03/04/13 00:12 B1cCJo7W
「私はフィガロを愛している。……その為に、この身が滅びると言うなら本望だ」
口が裂けても弟の前では言えない、それが“国王”の秘めたる決意だった。
***
飛空艇ファルコンの甲板に差し込む淡い月明かりの下に、二つの影が並ぶ。
「お前、もう少し肩の荷を降ろしたらどうだ?」
「……重荷を背負っているとは思っていないが」
ケフカ打倒の為の旅を続けていたある日の深夜、寝付けずにいたエドガーは夜
風に当たろうと出向いた飛空艇の甲板で偶然セッツァーと会い、話し込んでいる
うちにそんな事を言われた。
「お前はそう思っていても、周りはそう思わねぇだろ」
「そんなものか?」
「ああ。俺がそう思ってる」
「セッツァーらしいな」
飛空艇を操り自由に生きるこの男は、まるで風のようだとエドガーは感じてい
た。何者にも縛られる事なく自分の思うように振る舞う様は、砂漠の城主である
自分とは対極の存在とも思える。
少なからず、セッツァーに対して憧憬の念を抱いていたのは確かだった。
「ふん。どうせ俺には自分が感じた事しか分かんねぇよ」
「それが君の魅力じゃないか?」
「男に言われても嬉しかねぇな」
と、口振りは素っ気ないが穏やかな表情で笑っていた。
「……なぁエドガー。この戦いが終わったら……やっぱり国に戻るのか?」
「ああ」
何の躊躇いも見せずにエドガーは即答した。一点の曇りもなく強い意志を秘め
た瞳は自信と威厳に満ちあふれ、それでいて優しい色をたたえている。若いなが
らも王者に相応しい貫禄を、すでに充分備えていた。
そんな姿を見るにつけセッツァーもまた、エドガーが自分とは正反対の生き方
をする人間なのだろうと感じていたのだ。
「争いで血と涙を流す時代は終わらせなければならない。俺達がこの戦いで終止
符を打っても、それだけでは混乱が残るだけだ。私の夢は……その先にある」