07/03/24 08:59:00
①御門君のことが気になっていた。
ほとんど無表情で、何を考えているのかさっぱりわからない。
無口だけれど、言葉は普通に話せる。
真面目そうだけど、夜中に家の前にいたりする。
なぜか微妙に常識がずれていて、行動が読みにくい。
(ほんと、不思議な人だよね御門くん…)
「愛菜ちゃん」
ぼーっとしていると、周防さんがにこにこと私を手招きしている。
「はいっ」
周防さんの隣に立つと、御門君が淡い緑のシャツを着て立っていた。
「愛菜ちゃんが選んだほうが良いっていうから、こっちにきめちゃったよ」
「え?あ、はい」
「…………」
「このまま着ていけるようにしてもらうよ。愛菜ちゃん、ごめん。これ返しておいて。冬馬ほら、レジいくぞ」
「いってらっしゃい」
私は、周防さんから深緑色のシャツを受け取ると元の場所へ戻した。
レジのほうを見るとまだ並んでいるところだった。
(レジにいっちゃうと他のお客さんの邪魔かしら…?)
1.二人に合流する
2.店の中を見て回る
3.店の外で待つ
331:名無しって呼んでいいか?
07/03/25 22:55:04
3.店の外で待つ
私は店の外に出て、二人が会計を済ませるのを待っていた。
(よかった。御門君の服、とっても似合っているな)
買ったジーンズの裾を切らずに済んだのは、御門君の足が長い証拠だ。
制服では気付かなかったけれど、長い手足と均整の取れた体つきは日本人離れしている。
レジで並ぶ周防さんと御門君は、いい意味でとても目立っていた。
(もしかして、二人ともかなりかっこいいんじゃないのかな……)
そう考えると、夢の中で『デート』と言った周防さんの言葉が頭をかすめた。
思わず気恥ずかしくなって、うつむいてしまう。
(これはデートじゃなくて、気晴らしだよ、気晴らし)
「愛菜ちゃんお待たせ……って、あれ? 顔が赤いみたいだけど大丈夫?」
周防さんはクスッと笑いながら、私に尋ねる。
「いえ、なんでもないです」
「そう? 意外と俺たちがイケてるかも…なんて思ってたんじゃないの?」
身をかがめ、周防さんは楽しそうに私を覗き込む。
「………!」
「初々しいねぇ。だけど、男に対してもう少し耐性をつけた方がいいかもしれないな」
「本当になんでもないです」
「そんな嘘つきにはお仕置きだぞ~」
そう言って、周防さんは私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「か、髪がぐちゃぐちゃになるからやめてくださいっっ」
髪をおさえて、私はほぼ無意味な抵抗を試みる。
「ほれほれー」
周防さんは笑いながら、しばらくそのまま撫で続けていた。
少しの間、私をいじめて(?)いた周防さんがようやく手を止めた。
「おっと。冬馬が妬いてるし、このくらいにしておくかな……」
「…………」
御門君はあいかわらず無表情に私を見つめている。
私は
①御門君に話しかける
②周防さんに話しかける
③二人の様子をみる
332:名無しって呼んでいいか?
07/03/26 07:00:41
①御門君に話しかける
「嫉妬って…、なんで御門くんが嫉妬するのよ、ねぇ?」
「…………」
御門くんに同意を求めるが、案の定無言で見つめられるだけ。
「………」
「え?」
スッと御門くんが近づいてきたかと思うと、さっき周防さんがしたように私の頭をなで始める。
周防さんと違うのは、ぐしゃぐしゃになった髪を整えるような丁寧なものだということ。
「……っぷ、は、あはは、な、だから……ははっ、言ったろ?……っぷぷ」
びっくりする私と、頭をなでつつける御門くんを見ながら、周防さんが爆笑する。
予想外のことに、私は呆然とされるがままになっている私。
「み、御門くん、髪大丈夫だから……」
「………」
我に返った私の言葉に、御門くんは頭をなでるのをやめた。
(び、びっくりした…)
「さてと、次はどうする?」
ほてった顔に手を当てていると、周防さんがたずねてきた。
時間を見ると、もう少しでお昼。
チハルの新しいリボンもみたい。
周防さん達は何か他にほしいものはないのだろうか?
1.早めに昼食にする
2.チハルのリボンを見に行く
3.周防さんたちにどこか行きたいところはないか聞く。
333:名無しって呼んでいいか?
07/03/27 15:16:23
1.早めに昼食にする
「少し早いけど、先にご飯にしませんか?日曜日で混みそうだし」
「うん、それがいいかもしれない」
周防さんも時計を確認して頷いた。
「それじゃ、移動しようか?」
「はーい」
「…………」
「ところで愛菜ちゃんは朝なにたべてきたの?」
「えっと、ホットケーキです。周防さんと御門くんは?」
「俺?俺は普通にご飯に味噌汁だったなぁ~」
「………」
「……御門くんは?」
「………」
無言のままじっと見つめてくる御門くん。
「冬馬は、どうせ食べてきてないだろ?」
「………」
周防さんの言葉に、かすかに頷く御門くん。
「そうなんだ?」
「冬馬はいつものことだよな。愛菜ちゃんは何が食べたい?」
私はこういうところに来ると大体ファーストフードで済ませちゃうけど…。
御門くん朝食べてないならちゃんと食べられるようなところが良いかも。
でも、和食は周防さんが朝食べてきたって言ったし…。
①ファーストフード
②ファミレス
③名物カレー専門店
334:名無しって呼んでいいか?
07/03/27 23:39:42
③名物カレー専門店
「フードコートに名物カレー専門店があるんです。そこにしませんか?」
「俺はいいけど。冬馬、お前は?」
周防さんは御門君に尋ねる。
「……………おととい」
「オトトイ?」
御門君の言葉の意味がわからず、私は思わず聞き返した。
「一昨日、あなたの夕食はカレーでした」
(……おとといは確かにカレーだったけど、なぜ御門君が知っているんだろう)
「どうして御門君が私のおとといの夕食を知っているの?」
「…………」
御門君はじっと私を見つめている。
答えが返ってくるのを私は辛抱強く待った。
「……つながってるから……わかります」
御門君には仮契約で守ってもらっているんだった。
だけど、食べたものまで御門君にわかってしまうなんて……。
もしかして私がトイレに入ったりしても御門君に筒抜けなのかな。
(そ、それは困るよ!)
「ストップ! それ以上話すとペナルティだけどいいのかな、お二人さん?」
周防さんが私たちの会話に割って入る。
私は……
①周防さんに言うことをきく
②御門君にさらに尋ねる
③とにかくカレーが食べたい
335:名無しって呼んでいいか?
07/03/28 06:57:01
①周防さんに言うことをきく
(そ、そうよねっ、今日はこういう話はなしだもん、後で御門君に聞こう…)
「………」
「はい、いい子いい子」
口をつぐんだ私たちの頭を、周防さんが子供にするようになでる。
「で、愛菜ちゃんはおとといカレーだったみたいだけど、いいの?カレーで」
「家で食べるカレーと専門店のカレーは別物ですから」
「確かに、ちがうよなぁ~、やっぱりスパイスとかかね?っと、冬馬カレーでいいか?」
「………」
無言で頷く御門君を確認して、周防さんは頷いた。
「それじゃカレーにすっか。混む前にレッツゴー」
「はいっ」
「………」
歩き出した周防さんについて歩きながらふと、疑問が浮かぶ。
「周防さん、ここに良くくるんですか?」
「ん?いや?できた頃に一回だけかな?どうして?」
「足取りに迷いがないので…よく来るのかなと……」
「あ~、ほら入り口にモールの全体図と店の案内があったのみたから」
「確かに…ありましたね」
でも、立ち止まってまで見ていない。
(一瞬見ただけで全部覚えちゃった…とか?まさかね、大まかに覚えてるだけよね)
「さて到着~、とりあえず入ろう」
「はーい」
店内に入るとお客さんはまだまばらで、好きな席に座ることができた。
メニューを開きながら、周防さんがたずねてくる。
「何食べる?」
「う~ん……」
私が好きなのは、このへんだけど…今日はどうしようかな?
①ベジタブルカレー
②チキンカレー
③激辛カレー
336:名無しって呼んでいいか?
07/03/28 19:18:27
①ベジタブルカレー
「愛菜ちゃん、決まった?」
周防さんはメニュー表を見ながら尋ねてきた。
「私はベジタブルカレーにします」
「了解。冬馬は?」
その時、ウェイトレスが注文をとりにやって来た。
「俺はビーフカレー、この子はベジタブルカレー。お前はどうするよ?」
周防さんに促され、御門君はメニュー表をゆっくり指差す。
「激辛カレーでよろしいでしょうか?」
ウェイトレスの質問に御門君は無言で頷いた。
オーダーの確認を済ませると、ウェイトレスは去っていった。
目の前には、周防さんと御門君が座っている。
(よく考えたら、この二人の事を何も知らないのよね……)
まずは…すぐに答えてくれそうな周防さんに何か質問をしてみようかな。
①年齢をきく
②職業をきく
③御門君との関係をきく
337:名無しって呼んでいいか?
07/03/28 19:51:11
①年齢をきく
「そういえば周防さんって、何歳なんですか?」
職業とか御門君との関係をきくと、ペナルティになる答えになりそうなので当たり障りのない所を聞いてみる。
「うん?何歳だと思う?」
周防さんは楽しそうに逆に聞き返してきた。
「えーっと、にじゅう……に、か、さんっ」
「おしいっ!」
「え…じゃあ、21!」
「ちがーう。はい、時間切れ正解は24でした」
「むーー」
「失礼します、ナンをお持ちしました」
「ありがとさん」
ウェイトレスがナンの入ったカゴをおいていく。
焼きたてのナンのいい香りがする。
ここのナンは絶品で、私はだいすきだ。
「ここのナンは食べ放題なんですよ」
「へぇ、そうなんだ?」
「すごくおいしいんです。ナンは家じゃつくれませんから、つい食べすぎちゃって」
「食いだめって?」
「ですです」
周防さんと談笑していたら、視線を感じた。
顔を向けると、じっと御門くんが相変わらずの無表情で私を見ていた。
(……も、もしかして…すねてる?)
さっきも全然そうは見えなかったけど、周防さん曰く嫉妬していたって言うし…。
御門くんにも、なんか質問してみようかな…。
1.クラスを聞く。
2.辛いものがすきなのか聞く
3.どこに住んでいるのか聞く
338:名無しって呼んでいいか?
07/03/28 23:49:27
3.どこに住んでいるのか聞く
「ええと、あの、御門君?
御門君に聞きたいことがあるんだけど……」
私が呼びかけると、御門君は私に視線を合わせる。
……なんだかちょっと恥ずかしくなりつつも、言葉を続けた。
「その……御門君ってどこに住んでるのかな?なんて……」
私の質問に御門君が黙り込む。
(そ、そんなに難しい質問したつもりじゃなかったんだけど……)
内心困惑しながらも、ひたすら御門君の答えを待つ。
やがて、彼から返ってきた答えといえば。
「……マンションです」
その一言だけだった。
再び、場が静かになる。
御門君の答えに、どう反応していいかわからなかった。
(ちゃ、ちゃんと答えてはくれたんだよね……うん。なんかズレてるけど)
「あ、えー、えーと、そうなんだ」
結局私はそう言った。乾いた笑いを顔に浮かべながら。
正直な話、どう切り替えしたらいいかちょっと分からなかったからだ。
「冬馬、お前なー……」
その様子を見ていた周防さんが大きくため息をつく。
「おバカ」
それから、小さく呟きながら軽く冬馬君の頭を叩いた。
衝撃のせいなのか冬馬君の頭がほんの少しだけ動く。
「あ、あの、周防さん?冬馬君にも悪気があったんじゃないでしょうし……
私は気にしてませんから、ね?」
私が苦笑いをしながら止めに入ると、二人の動きが止まった。
「「…………」」
冬馬君は相変わらず無表情のまま、周防さんは驚いたような表情で。
それぞれに私を見ている。
(え?何?何なのこの反応?)
①自分の発言を思い返してみる
②妙な反応の理由を二人に聞いてみる
③とりあえず謝る
339:名無しって呼んでいいか?
07/03/29 06:50:09
③とりあえず謝る
「えっと、言いにくいこと聞いてごめんね、御門くん」
よく考えれば、私を守ってくれているとはいえ、プライベートにほいほい踏み込むほど親しいわけではない。
「………」
「愛菜ちゃんが謝ることないって。ずれてるのはこいつなんだから」
冬馬君は相変わらず無表情で私をみていたけれど、周防さんが苦笑する。
「おまたせしました」
そのとき丁度カレーが運ばれてくる。
それぞれのカレーをおいてウェイトレスが離れていった。
「………御門くんのカレー」
思わず見つめてしまう。
私と周防さんのカレーに比べて明らかに色が違う。
見ているだけで辛そうな黒っぽい色。
「…………」
御門くんは特に気にした様子もなく、ナンを手にとるとカレーを食べはじめた。
「俺達も食べよう、いただきまーす」
「あ、はい。いただきます」
でも、御門くんのカレーが気になってしまってつい見てしまう。
激辛のはずなのに、御門くんは表情も変えずにもくもくと食べている。
「冬馬、ちょっと分けてくれ」
周防さんも気になっていたのか、御門君のカレーをちょっと掬うとぱくっと食べた。
「………~~~~~!!!!!」
とたん、慌てて水を飲む。
「お、おまえ、良くこんなのそんな平然と……」
よっぽど辛かったのか、なみだ目で御門君を見ている。
(そんなに辛いんだ…)
1.御門くんに一口もらう
2.周防さんにどのくらい辛かったか聞いてみる
3.さっきの反応の理由を聞いてみる
340:名無しって呼んでいいか?
07/03/29 23:30:27
1.御門くんに一口もらう
「御門くん。私も一口もらっていい?」
「いいのかぁ? 見た目以上に強烈だぞ、コレ」
「大丈夫ですよ、辛いものは平気ですから。御門くん、いい?」
御門くんは無表情のまま、首を縦に振った。
激辛カレーはこの店の人気メニューだったけれど、食べきれる自信が無くて諦めていた。
香織ちゃんは辛いものが苦手だから、この店に来る機会もあまりなかったのだ。
(一度、食べてみたかったのよね……)
そんな事を考えていると、黒い液体がすぐ目の前まで近づいていた。
「……………」
御門くんは黙ったまま、スプーンを更に近づけてくる。
(食べろってことだろうけど……ち、近い)
スパイスの効いた香りに、少し目がしみる。
「あ、ありがとう……いただきます」
差し出されたスプーンをパクリと口の中に入れた。
その瞬間、口の中に痛みが広がる。
「……~~~~~!!!!!」
体中がブワッと焼けるように熱くなる。
「ほらっ、愛菜ちゃん。水、水っ」
周防さんがすかさずコップを差し出してくれる。
私はあおるように、その水を一気に飲み干した。
「し、死ぬかと思った……」
「ほらなぁ。せっかくお兄さんが忠告したのに無視するからだぞ」
周防さんは呆れるようにしながらも、コップに水を注いでくれた。
「…………もう、へいき?」
御門くんは少しだけ、首を傾げるようにして私に尋ねてきた。
①「大丈夫。心配してくれてありがとう」
②「御門くんは辛くないの?」
③「周防さんの忠告を聞いておけばよかったです」
341:名無しって呼んでいいか?
07/03/30 00:10:51
②「御門くんは辛くないの?」
「よく、わかりません」
私の問いに、表情一つ変えないまま御門君が答える。
しかしその答えはどこか曖昧なものだった。
(よくわからないって……辛すぎてよくわからないってことなのかな……?)
私が考えている間にも、御門君は無表情に黙々と食べ続けている。
(そういえば、周防さん、急に静かに……)
ふと、周防さんのほうに視線だけを向ける。
「……」
周防さんは何ともいえない複雑そうな表情で御門くんを見ていた。
「……周防さん?」
その表情が気になって声をかける。
周防さんは私の声で我に返ったようだった。
「悪い悪い。ちとボーっとしてた。……さ、早く食べようぜ?」
そしていつもの子供っぽい笑顔を私に向けて、自分のカレーを食べ始める。
「わ、は、はい」
周防さんに促されるまま、私も自分のカレーを食べることにした。
……んだけど、味がよく分からない気がする。
なんでだろう?
①さっきの激辛カレーのせい?
②御門くんの反応のせい?
③周防さんの表情のせい?
342:名無しって呼んでいいか?
07/03/30 06:45:00
①さっきの激辛カレーのせい?
口の中がぴりぴりして、全身が熱い。
汗を拭こうとバッグの中からハンカチを探していると、視線を感じた。
顔を上げると、御門君がバッグを見ている。
その視線の先にはチハル。
チハルはおとなしく入ったままの状態。
でも、御門くんをじっと見ているみたいだった。
(な、なんだろう…、チハルが動けるってばれてる…?)
感情の読めない二つの視線がぶつかっている……気がする。
(あ…、でもなんか御門くんとチハルって似てるかも…?)
チハルは人形だから当たり前だけれど、感情が読めないところとか…
時々良くわからない行動をしているところとか…
「ん?冬馬どうした?」
急に食べるのをやめた御門くんに顔を向け、その視線を追って周防さんもチハルを見る。
周防さんの表情からは、ヌイグルミがどうかしたのか?というような疑問が伺える。
えっと……
1「この子がどうかした?」
2「小さいときに誕生日にもらった子なんです」
3「今日新しいリボンを買ってあげようと思って…」
343:名無しって呼んでいいか?
07/03/30 09:29:03
3「今日新しいリボンを買ってあげようと思って…」
「思わずつれてきちゃいました、あ、あはは……」
苦笑いしながら、チハルを机の上に置く。
「そーか。じゃあ、後で小物屋かどっかに行かないとな?」
チハルの頭をなでながら周防さんが二カッと笑う。
「……」
対して、御門くんは無言のまま、じっとチハルのことを見ていた。
(な、何か気になることでもあるのかな……?
もしかして、ただのぬいぐるみじゃないって察してるとか?)
その視線に、なんとなく私が落ち着かなくなってしまう。
「あ、あの……そろそろしまってもいいかな?」
私の言葉に、御門くんは小さく頷く。
…が、完全にしまわれるまで御門くんの視線はずっとチハルに注がれたままだった。
「と、ところで二人は、今日は他に行きたいところは?」
少しでも気をそらそうと、私はすぐに新しい話題をふる。
「んー…」
私の質問に、考える様子を見せる周防さん。
少し辺りを見回し――やがて、その視線がある一点で止まる。
「あ、アレなんか楽しそうじゃないか?」
おもむろに窓の外を指差した。
その指先を追って私たちはそちらに視線を向ける。
そこには一枚のチラシ。
「縁日?」
どうやら今のイベントホールでのイベント内容の告知のチラシのようだ。
今は夕方から夜限定での縁日をやっているらしい。
「おう。何かさ、楽しそうじゃないか?」
嬉しそうに周防さんが言った。
「……縁日……?」
御門くんはチラシをじっと凝視しながら小さく呟く。
1、「御門くん、縁日に興味があるの?」
2、「周防さんはお祭りが好きなんですか?」
3、「縁日かぁ……行ってみませんか?」
344:名無しって呼んでいいか?
07/03/30 11:34:37
1、「御門くん、縁日に興味があるの?」
いつもあまり反応を見せない御門君が呟いたので、おや?とおもって聞いてみる。
「……神仏に縁のある日なんですか」
「…へ?」
「あ~~~~~~、冬馬」
御門くんの言葉の意味が分からず首を傾げる私と、脱力したようにパタパタと手をふる周防さん。
「お前が思ってる縁日と違うから」
「…………?」
「こういうところでいう縁日ってのは出店、屋台のことなんだよ、OK?」
「………」
分かったのか分からないのか、チラシから視線を外した御門君は食事に戻った。
「?」
「ああ、気にしなくて良いよ。コイツがまたズレたこと考えてただけだから」
苦笑しながら、周防さんも食事を再開する。
周防さんの様子から、たぶん私が聞いても良く分からないことなんだろうな…。
「でも、これ夕方からですから、まだ時間ありますね」
「うん、そうだな~。それじゃ、先に愛菜ちゃんの買い物しちゃおうか」
「あ、はい」
「その子のリボンのほかに、買いたいものとかないの?」
えーっと…
1「リボン以外は特にないです…」
2「ちょっと服を見に行きたいです」
3「文具を見に行きたいです」
345:名無しって呼んでいいか?
07/03/31 06:48:37
1「リボン以外は特にないです…」
もともと何かが買いたくてショッピングモールに来たわけではない。
リボンのこともさっき思いついただけだし…。
「そっか。それじゃ、食べ終わったらとりあえず、雑貨屋にいこうか」
「はい」
「…………」
周防さんに頷く私と、無言の周防君。
なんか、こうしていると一気に兄弟が増えたみたいだ。
優しいお兄ちゃんの周防さん。
お兄ちゃんに甘える妹の私と、ちょっと反抗期な弟の御門くん。
「うん?どうしたの愛菜ちゃん?急ににやにやして」
「に、にやにやってなんですかっ、せめてニコニコと言ってくださいっ」
「はははっ、で、なんでニコニコしてるの?」
そ、それは…
1.兄弟が増えたみたいで楽しい。
2.周防さんって、お兄ちゃんみたい
3.ないしょ
346:名無しって呼んでいいか?
07/03/31 18:56:01
3.ないしょ
「ないしょです」
(兄弟が増えたみたいで楽しいなんて言ったら、また周防さんに子供扱いされちゃう)
「ふぅん。俺たちに隠し事するんだ?」
「そうですよ、私だって女の子ですもん。秘密にしたい事くらいありますっ」
私は胸を張って答える。
「へぇ~。だけど、愛菜ちゃんの顔にバッチリ書いてあるんだよなぁ」
周防さんはイタズラをする子供のような笑みを浮かべて言った。
「……何が書いてあるんですか?」
「兄弟が増えたみたいで楽しいってさ。かわいいよなぁ、よしよし」
そう言いながら、周防さんは私の頭をポンッと手をのせた。
(うぅ~~~、周防さんには敵わないよ)
「………………」
黙っていた御門くんの視線が私の頭に注がれた。
ジーっと無表情のまま、私の頭上だけを凝視する。
そして、御門の手がスッと私に伸びたかと思うと、ポンッと頭の上に置かれた。
私の頭に二人の手がのっている。
私は……
①周防さんを見る
②御門くんを見る
③二人の手を振り払う
347:名無しって呼んでいいか?
07/03/31 20:00:14
②御門くんを見る
御門君までこんな行動を取るとはおもわなかった。
びっくりして、御門君を見つめてしまう。
御門君は相変わらず無表情で何を考えているのかわからない。
「冬馬も、そう思うか。うんうん。やっぱりかわいいよなー」
頭に手を載せたまま、周防さんがうんうんと、頷いている。
「………」
「そっかそっか、冬馬も妹ができたみたいでうれしいかー」
御門くんは何も言っていないが、周防さんは一人でニコニコと笑っている。
(…って、あれ?)
周防さんの言葉に、引っ掛かりを覚えて、周防さんの言葉を反芻する。
そして、その引っ掛かりがなんなのか気づいて、思わず…
1.御門くんって1年生なんじゃ?
2.姉の間違いじゃないですか?
3.御門君を凝視する。
348:名無しって呼んでいいか?
07/03/31 23:33:09
2.姉の間違いじゃないですか?
私がそういうと周防さんは悪戯っぽく笑う。
「さて、それはどうだろうなー?」
そして、私の頭の上に乗せた手をぽんぽんと軽く動かした。
「もうっ。それって、さっきの仕返しですか?」
されるがままになりながらも問いかける。
……すると、周防さんは私から離れた。
「僕だって男の子だものっ。隠し事くらいしたいのっ」
そして胸を張ってそう返してくる。
セリフといい、微妙な裏声といい、コレはさっきの私のモノマネなんだろうか。
「あ、あはは……」
反応に困る私。
「……周防、気色悪い」
それとは対照的に、めずらしくきっぱりと発言する御門くん。
びっくりして、思わず御門君のほうを見る。
だけど相変わらず無表情のままだった。
「み、御門くん……」
①「私には敬語なのに周防さんには普通なんだね」
②「そこまで言ったら周防さんが可哀想だよ」
③「今の御門くん、なんかちょっと珍しい感じかも」
349:名無しって呼んでいいか?
07/04/01 09:25:14
①「私には敬語なのに周防さんには普通なんだね」
言いたいこととは微妙に違う言葉。
(でも、まさか直接珍しいっていうのも……失礼だよね)
まだ会って間もないし、言葉が少ないのは人見知りしてるからっていう可能性もある。
だんだん私にもなれて、口数が多くなってきたのかもしれない。
(無表情は元からみたいだけど…)
「……周防は」
しばらくの間のあと、御門くんがつぶやいた。
「……そうしろと言った」
「あ~、そういや、そんな事もあったかな?」
「そういえば、私とはじめてあったときも、苗字で呼んだら、名前で呼んでっていってましたね」」
「堅苦しいのはいやなんだよ」
肩をすくめて、周防さんが苦笑する。
「確かに…、きっちっとした周防さんって想像できないかも」
「こらこら、それはどういう意味かな~?愛菜ちゃん?」
「あははは……」
とりあえず、笑ってごまかす。
でも、それなら御門君に言えば…
1普通に話してくれるようになるのかな?
2笑ってっていったら、わらうのかな?
3隠し事はなしっていったら、さっきの答えが返ってくるかな?
350:名無しって呼んでいいか?
07/04/01 20:13:49
2笑ってっていったら、わらうのかな?
ふと、そんな疑問が浮かんだ。
一度だけ契約の時に微かに笑ったように見えた事があったけど、あれは夢の中だった。
周防さんの頼みを聞いてくれたのなら、私のお願いも聞いてくれるかも知れない。
「あのね、御門君。お願いがあるんだけど、いい?」
「……………」
御門君は私を見た後、コクリと頷いた。
(やった!)
「私に向かって笑いかけてみて。どうしても見てみたいんだ」
「…………」
御門君はしっかりと私に向き直ってくれる。
どうやら、やる気になってくれているみたいだ。
(どうしよう、なんだかドキドキしてきた)
『笑う』なんて些細なことなのに、御門君がすると思うとつい緊張していまう。
御門君はしばらく目を伏せ、ゆっくり目を開ける。
そして、私をしっかりと見つめ――
(あれ……?今、口の端が少し動いた?)
片方の口の端がほんのわずか動いた。
だけど、それはとても笑っているというものではなかった。
(やっぱり、無理に笑ってもらうのはダメだったのかな……)
「おい、冬馬。それは悪事をたくらむ越後屋の顔だっての」
周防さんは困ったような笑みを浮かべ、御門君に突っ込みを入れる。
私は……
①「そんな事無いよ。ありがとう、御門君」
②「無理を言ってごめんね、御門君」
③「そんな言い方は駄目ですよ、周防さん」
351:名無しって呼んでいいか?
07/04/02 06:50:49
①「そんな事無いよ。ありがとう、御門君」
わたしは、笑い返す。
御門くんはちゃんと笑ってくれようとした。
(それに、お願いして笑ってもらうっていうのも、結構難しいわよね…)
自分に置き換えて考えてみる。
笑ってとお願いされて、じーっと見つめられているときに笑うのは結構大変だ。
私でもきっと、困ったような笑顔になる。
「愛菜ちゃんはいい子だな~」
周防さんがしみじみとした口調で言う。
「いい子って…なんでそうなるんですか……」
言われなれない言葉に、照れてしまう。
「そうおもったから」
にこにこと周防さんが返してくる。
「………」
「さて、と、食べ終わったし出ようか」
なんと言っていいかわからなかった私が沈黙すると、周防さんはテーブルをみて言った。
「あ、はい」
私が頷いて、伝票を持とうとしたら、周防さんが横からそれをさらって行った。
「あ……」
「ここはおにーさんのおごり」
ぴらぴらと伝票を振って周防さんが言う。
でも今日ここに誘ったのは私なのに…
1私が払う
2せめて割勘にしてもらう
3支払ってもらう
352:名無しって呼んでいいか?
07/04/06 17:52:00
1私が払う
「あ、ダメです!今日は私が誘ったんですから…」
「そんなの気にしない気にしない。
女の子にお財布出させるなんてこと、できませーん」
「でも……」
私が、言い募ると周防さんはうーんと、うなってそれからにっこりわらった。
「それじゃあさ、代わりにひとつほしいものがあるんだけど、
それをプレゼントしてくれる?」
「なんですか?」
「たぶん、雑貨屋に売ってるんじゃないかな。
大丈夫そんなに高いものじゃないし」
周防さんはここで引くきはないみたいだ。
どうしよう…
①了承する
②何がほしいのか聞く
③意地でもここを払う
353:名無しって呼んでいいか?
07/04/06 22:08:29
③意地でもここを払う
「私が誘ったのにわるいですよ」
私から誘っておいて奢ってもらうのは気が引ける。
(気晴らしに誘ってくれただけで十分なのに)
「あのね、愛菜ちゃん。おごられるのもいい女になる為の経験だよ。
だから、ここはおにーさんにおごりで」
「いい女……ですか?」
いきなりの言葉に思わず聞き返してしまう。
「そ。こういう時は黙っておごられるべきなのさ。
大体、男女が伝票を持ちながら会計どーするよ? なんて無粋だしね」
(言われてみれば、そうかも)
友達と遊ぶ時はほとんど割り勘だったから、考えたことも無かった。
「えっと、あの……ごちそうさまです」
慣れない状況に、つい照れてしまう。
「いえいえ、どういたしまして」
周防さんは子供のような笑みを返す。
(おごってもらったし、周防さんに何かプレゼントしなくちゃね)
先に店の外で待っていた私と御門君に、会計を済ませた周防さんが合流する。
向かう先は雑貨屋。
どれにしようかな。
①アジアン雑貨屋
②ファンシー雑貨屋
③アンティーク雑貨屋
354:名無しって呼んでいいか?
07/04/06 23:08:50
③アンティーク雑貨屋
「この先にアンティークっぽい雑貨のお店があるんです。
男の人でもそんなに入りづらくないと思うんですけど、そこはどうですか?」
「へえ、アンティーク?」
私の提案に周防さんは少し意外そうな顔をした。
周防さんにさっきご馳走になったお礼をしたいけれど、私が香織ちゃんとよく行くお店に連れて行くのはさすがにちょっと気がひける。
(あそこは女の子ばっかりだもんね…)
「はい。じっくり見たことはないんですけど、雰囲気の良さそうなお店で前から気になってたんです。
周防さんはそういうの、あんまり興味ないですか?」
普段男の人と買い物をする機会なんて春樹以外とは皆無に等しく、誘ってはみたもののちょっと心配になって尋ねてみた。
「いや、良いんじゃないかな」
「良かった」
周防さんの笑顔にほっとして、軽くなった足取りで目的地へと向かう。
(そういえば、御門君はどうなんだろう? アンティークとかって興味あるのかな?)
先を歩く私に黙ってついてくる御門君は終始笑顔の周防さんとは対照的にあいかわらずの無表情で、端正な顔立ちからは何の感情も読み取る事はできない。
どうしよう?
①御門君にアンティークに興味があるか聞いてみる
②周防さんに御門君がアンティークに興味があるかきいてみる
③気にせずにお店へ向かう
355:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 00:50:36
①御門君にアンティークに興味があるか聞いてみる
(御門君は興味があるのかな)
ふと、疑問に思い御門君に呼びかける。
「御門君は……アンティークに興味あるの?」
「………………」
御門君は黙ったままで、私の質問に答えようとはしない。
「あっ、もしかして興味無かった?」
御門君は首を横に振って否定した。
(そっか。よかった)
「私はね……古いものが好きなんだ。このネックレスも母が昔使っていた物なんだけど、かわいいなって思ってつけてきたの」
私は首元のネックレスを手の平にとって御門君に見せる。
金色の小さな天使がペンダントトップになっていた。
「…………………」
御門君は無表情のままジッとそのネックレスを見つめる。
(あんまり似合ってないのかな)
「や、やっぱりデザインが古いよね。違うのにしてくればよかったかな。えへへ……」
とうとう沈黙に耐え切れなくなって、私は苦笑混じりに言った。
「……………似合ってます」
「え?」
突然に聞こえた御門君の言葉が信じられなくて、思わず聞き直す。
「そのネックレス、あなたにとても似合っています。ずっと大切にしてください」
「御門君……。ありがとう」
はっきり似合うと言ってくれた事が嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
そんな私たちのやり取りを周防さんは穏やかな表情で見つめていた。
会話をしている内に、アンティーク雑貨のお店に着いたみたいだ。
私は…
①リボンを探す
②周防さんに話しかける
③御門君に話しかける
356:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 11:20:59
①リボンを探す
「あの、それじゃ早速なんですけど……リボン探してきてもいいですか?」
私が尋ねると、周防さんは満面の笑みで頷いた。
「おう、行っておいで。俺たちは俺たちで自由に見てるからさ。
何かあったら声かけてくれればいいから。
な、冬馬?」
その言葉に御門くんも頷く。
「ありがとうございます」
私は二人に「じゃあ、またあとで」と軽く声をかけてからその場を離れた。
「それにしても、いろいろあるんだなぁ……」
そんなことを呟きながら、リボンのコーナーを一通り歩いて回る。
私が予想していたよりもリボンの色や種類が結構あった。
(うーん、迷っちゃうなあ……)
このままだと、結構時間がかかってしまいそうだ。
①二人に相談してみる
②ひとまず自分で考えてみる
③こっそりチハルに選んでもらう
357:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 12:08:22
③こっそりチハルに選んでもらう
見ていて気に入るものはいくつかあったけれど、コレっていうのが決まらない。
目に留まったものをとりあえず手に取ってみる。
どれもかわいくて、やっぱり一人では決められそうになかった。
(ハチルのリボンだし、好きなのを選んでもらおう)
「チハル、チハル……」
チハルに小声で呼びかける。
バッグの中で小さくなっていたチハルが私を見上げた。
手に持ったいくつかのリボンをチハルに見せる。
「この中だったらどれがいい?」
チハルはバッグの中で少し窮屈そうに動くと、フワフワの手で一本のリボンを指した。
それは…
①ベルベット生地の藍色のリボン
②サテン生地の空色のリボン
③カントリーチェックの緑色のリボン
358:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 14:21:14
①ベルベット生地の藍色のリボン
「これ?」
私がそのリボンを軽く掲げると、チハルはこくこくと頷いた。
今のリボンの上から試しに当ててみる。
「…………うん!かわいいね、よく似合ってる」
満足感ともに、私は大きく頷いた。
「じゃあ、これにしようか?」
そう尋ねると、チハルは再びこくこくと頷いた。
他の二つのリボンを元に戻して、藍色のリボンだけを手に取る。
バックの中ではまだチハルが手をパタパタと動かしていた。
「こら、おとなしくしてるって言ったでしょ?」
私が軽く注意すると、チハルはピタリと動きを止めた。
「もう……」
軽くため息をつきながら、苦笑いを浮かべる。
(嬉しいって思ってくれてるのは分かるんだけどね……)
さてと。
思ったより早くチハルのリボンも決まったことだし、これからどうしようかな?
①御門君の様子を見に行く
②周防さんの様子を見に行く
③まずはお会計を済ませる
359:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 14:52:20
②周防さんの様子を見に行く
(何かほしいものがあるみたいだったし、
もしもあったらさっきのお礼ってことでプレゼントしよう……)
私はあたりを見回して、周防さんの姿を探す。
「あ」
周防さんはすぐ近くにいた。
私と同じリボンコーナー。だけど、反対側の少しはなれたところ。
私の視線にも気がつかずに、色とりどりのリボンを手にとってどこかぼんやりと見ている。
そんな周防さんを見て、ふと悪戯心が芽生えた。
(ふふ、そうだ。……ちょっとだけ、驚かせちゃえ!)
そうと決めたら後は早かった。
静かに……だけどばれないように慎重に行動を始める。
やがて、周防さんの背後に回ってからゆっくり前へと一歩一歩踏み出す。
あと、三歩。
(……静かに、慎重に……)
二歩。
(……まだ気がつかないのかな?)
一歩。
(よしっ、今だっ)
「す――」
私は軽く上げた両手を、その大きな背中めがけておろそうとして――
「……こよみ……」
不意に周防さんが漏らしたその呟きに、動きが止まってしまった。
「俺は……」
周防さんの手のひらにあったリボンは、強く握られている。
表情は後ろからじゃ見えない。
けれど、その声はとても寂しそうに……悲しそうに聞こえた。
(『こよみ』さんって、誰なんだろう……)
周防さんの後姿を見つめながら、私は考える。
①ご家族、とか?
②親しい知り合いなのかな?
③もしかして……恋人だったりするのかな?
360:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 16:59:44
③もしかして……恋人だったりするのかな?
もし、恋人だったとしても何かの事情がありそうだ。
「……愛菜ちゃん?」
軽く手を上げた状態で固まっている私に周防さんが話しかけてきた。
その顔はいつも通り明るい。
「あっ、周防さん……。驚かそうと思ってたのにバレちゃいましたね」
私は出したままの両手をサッと引っ込める。
「まだまだ俺を驚かせるには修行が足りんなぁ」
おどける周防さんにさっきまでの様子は無い。
(『こよみ』さんの事は聞かない方がいいのかな)
プライベートに首を突っ込みすぎるのはよくない。
けれど、意外な周防さんの一面を見てすごく気になるのも確かだ。
私は…
①『こよみ』さんについて尋ねる
②黙っている
③周防さんの持っているリボンについて話す
361:名無しって呼んでいいか?
07/04/08 18:37:56
②黙っている
私が黙っていると、周防さんは私の持っているリボンを見た。
「リボン決まったの?」
「はい、これに決めました」
「綺麗な色だね。さっきの子も喜ぶよきっと」
にこにこと周防さんが、私の頭をなでる。
「周防さんは、ほしいもの見つかりましたか?」
子供扱いされて恥ずかしくなり、周防さんに訪ねる。
「うん、あっちに」
周防さんは持っていたリボンを元の場所にもどして、指を指した。
その方向を見ると、御門君が立っていた。
そこは…
1.アクセサリーコーナー
2.天然石コーナー
2.お香コーナー
362:名無しって呼んでいいか?
07/04/12 11:32:52
2.天然石コーナー
周防さんと一緒に御門くんの隣に立つ。
色とりどりの石が種類ごとに小さな籠に山積になっている。
「うわー、きれい…」
「ここは結構種類があるな」
こういうのは香織ちゃんが結構好きだったなと思いながら、水晶と書かれた石を手に取ってみる。
ひんやりとした石を手に取ると、なんとなく心が落ち着いていくような気がする。
「あ、石にも意味があるんですね。
…えーっと、水晶は…調和・統合・強化、それから浄化作用?」
籠に商品名と、その下に小さく石の意味や効果などが書かれている。
「愛菜ちゃんは何月うまれ?」
「私は3月です」
「それじゃ誕生石はアクアマリンか」
周防さんが言いながら、澄んだブルーの石を手に取る。
「アクアマリンは幸福・健康・富」
言いながら、石を私に見せてくれた。
周防さんがほしいのはどんな効果の石なんだろう…?
①金運…?
②オールマイティに幸運?
③もしかして、恋愛運?
363:名無しって呼んでいいか?
07/04/18 21:02:08
②オールマイティに幸運?
「やっぱり幸運の石とか、ほしいんですか?」
私の言葉に、周防さんはそうだな~と、ちょっと笑う。
「そういうのも良いけど…愛菜ちゃん、どの石が俺に似合うとおもう?」
言われて、私は石を見る。
(周防さんのイメージだと…)
石をみて、ふとその石の名前にひきつけられる。
「周防さんはこれです」
「どれ?これ?日長石…サンストーン?」
「はい。周防さんのイメージです。それで、御門くんはこっち」
「月長石、ムーンストーンか」
「二人を見ていると、太陽と月って感じがします」
明るくて陽気な周防さんは太陽。無口で不思議な御門くんは月。
「愛菜ちゃんはそう思うんだ。じゃ、これにしよう」
「え?そんな決め方でいいんですか?ほしいものがあったんじゃ?」
「うん、愛菜ちゃんに決めてもらいたかったんだ」
本当に良いのかと、周防さんを見上げ、ニコニコと笑う周防さんと目が合った。
なんとなく恥ずかしくなって、視線をそらすと、じっと石を見つめる御門君の姿が視界に入る。
(ムーンストーン?)
御門君が見つめる先にはムーンストーン。
1.周防さんに本当にサンストーンでいいのか訪ねる
2.御門くんにムーンストーンが欲しいのか聞く
3.周防さんが決めたんだし…石をもってレジへ行く
364:名無しって呼んでいいか?
07/04/19 22:29:22
2.御門くんにムーンストーンが欲しいのか聞く
「御門君はムーンストーンが欲しいの?」
「………………」
けれど、すぐに答えは返ってこなかった。
私は御門君の見つめるムーンストーンを一つ手に取る。
「じゃあ、今日付き合ってくれたお礼をさせて?」
ジッと私を見つめ続けた後、御門君はコクリとうなずいた。
「周防さんにはサンストーン、御門君にはムーンストーンで決めました。
それじゃ、私は会計を済ませてきます」
そう二人に言って、私はレジへ向かった。
レジを済ませ、それぞれの石をプレゼント用に包装してもらう。
そして、私は待っている二人の所に戻った。
①すぐに二人へのプレゼントを渡す
②これからどうするか尋ねる
③屋台を見に行きたいという
365:名無しって呼んでいいか?
07/04/20 10:53:24
②これからどうするか尋ねる
周防さんも御門くんも鞄をもっていない。
御門くんは制服を入れた袋を持っているけど、今渡しても邪魔になるだけかな?
そう思って、とりあえず買ったものをかばんに入れる。
「これからどうしますか?」
時計を見ると、屋台のはじまる時間までまだ余裕がある。
「うーん、あ、そうだ、外いかない?」
「外ですか?」
「そうそう、隣の公園。天気もいいしきもちいぞ、きっと」
ショッピングモールに隣接して、大き目の公園があるのを思い出す。
①頷く
②別な所が良いという
③御門くんにも聞く
366:名無しって呼んでいいか?
07/04/29 03:13:09
すんまそん、ケチを付ける訳ではないけれど。
基本は書き手の自由だけど、読み手(次に書く人)が書きやすいというか
書きたくなるように話を持っていった方が良いと思うのです。
媚びる必要はないけど、多少意識しても良いのではないかと。
ここのところあまりレスが伸びてないようだったので、チラリとそんなことを思いつつ投下。
良スレと思うゆえのおせっかいです、失礼。
367:名無しって呼んでいいか?
07/04/29 03:15:39
①頷く
「良いですね、せっかくのお天気ですものね」
周防さんの提案に賛成して公園へ向かう事にする。
一瞬御門くんにも尋ねてみようかとも思ったけれど、今までの流れからしてたぶん反対はしなさそうだ。
むしろ何か考え込ませることが多いような気がして、それも申し訳ないのであえて事後承諾の形をとった。
「御門くんもそれでかまわない?」
案の定黙って頷く御門くんと機嫌の良さそうな周防さんと三人で連れ立って、ショッピングモールの出口へと歩いてゆく。
「やっぱり人が多いですね」
歩きながら何とはなしに周りに目を向けても、辺りは家族連れやカップルなどたくさんの買い物客で賑わっている。
「そりゃあ日曜日だしな。イベントがあるっていうのもあるかもしれないが、なにしろこの天気に家にいたら腐っちまうだろ」
そう言って周防さんは器用に片目をつぶってみせた。
今までのやりとりで少しは耐性がついたつもりでいたのに、不意に向けられた仕草に心臓が大きく跳ねた。
(周防さんてやっぱりいつもこんな調子なのかな…)
気付かれないよう熱をもった頬にさりげなく両手をあてながらそんな事を思う。
「ん、どうした冬馬?」
後ろから周防さんの声がした。よほど動揺していたのか立ち止まった御影くんに私は全く気がつかなかったみたいだ。
慌てて御門くんのもとに駆け寄ると、周防さんと御門くんは二人で同じ方向に目をやっていた。
「あれは…」
呟く周防さんの顔が険しくなる。御門くんも黙って頷いた。
不思議に思って二人が見ている方を見てみても、見えるのは窓ガラス越しの晴れ渡った青空と芝生の広がる公園だけ。
散歩をしている人たちやフリスビーで遊ぶ子供たちはいるものの、特に変わったものは見当たらない。
(いったいどうしたんだろう?)
①二人にどうしたのか聞いてみる
②何か見えないかともっと目をこらす
③二人に声をかけて気にせず公園へ向かう
368:名無しって呼んでいいか?
07/05/01 18:40:43
②何か見えないかともっと目をこらす。
私は二人の視線の先へさらに目をこらす。
だけど、やっぱりいつもの賑やかな公園にしか見えない。
「何か見えたんですか?」
「ちょっと、厄介事がね。あっ、いや―大丈夫だよ。
愛菜ちゃんは何も心配しなくていいから」
そう答えてくれるものの、周防さんの表情は更に険しくなっている。
「愛菜ちゃんは少しここで待っていてくれないか?もし俺がここに戻らなければ、冬馬の指示で動いて欲しい」
「は、はい……」
周防さんの緊張した様子に私はただ頷くしか出来ない。
「冬馬はここで待機。最優先事項は愛菜ちゃんの安全確保。有事の際には一般人に被害が出ない様、穏便に対応してくれ」
周防さんは事務的に言い終えると、すぐに人ごみを縫うようにして走り去ってしまう。
(あ、見失っちゃう……)
視線を彷徨わせてみたけれど、その姿はもう無かった。
「周防さん。待ってください!」
消えた後姿を追おうと大きく踏み出したところで、不意に手首を強く掴まれる。
御門君は私の手首を掴んだまま、小さく横に首を振った。
「離して。早く、追いかけなくちゃ」
「…………その命令は受け付けられません」
無表情のまま御門君は答えた。
①「周防さんは一人でどこに行ったの?」
②「御門君は心配じゃないの?」
③「あなたたちは何者?」
369:名無しって呼んでいいか?
07/05/03 00:46:23
①「周防さんは一人でどこに行ったの?」
「………言えません」
「厄介事ってまさか、私を狙っている組織が動いたの?」
「…………………」
私を掴む御門くんの手に力がこもった。
(やっぱり、そうなんだ)
「私のために周防さんが……」
(守ってくれると周防さんは言ってくれたけど、私のために傷つくなんて嫌だよ)
私はどうにかして御門くんの手を振り解こうと何度ももがいた。
そんな私の様子に、道行く人たちは一様に何事かと目を向けてくる。
だけど、御門君は相変わらず押し黙ったまま手を離そうとはしてくれなかった。
「お願い、行かせて!」
しびれを切らして私が叫ぶと、力強く掴まれていた手が突然緩んだ。
そして、無機質な瞳で見つめながら御門くんが口を開く。
「…………もし、あなたが現場に駆けつけたとして……
一体、何ができますか……」
私はその言葉に対して、
①言い返せず、黙り込む
②納得して諦める
③意見を言う
370:名無しって呼んでいいか?
07/05/03 17:50:12
①言い返せず、黙り込む
正論を突きつけられ、私は何も言えなくなった。
(今の私じゃ、確かに何も出来ない)
「認めたくはないけれど、きっと足手纏いになるだけ…」
御門君は私の言葉に納得したように黙って頷いた。
(周防さん、大丈夫かな)
人ごみを避けるように、私達は出口の脇まで移動する。
御門君は大人しくなった私を確認すると、集中するように目を閉じた。
(目を閉じて、何をしているんだろう)
しばらくの間、目を閉じていた御門君は突然顔を上げる。
「どうしたの?」
「………………こちらへ」
御門君は私の手を引いて外へ私を連れ出した。
「ど、どこへ行くの?」
御門君は何も言わず、私の手を引いたまま公園とは逆方向へどんどん歩いていく。
引っ張られるように、私はついて行くしかなかった。
(こっちは駐車場へ行くはずだけど……)
「御門君。どこまで行く気?」
「…………周防が……押されています」
立体駐車場にある中二階の踊り場まで来たところで、ようやく御門君が口を開いた。
「本当?」
「…………はい」
「御門君は私を置いて周防さんのところへ行って」
「………あなたを危険に晒す訳にはいかない」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「……手荒な事は……避けたかったのですが………」
そう言うと、御門君は私の手をグイと引き寄せた。
成すすべも無く私は御門君の胸に体ごとぶつかっていく。
ぎゅっと肩を抱きすくめられて、初めて御門君の胸の中に納まっている自分に気付いた。
①「きゃ、な…に……」
②「離して」
③御門君を見上げる
371:名無しって呼んでいいか?
07/05/03 23:33:18
②「離して」
いきなりのことに慌てて、とっさに両手を突っ張って御門くんから離れる。
そんな私にかまうことなく、御門くんは再度つかんだ腕に力を込める。
「なにするのっ?」
とっさに腕を振り払って、御門君から距離を取る。
「周防さんが危ないんでしょう?助けに行って!私は大丈夫よ!」
(なんでこんなことするの?)
軽く混乱して、強く御門くんに言う。
「あなたを守るのが最優先事項です」
淡々と言う御門くんが、再度私に手を伸ばして腕をつかもうとする。
「おい!なにしてるんだ!?」
そのとき、ぐいっと体を後ろに引っ張られた。
急なことにバランスを崩した私を器用に支えて、前に出た人を呆然と見る。
「なんで…?」
私をかばう背中。
なんてタイミングよく現れるんだろう…?
そこにいたのは…
1.春樹
2.隆
3.修二
372:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 02:06:22
1.春樹
「……春樹」
無意識のうちに呟いた私の声は、ひどくかすれて頼りないとても小さなものだったろう。
それなのに、春樹の耳には届いたのか。
少し間をおいて春樹は見据えた御門くんを視界から外さない程度に首をこちらにめぐらせた。
「姉さん。どこにも怪我は、ない?」
ひとつずつ慎重に言葉を選ぶように、春樹はゆっくりとそう言った。
口調はいつもと変わらないのに、自分をかばう背中にただならぬ気配を感じた気がして
私は春樹の腕をそっと引き寄せた。
「…姉さん?」
「落ち着いて、春樹。大丈夫、私はなんともないから」
春樹を安心させるように、そして御門くんに対して早まった真似をしないように
掴まった腕に力をこめる。
春樹はちょっと驚いた顔をしたが、それでも次に発した言葉の端からは
押し殺した怒りをのぞかせた。
「ついさっき本屋に買い物に行った帰りに偶然クラスメートに会った。
姉さんによく似た人が知らない男とショッピングモールの真ん中でもめている様子だったと聞かされたんだ」
そう言いながら春樹が再び御門くんに投げかける視線はまるで敵意の塊のようだ。
当の御門くんは眉ひとつ動かさずに視線を真正面から受け止めている。
「ひどく胸騒ぎがして探しに来たんだ。モールの出口で姉さんたちがこっちの方に歩いていったと野次馬の一人が教えてくれてね」
淡々と語る春樹の様子は一見いつもとさほど変わりないようで、身にまとう空気は驚くほど鋭い。
言いようのない不安を覚えて、私は思わず春樹の腕を一際強く自分の方に引き寄せていた。
「春樹?」
「……得体の知れない人間に姉さんをこんな所に連れ込まれて、頭に血が上らないほうがどうかしてる」
(…………え)
春樹の発言に、一瞬私の思考は停止した。
その理由は…
1.大人びていつも冷静な春樹が自分(愛菜)の事で激怒しているようだから
2.同じ学校・同じ学年なのに御門くんとまったく面識がないようだから
3.以前見た夢でも聞いたことがあるような気がしたから
373:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 09:39:52
2.同じ学校・同じ学年なのに御門くんとまったく面識がないようだから
前に御門くんについて聞いたときも知らないみたいだったし別に、おかしいことではないはずなんだけど。
(いい意味でも、悪い意味でも目立つと思うんだけどな……御門くんって)
ほんの少しだけ。
ほんの少しだけ、何かがおかしいと思った。
(春樹のクラスメートも『知らない男の人』っていってたみたいだし)
さっきの春樹の話を思い出す。
(でも、保健の先生は知ってたよね……?)
考えれば考えるほど、知れば知るほど謎が増えていく。
(一体、御門くんって何者なの……?)
さらに考え込もうとした、その時。
「……さっきといい、今といい……お前、どういうつもりだ!?」
怒りをこめて発せられた春樹の声で、思考が現実に引き戻される。
「おいっ!何とか言ったらどうなんだよ……っ!」
春樹は目の前の御門君を鋭く睨みつけたまま微動だにしない。
「……」
対する御門くんは、その視線を気にも留めていないかのようにいつもの無表情を崩さない。
……そして春樹に答えを返す様子も無い。
まさに、一触即発の雰囲気だ。
(ど、どうしよう……)
①春樹に話しかける
②御門君に話しかける
③そこで不意に周防さんのことを思い出した
374:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 12:13:44
③そこで不意に周防さんのことを思い出した
(そうだ!周防さんっ!)
今も私を守るために、一人で戦ってくれているその人。
そうだ。今は……こんなことをしている場合じゃない!
(早く二人を何とかしないと!)
そう思った矢先、それは起こった。
「……っ!?」
突然左手に痛みが走る。
何事かと思い、左手を顔の前に寄せてその原因を確かめた。
けれど、そこには何も無い左手の甲。
「なくなってる!?」
そう。
先ほどまで、左の手の甲に確かにあったはずの星型の小さなアザ。
それが跡形も無く消失していた。
「………うそ、どうして………っ?」
慌てて右手も見る。
けれど、そこには三日月のアザがまだ存在していた。
今も存在しているアザと、突然消失してしまったアザ。
ここにいる御門くんと、ここにはいない周防さん。
(嫌な予感がする……)
それはまるで、彼らの存在そのものを私に示しているかのような気がして。
(周防さん……っ)
「姉さん?どうしたの!?」
私が急に騒ぎ出したせいか、春樹が心配そうに振り返る。
私は、
1.周防さんを探しに走り出す
2.御門くんに報告する
3.春樹にこの場を離れるように言う
375:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 12:34:16
2.御門くんに報告する
「今アザが……無くなった…」
御門君は黙って頷いた。
「そんな事より姉さんはその得体の知れないこいつは誰なんだ?」
私は手の甲を見つめる。
春樹は状況が全く飲み込めていないままだ。
「春樹、今はそんな事を言っている場合じゃないのよ!」
御門君は相変わらず黙りこんだままだ。
その態度に春樹の顔が険しくなる。
「おい、何か答えろよ」
春樹の言葉に、御門君はよくやく重い口を開いた。
「………もし、知りたければ弟さんも一緒に…病院の近くの公園へ来て下さい」
「公園? そこに何があるのか」
「すみません、急を要す事態が起きています。今は……眠っていて下さい」
そう言うと、御門君が消えた。
そして、突然私の目の前に現れる。
春樹の後ろに音も無く立つと、その頚椎を手刀で軽く一撃した。
春樹の体が糸が切れたようにガクンと前のめりに倒れていく。
それを御門君は腕で支えた。
「あなたに手を上げるのは不本意ですが……どうかお許しください」
その言葉が耳に入ると同時に、目の前が暗転する。
意識が沈み込む。
(どうして……)
言葉に出来たのかは分からない。
ただ私は…
①周防さんのことが心配だった
②何も出来ず悔しかった。
③疑問しか浮かばなかった。
376:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 18:56:32
①周防さんのことが心配だった
計ったようなタイミングで私の左手を襲った痛み。
そして、まるで最初から存在しなかったかのように消えていた星型のアザ。
(……周防さん…どうか、どうか無事でいて!)
遠のいてゆく意識の中、私は強くそう祈った。
「……ん、………ちゃん、おーい」
遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえる。
辺りは霧に包まれたように霞んでいて、周りを見渡してもぼんやりとした影を
うっすらと確認できる程度だ。
(私……どうしたんだっけ……?)
訳が解らないまま、声のする方に歩き出した。
不鮮明な視界の中を不思議と迷いなくすすんでゆく。
「愛菜ちゃーん」
聞こえてくる声の主がしきりに呼んでいるのが自分の名前なのだとそう思った時
何かに導かれるように、その人は私の前に姿を現した。
「周防さん……!」
周防さんの名前を口にしたことで瞬時にこれまでの出来事を思い出す。
私は思わず駆け寄った。
「周防さん、怪我…っ……怪我はない、ですか?!」
動揺するあまり怪しくなった私のろれつに周防さんは目を丸くした後、ふっと表情を崩した。
「悪い悪い、ずいぶん心配かけたみたいだな。心配してくれて、ありがとさん」
そう言うと周防さんはいつものように私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
(周防さんてばまったくもう…拍子抜けしちゃったよ)
あんなに心配したのに、と文句のひとつも口から出そうになったけれど。
素直に嬉しそうな周防さんの様子に大人しく為すがままになる事にした。
「冬馬の方はうまくやったみたいだな。愛菜ちゃんは怪我はないね?」
ひとしきり私の頭を撫で終えた周防さんは、質問というよりは確認するように言った。
なんて答えよう?
①「はい。御門くんのおかげでなんともないです」
②「わたし”は“って、周防さんはどうかしたんですか?」
③「まあ、なんとか無事…みたいです」
377:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 21:31:20
①「はい。御門くんのおかげでなんともないです」
「それはよかった。
うん。本当に……よかった」
本当に嬉しそうに笑いながら、私の頭をくしゃくしゃとなでる。
周防さんにされるがままになりながら、ふと御門くんのことを思い出す。
(そういえば、さっきは取り乱しちゃって……)
不意に、先ほどまでの出来事を思い出す。
人前で叫んだり、離してほしくてもがいてしまったりしたこと。
私を助けようとした……その手を拒んでしまったこと。
(よく考えれば、御門くんは私を守ろうとしてくれたんだろうし。
……そこに別の感情とか思惑とかがあったとは思えないよね)
恥ずかしさと自分に対する嫌悪感がない交ぜになったような気持ちになる。
(ただ、伝わりにくいと言うか……何かが足りないと言うか)
御門くんは『自分の意思』というものが足りない……欠けているとすら思える。
ほとんど自分の意見は口にせずに、人の言葉に頷くことが多いし。
そもそも、御門くんが私を守ってくれる理由は『私と御門くんが共によく知る人物』からの願いだった。
それに……カレー屋では、私が笑ってといったら笑った。
さっきも、周防さんに言われたから私を守ることを最優先にしたのかもしれない。
(……どうして、なんだろう?御門くんがあそこまで欠けているのは……)
「愛菜ちゃん?どうした?」
私が考え込んでいることに気がついたのか、周防さんが撫でている手を止めた。
そして優しく問いかけてくる。
聞きたいことはたくさんあるんだけど、まずは……
①「どうして、御門くんにはあそこまで欠けているんですか?」
②「ところで、周防さんの契約の証が消えちゃったんですけど……」
③「そういえば、私たちみんな約束を守れませんでしたね」
378:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 22:40:55
①「どうして、御門くんにはあそこまで欠けているんですか?」
その問いに、ふと周防さんの顔が翳る。
「あいつはなぁ。いろいろあるんだ」
「いろいろ?」
「普通じゃない……っていえばいいのかな」
「どう普通じゃないんですか?」
「うーん。身体的にも精神的にも特異かもしれない」
周防さんにしては言葉の歯切れが悪い。
(もしかして、言いづらいのかな……)
「御門君は御門君でいい所がたくさんありますもんねっ」
私はあえて話を打ち切るように明るく振舞う。
(聞くなら、本人が居るときに直接聞いた方がいいかもしれない)
「そうだ。あいつはボーっとしていて何を考えているか分からないし、
無表情のくせに意外と毒舌家だがいいヤツだ」
「す、周防さん。それは褒めてませんよ」
私は苦笑しながら突っ込む。
あと聞きたい事は……
①「厄介事はもういいんですか?」
②「ところで、周防さんの契約の証が消えちゃったんですけど……」
③「そういえば、私たちみんな約束を守れませんでしたね」
379:名無しって呼んでいいか?
07/05/04 23:31:25
①「厄介事はもういいんですか?」
私は気を取り直して尋ねた。
「残念だが、被害がでてしまっただろう。俺が至らなかったからな」
周防さんは視線を落として答えた。
その声はひどく沈んでいる。
「被害って……どれくらいでしょう」
「正確には分からない。だが、混み合うショッピングモールで派手にやろうとしていたからな」
周防さんにしては珍しく怒りを露わにした。
「一体、何が起こったんですか?」
「上手く説明するのは難しいが……テロみたいなものだ」
「無差別だったって事ですか?」
「あの連中は普通の人達を下等な生き物くらいにしか思っていないよ」
周防さんは吐き捨てるように言い放った。
(テロって……ひどい暴力的手段で、対立するものに威嚇することよね)
①「やっぱり、例の組織の人達ですか?」
②「被害の規模が心配です……」
③「ところで、周防さんの契約の証が消えちゃったんですけど……」
380:名無しって呼んでいいか?
07/05/05 07:26:14
③「ところで、周防さんの契約の証が消えちゃったんですけど……」
私はそう言いながら、周防さんに左手の甲を見せる。
「ああ、これか……」
周防さんは私の手の甲を取ってまじまじと見る。
「多分……俺の力が契約を保てなくなるほどの状態に陥ったんだろ。
それで強制解除された、と」
「そう、なんですか?」
「そ。でも、俺の推測だから詳しいことは調べてみないと分からないけどな?」
周防さんはゆっくりと私から手を離した。
周防さんの言葉に、なんだか私は不安になる。
契約がどのくらい周防さんの負担になっていたのかは分からない。
でも、それが保てなくなるほどの戦いだったなんて。
(目の前の周防さんは、いつもどおりに見えるけど……)
果たして現実の周防さんは大丈夫なんだろうか。
「……まあ、結果的に……皮肉なことにそれが俺を救ってくれたんだろうけどな」
周防さんは自嘲の笑みを浮かべて呟く。
「……ごめんな。結局愛菜ちゃんを一日守り通すことができなかった」
それから、悲しそうに……悔やむようにそう言葉を続けた。
①「いいんです。周防さんは頑張ってくれたじゃないですか」
②「周防さんは本当に大丈夫なんですか?」
③「そういえば、私たちみんな約束を守れませんでしたね」
381:名無しって呼んでいいか?
07/05/05 16:11:04
②「周防さんは本当に大丈夫なんですか?」
なんだか周防さんの様子が気になった。
出会ってそう日も経っていないけれど、目の前にいる周防さんはいつもよりどことなく元気がなさそうに見える。
(俺を救ってくれた、って言ってたから無事は無事なんだろうけど……)
「あー……。お前さんも、なかなか鋭い所をついてくるな」
私の視線を避けるように、周防さんは視線を明後日の方向に彷徨わせた。
何か、まずいことでもあるのだろうか。
「周防さん?」
「うん。まあ、隠しててもしょうがないしな」
詰め寄った私に、周防さんは意を決したようにそう言ってこちらに向き直った。
「いずれわかってしまう事だから。正直今の俺はあんまり無事じゃ、ない」
「えっ?!」
よっぽど深刻な顔をしていたのか、周防さんは私の様子にちょっと困った顔をして笑った。
「いやいや、身体は無事だよ。お前さん達と同じようにピンピンしてる。ただな」
「ただ?」
「今の俺に愛菜ちゃんの身を護ってやるだけの力はないんだ。それこそ、今だってお前さんが呼んでくれなければ夢にだってお邪魔できないくらいに、な」
周防さんの言葉になんて答えよう?
①「体が無事なら良かったです。本当に、心配したんですよ?」
②「それって、もし何かあっても助けてもらえないって事ですか?」
③「私が、呼んだ?夢の中に、ですか?」
382:名無しって呼んでいいか?
07/05/05 17:18:56
③「私が、呼んだ?夢の中に、ですか?」
「そのリアクション……そうかぁ、自覚無しか」
周防さんはガックリと肩を落としている。
(私……何か気落ちさせる事を言ったのかな)
「す、周防さん?」
「あぁ~~愛菜ちゃんの呼びかけで踏みとどまれたのになぁ……。
これって、片思いみたいな心境だなぁ」
周防さんは頭を抱えて言う。
「片思いって……」
自分の顔がみるみる熱くなっていくのが分かる。
「お姫様の為にキセキの大復活を遂げたのに……いいさ、いいさっ」
(周防さんがいじけてる……)
「と、とりあえず周防さんの身体が無事で本当によかったです」
「正直、愛菜ちゃんの力無しでは俺はあの世行き―だった訳だしな。
お前さんのお陰だよ、ありがとな」
周防さんは子供のように真っ直ぐな瞳を私に向けた。
あと、聞きたいことは…
①「力が弱くなって大丈夫なんですか?」
②「もう夢でも会えないんですか?」
③「そういえば、私たちみんな約束を守れませんでしたね」
383:名無しって呼んでいいか?
07/05/05 21:37:14
②「もう夢でも会えないんですか?」
私はそのまっすぐなまなざしに耐えられなくて、うつむきながら呟くように問いかけた。
だって、周防さんが今の状態になったのは私を守ろうとしたせいで。
私のお陰だなんてそんなこと言ってもらえる資格すらなくて。
「……っ」
こみ上げてくる悲しさや悔しさを堪えるように、私は強く手を握った。
「ふー……」
やがて周防さんから聞こえてきた、わずかな苦笑交じりのため息。
「だーいじょうぶだよ、そんな暗い顔しなさんな。
……『今の俺は』って言っただろ?」
そして、元気付けるように私の頭をぽんぽんと叩くようにしながら撫でてくれた。
「え?」
私はゆっくりと周防さんを見上げる。
周防さんは、少し困ったような……けれど優しい笑みを浮かべていた。
「まだ、俺の力の源はきちんと残ってる。
いくらでも……どうとでもなるさ」
優しい笑みを浮かべたまま、周防さんは力強い言葉をくれた。
「ほ、本当……ですか?」
信じられない思いで聞き返す。
……私の視界はわずかにぼやけていた。
「おう、ホントホント。
源が完全に絶たれたり、消滅しない限りは自然に力は戻ってくる。
能力者が生きてさえいれば……な」
そこでわずかに表情を翳らせる周防さん。
でもその表情はすぐに、いつもの子供っぽい笑みに変わる。
「だからさ、そんな泣きそうな顔するなよ。なっ?」
「は、はい……っ」
私は泣きそうになるのをぐっと堪えて、周防さんに向かって微笑んだ。
「おう、それでいい」
周防さんも私に向かって笑いながら、頭をくしゃくしゃと撫でた。
「でも、そっかー。
愛菜ちゃんがそこまで心配してくれるなら……」
そう呟いてから、苦笑いのような……はたまた複雑そうななんともいえない表情を浮かべる。
「お兄さん、ちょっとがんばってみっかな?」
そして、何かを決意したかのように一つ頷く。
①「がんばる?って何をです?」
②「嬉しいですけど、無茶なことはしないでほしいです……」
③「何か方法とか考えがあるんですか?」
384:名無しって呼んでいいか?
07/05/05 22:28:54
①「がんばる?って何をです?」
「ここ、ここから抜け出す方法だな」
周防さんは霧に包まれた地面を指差す。
「ここって……夢の中じゃないんですか?」
私はぼんやりと薄暗い世界を見渡す。
「ここは生と死の狭間。世間一般でいう三途の川ってやつさ」
周防さんはまるで近所のコンビ二を教えてくれるような気軽さで答える。
「さ、三途の川って……。やっぱり私は死んじゃったんだ……」
絶望的な状況に膝がガクリと折れる。
(お父さん、お母さん、春樹……先立つ不孝を許してっ)
「まぁ、落ち着けって。実際は愛菜ちゃんが想像した生死の境だよ。
俺やお前さんのような能力者は、魂が身体から剥がれやすいんだ。
夢……ぶっちゃけると精神の中に閉じ込められた訳だな」
周防さんは「この辺でいいかな?」と言いながらしゃがみ込む。
そして、地面を慎重に叩きだした。
①「何を始めたんですか?」
②「このままだったら私たちどうなるんでしょう?」
③「私に何かできる事は無いですか?」
385:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 01:38:09
②「このままだったら私たちどうなるんでしょう?」
「ん?」
意識していなかったけれど、私の言葉は周防さんの耳には心細そうに聞こえたのか。
周防さんは少し顔を上げてなんでもなさそうにさらりと言った。
「そりゃあ仲良くお陀仏だなあ。なんたって三途の川だ」
「……」
なんとなく想像はしていたものの、やはりはっきりそう言われると絶句してしまう。
黙り込んだ私に噴出すと、周防さんはまた地面に視線を戻して言った。
「ま、そう心配しなさんな。だいたいお前さんは本来ここにいるはずじゃない。
冬馬はそんなヘマはしなかっただろう?」
楽しげな周防さんに何か釈然としないものの、言っている事に異論はないので大人しく頷く。
「かいつまんで言えば、俺の心配をするあまりお前さんはこっち側に迷い込んじまったって訳だ」
「迷い込んだ……」
「そう。で、勝手の解らない場所で俺を探し当てた。どうも無意識の内にやってのけたみたい
だが、そう誰にでもできるものじゃないんだぜ」
「はあ。そう、なんですか……」
どうやら私の使ったらしい力について、周防さんは賛辞を送ってくれているみたいだけれど。
(自分でも全然実感ないのに褒めてもらってもピンとこないかも…)
「まるで他人事だな……まあ良いさ。とにかくお前さんは俺が無事に帰すから、心配しない!OK、愛菜ちゃん?」
「はい。よろしくお願いします」
「ん、良い返事。おにーさんに任せとけ」
そんなやりとりをする間、周防さんは地面の様子を確かめるように手をおいたままじっと虚空をみつめていた。
どうしよう?
①何をしているのか尋ねる
②何か手伝える事がないか尋ねる
③邪魔をしてはいけないので黙って見守る
386:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 08:39:00
②何か手伝える事がないか尋ねる
「あの……私に何か手伝えることはないですか?」
周防さんは私を見つめると、待ってましたと言わんばかりにニコっと笑った。
「じゃあ……、応援してくれ。『周防さんガンバレー』ってな」
周防さんは微妙な裏声を出いながら、身をくねらせ言った。
(今のを私が……)
「……ホントにしなきゃだめですか?」
「うん、だめ。応援がないとお兄さんもーっと頑張れないし」
(そんなハッキリ言われたら、するしかないじゃない)
「す、周防さん…がんばれぇ~」
私は赤面しながらどうにか声を出す。
「声が小さいぞ! もっと大きな声を出す」
体育祭の応援団のような張り切りようだ。
「はい……すみません」
「言いづらいなら『周防さん大好きぃ』でもいいからさ」
周防さんがやけに楽しそうなのがくやしい。
「周防さん……もしかして私で遊んでませんか?」
私は疑いの眼差しを周防さんに向ける。
すると、少しだけ真面目な顔つきになった。
「ここはお前さんの精神世界だ。愛菜ちゃんの言霊が反映されやすい。
愛菜ちゃんが声に出して願えば、それだけ俺の力になるんだよ」
①納得して応援に徹する
②「だったら、ここから出してって言えば早いんじゃ……」
③「その話だと『周防さん大好き』は関係ないんじゃ……」
387:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 09:37:32
③「その話だと『周防さん大好き』は関係ないんじゃ……」
軽くにらむと、周防さんはニヤリち笑った。
どうみても、遊ばれてるとしか思えない。
「……まあ、いいです。言霊が反映しやすいように大きな声で言えば良いんですね」
「うん、お願い」
にっこりと笑って周防さんは作業に戻った。
(恥ずかしいけど…)
私は、一度大きく息をすって吐き出す。
「周防さんがんばって!」
力いっぱい応援すると、一瞬驚いた顔の周防さんが私を見た。
「…え?」
「その調子その調子、おにーさんすごく力がわいてくるよ」
にこにこといって、周防さんは再度集中しだす。
その言葉に、力を得て、何度も何度も周防さんを応援する。
「…くそっ」
どれくらいたったか、周防さんが小さく舌打ちした。
どうやら無意識みたいで、だんだん額に汗が浮いてきている。
(どうしよう、無理そうなのかな…応援もっとがんばらないと…)
このままだと、二人とも死んでしまう。
そう思って、ふと、周防さんの言葉を思い出す。
『ここはお前さんの精神世界だ。愛菜ちゃんの言霊が反映されやすい。
愛菜ちゃんが声に出して願えば、それだけ俺の力になるんだよ」』
(言霊って言葉のことよね…言葉が反映されやすいって事は…)
こういえば…?
1.周防さん大好き!
2.私たちをここから出しなさい!
3.私たちは生きるの!
388:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 11:41:40
2.私たちをここから出しなさい!
私は大声で啖呵を切ってみせる。
「おっ! いいね愛菜ちゃん、やれやれ~」
「私はまだ死にたくないのよ!」
「出してよ! まだやりたい事がたくさんあるんだから!」
声の限り思い切り叫ぶ。
(立場は逆転したけど、効果はこっちの方があるはず……よね)
「ふざけるなぁ!なんで私ばっかりこんな目に遭うのよ!」
「元の生活を返せーー!!」
「あ、……愛菜ちゃん?」
周防さんが引きぎみだけど構わず叫び続ける。
「夢とか力とか組織とか全部ムカつく!」
「私の都合も考えてよーー!!出せーー!!」
「愛菜ちゃん? 盛り上がってる所、申し訳ないんだけど……」
「な ん で す か !」
血走った目を向け、私は答える。
「あのね…崩壊しそうだから俺につかまって欲しいかな……なんて」
その言葉でようやく我に返った。
「は、はい……すみません」
私は周防さんの上着を握り締めた。
周防さんは静かに息を整えると、ゆっくり肩膝を立てた。
右手がボゥっと青白い光を放つ。
ふーっと息をゆっくり吐きながらその右手を高く上げ、一気に振り下ろした。
周防さんの掌手が地面を強く叩く。
地響きと共に、地面に大きな亀裂が走っていく。
すると、足元をすくわれる様にグラリと体勢が崩れた。
「す、周防さんっ!」
「絶対に俺を放すなよ」
真っ白な眩い光に包まれ、前後左右が分からなくなる。
急激に浮上するような、落下するような不思議な感覚が私を襲う。
「……………っ」
誰かが私を呼んでいる声が聞こえた。
その声は……
①春樹
②周防さん
③御門くん
389:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 12:49:25
③御門くん
「愛菜!周防!」
いつもとは違う、鋭い叫びのような呼び声。
……一瞬耳を疑った。
その声の主のいつもの話し方とはあまりに違っていたから。
「ええと、御門君……?」
「そうそう!」
周防さんが嬉しそうに言う。
(でも、どこにいるんだろ?)
声は聞こえたけれど、姿はまったく見えない。
……一体御門君はどこにいるんだろう?
「冬馬!お前ってばナーイスタイミング!」
「…………お前は」
相変わらずの無表情のまま、ため息のようなものをつく御門君。
「……ひとまず、こっちへ」
御門君のその声と同時に、私たちの前方に光が見えてくる。
「おう、サンキュ!」
「……うっし、愛菜ちゃん、できるだけ飛ばすからしっかりつかまってろよ?」
周防さんは私の肩を抱き寄せ、それから真剣な表情をこちらに向ける。
「それから……あっちにたどり着くまでは、余計なことは考えるな。
途中の幻惑や、囁きに捕らわれてもいけない」
言われて、私は辺りを見回す。
御門君の示してくれた光の標と、私たち以外はただただ暗闇だけ。
……今のところは、特に幻が見えたり聞こえたりはしなかった。
「ここは精神世界。……ましてやここは君の影響が大きい領域だ。
君の答え次第で物事が大きく変わってしまう恐れもある。その後……どうなるかは、正直俺には保障できない」
重々しい周防さんの言葉。
私は……
①「わ、分かりました」
②「それを利用して、さっきみたいにいい方向に変えてはいけないんですか?」
③「変わるって、たとえばどんな風にです?」
390:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 12:52:37
>>389の「相変わらずの無表情のまま」って一文は無かったことにしてください。
姿みえないって自分で書いてるっつーに、どうして表情が分かるんだよorz
391:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 21:46:54
①「わ、分かりました」
私は周防さんから離れないようにしがみ付いた。
「一番帰りたい場所を思い描けばいい。
あとの事は俺と冬馬でなんとかするからな」
そう言ってくれる周防さんの腕に力がこもる。
(周防さんと冬馬くんを信じよう)
一点の光の標を目指して、闇を疾走する。
永遠の漆黒が纏わり付くように私たちを包む。
空虚なのにゾワリと頬を撫でる不快感が続く。
それは例え一瞬でも永遠に感じられるような時間だった。
「……ちゃん……愛菜ちゃん……」
か細い、女性の声が聞こえてきた。
(これがさっき周防さんが言っていた幻聴?)
「愛菜ちゃん……愛菜ちゃん……」
(この声……どこかで聞いた事がある)
考えてはいけない時だと分かっていても、声の主を思い出す事をやめられない。
とても大切な声。とても大切な思い出。
大切な忘れてはいけない人。
そして……本当に、帰りたい場所―
「お母さん!!」
「駄目だ!!愛菜ちゃん―」
①私は周防さんの言葉で我に返った。
②私は懐かしさで胸が一杯になった。
③私には別に一番帰りたい場所がすでにあった。
392:名無しって呼んでいいか?
07/05/06 22:35:34
①私は周防さんの言葉で我に返った。
「…あ」
「愛菜ちゃん、惑わされるな。戻れなくなる」
「…すみません」
周防さんの声に、我に返ったけれど、声はいつまでも追いかけてくる。
(私の帰りたい場所…どこだっけ)
その声に思考が乱れる。
「愛菜ちゃん!」
周防さんのあせる声に、必死に帰る場所を思い浮かべようとする。
けれど声が気になって集中できない。
そのとき、ふとやわらかいものが手に触れた。
「あ…」
「そいつは…」
周防さんにしがみついている私の手に、さらにしがみついている。
「…チハル?いつの間に」
感情のこもらない目がじっと私を見つめる。
何かを訴えるようにひたすら見つめられて、ふと思い出した。
(春樹…!)
そういえば、ここに来る前春樹も一緒に居たはずだ。
御門くんに気絶させられてたけど、大丈夫だろうか。
「そうだ愛菜ちゃん、その調子」
周防さんの声が聞こえたその途端、光の中に飛び込んだ。
「…ん、…姉さん!」
呼びかけにぱっと目を開ける。
そのまま、がばっと体を起こして慌てて周りを見渡す。
目の前には、ほっとした春樹の顔。
少し離れたところで私を見ていた御門くん。
そして、私の手にしがみついているチハル。
どうやら公園らしい。
1.ここはどこ?
2.周防さんは?
3.春樹、大丈夫なの?
393:名無しって呼んでいいか?
07/05/07 20:07:29
3.春樹、大丈夫なの?
目の前の春樹の顔にそっと手をのばして上気した頬に触れる。
自分のことで精一杯だったけれど、こうしている間も春樹は返事のない私に必死に呼びかけてくれていたのだろうか。
チハルに教えてもらうまで忘れていたなんて、私はなんてひどい姉だろう。
「なんともない?どこか具合の悪いところ、ない?」
やっとの事で搾り出した声は自分でも情けなくなるくらい弱弱しかった。
「……それは、こっちの台詞だよ。姉さんこそ大丈夫?」
そう言って春樹はポケットからハンカチを差し出した。一瞬訳がわからずに首を傾げると、春樹は持っていたハンカチで黙って私の額の汗を拭った。
「怖い夢でも見てた?ずっとうなされて、苦しそうだった」
「……」
春樹はこんな時でも、ただただ優しい。
視界がぼんやりと滲んで目の前の春樹の輪郭があやふやになるのが恐くてきつく瞼を閉じて春樹の腕にしがみつく。
「……姉さん?どうしたの?どこか痛む?」
春樹の気遣わしげな声は聞こえたが、こみあげる嗚咽に声を出す事ができず私は子供のように何度も首を振った。
春樹は戸惑いがちにゆっくり私の背中を撫でて、その春樹にしがみつく私の手の上をチハルの小さな手が慰めるように行ったり来たりしていた。
どのくらいそうしていたのか。
呼吸も整い始めた頃、ふと誰かが近寄る気配がした。
(御門くんかな?みっともない所見せちゃったな…)
いまさら恥ずかしくもあったけれど、思い切って涙を拭いて顔を上げる。
そこに立っていたのは……
①やっぱり御門くん
②いつの間に現れたのか周防さん
③近所を巡回中らしいおまわりさん
394:名無しって呼んでいいか?
07/05/07 23:36:53
③近所を巡回中らしいおまわりさん
「どうしたんだ? 気分でも悪くなったのか?」
ベンチの上で横になっている私を見て心配に思ったのか、おまわりさんがこちらに向かって話しかけてきた。
「いえ……なんでもないです」
(こんな公園に警官?)
「そうか。ならいいが、目撃者が何人も病院に運ばれたからな。
君も現場を目撃して気分が悪いようだったら無理せず言うんだよ」
目撃者?現場?
なんの事だろう。
だけど、すごく嫌な予感がする。
「大丈夫です。ありがとうございます」
不審に思われないように、とりあえずこの場を取り繕う。
おまわりさんが納得したように私達から去っていった。
「ねえ、春樹……あのおまわりさん、何を言っていたのかな?」
春樹は苦しそうに私から目を逸らし「知らない……」と答えた。
(春樹……何か隠しごとをしている?)
少し離れたところに居る御門君は、ジッと黙ったまま私を見つめている。
私は……
①御門君に何が起こったのか尋ねる
②これ以上追及しない
③春樹に本当のことを言ってもらう
395:名無しって呼んでいいか?
07/05/08 09:46:14
②これ以上追及しない
御門君はともかく、春樹が口をつぐむって事は……きっとよくないことなんだ。
なら、聞かないほうがいいのかもしれない。
(それになんとなく検討はつくもの……)
辺りを見回す。
ここは、さっきまでいたショッピングモールの公園だ。
先ほどまでの出来事は、全部夢じゃない。
周防さんが戦いに赴いたことも、ここで騒いだことも、春樹が来たことも……全部。
(だからきっとこの騒ぎはそれ関連のことだ……それも、被害はかなり大きいのかもしれない)
思ったよりも冷静に受け止めている自分に驚く。
(なんでだろう?)
それは現場を見ていないからそうできるのか。
それとも知らない間に自分はそんなに冷たい……酷い人間になってしまったのだろうか。
「……姉さん。姉さんは、これから、どうするつもりだ?」
考え込んでいる私に、春樹が静かに問いかけてくる。
まるで何かを耐えているような、震えた声で。
「え?えっと……」
唐突な質問に私が答えられずにいると、春樹はそのまま言葉を続けた。
「あのさ、俺……ちょっと一人で考え事したいから……。
だから、先に帰るよ」
「え……」
私はその様子に違和感を覚えずにはいられなかった。
(いつもなら有無を言わせず『帰るぞ!』って言うところなのに?)
春樹の様子がおかしい。
それが、言葉で……態度で十分に伝わってくる。
「姉さんがどうするにしろ……あいつに傍にいてもらったほうがいい」
そして、最後に搾り出すように呟く。
視線は下を向いているが、誰のことをさしているかはわかる。
(御門君のこと?でも急にどうして……)
どうして春樹は急にそんなことを言い出すんだろう?
気絶する前までは、あんなに反抗するような態度を取っていたのに。
「じゃあ……」
春樹は私に背を向けてそのまま歩いていってしまう。
私は様子のおかしい春樹をただ呆然と見つめるだけで、何も考えることができなかった。
そして、途中で御門君とすれ違うときに一度だけ足を止めて。
「…………っ」
そのまま走り去ってしまった。
私は……
①春樹を追いかける
②御門君に何かあったのか聞く
③御門君に周防さんはどうしたのか聞く
396:名無しって呼んでいいか?
07/05/08 14:40:41
①春樹を追いかける
とっさに、私も春樹を追って走っていた。
「まって!春樹!」
私の目が覚めるまでの間に何かがあったのは確かだ。
御門くんに聞けば、きっと何があったのか答えてくれる。
でも、様子のおかしい春樹を一人にしてはいけない気がした。
「春樹!」
私の声が聞こえたのか、春樹がふりかえる。
私が追いつくと、怒っているような何かに耐えるような顔で私を見た。
「なんで追いかけてくるんだよ。姉さんは、あいつと居ないとダメだ」
「…いったい、どうしたのよ、御門くんに、何か、言われたの?」
息を切らせながら途切れ途切れに言う私に、ちらりと驚きの表情をにじませる。
「…御門?あいつが?姉さんが怪我したときに保健室に運んだ奴?」
そういえば、さっきも同じ学年のはずなのに面識がない様子だった。
「そうよ」
「……あいつは一年に居ない。姉さんも知らないとなると、二年でもない」
「え?」
さっきの春樹の様子でおかしいと思っていたけれど…。
1.それじゃ、三年生?
2.もしかして、学校の生徒じゃない?
3.転校生、とか?
397:名無しって呼んでいいか?
07/05/08 23:00:25
1.それじゃ、三年生?
私は疑問をそのまま口に出した。
「………知らないよ」
春樹は私をあしらうと、また歩き出す。
「ど、どうしたのよ。春樹ってば……」
「なんでもない……。放っておいてくれ」
「何を怒ってるの?」
「早く……あの御門って奴の所へ戻れよ」
どんどん先へ歩いて行く春樹を早足で追いかけた。
「ちょっと、待ちなさいってば!」
私は春樹の前に強引に飛び出る。
「…………」
春樹は私を見据えるように立ち止まると、乱暴に地面を蹴った。
「あんなの見て冷静でいられるわけないだろ!
こんな……自分を無力だと感じたことは生まれて初めてだ!!
俺は何の力も無い。ただ指を咥えて見ていることしか出来ないんだよ!」
春樹の憤りは頂点に達している。
事件の事を言っているのか、気絶させられた事を言っているのかまでは判断できない。
ただ、春樹の気持ちは守ってもらってばかりの私にも痛いほど分かった。
私は…
①怒ったって何も変わらないと諭す。
②春樹を守ると決意する。
③かける言葉も無く春樹を見送る。
398:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 01:15:15
①怒ったって何も変わらないと諭す。
「春樹の気持ちは私にもよくわかるよ」
とりあえず、春樹が落ち着いて聞いてくれるように前置きをして続ける。
「どっちかって言ったら私の方が当事者なのに色々な人たちを巻き込んで、いつもみんなに助けてもらって…。何もできないのがほんとに、情けないし悔しいって思う」
「……」
「みんなに守ってもらってばっかりで、さっきだって結局春樹を巻き込んじゃった。…私だって春樹のこと、守りたいって思ってるのに」
それは決して嘘じゃない。
私に関わる人を全て守れるはずもないけれど、春樹は私の大事な家族なのだ。すぐ傍で苦しんでいるのに何もできないなんて、それほど歯がゆいことはない。
きっと、春樹も同じ気持ちだ。
「でも、怒ったって嘆いたって取り巻いてる状況は何も変わらないと思う。小さなことでも、少しずつでも何か私たちにできることをしなきゃ」
春樹は依然として口をつぐんだまま何の反応も示さない。つたない言葉ながら春樹の心に届くよう私は必死に語りかけた。
「私も春樹と一緒に一生懸命考えるよ。どうしたら良いか、何ができるのか。ね?」
「…何が、できるのか?」
呟くように私の言葉を反復すると、春樹はなぜか口元だけで小さく笑った。
理由はわからないものの不意に春樹の見せた笑みに安堵していると、それに気付いたのか春樹が私を見て苦々しげに言った。
「考えたさ。俺に、何ができるのか。それこそ姉さんの力の話を聞いてから、今までもずっと」
「春樹……」
「さっき、答えは出たんだ。姉さんはあいつの所に行ってくれ」
春樹の信じられない言葉に、私は自分の耳を疑った。とっさに言葉が出てこない。
やっとの事で出てきたのは奇妙に上ずった子供じみた問いかけだった。
「……どうして?私、何かした?それとも、御門くんに何か言われたの?」
呼びかけてみても、春樹は眉根を寄せて押し黙ったままだ。
言いようのない不安に襲われて、私は春樹の肩を乱暴に揺すった。
「ねえ、春樹ってば!」
「もうこれ以上の厄介事は、ご免なんだ!」
(え……)
急速に全身の血の気が引いていくのがわかった。
目の前の春樹の顔もあたかも自分がそう告げられたかのように蒼白だった。
春樹はあからさまに私から目をそらすと、私の腕を振り払って背を向けた。
振り返ることなく足早に遠ざかってゆく。
わたしは……
①なおも春樹に追いすがる
②呆然とその場に立ち尽くす
③人目もはばからずに泣き崩れる
399:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 02:55:14
②呆然とその場に立ち尽くす
「は、るき……」
頭の中が真っ白で何も考えられない。
たださっきの春樹の言葉が何度も私の中で繰り返し繰り返し響くだけ。
『もうこれ以上の厄介事は、ご免なんだ!』
私に笑顔を向けていてくれたときも。
私を気遣ってくれたときも。
私を守ろうとしてくれていたときでさえ。
(春樹は、ずっとそんな風に思って……でも、我慢してきたの?)
負担になっているのかもしれない……どこかそんな予感はしていた。
けれど、それは春樹の優しさと春樹への甘えで確実な答えに変わることは無かったけれど。
だけど今、はっきりと分かった。
(私は春樹にとって迷惑な存在で……私は、春樹の負担になってたんだ)
垣間見えた、春樹の本当の気持ち。
それを知って私は……
①悲しくなった
②安堵した
③許せなかった
400:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 10:06:19
②安堵した
確かにその否定的な言葉はとてもショックで悲しかった。
だけどそれ以上に、安堵してもいた。
それは多分、少しでも春樹の気持ちが見えたからなのかもしれない。
春樹はいつも優しかった。
でも、だから私には春樹の気持ちが分からなくて、それがずっと怖かった。
春樹はすぐに私を優先にするけれど、本当の春樹はどうなんだろうって。
(本当は、もっといっぱい考えてることとかやりたいことがあったんじゃないかな……私にばかり構ってるんじゃなくて)
そしてその気持ちは、いつどんな言葉で告げられるんだろうって。
(もしかしたら、告げられたのが今でよかったのかもしれない)
能力のことや事件のことという異常な状況である今。
やらなきゃいけない明確なことがある今。
それがクッションになって、思ったよりもきちんと春樹のことを受け入れられていた。
もしも平常時に言われていたら、もっと取り乱してどうしたらいいかわからなかっただろう。
(それに、これできっとこれ以上春樹を巻き込まないですむ)
春樹は「これ以上の厄介事はごめんなんだ」と言った。
この事に関わり続ければ、厄介事が増えるだけだって春樹なら分かるはずだ。
なら、今後は無闇に首を突っ込もうとはしないだろう。
(だから、今は心がすれ違っちゃったけど……大丈夫だって信じよう)
しばらくは互いにどうしたらいいかわからないかもしれない。
ギクシャクしてしまうかもしれない。
でも、生きてさえいればきっとどうすることだってできる。
話し合う事だって、本音をぶつけ合う事だって、お互いを本当に分かり合えるようにだって、なるはずだ。
(そのために、すべてを終わらせよう……できるだけ早く)
私は心にそう誓った。
「よし!」
まだ悲しいままの気持ちを断ち切るように、私は両手で自分の頬を勢いよく叩く。
そして私は歩き出した。
①御門君がいるショッピングセンター内の公園へ
②何かの事件が起こったらしい事件現場へ
③御門君と約束した病院の近くの公園へ
401:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 13:15:31
①御門君がいるショッピングセンター内の公園へ
さっきは突然の事につい春樹を追ってきてしまったけれど、御門くんを一人で置いてきたままだ。
(そういえば私ったら、助けてもらったのにお礼も言ってないよ)
こちら側に戻ってきてからいきなり大泣きした挙句、御門くんをほったらかしにして春樹と口論を繰り広げて。
この上なく失礼だし、冷静に考えるとかなり恥ずかしい。どう話をしようかと悶々としながらもといた場所へと向かう。
(……いた、御門くん!)
御門くんはさっきまでと寸分たがわぬ位置に佇んでいた。いつもと同じ、感情の読み取れない瞳をこちらに向けてくる。
私は気持ちの整理をするように一つ大きく息を吸って、御門くんの所まで歩いてゆく。
途中芝生の中をよろめきながら小走りに駆け寄ってくるチハルを抱き上げて、御門くんの前に立った。
「……ええと」
さて、どうしよう?
①まずは助けてもらったお礼をする
②御門くんに公園で起こった事件の概要を聞く
③周防さんの居場所と容態を尋ねる
402:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 14:08:23
①まずは助けてもらったお礼をする
「ありがとう、御門君。なんだか色々助けてくれて。」
「お礼はいらないです。これが僕の役目ですから。」
表情一つ変えず言葉は淡々と義務めいている。
御門君らしい返答。
「うん、でもお礼がいいたかったの。ありがとうね。」
私はもう一度お礼をいうけれど、御門君は何も答えなかった。
私を見ているというよりは私の先を見ている。
「御門君?」
先に何があるというのだろうか振り向くも人がいない。
事件現場の方に人が集まっているのだろう。
ミストがいるわけでもないのに、どうしたんだろう。
そう思っていたら御門君が口を開いた。
「どうして、弟さんを遠ざけたのですか?」
「えっ。」
先ほどのやり取りのことを言っているのだろうか。
遠ざかったのは春樹なんだけれど、御門君にはそうは見えなかったのだろうか。
「遠ざけたわけじゃないよ。これからは春樹の力を借りずに片付けるの。
そして、全てが終わったら一緒にいるために戻ってきたの。」
春樹には危ない目にあって欲しくない。
御門君が言ってくれたんじゃないの、安全な所にいろって。
「……ということは、僕と一緒にいてくれるということですか?」
「えっ。」
「弟さんの傍にいたら弟さん危ない目にあいます。
家、帰れますか?」
御門君の言葉にショックを受けた。
淡々とした言葉が胸に刺さっていく。
「でも……。」
「それに遠ざけたということはあなた、一人になるんですよ。
双子の言葉忘れたわけじゃないでしょう。」
男と女がいて陰陽のバランスがとれる、じゃないと消えてしまう。
そうだ、だから春樹がいないとって一郎君と修二君が……。
「だから弟さんの傍にいないのだったら僕と一緒に来てもらいます。
あなたを失うわけにはいかない。」
今度は私をまっすぐ見て御門君は私に手を伸ばしてきた。
この手を取れば家に帰ることはなかなかできないだろう。
①手を取る
②一度考えさせて欲しい
③今はそんなことより周防さんだ。
403:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 15:12:25
①手を取る
「いいの、かな」
私はおずおずと御門君に尋ねる。
(私はこの選択をしていいのかな?)
(御門君に迷惑かけてもいいのかな?)
(私は私でいることを望んでもいいのかな?)
それらの思いをただ一言にこめて、私は答えをじっと待った。
やがて、御門くんが口を開く。
「……そのために、僕は存在しています」
それはとても悲しい言葉のようにも思えるけれど、同時に私を必要としてくれている気持ちも伝わってきた。
だから。
私は、ゆっくりと御門君のほうへと手を伸ばし――その手を取った。
「ありがとう……これから、よろしくね」
「はい」
優しくもしっかりとした握手が交わされる。
「今度こそ終わらせましょう。……例えあなたの出す答えがどんなものであろうとも」
そして、御門くんがそう続ける。
(……?)
瞬間、どこかで何かが引っかかった。
『今度こそ終わらせましょう。……例えあなたの出す答えがどんなものであろうとも』
(今の言葉、何かが引っかかるような……何だろう?)
考えてみたけれど、あと少しのところで出てこない。
「どうかしましたか」
手を繋いだままの御門君に淡々と問われる。
どうしよう?
今の疑問を御門君にぶつけてみようか?
①「あのね、今の言葉に何か引っ掛かりがあるって言うか……」
②「ううん、なんでもないの。それよりこれからどうするの?」
③「そういえば、周防さんはあれからどうしたの?」
404:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 19:14:01
①「あのね、今の言葉に何か引っ掛かりがあるって言うか……」
そう、何かがひっかかる。
(何だろう……。今度、こそ?)
話を振っておきながら一人物思いに沈む私に、御門くんは繋いでいた手をほどくとあいかわらず抑揚の乏しい声で言った。
「僕はあなたに何か変なことを言ったでしょうか」
「え、ううん。そんなことないよ。ただ、『今度こそ』って言ったみたいだから」
ちょっと気になってね、と付け足してどうにか笑顔を作る。
御門くんは黙って私の顔を見つめていたが、ややあって目を伏せると静かにこう言った。
「失言でした。それについては……僕からはまだ、お話できません。いずれ時がくればご自身でもおわかりになるかと思います」
珍しく御門くんが返してくれた答えは、聞く前より私の頭に疑問符を増やすものだった。
ただ、はっきり『話せない』というからにはこれ以上聞いても無駄なのだろう。
「わかったよ。それまで待ってる」
仕方なく、私はそこでその話を切り上げる事にした。
御門くんは小さく頷いて、恭しく私の右手をとった。
事態が良く飲み込めずにそのまま目で追っていると、御門くんは目を伏せたまま流れるような仕草で私の前にひざまずいた。
(み……御門くん?)
惚れ惚れとする優雅な振る舞いに溜息が出そうになったが、次の瞬間に我に帰る。
ここは、日曜日の公園なのだ。
どうしよう?
①人目が気になって恥ずかしいので立つように促す
②突飛な行動を咎める
③契約に関わることかもしれないので御門くんの好きなようにさせる
405:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 21:12:23
③契約に関わることかもしれないので御門くんの好きなようにさせる
私は御門君だけをただじっと見つめる。
一度そう決めたからなのか、不思議と周りの存在や声といったものは全く気にならなかった。
(そういえば、前にも夢で見たっけ……)
あのときのことを思い出して、少し恥ずかしくなる。
「……いまいちど、誓う」
そんな間にも、御門君は私の右手に自分の額を当てて、言葉を紡ぎだした。
(わっ!?)
その突然の行動に驚きながらも、どぎまぎしてしまう。
現実だから当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど、伝わってくるものはあのときよりもずっとはっきりしていた。
「遠き古より、我が主と定めた人。
貴方が望むならば、僕は剣となり盾となり……翼にさえなってみせる」
私の心中なんてお構いなしに言葉は続いていく。
ふと、繋がっている手から何かが流れ込んでくる気がした。
(???)
これは、一体何なんだろう?
懐かしいような、優しいような、暖かいような、不思議な感覚のそれ。
そんな風に感じるのは、一体なんでなんだろう?
「そして貴方の尊き願いの為に、望む道を切り開くために、戦い続ける。
……この身が朽ち果てるまで」
そして、私をまっすぐ見つめてくる。
もしかして、私の言葉を待ってるのかな?
でも、なんていったらいいんだろう?
①「ありがとう。私、がんばるから」
②「……『この身が朽ち果てるまで』なんて言わないで?」
③「そういえば、夢でもこんなことがあったね」
406:名無しって呼んでいいか?
07/05/09 22:59:39
①「ありがとう。私、がんばるから」
私の言葉に御門君は力強く頷く。
「主たるあなたの望みのままに……」
そして、私の手の甲に唇を寄せた――
手から流れ込んでくるもので体中が包み込まれる。
その感覚はどこまでも暖かくて、懐かしい。
今までにこんな経験をした事なんてない筈なのに、なぜか心が憶えている。
やっぱり、私はこの感覚を幾度となく繰り返しているみたいだ。
御門君が私の手を取り、ゆっくり立ち上がる。
すると、さっきまで止っているように感じていた時間がまた動き出した。
「……………………」
御門君が私をジッと見つめてきた。
その触れる指先には以前よりもはっきりとしたアザが浮かび上がっている。
(これって……仮契約じゃなくて本契約したって事よね)
私はもう戻れないところまで来てしまった。
こうなったら、もうやるしかない。
だけど、知らない事が多すぎてどうすればいいのか見当もつかない。
(そうだ。以前、夢の中で御門君は私と縁の深い人について話してくれるって言っていたよね。
そして、打つ手があるともいっていたけど……)
私は……
①縁の深い人について尋ねる
②組織について尋ねる
③御門君の素性を尋ねる
407:名無しって呼んでいいか?
07/05/10 21:28:41
①縁の深い人について尋ねる
「ねえ、御門君……聞いていいかな?」
私が問いかけると、御門君は「はい」と静かに頷いた。
「御門君は、私達と縁の深い人に私を守って…って頼まれたんだよね?」
それって、誰なの?」
「…………」
私の質問に、御門君はすぐには答えなかった。
何かを考えているようだ。
(さっきみたいに聞かないでとは言われなかったから、大丈夫だとは思うんだけど……)
どことなく不安になりながらも、御門君からの返答を待った。
ふいに、御門君はシャツのポケットから何かを取り出す。
(あ……)
私はそれに見覚えがあった。
それは……いつも御門君が持ち歩いているロケット。
御門君は少しの間、そのロケットをじっと見つめる。
そして、目を閉じて包み込むように握った。
それが何かの祈りのように見えて……私はただ、何も言わずにその様子を見守る。
やがて目を開くと、御門君はゆっくりとそのロケットを私に差し出してきた。
私はできるだけそっと、丁寧にそのロケットを受け取る。
「そこに答えがあります」
言われて、そのロケットをそっと開いた。
そこには二人の人物。
一人は、幼い御門君。
大体小学校低学年くらい、だろうか。
表情は今と変わらず無表情のままだったけれど。
そして、その隣に写っている人物。
「お、かあさん……!?」
そう、私のお母さんだった。
……私の前からいなくなったときとほぼ変わらないままの姿で御門君の隣で微笑んでいる。
(どういうことなの?)
御門君に質問すべく、私は顔を上げた。
①「どうして御門君とお母さんが?」
②「御門君はお母さんの行方を知ってるの?」
③「なんで今まで教えてくれなかったの?」
408:名無しって呼んでいいか?
07/05/10 23:08:09
①「どうして御門君とお母さんが?」
御門くんは私が手に持ったロケットから視線を外して、どこか遠くを見るような目をした。
「……僕はあなたのお母様に育てられました。実母ではありませんが、孤児同然の身になった僕を引き取って育ててくれたのです」
「お母さんが……」
呟く私に御門くんは静かに頷いた。
つまりは私と御門くんはいわゆる乳兄弟みたいなもの、ということになるのだろうか。
漠然とそんな事を考えていると、御門くんは感情の読めない口調で淡々と続けた。
「まずは僕の生い立ちからお話しなくてはなりません。僕の父親はとある研究所の研究員でした。
彼は素養もあり研究熱心で、施設でともに働く職員の中でも極めて優秀な人間だったようです」
まるで調書を読み上げる刑事のように御門くんは言った。到底父親の話をしているとは思えないような、そんな口ぶりだった。
「ただ、優秀な人間が必ずしも社会常識や人間としての倫理観を持ち合わせているとは限りません。
自身の才能を過信した彼は探究心を抑えられなかったのか、同僚達の目を盗み独断で施設の設備を用いて次第に非人道的な実験を行うようになりました」
「非、人道的……?」
口に出してみてもどの程度の規模のどういったものなのか、私には全く見当もつかない。
「はい。あなたにお聞かせするような内容ではありませんので詳細については割愛しますが、周防は
『胸くそが悪くなる』と言っていました。……私の父親は自らが持つ知識欲を満たさんが為に何の躊躇なくそういった類の行為に手を染め、
最終的に彼の行き着いたのは自分の身重の妻を利用した人体実験でした」
私は一瞬我が耳を疑った。
人体実験など、現実にありうるのだろうか。
「……待って。もしかして、その子供って……」
何故か喉が乾いて、私の声はひどくかすれていた。言いながら、思いついた答えが違うものであって欲しいと願っていた。
けれど。御門くんの口から出た言葉は間逆のものだった。
「あなたがお考えの通り、僕がその子供です。母の胎内で彼の実験の被験者になりました」
「……」
言葉が、出てこなかった。目の前の御門くんにかけるべき言葉が見当たらなかった。
御門くんは特に気にかける様子もなく、話をすすめてゆく。
「しかし、事は彼の思惑通りには運びませんでした。生まれてきた子供が成長するにしたがって、
彼は自らの実験の失敗という結果を思い知らされたのです。所詮彼は非凡な秀才で、思い描く天才にはなりえなかったという事なのでしょう」
御門くんから語られる内容に愕然とした。周防さんが言っていた特殊な事情というのはこの事だったのか。
あまりの内容に脳内がショートしそうだ。ここでちょっと質問をしてみる事にした。
何を尋ねよう?
①御門くんの父親の勤めていた研究機関について
②御門くんの父親が実験で得ようとしたものについて
③御門くんの何が『失敗』だったのかについて
409:名無しって呼んでいいか?
07/05/11 09:10:33
③御門くんの何が『失敗』だったのかについて
「失敗は二つ。まず一つは僕の能力が彼の思い通りのものでなかったことです」
私の質問に、何の感情のなく淡々と答える御門君。
「彼はさまざまな調整を行い、僕が彼の望む能力を持って生まれてくるようにした。
……そのはずでした。しかし、僕に発現した能力は全く違うものだった」
ふと自分の手のひらをじっと見つめ――やがてそれを握り締める。
それから御門君は再び言葉を続けた。
「そしてもう一つ。それは……僕が持って生まれた能力を制御できなかったこと。
結果、僕の能力の暴走により彼の目論見は白日の下に晒されることになりました。
……ただし、あまりにも多くの犠牲を払って、ですが」
そこで話を区切り、御門君はわずかに目を伏せる。
もしかしたら、そのときのことを思い出しているのかもしれない。
「彼がどうなったかは僕には分かりません。
その後すぐに僕は『危険である』と判断され、別の場所……能力者を制御する部屋へと移されましたので」
「そして、その場所はただ暗闇だけがありました。
どのくらい、その状態が続いていたかは僕には分かりません。
何も無い、誰も来ない、死なないように管理だけはしていたようでしたが」
ただ暗闇だけが支配する世界で、一人ぼっちでただ人形のように存在し続けること。
その光景を想像してみる。
私はそれだけで怖くなった。
もしも、自分がそうなったらと思うと……ぞっとした。
「しかし、ある時に変化が現れました。
勢いよくドアが開かれ、光が差し込んだかと思うと……僕は見知らぬ誰かに抱きしめられていました。
それが、志穂……あなたのお母様」
お母さんのことを語るときだけ、わずかに御門君の声が揺れた気がした。
――それは本当にわずかのことで、そこにどんな感情があったかは分からないけれど。
「御門冬馬、と言う名もあなたのお母様からいただいたものです。
実の母親とは顔を合わせたこともありませんし、僕の父親は僕を実験のコードナンバーで呼んでいましたから」
そこで、御門君は私を見て言葉を止めた。
「……どうかしましたか?」
そして問いかけてくる。
そのとき初めて私は自分の状態に気がついた。
気がつけば私は……
①悲しみのあまり泣いていた
②怒りのあまり手を強く握り締めていた
③恐怖のあまり震えていた