02/09/04 20:27
……アレクサンドリア城内の一室、その中心に位置する寝台の上で、クジャは目を覚ました。
うっすらと目を開けると、視界は薄暗い部屋の天井を捉えた。
頭がぼんやりとする。これは何か薬を盛られたか……本能的にクジャは勘づいた。
起きあがろうと腕を動かすと、じゃらりと金属がこすれる音がした。見ると、手首には鉄の手錠が取り付けられていて、そこから伸びた鎖が寝台の足へ取り付けられていた。足首にも金属の冷たい感触があることから、足も同じように固定されているのだろう。
「ほう、思ったより目覚めが早いな。流石と言うべきかな」
「……女王陛下……これは何の冗談でしょう?」
傍らから、クジャの顔を覗き込む様にブラネが顔を見せた。思わず罵詈雑言を浴びせたくなるが、息を飲んで押さえ込む。
出来る限り刺激しない様に訊ねると、ブラネはその象の様な顔に笑みを浮かべる。
「なあに、なんて事のない余興に過ぎぬ。我々の大陸制圧劇に比べればな」
余興だと? 何をふざけた事を!
プライドの高いクジャは、我慢できぬとばかりにキッと彼女を睨み付ける。
しかしブラネは度胸のあるもので、それをまた愉快そうに眺める。
「そして、余興は……まだ始まったばかりなのだよ」
にやりと唇の端を吊り上げて、ブラネはその贅肉だらけの腕でクジャの顎に手を当てる。
反射的にそれを振り払おうとしたクジャは、しかしそれは叶わず鎖が音を立てるだけだった。
顎を掴んだブラネは、そのまま彼の顔を眺める様に顎を引く。
「楽しい楽しい、余興はね……」
醜悪に微笑むと、彼の紅が引かれた様な唇を強引に貪った。