撫でる。
「そうよ、坊や。おばさんのお腹には、赤ちゃんがいるの」
「おばちゃんじゃない!」
ちいさなシドが、眉間に皺を寄せ、俯く。
「お…おねえさん、だよぅ」
「ありがとう。子供が産まれたら、遊んであげてね」
神羅屋敷に、ピアノの音が反響する。
ステンドグラスが音を弾き、吸い取り、震わせる。
ルクレッツイアが歌っている。優しく、胎内の仔を撫でながら。
中で子は指をしゃぶり、微睡む。
「…産むのか」
「このままでは、産まれた途端に死ぬ子供よ」
でも、大切な人の子。
どんなに、おぞましい細胞実験のデータが出ていても
この子が助かるのなら、私は…。
ルクレッツイアは深い緑の瞳を伏せ、言葉を呑込む。
ふと、ヴィンセントが横に立った。
ピアノは連弾へ変わる。音符の一つ一つが溶け、共鳴し、睦み合う。
曲がしなやかに、一本葛となってゆく。
286:浮金石(3)
03/04/30 19:31 mMw5Zv2Z
「……え?」
「だから、そんな女は居なかったと云ってるだろう!帰れ!」
屋敷を神羅兵に追い返され、シドは考え込む。お八つを平らげた頃
「忍び込めば良いんじゃねーか?」と云う結論に達した。
実験動物用IDチップをポケットに入れ、窓からの潜入に成功。
余談だが、元実験動物の名は、ゴン太と云う
ハイウインド家愛玩のモルモットだった。
言い争っている声がした。
白銀の、異様に美しい赤子が叫ぶ。
「ママ…マンマァ!…ねぇ、何処!」
「ふん。もう喋るのか」
赤子の瞳孔は、猫と同じ針の形をしている。宝珠の淡い緑を宿した、眼。
「母に会いたいか?ならば会わせてやろう」
眼鏡の痩身の科学者が、赤子を抱え、地下に向かう。
「これが、お前の母だ。セフィロス。
二千年前の地層から発掘された、天からの厄災こそが!」
シドが見た者は──
紅色の渦巻き紋様を全身に描き、腹から胸迄、縦に裂けた口の女。
硝子の向うから、妖かしの光を宿した眼が、嗤う。
「…あ…!イヤ…!厭ぁ!」
「可愛いセフィロスよ。認めなさい。お前は人では無い。
人間のつもりでいる、宇宙から来た化け物だと」
若い宝条が笑っている。小さなシドの瞳に怒りが滾る。
287:浮金石(4)
03/04/30 19:34 mMw5Zv2Z
セフィロスは宝条に爪を立て、振払う。
「…全く、何て力だ!」
宝条は赤子を突き落とし、消えた。
サンルームで。小さなセフィロスが啜り泣く。子供の泣き方では無い。
声は無く。堪える様に手を握り、背中を震わせている。
「…男が泣くなよ」
「だれ?」
「将来の宇宙飛行士様でぃ。お前、スゲーな。宇宙から来たって?」
「あんまり、よく覚えてない…」
産まれたばかりであろうに、髪は既に肩迄伸び、立ち上がり喋る赤子。
けれど表情は幼く、儚い。
「僕の事…兵器だって、みんな云う」
「な、なにいってんでぃ!おまえの母ちゃん心配してたぜ!」
セフィロスの表情が変わった。
「ママを知ってるの?!」
「ん~あ~…。ちょこっとだけ、な。優しくて、美人だったぜ」
「ママなら知ってるよ。お腹に居た時、優しかった!」
にこやかに、幼いセフィロスが頬を紅潮させる。
「僕、きっと軍に入れられると思う」
「えー?気の毒だなぁ」
若干僅か二歳のシドには、話がややこしかったが。
「飛行機に乗れたよな。よし、俺も行く!」
288:浮金石(5)
03/04/30 19:35 mMw5Zv2Z
靴音と共に、大人の声がした。
「誰だい?よく此処迄入って来たねぇ」
「ガスト博士!」
「やべ!ごめん!ごめんなさい!」
手入れの良い髭を貯えた、青年博士がシドを抱き上げた。
「ガスト博士なら大丈夫。やさしいよ」
「な、なあ博士!ルクレッツイアって人、知ってる?」
博士の表情が曇った。
「彼女なら入院中だよ。赤ちゃんを産んだからね」
「ヴィンセントの兄ちゃんは?」
「任務で、遠くに行ったと聞いてるが」
「そっか」
ふと。博士はシドの、異様な眼の輝きに気付いた。
深く、内から発光する。蒼い金剛石の瞳。
「君は…。魔晄の泉で遊んだ事でも、あるのかい?」
「あすこ大好きだい!父ちゃんと母ちゃん、デートしてたって!」
「さて。どうやって此処を出るのかね?」
「……あ」
脱出迄は考えてなかったシドが、青ざめた。
「僕についておいで。裏門から出よう」
幼いセフィロスが、ガスト博士の裾を引っ張った。
「ねえ。お兄ちゃん。さっきの話、約束して。
一人ぐらい、軍に知ってる人が居て欲しい…」
「ん?ああ、分った!約束する!神羅軍に入るぜ」
289:浮金石(6)
03/04/30 19:36 mMw5Zv2Z
湖は鏡の如く凪ぎ、水鳥が鏡面に波紋を描く。
のびやかに広がった紋様が、ヴィンセントの靴先を濡らす。
「──ま、結局神羅行っても、ろくすっぽ会わなかったがよ」
「覚えていたのか、シド…」
「餓鬼は丸ごと覚えるからな」
「お前は良く、木から落ちたり、川に飛び込んだりしていたな」
シドが煙を吹き、咽せる。
「俺ぁよ。ずっと疑問だったんでぃ。
宝条博士の眼は濃い茶色で、ルクレッツイア姉ちゃんは濃い緑。
ジェノバは眼が光ってて分らねぇ。
セフィロスの、あの淡い瞳は、誰に似たんだ?って」
煙草の煙が、滝の飛沫に吸い込まれる。
「ルクレッツイア姉ちゃんが惚れた男で、眼の色素が無ぇのは、誰だ?」
「シド…それは…。しかし、確証の無い話だな」
惚れた腫れたに確証があっかよ。シドはそう云いながら、煙草を仕舞う。
「会って来いよ。ルクレッツイアに。居ないように見えても
祠のどっかに、隠れてっから。
──もう、戦いは終わったんでぃ」
祠にヴィンセントを独り残し、潜水艇が帰って行く。
「ルクレッツイア。そうなのか?」
「ごめんなさい…産むのなら、貴方の子供が良かったの」
ヴィンセントが、ルクレッツイアの瞳に口付ける。
「…セフィロスを愛していたわ。望んで、授かった子なのよ。
そう、伝えてやりたかった…」
優しい魔晄色の風と澄んだ紅の風が、祠に吹き込む。
白銀の髪の青年が、其処に立っていた。 END
290:白 ◆SIRO/4.i8M
03/04/30 19:38 mMw5Zv2Z
>>267-268 >>281-282
互いに深く思い遣る余り、喧嘩になる二人に激しく萌えました。
リルムちゃんに描いて貰いた…ゲフンゲフン続編期待sageです!
今後、溜め込まず(;´Д`)ハァハァする事にします。(違)
>>269
おおー!お仲間ですか!ヽ(*´▽`)ノマンセー
ことえり、10年近く使ってて、全く警告に気がつきませんでした。。。
丁寧な解説有難うございます。今度から表示見ながら使いますです。
>>270 >>273
ありがとです。おいらも職人さん目指してガンガろ…。
>>271
1からロムってて思ったですが、29さんの爽やかなお話で
スレの方向が決まったように思います。作風は人各々で、各々にハァハァですが
お話が綺麗にまとまってると感じますた。次作も期待してますです。
>>266 >>272
「スニフの恋人」キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!
まとめ乙カレー様です。お優しいお言葉有難うございます。。・゚・(⊃Д`)・゚・。
ガーデンに入学したい…(無理です)ミントティー、美味しそうです。
エマさんも 食堂の小母ちゃんもアリシアさんも、もちろんシグネタンも
キャラクターが立ってて、今後が気になりますです。
291:29
03/04/30 20:36 sQj14kiK
>>290
方向性が決まったなんてそんな、妄想を書き連ねただけですから。
ネタだけは脳漿から湯水のように湧いてくるのですが、、、それを文章にするとなると、なかなか、、、。
あと、時間も、、、。大学入試の勉強は早めに始めないとシャレでなく氏にますからねえ(ガクブル
長編なぞ夢のまた夢です。
結婚式、、、。純白のドレスと純白のタキシード、、、。ブーケ、、、。
そして鐘の音、、、。
292:雫夜 ◆sizukTVGK.
03/04/30 21:03 +7LpX0Rd
『スニフの恋人』の続きを読みたくて来ますた。
ホント良スレですね。
>>274-279
シグ可愛いっす。日記の中身も可愛らしい。
ガーデンの描写が丁寧で(・∀・)イイ!! 私もバラムに行きたくなってきたでつ。
後半でがんがん出てくるというシュウの登場にも期待しています。
>>284-289
ヴィンセント×ルクレツィアキタ━━ヽ(゚∀゚)人(゚∀゚)人(゚∀゚)ノ━━ッッ!!!!!
このスレ来てマジ良かったです!!
セフィロス誕生秘話がせつないけれど、とてもしみじみしますた。
そしてシド!!
とてもおいしい役どころだと思ったり。
白さんの作品、さかのぼって読んできます。
293:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:32 YuO4y0M7
翌日、私の所属するホームルームの教室に入ると、後ろの方の席でアリスが手を振っていた。
「おはよう。シグの席、私の隣よ」
アリスが声をかけて教えてくれたので私はその席に座った。
この教室は昨日アリスが言った通り、男の子の数の方がずっと多いみたいだった。
「このクラスは将来、戦闘支援部隊への入隊を希望する人がほとんどなの」
アリスが教室にいる男の子を指して説明する。
「窓側に立ってる人は私と同じで従軍医療士希望。その隣の人は通信暗号士。向こうの三人組は兵器開発」
このクラスは15歳以上の軍事研究科の生徒が所属している。
学校の全体行事や必須科目はこの教室からホームルームのクラスメートと一緒に受講し、各自が希望した専門分野の授業は
それぞれのクラスに分かれ、内容によっては正規コースの生徒と一緒に受ける。
例えばこのコースでも格闘の初歩は必須で、私の場合は数歳年下の正規コースの子と一緒に受ける事になる。
ガーデンは単位取得の状態やコース別、そして年齢で受けられるクラスが決まっているのだ。
例えば同じ軍事研究科でももう一つクラスがあり、そちらは戦略史や国際情勢の机上学習が主だ。
お兄ちゃんが言うにはもそっちのクラスは色んな所の偉い人の娘さんが多いためこちらのクラスより女子の比率が高いのだけど
「おっそろしいところだぜ」ということらしい。
今日はホームルームの後、必須科目を1時間受講して、専門の授業のために各自別の教室に移動する。
「お昼、食堂で待ってるから」
教室を出かけた時アリスが誘ってくれたので私はお昼を楽しみに次の授業に行った。
午前の残り2コマは兵器研究の実習クラスだった。
このクラスは上級生はもちろん、正規コースの生徒でも受講していると聞いていたので、
私は少し緊張しながら教室に入った。
294:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:33 YuO4y0M7
「だからこれじゃだめだって!」
教室に入るなり、大声がして私は思わずすくんでしまった。
落ち着いて教室の中を見ると、教室の隅のパソコンの周りに先輩らしい人達がたくさん群がっていた。
なぜか皆、制服ではなく作業服を着ている。
「でも、どうするんだよ。これ以上は無理だって」
私はどうしたものかと思いつつ、そっと皆の方へ近づいた。
「あの……」
私が声をかけると、ショートカットの女の人が振り返った。
「何?」
「私、今日から……」
「あ~!アンタ、オリーの妹?今日からこのクラスに入る」
パソコンの脇にいた別の先輩らしき男の人が私に気付いて声をあげる。
「……はい」
なんだかよくわからないけれどお兄ちゃんのおかげで私は無駄に有名らしい。
「ごめん、このクラスはみんな朝イチからこの授業の連中ばっかりで」
「2時限目になってたなんて気付かなかったな~」
「おい、歓迎会の用意はどうなったんだよ」
「ホントだ。ねえ、そこの冷蔵庫に白い箱ない?ケーキなんだけど」
「嘘だろ、オレそれ食っちまったよ」
「冗談よしてよ!何考えてんのよ」
先輩達は私におかまいなく盛り上がってしまい、会話に入れなかった。
「あ、ごめん。この教室席決まってないから適当な椅子に座って待ってて?」
私が初めに声をかけた先輩がにっこり笑って教室の真ん中を指差した。
私はおとなしく椅子に座った。
「ただいま~!!」
教室のドアが勢いよく開いて、バンダナを帽子みたいにかぶった女の人が、大きな箱を抱えて教室に飛び込んで来た。
「お前、全部俺に押し付けて行くなよな~」
大柄な男の人がそれに続いてゆっくりと教室に入ってきた。
手にはたくさんの武器ケースを抱えている。
295:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:33 YuO4y0M7
「だって私壊れ物持ってるんだもん。あ、新入生?」
なんだか元気のいい女の人だった。
「はい。よろし……」
私が挨拶しようと立ち上がると、背中をばんばん叩かれた。
「堅苦しい挨拶はナシ!」
「で、壊れ物って?そんなもん発注した覚えないけど」
ショートカットの先輩が言う。
「朝冷蔵庫開けたら、大事な物がなくなってから再調達してきたんだってば」
バンダナの女の人は私の前に手に持っていた大きな箱を置くと蓋を開けた。
中に入っていたのは色とりどりのケーキだった。
「ごめんね~、本当は昨日の夜、特大のオペラを買って用意しといたんだけどでっかいネズミがいるらしくってさぁ」
バンダナの先輩は私に笑顔を向けながら部屋の隅にいた男の先輩に冷たい視線を向けた。
「悪かったよ、こんな気の効いた事するなんて知らなかったんだよ」
視線を向けられた先輩は頭をかりかりかいた。
「普通、でかでかと『ようこそ!』なんて書いてあるホールケーキに無断でフォーク突立てる?」
「助かったわ、セーラ。私は今気付いた所だったのよ」
「まぁったく、せっかくの有望株でおまけに女の子なのよ。ちったあ考えなよ。
ケーキ食べちゃったんだからコーヒーくらい淹れてよね」
バンダナの先輩のセリフにケーキを食べたらしい先輩は気取ってガーデン式の敬礼をして、教室の奥のドアの向こうに消えた。
「さて」
ショートカットの先輩がにっこり笑った。
「はじめましてシグネ。私はサラよ」
「で、あたしがセーラ」
バンダナの先輩が手を上げる。
次いで、パソコンの前に座っていた先輩が立ち上がってこちらに来た。
「俺はミゲル」
「クリスティアン。長いからクリスって呼んでくれ」
こう言ったのはひょろっと背の高い先輩。
「俺はガイウス。ガイでいいよ」
私より後に来た、大柄な先輩はセーラ先輩の視線にうながされたように名乗った。
「で、今コーヒー淹れに行ったのがジョージ。ここの主なメンバーは以上」
サラ先輩が奥の部屋を指差す。
296:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:35 YuO4y0M7
「おい~、新入生のカップどれ使うんだよ~」
タイミングを図ったように奥から声がした。
「流しの所に出してあったでしょ?」
サラ先輩は小走りに奥の部屋に行ってしまった。
「ここでは皆先輩後輩なしでファーストネームで呼びあうから。よろしくシグネ」
セーラ先輩はにっと笑って手を出した。
「よろしくおねがいします、先……」
さっそく「先輩」と言いそうになって私はあわてて口を押えた。
「すぐに慣れるよ」
セーラ先輩は私の手をぎゅっと握って言った。
「コーヒーはいったぞ」
奥の部屋からジョージ先輩が出てきた。
「こら、シグネが先でしょ。歓迎会なんだから」
ガイ先輩の手をぺしっとはたいて、セーラ先輩が私にきれいなピンクのカップを手渡してくれた。
「一応、あなたのマイカップはそれね。余ってる奴にかわいいのあったからそれにしたけど
別のがよければ自分で用意してね。……だから、シグネが先だっての」
セーラ先輩は再びケーキに伸びた手をぺしっと叩いた。
「遠慮してると皆の手にセーラの手形がついちゃうよ?」
サラ先輩が私の前にケーキの箱を押しやった。
皆がにこにこしているので気分が軽くなって私はケーキを一つ取った。
私の好きなお店のケーキなのでうれしくてつい顔がゆるんでしまう。
「お前ら見ろよ、シグネを。あの顔。ケーキを前に天使のような笑み。女の子っていうのはこういうもんだろ!」
クリス先輩が突然女子の先輩二人に訴えたので私はフォークを落としそうになった。
297:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:36 YuO4y0M7
「おあいにく。ここでの食物争奪戦で鍛えられましたからね」
「そうだよ。あたし達だってここに初めて来た時は似たような事、先輩に言われてたもんね」
セーラ先輩とサラ先輩はすばやいフォークさばきでケーキをみるみる平らげて行く。
コーヒーを飲むと意外、と言っては悪いけどかなり良い味だったので驚いた。
「このコーヒー、おいしいですね」
私が言うとジョージ先輩はちょっと照れくさそうに、でも自慢そうな顔をした。
「意外だろ?こいつコーヒー淹れるのはうまいんだぜ。コーヒー担当兵としてなら今でもすぐにどっかの軍に入れるだろうな」
ミゲル先輩がからかうように言う。
コーヒーと山盛りのケーキをつついているうちに緊張はすっかりほぐれた。
そこで私は初めて大変な事に気付いた。
「あの……」
「ん、何?」
私がおそるおそる尋ねるとミゲル先輩が反応した。
「『兵器研究実習A』の授業は、この教室でやるんですよね?」
私の問いに皆は一瞬しん、と静まり返った。
次の瞬間には考え込むように、でも一斉に笑い出した。
「ああ、ごめん。授業内容あんまり知らないんだ?」
クリス先輩の言葉に私は頷く。
歓迎してもらって大好きなケーキとおいしいコーヒーを出してもらって、楽しく喋って。
すごく居心地のいい部屋だった。
でも、私は授業を受けにきたはずだった。
「このクラスはね、研究なんて名前が付いてるけど実際はガーデンの兵器開発を担当してるんだ」
クリス先輩はさらっととんでもない事を言う。
「基本的に、受講できるかどうかは選抜制で、希望したから入れるわけじゃないよ。実績がいる。
そうだね、例えば関連授業で高成績とか実際の戦場での訓練でそれなりの結果をだすとか」
そこまで聞いて私は血の気が引いた。
だってガーデンに入学したばかりの私には受講資格があるはずないから。
初日から時間割を間違うなんて、と眩暈がしそうだった。
298:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:36 YuO4y0M7
「『ティンバー・ナショナルバンクテロの爆弾についての考察』」
ミゲル先輩が口にしたのは私が入試用に書いた論文のタイトルだった。
「実におもしろいね。爆発が激しすぎて現状ではどの形状の爆弾か特定されてない、有名な事件」
「そうよね。爆発のタイミング的に、時限式じゃないっていう説が有力だけどある種のタイマーが特定条件下では
狂う可能性だとか、爆弾の仕組みだけじゃなくてプロファイリングもからめて予想しているのがなかなかいい感じ」
サラ先輩が驚いている私を見てくっくと笑う。
「あなたの論文のコピー、私たちにも回ってきたのよ。専門分野からの視点だけじゃなくて犯人の視点から考える事の
必要性についての好例だって。ここの先生が大絶賛してたわよ」
「つまり、ここで間違いないって事」
そう言うとガイ先輩は2個目のケーキを手でつかんでかじりついた。
「講義スタイルじゃなくて、実際に設計して作るの。作業着が支給されてるから次の時限はそれ着てね」
サラ先輩の言葉に私はうなずいた。
ケーキを食べ終わって机を片付けても先生は現れない。
「先生はガーデンの専属じゃなくて通いの人だから毎回は来ないよ」
ミゲル先輩が私の疑問を先読みするように教えてくれた。
そしてまた、皆がパソコンの周りに集まる。
「この先、どうする?」
ミゲル先輩がマウスをぐりぐり動かしながらディスプレイの画像を動かす。
「電算上級クラスに頼む?」
「それか、操作をきちんと教えてもらうかだな。深夜作業の時自分でいじれないと困る」
ミゲル先輩がマウスポインタをふらふらと動かす。
「でもこれ以上細かく設定するのに後何時間かかるんだ?」
先輩はうんざり、という顔でサラ先輩を見た。
私は画面の隅の見覚えのあるツールバーに気付いて思わず言った。
「あの、これ『ウルカヌス』ですか?」
「知ってるの?」
サラ先輩が驚いたように言う。
「はい。以前通ってた学校で使ってました」
「マジで?!」
ミゲル先輩がやった!!という顔をして立ち上がる。
299:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:37 YuO4y0M7
「このバージョン、使える?」
私は空いた椅子を勧められ、パソコンの前に座った。
以前使っていた物より一つ前のバージョンだった。
「使えます。後、あの、私これの追加機能のデータ持ってます」
今度インストールしても、と言いかけた私を遮るようにミゲル先輩とサラ先輩がまさに手を取り合う、という様子で飛び跳ねた。
「やった!!!!これで製作に戻れる!!!!!」
「早速だけど、そのモデルの修正とシュミレート、やってもらえる?」
サラ先輩が普通の設計ソフトで作ったらしい設計図を私に差し出した。
私は設計書の通りに画面の拳銃のフォルムの訂正をし、シュミレート機能の画面を開いてデータを送り、演算にかけた。
「たぶん、このスペックだと結果が出るまで1時間くらいかかると思います」
私が顔を上げるとサラ先輩は喜色満面、と言った様子で画面をのぞきこんでいた。
「助かったわ。これ、期限が迫ってたの」
いえ、と私が首を振るとセーラ先輩がはあ、とため息をついた。
「以前はこれ担当の先輩がいたんだよね。その先輩が卒業してからはここでストップしちゃっててさあ。
ミゲルとサラが二人かかってやっても、まともな結果が返ってこなかったんだよね」
『ウルカヌス』は小火器や飛翔兵器の設計ソフトだ。
このソフトは兵器開発をする人間なら大抵一度くらいは触った事がある。
設計図から、実際に使用した時の弾速や安全性、弾の軌道などかかなりの精度でシュミレートできる。
代わりに設計手順が厄介で、独自の言語で入力する必要のある項目もあるため使える人間はそう多くない。
「前の学校で、私このソフトのオペレーターだったんです」
手先がイマイチ不器用だったので、と付け足したんだけど先輩達はそこら中から設計図をかき集めるのに必死で
聞いてくれてないみたいだった。
300:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:39 YuO4y0M7
「じゃあ、シグネはそれを主に担当してくれるかな」
クリス先輩はパソコンの傍の机に設計図の束どっさりと置いた。
「はい」
私は先輩に認められたのがうれしくて思わず口元がゆるんだ。
「あ~、やっぱりいいな、その笑顔」
クリス先輩の言葉に、私は思わず手で口元を覆ってしまった。
「気にしないで。こいつものすごいフェミニストだから言われた方が赤面するセリフ連発するから」
セーラ先輩も設計図の束をくれた。
「たくさん頼んでごめんね。かわりに製作の方もみっちり仕込んであげるから。手先がどうでもね」
セーラ先輩は楽しそうに、にっと笑って私を見た。
「はい!」
私はうんとはりきって返事をした。
301:姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/01 20:47 YuO4y0M7
うわ、むっちゃ長い~(汗
本当はこの部分カットしようかと思ったんですが学園生活の上で
結構大事な箇所なんでノーカットで一気に投稿しました。すみません。
>>281
いよいよ話が核心に迫った感じですね。なんかドキドキします。
食堂のパンはですね、私も気になって直前のセーブデータを使って
チェックしましたよ。「絶対に取られるな」とか言うんですよね。必死だなw
>>284
7で最も好きなキャラが揃った話キタ─wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~─!!!!!!
食堂のおばちゃんはどうしても入れたかったのでそう言ってもらうとうれしいです。
>>292
「続きが読みたい」とはうれしいお言葉・゚・(ノД`)・゚・
書いていて一番うれしいのはその言葉です。
もうちょっとでシュウ出てきますのでお待ちくださいませ。
白さんのスレ初期作のコメディは特に面白いですよ♪
302:29
03/05/01 21:24 Lql+z+sN
>>301
やばい、、、シグたんに萌えてきたですよ。かあいいなあ、、、。
シュウの登場、楽しみにしております。
303:コックさんは見た!(1)
03/05/01 23:12 8/SsyHJ6
城壁に守られた家々の光が、半円形に街を包む。
人々は飲み、歌い、そして賑わう。不夜城の天蓋を星が旋回する。
「言葉使いを直す方法?」
「はい。トット先生なら、御存知かと」
大国アレクサンドリアの姫君、ダガーことガーネットは恩師に問いかけた。
「この言葉では、身元が知られてしまうと、ジタンさんが…」
「ダガー?」
太古の採掘場、フォッシル・ルーの柔らかな灯。
階段に腰を下ろし、ダガーは独り、呪文を詠唱する。
そうっと。ジタンは姫君の背後に近付き、目隠しを試みた。
「……願わくば、来れ。精霊の戯れんことを…」
「!?」
一面が眩い閃光に覆われ、ジタンをも呑込む。
幼い魔導士と謎の怪生物…もといコックさんが飛んで来た。
「…大丈夫でございますか?王女様!」
「あ、あたいは大丈夫さ。ジタン、あんたは?」
一同 ………………。>(゚д゚)ポカーン
「…お、おねえちゃん?」
「なにか壊れた蛙でも食べたアルか?」
どうやら両者の言葉が入れ替った模様です。
ずーん。と。擬音がするっぽい感じでダガーが沈み込みますた。
「僕の魔法で、何とかならないかなぁ…(;´Д`)」
「グゴォー…」
なんて云うか、乗用外骨格生物ガルガントも心配してます。
304:コックさんは見た!(2)
03/05/01 23:15 8/SsyHJ6
「気にすんなよ、ダガー。この方が旅には都合が善いじゃ無いか」
と言ったつもりのジタンの台詞も
「どうかお気に病まずに。随行する上では、寧ろ利に叶っております故」
とかなんとか、間違った敬語に誤変換。
「あ、あたいはただ、普通に話したかっただけなんだ。
このままじゃ、政務もまともに果たせないよ。
──國はどうなるんだい?城は。何よりも民は。」
不意に、我らが乗用外骨格生物ガルガントが、泣きそうなダガーと
あと如何にもついでっぽく、ジタンを乗せて暴走。
「追うアルよ!」
「ガルガント!王女が居るのです、止まりなさい!」
ズサー。急停止により、我らが尻尾主人公くんとお姫さまは投げ出されますた。
とっさに自らがクッションになって、姫を庇う尻尾君。
其処は、静かな場所。水滴の音が断続的に続き、流麗な彫刻が泉を彩る。
泉の内に。色とりどりに光り、点滅する水草達。
「これは…山彦草ですよ、ダガー王女。元に戻れます」
ジタンは、清浄な水の内から、藤納戸に光る水草を絡め取った。
その一葉をダガーの唇に押し当て、自らの口にも触れさせる。
「…どうですか?お姫さま」
「あ、ありがとうございます…ジタン。あ!戻ったわ!」
「味見するアルよ!」
事態は解決しますた。ダンジョン攻略は未だですが。
「ダガー女王の騎士になったら、あんな風に?…なりたいなぁ!」
そう思うと、ジタンの脈拍が、ちょっとだけ早くなったのは内緒です。
305:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/01 23:17 8/SsyHJ6
こっそり29さんの下ゲットしつつ、FF9ぺたりと貼り逃げします。。。
>>291 >>302
>そして鐘の音、、、。
も、萌え!サイファーと風神タンの幸せを願う雷タソ萌えです。
脳漿から湯水のように湧いて止まらない時ってありますね。
ネタはネタでメモして、お勉強が片付いた時に、情熱をPCにぶつけてホスイです。
って、いや…言葉で云うのは簡単なのですが。それは(以下略)
29さんのPNが気になります。長篇書ける方って凄いですよね。尊敬。
>>292
御感想、感謝致しますです。○| ̄|_ ヨロシク オネガイ シマス
物凄い高速で、雫夜さんのアーロンにうっとりして来ました。
深みのあるアーロンさんに激しく萌えです!スフィアの若き日の姿にも。
遡って…って、Σハッ!!サロンシップとかデブモーグリl \ァl \ァとか
ギャグネタしか書いてな…ウボァー(゚Д゚)
>>293-301
生うp見ちゃった…!┬┴┬┴┤(*´д├┬┴┬┴
兵器研究実習クラス、楽しそう+かなり奥が深そうで楽しみです。
シグネタンの今後の活躍期待してます!
面白いと言って頂けて至福です。有難うです。
306:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/02 18:29 7qFr9Es1
良スレハケーン
307:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/02 22:34 YB22D3EZ
どなたかガラフとレナのSS書いていただけないでしょうか?
308:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/02 23:51 gp0qq2tc
一応あんな作品でも書き込んだ以上完結はさせますです。。。
ただ、締め方が何パターンかあってどうしようか考え中&時間無くて
今回は感想のみ書き逃げにて失礼します。
>>284-289(浮金石)
シドカコ(・∀・)イイ! 反則だと思うぐらい萌えますこのシド。(役どころが(゚д゚)ウマー)
> 「将来の宇宙飛行士様でぃ。お前、スゲーな。宇宙から来たって?」
ここにシドの男気と夢追い人な姿の片鱗をみた気がします。とんでもなくグローバルな視点を
持っているのか、それとも単なる熱血漢なのか…。
そう言えば7作中でもそんな場面ありましたよね、(ウェポン襲来直前の飛空艇内。「男なら、
いや人間なら~」って感じのセリフ。いつもの如く記憶違いだったらスマソ)
>>293-300(スニフの恋人)
兵器研究実習Aの授業、漏れも激っしく受けたいです。(無理)
なんていうか、今回文面から伝わるこのクラスの雰囲気に萌えました。
文化祭前とか、某かのプロジェクトを立ち上げようとする時みたいな団結感、大好きなんです。
(だからDisc2が一番印象的だったりw)
チョット長かったけど、一気に読めたし未だかつて無かった様な心地よい高揚感がっ!! ありが㌧。
続編期待sage。
>>307
FF5プレイ中ですが、ガラフの立ち位置も(゚д゚)ウマーな感じですよね。古代図書館のミド関連の回想シーン
(ガラフの妹?娘? が出てくる)だけしか見てませんが、それでも今後、ガラフには(・∀・)イイ!ネタがありそうな予感。
ネタを振ってみてはいかがでしょうか? あまり詳しく知らないので、「こんな感じなんだYO!!」と
言う説明代わりにもなるでしょうし。。。それがキッカケで書いてくれる職人さんが現れる事を期待しつつ…。
309:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 00:17 sYx0oG7r
>>308
おお!!レスありがとう。
もともと極度のファザコン気のあるレナが父を失った心の傷を
ガラフが優しく埋める・・・
こんなシチュだめですかね?
310:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/03 00:48 i5R7GhEG
他所にいつものギャグ書きますた。宜しければお茶請けにドゾー
って、恋愛が全く無いのでスレ違い…。・゚・(つД`)・゚・ ゴメソ
スレリンク(ff板:202-206番)
>>308
わーい。ドリルさんお元気ですか?
選択に迷う、何パターンもの締め…。練りこまれたお話、良いですね。
ドリルさんのキャラは筋が通ってて、背筋が伸びていて格好良いです。
お忙しいようですが、マターリ続編お待ちしてます。
>>307 >>309
Σ(゚Д゚*)そこ迄丁寧な設定が有るとは…!
309さんの文章、読み易いですし、シュチュとキャラに愛があるし
SSの書ける方とお見受けしたのですが、駄目ですか?
311:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:02 sYx0oG7r
>>310
いや、SSなんて書いたことないし、自信もないっす(´・ω・`)
312:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:37 15Ot5yDe
同人女臭せえスレだな
キ モ イ 馴 れ 合 い は 自 サ イ ト で や れ
晒しage
313:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:42 pGCDNpyl
>>312
ほっといてやれよ......
変なスレあげんなっつ~の!
314:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:47 Y1a9BNkV
うわ、こんなスレあったのか…
本当にきもいな…上げるなよ
同人女はどうしてお世辞で誉めまくったりや変な謙遜が好きなんだろう
ここの奴等見てると本気で不思議でならない
とにかく馴れ合いがしたくてたまらないのか
315:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:48 8NdlIntX
昼下がり。スコールは一人、バラムガーデンの食堂でコーヒーを飲んでいる。
現在位置はトラビア・ビッケ雪原。
スコールはトラビアの澄んだ空気が好きなのだ。
窓際席で一人寛いでいると、セルフィとゼルがにぎやかにやってきた。
「あ、スコール!窓際いいなぁ。」
「よぅ!俺らも座らせてくれよ。なっ、いいだろ~?」
指揮官としての肩書きを忘れ、久しぶりに一人を楽しんでいたスコールは少しふてくされた。
「・・・勝手にしろ。・・・ん?」
「ありがとスコール・・・わぁ~~!めっちゃキレイやわぁ!!!」
「す、すっげぇ!俺、初めて見たぜ!」
突然のダイヤモンドダストに3人は驚きを隠せずにいる。
空中をキラキラと輝く宝石に、しばし見入っていた。
冷気属性GFシヴァの召喚魔法にも、ダイヤモンドダストという技があるが、天然物はとても繊細で、攻撃性を全く感じさせない美しい物だった。
凍りつくほど冷たいはずなのに、むしろ温かみを感じる。
しばらくの間沈黙が続いた。
「なぁ・・・セルフィ」
以外にも、沈黙を破ったのはゼルだった。
「トラビアガーデン時代にGFジャンクションしてたんだよな?そのGFの名前、思い出したか?」
セルフィは以前も思い出そうとしたが、その記憶が頭のなかにうっすらと残っているだけだったので、
「ぜんっぜん!あたし、な~んにも覚えてないんだよね。でも、ソイツ属性は氷だったんだよぉ~!」
「それはそうだ」
スコールが口をはさんだ。
「GFの力の代償・・・それが俺たちの記憶だからな」
316:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 02:52 15Ot5yDe
>>314
それが同人女の狙いなんだろ
謙遜すればそんなことないよガンバレとか言ってもらえるとか期待してんだよ
そのくせ本当に貶されたら怒るのが馴れ合い大好きキモ同人女の特徴
再度晒しage
317:314
03/05/03 03:03 Y1a9BNkV
そうだったのか…ありがとうよくわかったよ…
でももう上げないでね…
318:315>>GF物語2
03/05/03 03:15 8NdlIntX
「ははん、じゃあこの『物知りゼル』様が教えてやろう!セルフィがジャンクションしてたGFの名前は、『シルヴィア』って言うんだぜ、多分!」
「え~~?なんだかシヴァの仲間っぽい名前~~」
セルフィは半信半疑のようだ。
「ゼル!嘘言ってたらスロットでどっか~ん!しちゃうからねっ」
「・・・いや、おそらく本当だ」
スコールはゼルの話に興味を持ったらしい。
海洋探査人工島のこともそうだった。少なくとも、ゼルは面白半分に知ったかぶりをする人間ではない。
「さっすが班長!ところで、雪女の話は知ってるよなぁ?」
「いいから続きを話せよ」
除々に苛立つスコール。
手にしたコーヒーの紙コップは、もう冷たくなっていた。
「これを話さないことには始まらないんだ、セルフィは分かるか?」
セルフィは椅子をガタガタさせながら、
「うん!知ってるよぉ~、昔話だよねっ」
319:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 03:23 ro0w4lz5
36 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 02:39 ID:15Ot5yDe
同人女はこの板から出て行け
129 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 02:39 ID:15Ot5yDe
同人女の巣窟晒しage
373 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 02:48 ID:15Ot5yDe
同人女age
343 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 02:54 ID:15Ot5yDe
キャラに恋って本気で言ってんの?
頭大丈夫?
845 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 03:06 ID:15Ot5yDe
同人女晒しage
110 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 03:08 ID:15Ot5yDe
同人女晒しage
342 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 03:08 ID:15Ot5yDe
同人女晒しage
171 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ 投稿日:03/05/03 03:14 ID:15Ot5yDe
同人女晒しage
320:315>>GF物語3
03/05/03 03:30 8NdlIntX
「えっとお~、雪女に助けてもらった旅人が、雪女のことばらしちゃうんだよね。約束したのに~~っ!」
「あぁ・・・俺も聞いたことあるな。最後は氷漬けにされるんだろ」
「二人とも正解。じつは雪女の話は、ある実話が元になってるんだぜ」
スコールとセルフィは一瞬背筋がぞくっとした。
まませんせいがしてくれた話で、一番恐ろしかった話を思い出してしまったからだ。
自業自得が教訓の恐ろしい昔話。
その実話とは、一体何なのだろう?
ゼルはゆっくり話し始めた。
「元は氷の女王伝説って言うんだ。・・・・・・・・・・
321:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 03:38 vSZhSIhU
ノアだけがガチ
322:315>>GF物語4
03/05/03 03:43 8NdlIntX
・・・・・・・で、その女王の名前がシヴァ。
氷の女王なのに、人間と恋に落ちちゃうんだよ。
月の涙によって破壊されたと言われる、トラビアの古代王国の王様とな。うん。
ここからは、雪女の話と同様。
シヴァは自分のことを打ち明けて、永遠の愛を誓うために約束をするんだ。
ま、結局は『絶対に誰にも言わない』とか言っときながら、酒の席で豪語するんだよ。
『俺の后は氷の女王・シヴァだ!』ってな」
「そ、それでどうなっちゃったの~~!!」
楽しそうに語るゼルと、焦るセルフィ。
そして、新しいコーヒーを飲みながら黙って聞くスコール。
323:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 03:45 TZPWMrXo
315>>GF物語さん
8もの書いてくれたの嬉しいけど
sage進行でよろしくお願いします。
324:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 03:46 vSZhSIhU
シヴァ遼太郎
つまんね
325:315>>GF物語5
03/05/03 04:02 8NdlIntX
「その夜、国王の枕元にシヴァが現れた。
そして約束どおりに国王を氷漬けにして殺しちまったんだ。
ところが・・・数日後に、シヴァの妊娠が発覚したんだよな」
「かわいそう・・・」
「確かに、むごい結果だな・・・」
自分たちが普段何も知らずにジャンクションしているGFの過去を知り、ショックを受けるのも当然である。
スコールはGFを道具のように使っていた自分を恥じた。
「ゼル、もしかして『シルヴィア』がその赤ちゃんとかかなぁ~?」
ゼルはうなずいて見せた。
「そうそう!そうなんだよ~。でもこの話まだ続くんだぜ。
国王・・・シルヴィアの父親を殺したシヴァはとても後悔して、親子でGFになったらしいんだが・・・
この辺がよく分かんねぇんだ。
どうやってGFに変化したんだぁ??
まぁ、俺が考えても分かんねぇよな!」
326:315
03/05/03 04:08 8NdlIntX
>>323
あ、そーなんですかぁ・・・?じゃあ続きはまたそのうち書くとすっかぁ!
それよりここ、女性向けだったのかよー・・・(ショックだ)知らなかった!
327:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 09:03 Nnqc/+xg
>326
sageは、メール欄に sage と入れてください。
女性向けとか言ってるのは煽りなのでスルーで。
328:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/03 22:59 jJQMu/se
長期休みになると荒れるなぁ…。
場違い小説さん、もしここ見てたら消息を教えてやって下さい。
329:R@no-name
03/05/04 03:06 v0m7Glch
るるる~♪やまーなし~♪
スレの秩序を乱すモノには天に代わってもれなく
(,,,・Д・)ぃぇぁ
****
>>249
シヴァはガラスの鈴を転がすような声で言った。
リノアと出会ってから、来月で四ヶ月になろうとしていた。
始まりは些細な出会いだったと思う。
決して、雷に打たれたかの如き衝撃的でドラマティックなスタートではなかったはずだ。
最初は気の会う友人で、それから隣り合った氷が解けて一つの水溜りになっていくように、二人
の関係は密度を増していった。
「彼女とは何処まで進んだの?」
最初のキスを渡したのは先々月だ。
電話があったのは、昨日、五回目のキスを送った夜の後だった。
「……キスと、夕食と、アクセサリーのプレゼント。それだけだ」
330:R@no-name
03/05/04 03:08 v0m7Glch
サイファーは、無意識に自分の前髪を掴んでいた。
「その先は……俺はまだその気にはなれそうにない」
「まだ不安なの?」
「わからねえよ」
リノアの方が、互いの関係を狭めるのに熱心だった。無頓着とも思えるほど大っぴらにモーション
をかけてくる度に、サイファーは、心臓が焼け焦げる思いをしてきた。
「どう答えてやればいいのか、俺にはまだわからねえ」
欲求だけなら煮詰めてジャムに出来るくらい有り余っていたが、それをリノアの前で見せること
だけは避けてきた。
「じゃあ……さ、私で練習してみない?」
不意に、シヴァの手が肩に触れた。
「な!?」
返答を考える間もなく、青白い彫像を思わせる肢体が、サイファーを仰向けにして跨いでいた。
不敵というべきか、無邪気とも感じられる笑みをたたえながら、サイファーの胸に手を着き顔を
見下ろしていた。
丁度、二つの膨らみが腕に挟まれ、谷間を強調する格好になっていた。
「シヴァ!?」
「大丈夫よ、サイファー」
何が大丈夫だ、と言いかけたところで、口を塞がれてしまった。
リノアとのキスより、何倍もこそばゆい感触がした。
感覚を共有しているせいだろうか。シヴァの分も同時に感じている気がした。
「私も貴方が好きなんだから」
シヴァの唇には、冷気ではなく、ほのかな微熱が含まれていた。
****
続きはピンク板に移動予定でつ~
(おぬうど描写&一緒にお風呂くらいならここでもおけ?)
331:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/04 12:59 bfESJHrY
R@no-nameさんの新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
(・∀・)イイ!!です♪続き楽しみ♪
>328さん
私も場違いさんのファンなので消息が気に成増。
このスレにも最初見えたみたいだけど・・・
どうされてるのかなぁ
332:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/04 16:58 1/XwA648
職人さん方、気にせずガンガッテ
333:砂漠の王と風の覇者44
03/05/04 23:22 p17OpiaK
なぜそんなことを聞いたのだろう? と思う。
確かにあの時、リルムは無謀にも飛空艇から炎の中に飛び込んだ。
“エドガーを助けるため”に。
それが無茶な行為だと、自分でも分かってた。だけど、それでも助けたかった。
“絶対に死んで欲しくなかった”から。
―じゃあ、エドガーは?
「エドガーは、あたしが死んだらどう思うんだよ? あたしは……」
そうか。
エドガーに死んで欲しくない。あの時そう思ったんだ。
仲間として、それ以上に大切な存在として。
「あたしは……エドガーがいなくなるよりは、良いと思っ……」
口にしかけた言葉が最後まで語られる事はなかった。リルムは頬に触れた温も
りと、芳しい香油の香りに気付いて目を見開いた。
「エド……?!」
「今の私に、彼を裁く権利など無いのだ」
片膝をつきリルムの肩を抱き寄せながら、エドガーは小さく呟く。
「どうし……て」
抵抗することも忘れ、リルムはエドガーに身を預けたままで問う。
「私は平和を願いながら、ケフカや帝国と同じ道を歩もうとしていた……」
それはエドガーしか知ることの無い真実。
これまで誰にも明かされる事のなかった真実を、ゆっくりと語りはじめた。
334:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/04 23:40 p17OpiaK
いやぁ、一人6ネタで突っ走ってるもんでスンマセン。
烏滸がましくも、下手の横好きで文章書いたりしてる身として言わせて頂けるなら、
単なる記号の羅列に過ぎない文字に、色々な物を込めるという作業は相当難しいと思います。
それから、個人的にコストパフォーマンス良いと思いますよ、このスレ。(相当端折ってマジレス)
>>309
カップリングより親子ネタの方が好きなので、漏れはそういう作品を是が非でも読みたい!
正直に言うと、17歳差のエドリルで萌える理由はそう言う面にもありますが。(w
一度メモ帳にネタを箇条書きして、整形していくと結構(・∀・)イイ!物が書けると思います。
(SSって、アイディア・見せ方の要素がそれぞれ半々だと思うんです。)
挑戦してみて損はないと思いますし、5ネタを書けない漏れとしては読んでみたいです。期待sage。
>>GF物語
8ネタでGF視点の話をはじめて見たので面白かったです。6の幻獣は“神によって作られた”
という設定が作中で出てくるのですが、8のG.Fはどういう存在だったのか? というのを掘り
下げている様な話なので興味深く拝見させていただきました。できれば続きもあると嬉しいですが…。
>>330-331
シヴァ姐さん素敵です!(w あの問題児サイファーを手懐ける(違)とはさすが氷の女王。
でもすいません、シヴァって人身大でしたけ?(なんかやたら大きいというイメージがあるの
ですが。…あれは10か?)
表現がやんわりしてる物なら、この板でもOKなのではないかと呟いてみるテスト。
(どの辺が「やんわり」なのかは分かりませんが。w)
335:R@no-name
03/05/05 02:17 XuNvVga6
>334
伸 縮 自 在 ですが何か<ガッ
そもそも実体ないし、決まったサイズから変更不能だったらダンジョンの
小部屋で激しく頭上注意の予感なわけで(慌)
非戦闘時はサイファーとタメはるくらいか、-10cmくらい大きさで部屋を
ふわふわしてる(ラ○タンですか……)と考えていただきたいでつ>身長
続き出せるかなーいいのかなー(;´Д`)
336:姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 18:44 BOoDDslw
>>335
微妙ですね(汗
安全策を取るとしたらおぬうど辺りからピンク?とも思うのですが、
エロくないシーンをピンク鯖に書くとピンク鯖の中の人から怒られるという罠。
上の方にアーリュの結構きわどい作品があったのでそれ辺りと比べて見ては
いかがでしょうか?
>>333
6ネタは少ないと思うので今後も是非がんがっていただきたいなあと
私としては思っております。
(もちろんドリルさんが書きたいと思っているのが前提ですけれど)
>>305
はうっ。見られてましたか。
でも私もけっこう白さんやドリルさんの生うP目撃してますよw
「コックさんは見た!」タイトルの時点で禿藁でした。
>>302
白さんといい、とうとうシグネに「たん」が…。
一応萌えキャラとして書けてると思っていいんでしょうか。
(そういえば「お兄ちゃん」連発してるし…)
次作、期待してます。
337:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 21:57 6CY+Kj7f
午前最後の授業は、実習授業のため作業服を着ていたので、制服に着替え直したりしていたら
食堂に着くのが少し遅れてしまった。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
私はアリスの後ろ姿を見つけて駆け寄った。
アリスは私のかけた声に気付かないようで、食堂の入口辺りをじっと見ていた。
私は不思議に思ってその視線を追うと、その先ではふわふわの金髪が揺れていた。
ゼルさんだった。
よく見ると、アリスはパンの袋を抱えている。
「……どうしたの?」
私がもう一度声をかけるとアリスはびっくりしたように振り向いた。
「シグ。お疲れ様」
アリスは一生懸命笑おうとしていたみたいだけどがっかり、という表情が拭えなかった。
「はい。ひとつあげる」
アリスは私にパンの袋を手渡した。
「え?いいの?」
私はびっくりして聞き返した。
「うん。今日はたまたま早く授業が終わったから二つ買えたの」
私はこっそりアリスがさっき見ていた方を見た。
「え?パン売り切れ?……じゃあ、チキンヌードル大盛で」
ゼルさんはパンが買えなかったみたいで、違う物を頼んだみたいだった。
もしかしたらアリスはこれ、ゼルさんにあげたかったんじゃないかな、と思ったけど何も言わない事にした。
だってそういうのは本人が話したい時に聞いてあげればいい事だと思うから。
せっかくなので私はフィッシュ&チップスのバスケットと飲み物を買ってきてアリスと分けた。
338:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 21:58 6CY+Kj7f
パンは取合いになるのがわかる、おいしいパンだった。
「最近、有名店のパン職人だった人が調理場に入ったらしいの」というのがアリスの聞いた話らしい。
午前の授業の感想を話したりしているうちに昼休みは終わった。
今日の午後は必須ばかりなのでずっと教室で授業を受けた。
一通りの授業が終わり、私は実習授業の方で先輩の作業を手伝う約束をしていたしアリスは図書委員の
仕事をしながらレポートの準備をするのでそこで別れ別れになった。
晩御飯は一応時間を決めておいて落ち合えたら一緒に食べるという事にしておいた。
実習の教室に作業服に着替えてから戻ると先輩たちが午前に私が修正を手伝ったデータを元に
作業にかかっていた。
「お帰りシグネ。待ってたよ~」
このクラスでは一番手先が器用だというセーラ先輩は細い筒を磨く手を休めず私に声をかけた。
現在このクラスが手がけているのはガーデンで標準モデルとして採用している拳銃を軽量化し、
尚且つ弾の飛距離と命中精度を上げる事だった。
一番手っ取り早いのは口径を小さくする事だけどシュミレーションで上手く行っても実際それを作るとなると大問題だ。
基本的にこの教室は手作りでやっているし、出来上がった物がガーデンの審査でパスしてもあまり繊細な設計だと
量産するのにコストがかかる。
「正直、ここにいるとマーケティングの方に詳しくなれるわよ」
サラ先輩は弾の原型を作るのに取り掛かっている。実はこの先輩はSeeD資格を持っている。
ミッションを受けると新しい武器を持って行ってテストする事が多いらしい。
私は溜まった設計図を入力するのに追われた。
後4人いる男子の先輩たちは仮眠をしに寮に戻ったらしい。
339:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 21:58 6CY+Kj7f
「あいつら夜型なんだよね」
セーラ先輩は次の筒に取り掛かった。
私はデータを演算にかけている時間を利用して先輩にお茶を入れた。
コーヒーばっかりだと胃に悪いので部屋からアリスにも出したのと同じお茶を取ってきてそれを入れた。
「あ~、なんか頭がすっきりする」
セーラ先輩が気持ちよさそうに伸びをする。
「これ、ティンバーのお茶でしょ?珍しいわね」
サラ先輩はさすがに色んな所に行くので詳しいみたいだった。
「肌にいいのよね、これ」
サラ先輩の一言でセーラ先輩が目を輝かせる。
「ホント?シグネ、余分持ってたら分けてくれない?ちゃんとお金払って買うから」
「友達のお母さんが作って送ってくれたお茶だから、お金はいいですよ」
「あのね、シグネ。礼儀正しいのはいいんだけどあたし、あんたと同い年だから敬語やめてくれる?」
先輩、もといセーラが困ったように言った。
「同い年?」
「そうだよ。図書委員のアリシアと同い年でしょ?あたしも」
ガーデンでは年齢毎のクラス分けじゃないのでこういうところがやっかいだった。
「以前は年齢別のクラスだったんだけどね。数年前に専門毎のクラス編成になったのよ」
サラ先輩が笑った。
「あの……サラ…は?」
どっちにしろ先輩と言うなと言われたので私はおそるおそる尋ねた。
「18歳よ。まあ、そんなに気にしなくていいから」
私がここのクラスに慣れるまで、もう少しかかりそうだった。
340:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 21:58 6CY+Kj7f
設計図の内容をチェックするとソフトをバージョンアップさせてからの方がよさそうなので
残りは来週にやる事にして私は食堂に向かった。
アリスとの約束の時間には少し遅かったけれど、アリスはお茶を飲んで待ってくれていた。
「お疲れ様、シグ」
アリスは私に気付いて手元の雑誌を閉じた。
「何食べるか決めた?」
アリスの質問に私は首を振る。
「クラムチャウダーの方がおすすめよ。今日のはトマト味のほうだったから」
夕食には少し早いじかんだったせいもあってさほど待たずにアリスのお勧めのメニューを買うことができた。
席に戻ってご飯を食べ終わるとアリスが雑誌りページを広げた。
「ね、シグはどっちの方がいいと思う?」
アリスの広げた雑誌には薄いピンクとラベンダー色のドレスを着たモデルがにっこり微笑んでいた。
「私だったらピンクが好きなんだけど、アリスが着るなら、こっちかな」
薄い生地を何枚か重ねたドレスの裾が柔らかくウエーブしているデザインで、アリスに似合いそうだった。
「そう思う?デザインは好きなんだけど色がちょっと私には大人っぽいかなぁって思うんだけど」
「そんな事ないよ。これ写真だし多分実物はもっと明るい感じだと思う」
アリスはうーん、と腕を組んで悩んでいる。
「パーティーにでも出るの?」
私の言葉にアリスはびっくりしたように雑誌から顔を上げた。
「教えてあげてなかった?もうすぐSeeD試験があるのよ。その後の就任パーティー」
「あ」
341:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 22:01 6CY+Kj7f
自分には関係ない話だと思っていたのですっかり忘れていた。
バラムガーデンは毎年春季にSeeD試験を行う。
成績によってSeeD候補生クラスに入った生徒の中でさらに事前選考を通った人だけが筆記試験を受け、
その合格者はさらに実際の戦場で行われる実地試験場に派兵されて指令達成によって初めてSeeDになれる。
そしてその試験の後は新任のSeeDのお披露目を兼ねてパーティーが催される。
SeeDが死亡したりした場合に実地試験での不合格者の中から再試験で追加合格させる事もあるけれど
その時は学園長室から認証式があるくらいだ。
ガーデン生にとって年に1回の一大イベントである事には違いない。
「私達の学年からは全員パーティー会場に入場できるのよ」
アリスはうっとりとした顔をしている。
SeeD就任パーティーはダンスパーティー形式で行われる。会場の収容人数の関係からSeeD受験可能年齢である
15歳はSeeD候補生のみ、16歳からようやく一般クラスの生徒も参加できるらしい。
「校内の男女比率の関係もあるから、女子はなるべく出席するよう言われるわよ」
アリスはそう言うと真剣にドレスの写真を見つめている。
「入学祝に服って、そういう事かぁ……」
実は今週の週末、私はバラムの家にお兄ちゃんと帰る事にしている。
お兄ちゃんがガーデン入学祝いに服を買ってやるなんていうからどういう事かと思っていたら、たぶんこれのせいなんだろう。
「シグネはどんなの着るの?」
アリスが目を輝かせる。
「ぜんぜん。だってたぶんこれから買うんだもん」
週末の予定をアリスに説明した。
「じゃあ、同じ日に私もバラムに行くからもしかしたら会うかもね」
「アリス、どうやって行くの?」
「バスよ。私車持ってないから」
「じゃあ、私と一緒に行かない?」
「でも、お兄さんの車でしょ?悪いわ」
「全然。私もアリスの服見たいし。それで家にも来ない?たぶんお母さんがケーキ死ぬほど用意してるから」
私としてはできればアリスにも一緒に来てもらいたかった。
お兄ちゃん同伴でドレス選びなんて恥ずかしすぎる。
「本当に、いいの?」
「うん」
アリスとの約束を取り付けて私はうきうきしながら週末を待った。
342:姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/05 22:04 6CY+Kj7f
本日は以上です。
とうとうストック全部使ってしまった…。
次回辺りから皆さん御存知のキャラがでてくると思いますので
もうちょっとだけお待ち下さい。
343:砂漠の王と風の覇者45
03/05/06 00:44 galVtqm0
「彼の本当の目的は、私の命でもこの城でもなかったんだ……。その証拠に」
言いながら視線を上げて、倒壊した塔に向ける。
そして、焼け落ちた王の間の上にある隠し部屋に、エドガーが密かに開発を
進めていた『機械』の設計図が置かれていた事を明かした。
帝国の支配。世界の崩壊。ケフカの暴走―悲劇を二度と繰り返さない為に
―そして何より、そこから立ち直る為に作ろうとした物だ。
「しかし……それが『兵器』となり得る力を秘めている。その事に彼は気付いた」
それでは力を求め、幻獣達を蹂躙し魔導を利用した揚げ句、力そのものに取り
込まれ、その傀儡となってしまった帝国やケフカの過ちを繰り返そうとしているだけだ。
だから抑止力として必要になる時が必ず来る、彼はそう主張し続けた。
「そして―」
結局彼は、最後まで自分の主張を曲げることはなかった。大量の瓦礫を残して
図面を道連れに死を選んだ。
そうすることでエドガーに託したのだ、この国と世界の未来を。
「私が間違っているのかも知れない。彼の言っていた事は決して外れてはいない。
けれど」
「……エドガー……」
こんな風に胸の内をさらけ出すエドガーの姿を、初めて見たような気がする。
普段の自信に満ちた彼からは想像も出来ないほど、実際には相当の重圧の中に立
たされていた事を知る。
国と、世界と、仲間を守るために生きている男なのだと。
「けれど私は……」
「もういいよ」
堪えきれないと言った様子で短くリルムが告げる。
「何も言わなくていいから」
言葉と同じようにゆっくりと、拙い動作でエドガーの背に腕を回しながら。
「……あたしが守ってやるよ」
宣言したのだった。
魔導が失われたこの世界で、以前のように戦う力はないけれど。
「ね?」
彼を失いたくない。その想いだけははっきりと分かったから。
抱き寄せられた身体を離して、自らの宣誓を確かめるようにエドガーの顔を見つめ直す。
344:砂漠の王と風の覇者46
03/05/06 00:49 160Qi7v3
「……リルム」
向けられた彼女の笑顔は、まるで砂漠のオアシスの如く透明な美しさを帯びて
いる。そんな彼女を目の当たりにしたエドガーの表情には戸惑いと躊躇い、何よ
り驚きの色をない交ぜにしてた複雑な顔で。
―こんなに動揺するエドガーを見たのも、初めてだと思った。
「言わせてくれないか?」
彼女の気遣いを退けてでも、これだけは伝えておきたいと。
黙って頷いたリルムを見て、エドガーは口を開く。
「リルムが塔から無事に脱出できたと分かった時、心の底から安心したんだ。け
ど、本当は」
345:砂漠の王と風の覇者47
03/05/06 00:50 160Qi7v3
目を閉じて、塔から身を投げたときの光景を思い起こしながら。
「もう二度と君に会えなくなると気付いた時、分かったんだ」
再び開かれた瞳は、目の前のリルムの姿をしっかりと捉えていた。
「俺は、リルムを失いたくない」
フィガロも夢も仲間も。
セッツァーの言うように、多くを求め過ぎているのかも知れない。
でも、こう思う気持ちは本心なのだから仕方がない。
「……迷惑かな?」
力無く笑うと、照れたように視線を外す。いつもは見せないそんな仕草を見な
がら、リルムは小さく笑みを浮かべる。
「へー、色男でも照れたりするんだ?」
揶揄するような口調は嬉しさの裏返し。
「自分でも驚いたよ。こんなに口下手だと思わなかったからね」
兄とは対照的に、女っ気の欠片もない弟に偉そうなことを言えないな、などと
苦笑しながら。
「いつかこの城へ来てくれる日を待ってるよ」
これだけを口に出すことが、今の彼には精一杯だった。
今までは、女性も夢も、追っている方が楽しいと思っていた。
だけど今は―
訪れる幸せを、静かに待ってみようと思うのだった。
砂漠の城を淡く照らし出す月光の下、二つの影が並ぶ。
肌に触れる冷たい夜気と穏やかな静寂が支配するこの場所が、やがて二人を祝
福する熱気と歓声に包まれるのは、そう遠い日の話ではなかった。
砂漠の王と風の覇者ー終ー
346:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/06 01:00 160Qi7v3
…………。
あ、あれ? 気が付けばリルムよりエドガー視点の方が多くなっていたよ(´・ω・`)
一つの括りとしてここで少し言い訳をさせて下さい。
この『砂漠の王と風の覇者』というお話は、そもそも「FF6のED後の世情を予想して
みる」というコンセプトの上に、個人的に書いた物だったりします。(そもそも萌えと
言うよりは、そう言う系統のスレを良く回ったり書き込みしていたもので。w)
国王エドガー29歳、彼が即位してから生まれたリルムが12歳。つまりリルムはエドガーが
「国王として生きてきた年数」と同じ年齢になります。
王位継承者として生まれた者として、兄として、個人を捨て国王という“公人”として生きる
道を選んだエドガーが、リルムだからこそ“個人”として彼女と接する事ができるんじゃないか?
そう言う面を描きたかったんです。
また、リルムの場合は……描ききれませんでしたが、本当はここを主題にしたかった……(撃沈)
修行して、出直して来ます。
この様な駄文にお付き合いいただいた方、本当に有り難うございました。そしてお疲れさまです。。
347:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/06 01:17 160Qi7v3
>>335
伸縮自在……って、なんか某湿布のような(w。
でもイメージは掴めました、ありが㌧。
(やっぱりFF10のシヴァの印象が強くて、それを持ってきてしまった様です。彼女は
大きかったので…w)
……あれ? するとアレクサンダーはあんなにごついのに等身d(略。
ピンク鯖に持って行くにも色々大変なんですね…なんとかここで書ける様に修正する
…とか?(他のレスの中に紛らわせてしまうという手があるかも知れない!w)
>>337-341(スニフの恋人)
いつも読みながら凄いなと思うのは、日常生活のありふれた場面描写って、漏れが書くと
得てして単調になりがちなのに、そう言う感覚がない(飽きさせない)ままで、すんなり話の
世界に入って行けるという所です。それだけ主人公の心理描写が自然に書かれているという
事なのでしょうか? 続きが楽しみですsage。
6ネタ…恐らく性懲りもなくまた書きに来ると思います(w。今回描ききれなかったリルム視点
で(例の如くHDDの中にある駄文を何とか加工してw)。
今度は言い訳しないでも伝わるぐらいの作品を書きたいです。
精進あるのみ、ですかね。・゚・(ノД`)・゚・
長々と失礼いたしました。
348:R@no-name
03/05/06 03:26 kU4d5Aas
ご指導感謝しまつ>姐さま、ドリル殿
問題の部分なんですが、絵にすると間違いなく修正逝きと思われる場面
なので、ついでに加筆した状態でピンク鯖へ持っていくことにします
「壱~壱拾&拾壱エロパロ小説スレ」にて、またおあいしませう~>成人RomALL
349:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/06 22:00 +MfKr/BN
お久しぶりです。。。
代行シリーズ電撃再開!!! スレに久々職人さん降臨ハァハァ (*´Д`)
スレリンク(ff板)l50
350:【モルポル山海月風味】
03/05/06 22:01 +MfKr/BN
深き霧の真上に。垂直に昇る雲。
薄紅の濃霧が山稜から傾れ、流れ落ちる。
その空間をはぜる、凛とした若武者達。
闇に剛剣が駆ける。
押し寄せる妖獣を両断し、更に宙を舞う。
「ソルジャーブルー!」
しなう剣と、炸裂する閃光。
すうっ、と瞳が光り、その視線が見る者を鷲掴みにする。
「ソルジャ-ブラック」
拍動する、勇壮な楽の音。
「──君も神羅軍で英雄と握手!」
♪魔晄戦記ソルジャ-ドン!おっおおおお~神羅~(※テーマ曲)
鯨の潮みたく金髪を引っ括り、TVの前でアイスを抱えた子供。
翌朝、幼馴染みとのおままごと中、花冠を載せたまま
彼は突如立ち上がり
「俺絶対!ソルジャーになるんだ!」と初恋の彼女に誓うのだった。
「…クラウドTV見過ぎ!(ノДT)」などと突っ込みが入っていた頃。
ソルジャー二人組は、変装覆面匿名状態で
ウオールマーケットの噂のモルポル山クラゲ拉麺に
舌鼓を打っていたのだった。
351:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/06 22:02 +MfKr/BN
>>311
自信は私もマジ無いです。。。(TДT)
こういう話が読みたいなぁ。って言う311さんのお気持が
物語になるのでしょうね。FF5好きの職人様期待sage。
>>315
コピペを、御自分の物として発表するのは
激しく遠慮して頂きたくおながいします。
>>323 >>327 >>332
本当にお疲れさまです。m(_ _)m
>>328
私も場違い小説さんのファンです。
読み易くて明るくて色香があって大好きなのです。
御元気でいらっしゃるのでしょうか…。続編マターリ期待sage。
>>329-330 >>335 >>348
おお!R@no-nameさん降臨続編キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!
ミュージッククリップのような映像を想像しました!
カコ良いクールビューティカップルですね。
続編、何処で続いても楽しみにしておりますです。
352:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/06 22:03 +MfKr/BN
>>333-334
ドリルさん乙華麗様ですた!
最後迄、張り詰めた緊張感が、ダレず持続なさってたのが凄いであります。
最後の最後に解き明かされた秘密に(゚д゚*)ウマー!です。
(*´Д`)ハァハァというより、両者の深い愛*がカコ良い…。
祝典を想像して萌えました!次回作もマターリお待ちしておりますです。
>>336-342
ああ(つД`)又パンが買えなかったのですね、ゼル。(w
兵器開発に神経を研ぎすます感じや、パーティ前の賑わいを
目の前で観ている感じがして、シアワセです。
サラさんの事情も気になります。
姐さんの、背景や設定の作りの丁寧さに萌えますたです。
353:29
03/05/06 22:10 BJw0mj2d
このスレは女性向けってわけでもない様な、、、。
そもそも漏れ、野郎ですし。
あと、謙遜っていうか卑下しすぎるのもやっぱりイクナイんでしょうね。反省すべ。
354:road to homeーこころの故郷1
03/05/06 23:12 NTnNJ4Il
今日ほど、自分の軽率さを恥じた事はない。
『よしっ! あのオヤジに教えてやろう!!』
なぜ、あんな事を口走ってしまったんだろう?
『このガウが本当の息子だってことを!!』
どうして、あそこへガウを連れていってしまったのだろう?
『待てよ……せっかくの親子の対面だ…おめかしでもさせるか』
―結局、傷ついたのはガウだったのに―。
草原の一軒家から飛空艇へ戻った四人の表情は一様に沈んでいた。ファルコン
に残っていた他の仲間達も察したのか、一人としてその件について触れる者はい
なかった。
彼らだってそれぞれつらい過去を背負い、あるいは掛け替えのない存在を失い、
それでも生きようとこの船に集っていた。
しかしそんな彼らでさえ、今のガウにかける言葉を見出せず、ただひたすらに
平静を装いながら沈黙を守るだけで精一杯だった。
それは誰一人としてガウの受けた―失ったと思っていた肉親との再会を果た
し、その直後に目の前で拒絶されるという―痛みを、受け止められる者がいな
かったから。
本来ならばそんな態度をとるべきではない。つらい時こそ支え合うのが仲間で
あった筈なのに……誰もがそう思いながら、己の非力さを実感せずにはいられな
かった。
「ウー……」
そんな中でただ一人、ウーマロだけはいつもと変わりなくガウと戯れていたの
が唯一の救いだっただろうか。
すっかり沈みきった仲間達を乗せて、飛空艇は次の目的地へ向けて飛び立った。
355:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/06 23:30 NTnNJ4Il
性懲りもなくFF6エドリル@リルム視点でリベンジ……と、思ったのですが、
今回はFF6本編中の『ガウの父親再会イベント』の余話的な物になります…。
前回のよりも短く…最後はお笑いにしてみたいと画策中(希望)。マターリ進行
ですが、やっぱりエドリルになります。(しつこいよ!)
>>350
あの神羅ならあり得そうですね…。恐らくセフィロスも広告塔として色んな所に
かり出されていたのかもしれないと思うと出張費が……(それは違)。
明るくノリのいい文章を書かれるんですが、視点の置く場所が(・∀・)イイ!ですよね。
それと、事情を知らないとはいえ正直スマンカッタ。
>>353
漏れも気をつけます。
改めて見方というか、見せ方というか、見られ方というか、
人の捉え方は様々だなと思います。文章も何もかも。
(けっきょく「答えが一つじゃないから面白い」、って事なんですけどね。w)
356:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/06 23:39 NTnNJ4Il
す、すいません。一応>>354でこれだけ解説入れさせて下さい。
パーティーメンバーの中に「ガウ」という野生児がいます。
彼の父親は、妻を失ったショックから、生後間もないガウを獣ヶ原に捨てます。
曰く、「悪魔の子」だからだそうです。
本編中で、マッシュ(エドガーの弟)が好意から二人を引き合わせるという
イベントがあります。
んで、彼はガウを捨てた事を肯定しながら、さらにガウの目の前で
「(マッシュのような)息子を持った父親は幸せだ」と言います。
それでもガウは怒る事なく、「しあわせ」だと告げて、仲間達と共に家を後にする。
…という、もの凄い切ないイベントがあるんです。
357:姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:32 2/NdPD2M
>>345
お疲れ様でした。エドガー、五年後が楽しみですなw
続いてマッシュキタキタキタキタ━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━?????
昔この板でツクールのFF風ゲームでマッシュがやたら強かったので
6は未プレイなのにマッシュは大好きだったりします。
>>350
> ♪魔晄戦記ソルジャ-ドン!おっおおおお~神羅~(※テーマ曲)
ぷはははははははは(T∀T;)
笑 い 死 さ せ る 気 で す か ?
358:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:34 2/NdPD2M
結果的に週末は大変だった。私じゃなく、むしろお兄ちゃんが。
週末、お昼前にアリスと一緒にお兄ちゃんの車に乗り込んだ。
ガーデンとバラム市街は結構距離があるけれど車の運転が出来れば通学もムリじゃない。
カリキュラムのきついお兄ちゃんはともかく私まで寮に入る事になったのは私の反射神経の鈍さのせいだ。
一応車の免許は取ったものの危なくて自動車通学なんかさせられないというのがお父さんの意見だった。
家についたのはちょうどお昼だった。
ガーデンは兵士養成学校だけに私がなじめるかどうか心配していたお母さんは友達を連れて帰ると言った時に
電話の向こうで張り切っていたので嫌な予感はしていたけれど、居間に入るとテーブルがお昼ご飯より沢山の
手作りケーキで埋め尽くされていた。
お母さんのケーキはおいしいけれど、このまま10人くらいのティーパーティーを開いても大丈夫そうな量の
お菓子にアリスは目が点になっていた。
アリスは気を使って、ガーデンの食堂で売っているジャムの瓶詰めをいくつかかわいく包んで持ってきてくれた。
年少クラスの子の授業で栽培したベリー類や、バイトの学生がガーデンのそこら中にある果物を収穫したものを
食堂のおばさんが煮て作る手作りだ。
お兄ちゃんがガーデンから帰ってくる時に買っていた物で、我が家の定番だった。
「まあ。ガーデンのジャムって梨や葡萄もあるのね?オリーったらベリーのジャムしか買ってこないんだから」
お母さんはアリスの買ってきてくれたジャムに大喜びだった。
「ジャムって言えばイチゴだろ?」
困ったような顔でお兄ちゃんは抗議しているけれど、私は知っている。
お兄ちゃんはピーナツバター&ジェリー(ピーナツバターとジャムを同量ずつ塗ったパンを重ねるサンドイッチ。
ベリー以外のジャムだと当り外れあり。かなり甘い)が食べたいがためにイチゴジャムばっかり買っている事を。
「梨のジャムなんて久しぶりだわ。梨のタルトが作れるわね」
梨のタルトはお父さんの好物だ。多分今夜のデザートでカルバドスとエスプレッソがセットで出てくるに違いない。
「シグネにこんな良いお友達が出来てよかったわ」
お母さんはうきうきした様子でサンドイッチを勧める。
359:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:34 2/NdPD2M
アリスは一見するとガーデンの生徒より市街にある女子高の生徒っていう感じだからムリもない。
お母さんは娘が欲しかったのに子供はお兄ちゃん一人しかできなかったのだ。
娘がいないお母さんが全員こうではないと思うけれど、お兄ちゃんがエマさんを紹介したらお兄ちゃんそっちのけで
エマさんにケーキを食べさせて着せ替えでも始めかねないと思う。
その時、電話が鳴った。
お母さんがキッチンの方の受話機で取った。
「彼女かな?」
アリスがこそっとつぶやいたので私も頷いてみせた。
「かもね」
「誰?」
お兄ちゃんはサンドイッチを飲み込むと聞いた。
「カータトレットさんって言ったわよ?」
一瞬紅茶を吹きそうになった。お母さんは既に好奇心満々になっている。
お兄ちゃんを含め、私達の間に変な緊張が走った。
妹、妹と言っていても実は従妹な訳だし、彼女としてはやっぱり面白くないかもしれない。
お兄ちゃんがキッチンで話す声は小さくてよく聞こえなかった。
お母さんが何か知ってるんでしょう的な顔をしているのに気付かないふりをしてサンドイッチを食べたけど
あんまり味がしなかった。
そうしている内に、お兄ちゃんが居間に戻ってきた。
「何だったの?」
私の質問にお兄ちゃんはげんなりとした様子で顔を上げた。
「昼飯食ったらすぐに買い物って言ってたけど、悪い、少し待ってくれ」
「もしかして、エマさん怒ってた?」
私が恐る恐る尋ねるとお兄ちゃんは頷いた。
360:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:35 2/NdPD2M
「私とアリスが買い物に行くのに、運転してるだけだって言えば良かったのに」
アリスも私の言葉にこくこくと頷く。
「いや、それも言ったんだけど、余計叱られた」
「……なんて?」
「ずるいって」
「え?」
聞き違いとしか思えない言葉がお兄ちゃんの口からこぼれた。
「……自分一人だけ、女の子二人がドレス買いに行くのに付き合うなんてずるいって。
今からここに来るから一緒に行くって。……なんで私も誘ってくれなかったのって、怒ってた。すごく」
お兄ちゃんは腕を組んではーっと、大きくため息をついた。
「じゃあ、あの、お兄ちゃんが別の女の子と一緒だから怒ってるんじゃ、ないの?」
「うん。お前の言う意味では怒ってない。そういうわけで悪いがあいつも一緒だ」
お兄ちゃんはすまなそうに言った。
「私は別にいいけど。……アリスは?誘っておいてなんだけど」
私の質問にアリスはちょっと考えるような顔をした。
「カータトレット先輩でしょ?私も知り合いだからかまわないわ。いい先輩よね」
「私もエマさん好きだな。楽しみだね~」
「うん。楽しみ」
私とアリスの様子にお兄ちゃんは複雑な顔をしていた。
それから1時間と経たない内にドアのチャイムが鳴った。
迎えに出るとオフベージュに薄藍と黒の模様の入った洒落たワンピースに上品なカーディガンを羽織った
エマさんが立っていた。
「こんにちは」
にっこりと笑った顔はやっぱり綺麗で、怒っているというのが嘘みたいだった。
「ごめんなさいね、押しかけちゃって」
「いいえ、どうぞ」
私が居間に通すとエマさんはお母さんにきちんと挨拶した。
361:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:37 2/NdPD2M
「えーと彼女は……」
お兄ちゃんがどう紹介しようかと戸惑っていると先輩はにっこり笑った。
「同級生なんです。いつもお世話になってます。これ、授業で栽培したものですけど」
エマさんはミニブーケにまとめたブラウン系の大人っぽいバラの花をお母さんにお土産として渡した。
理系の選択授業でバイオテクノロジーの初歩として花の品種改良しているクラスがあるのだ。
エマさんもケーキ責めにしたそうなお母さんに悪かったけれど私達は市街に向かった。
アリスの欲しいドレスのブランドのお店はエマさんの行きつけだったらしく、店員さんが奥から
ウインドウにない物まで出してきてくれた。
エマさんは店員さんと一緒にすごく楽しそうに私達にドレスを見立ててくれた。
結局、アリスは本で見ていたラベンダーのドレスに白のストールを合わせる事で納得した。
私は薄い若草色で肩の所がフリルのようにひらっとしている物に決めた。
「靴はどうなさいます?」
店員さんが出してくれたパンプスを見て、私はちょっとドキッとした。
殆どの靴のヒールが5㎝はあるのだ。こんなのを履いたらますます背が高くなってしまう。
私の隣でもアリスが同じような顔をしている。私はなんとなく理由がわかるので黙っていた。
「このドレスなら断然これですね」
店員さんが合わせてくれた靴は確かにドレスにぴったりだけどハイヒールだった。
私とアリスの様子を見て、エマさんはおや?という感じに靴を見た。
「二人とも、ダンス得意?」
突然のエマさんのセリフに私は首を振る。基本のワルツとラテン風のステップの初歩を子供の時習ったくらいだ。
アリスも基本くらいはできてもあまり踊った事がないと言っていた。
「じゃ、この靴全部却下ね。転んじゃう」
エマさんは別の場所から殆どヒールのない靴を幾つか探してきてくれた。
「これなら、大丈夫じゃない?」
細い皮紐を編み上げたヒールの無いサンダルを私に、アリスにはかかとに通したリボンを足首に巻きつけて結ぶ
ローヒールのセパレートパンプスを持ってきてくれた。
サイズもいいし、ハイヒールほど華やかじゃないけれど悪くなかった。
「私はこれにしようっと」
エマさんは手持ちの服に合わせるのだと言って青いハイヒールを選んだ。
362:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:39 2/NdPD2M
「オリー、ホールドしてみてくれる?」
お兄ちゃんがエマさんをワルツの姿勢でホールドする。
エマさんはわりと小柄でお兄ちゃんは長身の部類に入るからハイヒールの高さがあってちょうどいいくらいだった。
「すてき……」
アリスが口元で手を合わせて言った。
私もかっこいいなとは思ったけれどさすがにお兄ちゃん相手にアリスのように褒め言葉を口にはできなかった。
アリスの褒め言葉にエマさんは苦笑した。
「二人とも、パートナーは決まってるの?」
尋ねられて私とアリスは顔を見合わせる。当然、二人ともそんな人はいない。
「まあ、あなた達なら当日一人でいたらお誘いはかかるだろうけど」
エマさんは意味ありそうに笑うと試着していた靴を店員に渡した。
「私達はパーティー前にまず一仕事終えなくちゃね。オリー」
エマさんの視線に、お兄ちゃんが気まずそうな顔をする。
「何があるんですか?」
私の質問にはエマさんが答えた。
「筆記試験。SeeD実地試験前のね」
そういえばお兄ちゃんとエマさんはSeeD候補生だった。
お兄ちゃんは体術が専門でエマさんは剣技とクラスは違うけれど筆記試験は同時に受ける。
「帰ったら、しっかり勉強しなきゃ。来週だもんね」
お兄ちゃんは、またはーっとため息をつく。
「お前はもう大丈夫だろ?絶対受かるって」
そのセリフでエマさんの眉が上がった。
「何言ってるのよ。私は事前選考で落とされる可能性が高いのに。あなたは筆記さえクリアすれば絶対SeeDになれるのよ」
後で聞いた話によると、エマさんは体力不足という理由でSeeD候補生段階から先に進めないらしい。
お兄ちゃんはお兄ちゃんで、体力、技術に問題はないけれどペーパーテストが大の苦手で
二人ともお互いの得意分野にコンプレックスがあるみたいだった。
私とアリスのドレスを包んでもらうと、一度家に帰ってお母さんのケーキの残りを詰めた箱を受けとって私達はガーデンに戻った。
「エマ、そういえば家に来る時どうやって来たんだ?バスにしては早かったよな」
お兄ちゃんが不思議そうに聞く。
「バラムに行く人がいたから乗せてもらったのよ」
「よく家がわかったよな」
「だって乗せてくれたのニーダだもの」
363:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:40 2/NdPD2M
心臓が、どきりと音を立てたかと思った。
「ニーダが?」
「そう。先生の所に顔を出しに行くって言ってたわ」
エマさんの言葉にお兄ちゃんがヤバイ、という感じの顔をした。
「しまった。俺も行けば良かったな。もうずっと顔出してないや」
「先生って?」
私はできるだけ何でもないように聞こえるように尋ねた。
「道場の先生。覚えてないか?俺とゼルが通っていた体技の道場があったろ?」
そういえば私が一度ティンバーに戻る少し前、時々お兄ちゃんが白い服を持ってどこかお稽古に行っていた気がする。
「ニーダって、この間俺の代わりにお前の迎えに行ってもらった奴な。あいつも同門の生徒なんだよ」
そんな事、知らなかった。
「クラスメートかと思ってた」
「クラスも一緒だけどな。あいつと友達になったの、シグがティンバーに行ってからだったもんな。
そのうちまた紹介するよ」
まさか私があの人に「スニフ」なんてあだ名をつけてた事なんて知らないであろうお兄ちゃんは呑気に言った。
「そういえばあいつも今回受験だろ?」
エマさんにお兄ちゃんが聞く。
お兄ちゃんとクラスメートなんだから考えてみれば当然の事なんだけど、それでもあの人がSeeD候補生で
ガーデンの中でも特別な部類に入る人だなんてとても信じられなかった。
穏やかで、控えめな感じで、戦場で生死をかけて戦うような人だなんて、どうしても思えなかったのだ。
「この間G.F.の正式登録済んだって言ってたわよ」
「マジで?ヤバイな、俺。置いていかれそうだ」
そう言いながらお兄ちゃんの口調にはあせりがない。
正直な所、私から見てもお兄ちゃんにはSeeDになろうという気は殆どなさそうだった。
お母さんが言うには友達に付きあってなんとなく受けたら受かってしまったというのがガーデンに入った理由らしいから
むしろSeeD候補生になれた時点で奇跡のような物なのだ。
364:スニフの恋人/姐 ◆ane/8MtRLQ
03/05/07 20:40 2/NdPD2M
エマさんにもそれがわかるのか、黙って苦笑いのような表情をしていた。
ガーデンに着くとお母さんのケーキの中で日持ちしない物を優先的にお兄ちゃんに引き受けてもらって4人で分け、
それぞれの部屋に戻った。
寝る前に日記を書こうと思った所でペンが止まってしまった。
この一週間は普通にあった事を書いていたのだけど、今日はどうしても「スニフ」に宛てて書きたかったのだ。
もうあの人は知らない人じゃなくてガーデンの先輩なんだから「スニフ」に宛てて書くのは良くないとは思ったけれど
結局、最後にはこう書いてしまった。
「スニフへ
私が思っていたよりずっとずっとお兄ちゃんと仲良しだったんですね。
もしかして家に来た事もあったのかな?そう思うなんだかびっくりです。
来てくれていたとしたら、お母さんの事だからガトーショコラ丸ごと1つ、
「あなたの分よ」って出したりしませんでしたか?
こんな事、冗談じゃなくて本当にやっていたらどうしよう。
私が初めて友達を連れて来た時はオレンジ・シャルロットでそれを
やっちゃったので友達が次の日食べ過ぎでお腹を壊して大変でした。 」
そこまで書いた所で、あの大きな目を瞬かせて「それは大変だったね」と言うニーダさんの顔が浮かんで来た。
最後に私はこう書いて日記を閉じた。
「パーティーで、スニフは誰と踊るのかな?」
365:road to homeーこころの故郷2
03/05/07 23:45 V3hMfw5m
その日の夜、整備点検を兼ねて停泊中のファルコン号甲板。
「…………」
いつも以上に仏頂面だった飛空艇の現所有者を見やりながら、なだめる様に声
をかけたのはロックだった。
「まーた、今日はいちだんと不機嫌だな」
「お前に愛想振りまいても何の得にもならんだろ?」
が、どうやら逆効果だったようだ。当てが外れたようにロックは口をとがらせ
不満を漏らす。
「何だよ。……ったく、人が色々悩んでるってーのによ」
「悩むヤツは悩めばいい。だが今お前が悩んでるのは、もともと他人がどうこう
口出しできる問題じゃないだろ」
セッツァーは簡単に言い捨てた。抗議の声をあげようと口を開きかけたロック
だったが、彼の言うことはもっともで反論しようが無い。
が、理性が納得したそばから口をついて出たのは感情に任せた言葉だった。
「……でもさ」
ロックという男は、頭で分かっていても放っておけない性分なのだと言う事は、
セッツァーも充分承知していた。しかし今回はそれが裏目に出るだろう―現に、
マッシュがそうだったのだから。
「まだ何か余計な世話を焼こうとするか?」
「そうじゃないけど」
「じゃあ黙って寝ろ」
「そーいう言い方って無いんじゃないか?」
ロックの声に明かな怒気を認めながらも、セッツァーは態度を変えようとはし
なかった。
「お前がどう思おうと勝手だがな、傷つくのはガウ自身だって事を忘れるなよ」
「…………」
366:road to homeーこころの故郷3
03/05/07 23:48 V3hMfw5m
怒るわけでもない、かといって諭すわけでもなく告げられたその一言に、今度
こそロックは閉口せざるを得なかった。
一応は納得するものの、二人の内心に去来するのはやはり同じ様な思いで。
(ガウの事もそうだけどよ、マッシュも何とかしてやらないと……)
(大体、弟が落ち込んでるって時にエドガーは何をしているんだ?)
残念ながらこういった場合、自分が出ていっても事態を悪化させるだけで好転
する事はないと、二人には自覚があった―からこそ、こうして悩んでいるのだ
が。
「親父か……」
ふと思い出した。
自分も父と同じ冒険家としての道を歩んだロックにとっては、身近で頼もしい
存在なのだろう。
「俺はどうでもいいがな」
天涯孤独のセッツァーにしてみれば家族の温もりなどは縁遠い物で、今更求め
ようなんて思う事はない。
「…………」
この後しばらく、二人の男は仏頂面をさげて甲板に佇んでいた。
367:ドリル装備の名無し ◆Lv.1/MrrYw
03/05/07 23:51 V3hMfw5m
>>358-364(スニフの恋人)
漏れが一番苦手とする描写(ファッション。w)が沢山でてきてて(゚д゚)ウマー!!
……勉強になります。
シグネの心理描写、たまらなく良いです。憧れの人を密かに思うときの
独特の雰囲気が文面から伝わって来ます。
それにしても、たらふくケーキ食べられるなんて贅沢な。(w
368:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/08 00:06 gKQD9Rw2
>>353
ヒゲ自慢、もとい卑下自慢とゆう奴ですね。
おいらも自嘲…自重しますです。。・゚・(ノД`)・゚・。ゴメン
誉められたら「え~違うよ」じゃなく「有難う」が基本ですか?
>>354-356 >>365-367
新作キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!おお!ガウだ!l \ァl \ァ
ガウは楽しい+元気が出る+でも切ない、感じがしますです。
FF6主要男性キャラ、皆面倒見が良くて、事態が悪化しても素敵です!
じ、事情ですか?何か人様に言えない事情が私に…?(((((((;゚Д゚)))))))
ドリルさんがオイラに謝るような事は、一切思い当たりませんです…。
寧ろ私が謝罪(何)
>>357-364
スニフなニーダ萌え!シグネさんの家庭が楽しそうです。
シグネさん、何気に謙虚な天才児ですね。
ドレスも改良されたお花も憧れます。ブラウン(・∀・)イイ!!
毎日の長篇うp、乙華麗さまです。読むのが楽しみであります。
369:【トロ、もとい神と旅する】(1)
03/05/08 00:07 gKQD9Rw2
灰白の月光。その背後に、凍り拡がる藍の闇。
血から湯気が立ち昇り、殲滅したドラゴンの肉体がどろりと崩れた。
英雄は逆光を浴び、凛と立っている。
「はーい、カットー!」
「やべ!俺台詞間違えた!」
「NG集だな…クックック」
此処、黄金円盤第6スタジオでは、お昼の連続ソープオペラ
『魔晄戦記ソルジャ-ドン』の撮影が続いていた。
「ソルジャーの仕事って、色々あんだなぁ!」
「TVに出たがったのはお前位だろう、ザックス。
それとも、幼稚園慰問の仕事でも手伝うか?」
「え、遠慮するっす!」
「ひまわり組の皆さんが、待っているぞ」
「一体全体どうして、一日中上司にくっついての仕事なんだ…」
──真面目に考えるのならば、お前は将来の右腕候補。
恐らく又、未熟であっても基礎能力値の高い若者が
俺の近くに配備される筈──
「ん?何か言った?」
「明日は夜間演習だ。彼女に振られぬ様、注意して措け」
すたたたたっと、AD(22) 君が駆け寄って来た。
「次の衣装なんですが…」
370:【トロ、もとい神と旅する】(2)
03/05/08 00:11 gKQD9Rw2
A:ゴシック調の紅白小○幸子風
B:マント+パンツ付きシルバーのピチピチタイツ
C:怪奇!蜥蜴土竜蝟怪人
「……!」
英雄の額に、厭な汗が滴った。
哀れなAD(22) 君はもはや顔面蒼白だ。
「ルーファウスぼっちゃま、たっての御希望だそうで…」
「スポンサー、か。大変だねえ、セヒロス(・∀・)」
「ザックスが着るそうだ。是非着せてやれ」
Σ(゚Д゚;嫌だぁぁぁ!止めろデートで彼女に捨てられたらどうする!!
と絶叫するザックスに
「キャラクター商品になる日が…実に楽しみだ」などと
嬉し気な英雄の言葉が応え、犠牲者を衣装部屋に押し込んだ。
次回はウエポン登場させるからな!と、小さなルーファウスは
画用紙一杯に怪獣を描く。ツォン主任は画用紙に触れ
「賜りました。ではデザイン室にその絵を送りましょう」と封筒を用意。
その日。スラムの巨大モニターに
ヤケッパチで矢鱈メッタラ、大立ち回りな大童に快刀乱麻疾風怒濤する
「怪奇!トカゲもぐらハリネズミ」姿の
ソルジャーブルーこと、ザックスが大写しとなった。
その姿にも関わらず、優し気な花売り娘さんが
ソルジャーブルーにうっとりしてくれたのが、唯一の救いである。
次回、「ウエポン~星の呼ぶ声~」にリミットブレイク!
提供は(株)神羅魔晄ソーセージでした。(※続きません(;´Д`))
371:名前が無い@ただの名無しのようだ
03/05/08 06:07 5Wk+eWII
>>354
??
あのオヤジの台詞、私は「(ガウのような)息子を持った父親は幸せ」って
意味に取ってたんだけど。
マッシュの連れて来たガウを見て、オヤジは自分の息子だって気付いたんだけど、
自分には父親だって名乗る資格がないと思ってる、
だからせめて会えて嬉しいの「幸せ」という言葉で表現…みたいに解釈してたよ。
SSの途中なのにこんなツッコミ入れてゴメン。
372:371
03/05/08 06:14 5Wk+eWII
すまん、>>356だった。
オノレちゃんの蛸足に絡まれて逝(ry
373:白 ◆SIRO/4.i8M
03/05/08 20:02 wM2dKlMO
>>371-372
生キロ。てか横レススマソ。m(_ _)m
仰る通り物語も途中ですし、 解釈は人各々かなぁと。
371さん →ガウの父親の視点
ドリルさん →ガウの仲間の視点 っぽいですね、面白い。
374:【未亡人】(1)
03/05/08 20:03 wM2dKlMO
ピジョンブラッドの炎が、石榴状の瑕口を開け、天空に唸る。
星を壊滅させ得る隕石、メテオが宙吊りになっているのだ。
それでも。
平然と虫が鳴き、店が開き、勇者達はLv上げ中。
ザックスの思い出に逢いに、神羅屋敷へクラウドが訪れた。
「懐かしいな…」
「昔此処で、ウチのパパが凶斬り喰らったのよね」
「Σ(゚Д゚|||)え?何それ?!」
ティファの唇から、昔話が紡ぎ出される。
──小さな頃のクラウドは、可愛かったのよ。
『お医者さんごっこしよう!゚+.(・∀・)゚+.゚』
「Hだったけど」
「((((( ̄Д ̄;)))))←※クラウド」
クラウドは、幼稚園の秘密迄バラされそうな悪寒を覚えた!
「駄目じゃん。。。何か、村で浮いてたって聞いたよ!」
ユフィの問い掛けに、長い黒髪の先端が揺れ、溜息が溢れた。
「…そもそもはウチのパパが…」
村を訪れた少女。豪奢な金髪と、華奢な躯。涼し気な容顔が愛らしい。
その娘に、村の顔役の息子は一目惚れしたのだ。
375:【未亡人】(2)
03/05/08 20:04 wM2dKlMO
「若い頃、パパは、村のブロンド娘さんを口説いたらしいの」
艇長が、煙と共に口を挟んだ。
「んで、コスモキャニオンで勉強して、ロケット技術者になった
ストライフってぇ哥さんに、負けたんだろ?」
「そうなのか?!」
「夢の有る人って素敵ー!って事かな。アタシなら顔役にするけど」
今は失われた、緑濃きニブル山の風景。
その山道を、山チョコボで疾駆する若き技師。
「親父の事、知らなかったよ」
「あの頃は山にモンスターなんざ、居なかったからなぁ」
「…でも」
ティファは俯き、手の平で顔を覆った。
「でも死んじゃうの。ウチのママも、クラウドのパパも」
私は止めたのだが。と、ヴィンセントが前置きし、
「神羅の新薬実験のバイトをしていたからな…」と答える。
「え━━━━━ ?!」
愕然とするケット・シー。
「それで、独り身同士って事で、パパがクラウドのお母さんに
再チャレンジしたんだけど…」
葬列から、黒衣の未亡人が離れる。
伝統衣装である、黒い頭巾付の外套を脱ぎ捨てると
するりと伸びたロングスカートと、レースに覆われた顔が露になった。
鉄杖の燭台が、神羅屋敷の内部を照らす。
376:【未亡人】(3)
03/05/08 20:05 wM2dKlMO
「御用は何ですか?ロックハートさん」
未亡人の瞳は涙に潤い、ハンカチを外す事が出来ない。
体格の良い、男盛りのティファの父親が、小柄なクラウドの母に触れた。
父親は、未亡人の背後から肩に手を回し、厳かに告げる。
「ストライフさん。
貴女には、南に日当たりの良い果樹園が有る様だが?」
言わなきゃ良いのに。。。その一言で
クラウドママのリミットゲージが、一気に満タンになった。
ブラックフォーマル姿の未亡人が、ピンヒールから
石畳に火花を散らし、呪われた館を突進する。
「うるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
鉄の燭台が振り下ろされ、業火が空に文字を書く。
「 凶 」
衝撃波と共に、ティファパパは屋敷の外へ吹っ飛んだ。
轟音と共に、葬列の目前へパパが落下。
勇気ある雑貨屋のオカンが、クラウドママを宥める迄
髪を黒のリボン結びにした、幼いクラウドとティファ
及び、村人全員は((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル状態だった。
──以来、両家の仲は最悪だった、と云う。
「ウチのパパ、完ッ璧に口説き文句間違えたわね!」
「でも隠れて遊んでたけどな」
クラウドの台詞に、バレットが叫ぶ。
「…そりゃあ、何処の親父も警戒するぜ!」