08/08/21 19:36:40 kGXh9JXg
「対テロ戦争の最前線」が再び政情不安に陥る心配が出てきた。パキスタンのムシャラフ大統領が辞任した。
連立内閣を組む反大統領が議会で弾劾の準備を進めながら辞任を追っていた。その圧力に抗しきれず、追い込まれた結果だ。
陸軍参謀長だったムシャラフ氏は1999年にクーデターで実権を握った。2001年には現職を解任して大統領に就任する。
2007年の大統領選で圧勝したものの、参謀長を兼務するのは憲法違反だと指摘されると、非常事態を宣言して強行突破を図った。
この9年間は事実上の独裁体制を敷いてきたと言っていい。民主政治とはほど遠い。弾劾の理由もそこにあったのだろう。
ただ批判勢力が言うように、辞任を民主主義の勝利だと結論づけるのは早計ではないか。
反大統領派も決して一枚岩ではない。今後1カ月以内に新しい大統領を選出することになるが、それが新たな政争と混乱を生むだけなら、民意に背くことになる。
大統領の辞任がパキスタンに真の民主的な安定をもたらす契機となるよう、強く望みたい。
強権政治で知られたムシャラフ氏を支えてきたのは米国だった。アフガニスタンとの国境地帯が国際テロ組織アルカイダの活動拠点になっている。
そう主張し「9・11」のテロ以降、対テロ戦争の強力なパートナーとして支援を続けたのだ。
見返りに、ムシャラフ氏はイスラム過激派や武装勢力に対する武力を使った抑え込みに協力を惜しまなかった。両国の蜜月時代だ。
それがイスラム教徒が9割以上を占める国民の反発を招き、結局は今回の退陣につながった。
イラク、アフガニスタンと同様に、米国の対テロ戦略はここでも誤算を重ね、最終的に破たんを来した。そう言わざるを得ない。
もちろんテロ対策は国際社会にとって重要な問題だ。だからこそ日本もパキスタンに対する経済支援を行ってきた。「最前線」における戦略の再構築は急がねばならない。
だが武力一辺倒では実効は上がらない。民意の支持がなければ継続が難しい。そのことを米国は教訓として学び取るべきだろう。
パキスタンは1998年に核実験を成功させ、イスラム圏で唯一の核保有国になった。核の管理問題は常に懸念材料となった。同じく核を保有する隣国インドとの間で長年の紛争も抱える。
国内情勢の不安定化は世界の安全保障を脅かす恐れがある。国際社会の後押しが不可欠だ。