ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ6at GAL
ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ6 - 暇つぶし2ch2:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/06 19:35:20 hv31EMlK
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1~3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。


3:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/06 19:36:15 hv31EMlK
【舞台】
URLリンク(www29.atwiki.jp)

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0~2
 黎明:2~4
 早朝:4~6
 朝:6~8
 午前:8~10
 昼:10~12
 日中:12~14
 午後:14~16
 夕方:16~18
 夜:18~20
 夜中:20~22
 真夜中:22~24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

4:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/06 19:38:16 hv31EMlK
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1~3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。

【予約】
したらばの予約専用スレにて予約後(URLリンク(jbbs.livedoor.jp))、三日間
三作以上投下した書き手のみ、二日間の予約延長が認められる

5:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/06 19:39:53 hv31EMlK
2/6【うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
   ○ハクオロ/●エルルゥ/●アルルゥ/●オボロ/○トウカ/●カルラ
3/3【AIR】
   ○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪
2/3【永遠のアセリア -この大地の果てで-】
   ○高嶺悠人/○アセリア/●エスペリア 
2/2【Ever17 -the out of infinity-】
   ○倉成武/○小町つぐみ
1/2【乙女はお姉さまに恋してる】
   ○宮小路瑞穂/●厳島貴子
4/6【Kanon】
   ●相沢祐一/○月宮あゆ/○水瀬名雪/○川澄舞/●倉田佐祐理/○北川潤
3/4【君が望む永遠】
   ○鳴海孝之/●涼宮遙/○涼宮茜/○大空寺あゆ
1/2【キミキス】
   ●水澤摩央/○二見瑛理子
4/6【CLANNAD】
   ●岡崎朋也/○一ノ瀬ことみ/○坂上智代/○伊吹風子/●藤林杏/○春原陽平
2/4【Sister Princess】
   ○衛/●咲耶/○千影/●四葉 
3/4【SHUFFLE! ON THE STAGE】
   ○土見稟/○ネリネ/●芙蓉楓/○時雨亜沙 
2/5【D.C.P.S.】
   ○朝倉純一/●朝倉音夢/●芳乃さくら/○白河ことり/●杉並
3/7【つよきす -Mighty Heart-】
   ●対馬レオ/●鉄乙女/○蟹沢きぬ/●霧夜エリカ/○佐藤良美/●伊達スバル/○土永さん
3/6【ひぐらしのなく頃に 祭】
   ○前原圭一/●竜宮レナ/○古手梨花/●園崎詩音/●大石蔵人/○赤坂衛
1/3【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
   ●双葉恋太郎/○白鐘沙羅/●白鐘双樹

【残り36/63名】 (○=生存 ●=死亡)

6:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/06 19:41:16 hv31EMlK
テンプレミス

>>1の前スレはスレリンク(gal板)

7: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:34:28 bc1HQD2m
『小さな、とても小さな奇跡。』


(咲耶くんと衛くんは無事みたいだね……。そしてトウカくんも無事生き延びたみたいだ……)

神社から一足早く離脱した千影は、二回目の定時放送を聞きながら心の中で呟く。
あれから彼女はそのまま北へ向かい、森からそれほど離れていない民家の一つに身を隠していた。

民家にあった救急箱を見つけるや、ネリネによって受けた左肩の傷を応急処置し、体を休めていた。
傷口を消毒し、化膿止めの軟膏をすり込んだ後、包帯を巻く。
その度に激痛が走ったが、悲鳴を上げることだけはなんとかこらえた。
今では出血もとまり、多少は左腕を動かすことができる。

定時放送が流れたのはその応急処置が済んだ直後だった。

「相沢祐一……朝倉音夢……杉並……芳乃さくら……」

放送で流れた死亡者の名前に鉛筆で線を引き、ここまで出会った他の参加者―名雪、舞、ことり―の知り合いが半分以上死んだ事を確認する。
そして、名前の挙がった死者の数に愕然とした。


8:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:34:53 iSjvj6Kj


9:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:35:12 w0emjlKc
 

10: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:35:54 bc1HQD2m
その数、15名―

第一回放送より明らかにその数は増えている。
鷹野の言う事を認めたくは無いが、皆そんなに人殺しが好きなのだろうかとすら思いたくなる。
現に神社で殺されたオボロも自分と出会う前、四葉を手にかけたと言っていた様にこの殺人ゲームに乗っていたではないか。

だが、それよりも今の千影にとって気がかりなのは咲耶と衛の安否だった。
生存者の数が減ればそれだけ次の放送で呼ばれる可能性は高まるのは必然。
次の定時放送で咲耶や衛、そして自分の名が呼ばれる事も有りうるのだ。

「もうそろそろ、心の準備をするべきかもしれないね……」

そう一人呟く千影。
第一回放送で四葉の名が呼ばれたときは衝撃を受けたが、それはまさか名前が呼ばれるとは思っていなかったという事もある。
できる事なら、次の放送でも二人の名前が呼ばれない事を祈りたいが、その可能性は低いだろう。

11:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:36:14 iSjvj6Kj


12:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:36:32 w0emjlKc
 

13: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:36:46 bc1HQD2m
神社の一戦でオボロを殺したネリネに楓。
いずれも目的の為には平然とゲームに乗り、殺人という行為を躊躇する様子は全くなかった。
自分はオボロの犠牲にトウカの援護もあって危機を脱したが、自分の様な幸運あの二人にも起こるとは思えない。
それ故に、千影は未だ見つけられない二人が次の放送で名が呼ばれる事を覚悟することとしている。

残酷だが、四葉が死んだという事実がある以上は、咲耶も衛も自分もいつここで命を落としても仕方が無いのだから。

「……もう、ここを離れたほうがいいかもしれないね」

ディパックを手にすると、千影は民家を離れる。
傷の手当てと休息によってある程度体力は回復した。
“時詠”を使ったあとの虚脱感はまだ完全に抜け切ったわけではないが、それでも神社を離れた時に
比べれば幾分ましになっている。

とりあえずは同じエリアに存在する映画館を探索しようと思いながら、千影はふと左手を動かしてみる。

指先は動く、感覚もある―。

傷は痛むが神経を断ち切られたわけではない。
映画館の探索後、そこに誰もいなければまた休息し、体力を回復させるのがいいだろう。

(でも、この傷は兄くんには見せられないね……)

生きて帰る事が出来たらその時は、魔術で肩の傷を消す事にしよう。
千影はふと、そんな風に思ったのだった。

14:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:37:04 iSjvj6Kj


15:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:37:40 iSjvj6Kj


16: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:38:06 bc1HQD2m
「誰もいないね……」
「ああ、メモも無いな……」

ほぼ同じ頃、高嶺悠人と衛の二人は映画館に到着し、工場を目指していたハクオロ達
三人が映画館に置いたというメモを探していた。
プラネタリウムで3人と別れてから襲撃者の乗った車を見た二人は、すぐさま瑛理子に
電話で事を伝え、自分達は三人が置いたメモを処分する為に、映画館に来たのだった。
しかし、ロビーに置いてあったというメモはどこを探しても見当たらず、やったことと言えば、
二回目の定時放送で流れた死者の中に知り合いがいないかということの確認ぐらいだった。

(なんてことだ。最初の時より死亡者が増えているなんて)

悠人は苛立ちを込めてそう呟いた。
放送前は、死者の数が多少は減っていてくれる事を期待したが、それは見事に裏切られた。
それに、読み上げられた名前の中にハクオロの知り合いであるアルルゥとオボロという二人の名前があったということ。

エスペリアの名が呼ばれたときは予め話を聞かされていたし、衛の姉妹の名前が無いことで安心していたが、
改めて名簿を読み返し、さらにプラネタリウムで聞いた三人の知り合いの名前も呼ばれたのを確認したのだ。

(順調に行けば、公園で三人と合流するけど心配だな)

悠人が心配するのは無論ハクオロのことに他ならない。
プラネタリウムで情報交換をした時はハクオロに「エスペリアを殺した相手を見つけたら殺すのか?」と問われたが、
知り合いを一度に二人も失った彼がその事実に耐えられるのかが気がかりだった。

聞いた話ではオボロというのはハクオロを「兄者」と慕う武人だったそうだが、アルルゥという子はまだ年端もいかない子供で、彼のことを「おとーさん」と呼んでたそうではないか。

17:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:38:20 w0emjlKc
 

18:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:38:36 iSjvj6Kj


19:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:39:06 w0emjlKc
 

20: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:39:16 bc1HQD2m

そんな子供までが殺し合いに参加させられ、すでに命を落としたという事実は衝撃でしかないだろう。

(二見さんや神尾さんが、ハクオロの事を支えてくれるならいいけどな)

まだ、彼ら三人と合流できない今の段階ではただ、そう祈るしかなかった。

そう考えていると、衛が声をかけてくる。

「悠人さん、ゴミ箱の中も見たけどやっぱりメモなんて無いよ。誰かがもっていったんだよきっと」
「ああ、そうだろうな。もう行くか……」

結局、そう結論付けるしかなかった。
メモは襲撃者が持ち去ったのだろうが、そうなるといよいよ工場に向かうのは危険である。
しかし、首輪を外すには工場にある様々な機械が必要というのが瑛理子の話だった。
公園での合流後次第だが、もし工場を目指すなら戦闘は必至となる。

それとも他に首輪を解析・無力化する手段があるのだろうか。

(自分の頭で考えても仕方が無い。この件は二見さんに聞いてみよう)

悠人は軽く頭を振ると、映画館へ入ったときと同じように警戒しながら出入り口に向かう。
が、わずかに扉を開けた時、外からこちらへ向かってくる足音が聞こえる。

「まずい!衛、一旦中に戻るぞ!」
「え?な、何?悠人さん?」
「こっちに人が来るんだ!早く!」

こちらへ来るのがもし、乗った人間だったら危険である。
すぐさま悠人は衛の手を引っ張り再度映画館内へと戻っていく。

千影が館内へ足を踏み入れたのはその直後だった。

21:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:39:38 iSjvj6Kj
 

22:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:40:24 iSjvj6Kj


23:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:40:37 w0emjlKc
 

24: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:40:38 bc1HQD2m
「来るな……」

そう呟いた悠人は、既にホールのいくつも並ぶ座席の一つに身を隠し、いつでも飛び出せるようにしている。
右手にはディパックから取り出した刀を握り締め、左手にはベレッタの1丁を手にしている。
ここまで手にしてきた今日子のハリセンは、お守り代わりとして腰にさしているが、いつまで電撃を放って
くれるか分からない為、今回は温存する事とした。

「悠人さん、無事でいてね……」

一方で衛は映画館のホールを見渡せるコントロール室に待機し、悠人の合図を待つ。
この部屋にはスクリーンに映画を映す映写機のほかにも館内の照明をコントロールする装置があり、悠人の
合図で室内にあるスイッチを片っ端からONにして照明を点灯させるつもりだった。

二人がそれぞれの場に待機している間にホールの扉が開く音がする。
どうやらこちらに向かって来るみたいだ。

「いるね。間違いなく……」

一方、侵入者である千影もまた警戒を怠らず、徐々に侵入する。
右手には“時詠”を構え、ゆっくりと暗いホール内を歩いていく。

(足音からして人数は一人か……こっちにまっすぐ向かってくるということは気付いてないということか)

足音を聞きながら、悠人は刀を握る手に力を込める。
その足音は徐々に大きくなり、こちらとの距離が狭まってくるのが分かる。
侵入者は暗さの為、シルエットしか分からないがどうやら女性のようだ。
右手には何か短剣みたいな武器を持っているのが分かる。

3メートル……2メートル……その距離が徐々に狭まっていく。

そして距離が1メートルを切った時、悠人は手にしていたベレッタの銃口を天井に向けて1発撃ち放った。

25:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:41:54 OdcPaT1U


26:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:41:59 iSjvj6Kj


27:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:42:42 w0emjlKc
 

28:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:42:52 iSjvj6Kj


29: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:43:05 bc1HQD2m
「銃声ッ!?」

直後に響く派手な音と天井への命中音、そして発砲時マズルフラッシュがいきなりの銃声により、思わず声をあげた
千影と隠れていた悠人の姿を一瞬照らし出す。

「うおおおおおおおおっ!」

そして、千影がその場を離れるより早く悠人が座席の間より飛び出す!
同時にホール内の照明が点灯し始め、二人の姿を照らし出す。
だが、千影はともかく悠人はそんなことお構いなしに肉迫していく。

「しまった!」

千影は“時詠”を構え、体勢を立て直そうとするが、それより先に勢いをつけた悠人の剣戟をさばき切れず、
再びバランスを崩す。

(体制は、立て直せない……。タイムアクセラレイトは……使えば今度こそ危険……ッ!)

そこまで思った時、遂に千影の手から“時詠”が弾き飛ばされた。
一方の悠人はまだ警戒を解いておらず、尻餅をついている千影に刀の切っ先を向けている。
肝心の“時詠”は数メートル先に飛ばされており、回収することは不可能だ。

千影は「もうここまでみたいだ」と思ったが、一向に次の一撃が来る様子は無い。
どうしたのかと千影が顔を上げてみると、目の前の男が口を開いた。

「悪いな、いきなり飛び掛ったりして……って、その髪型に服……君はもしかし」
「千影ちゃん!!」

男が最後まで言葉を言い終わるより早く、館内に声が響く。
二人が顔を向けると、そこにはいつの間にか上から降りてきた衛の姿があった。


30:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:43:48 w0emjlKc
 

31: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:44:16 bc1HQD2m
「衛!」
「まもる……くん」

そしてまた、衛の姿を認めた二人が声をあげるたのも、ほぼ同じタイミングだった。
衛はそのまま二人の方へ走り寄って来る。

「千影ちゃん……千影ちゃん!……よかった。無事でいてくれて……」
「衛くんも、無事でよかったよ……」

抱き合い、涙を流し再会を喜ぶ二人。
一方、それを見た悠人は、一歩間違えば衛の姉妹に傷を負わせたかも知れないことに冷や汗をかきながらも、二人の再会に安心した。

「よかったな、衛……」

心から二人の再会を喜ぶと共に、自分もアセリアを合流しなければという気持ちが強まる。
その一方で、二人が抱き合っている間に回収した“時詠”を目にする。

(間違いない、これは本物の永遠神剣第三位“時詠”だ……。どうやら力の制限がかかっているみたいだけど、
こんなものまであるなんて……。つまりはあの“献身”もレプリカではなく本物と考えた方がいいみたいだな……)

それなら“求め”や“存在”といった他の永遠神剣もこの島にあるんじゃないのかと思えてくる。
できる事なら“時詠”を持っていた彼女―衛の姉妹である千影―にこれを入手した経緯を聞きたいと思う。

32:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:44:20 iSjvj6Kj


33:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:44:54 iSjvj6Kj


34:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:45:26 w0emjlKc
 

35: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:45:32 bc1HQD2m
だが、そう思って悠人は考え直す。

(いや、今暫くは二人の再会を祝福してやろう。話は公園に向かう途中でも十分聞く事が出来るだろう)

そのとおり。
今、二人の間に水を差すのは野暮なだけだから―。


こうして、衛と千影は無事再会を果たした。
その再会は、脱出や主催者の打倒という事に比べれば小さな出来事に過ぎない。
とてもちっぽけで、ささやかな奇跡かもしれない。

しかし、当人たちにとってはこれ以上になく、とても重く大切な奇跡―。
それは紛れも無い事実だろう。

36:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:46:10 w0emjlKc
 

37:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:46:24 iSjvj6Kj


38:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:47:06 iSjvj6Kj


39: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:47:09 bc1HQD2m
【D-3 新市街・映画館/1日目 日中】

【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
     銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルトのみ残数80/100)、バナナ(フィリピン産)(2房)
     倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-】
【状態:左肩重傷(治療済み)、肉体的疲労大、魔力消費大、時詠使用による虚脱感、スカートに裂け目、精神的疲労小】
【思考・行動】
 基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。時詠の能力使用は極力控える
 1:衛くん……無事でよかった。
 2:咲耶を探し出して守る
 3:永遠神剣に興味
 4:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索
 5:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
 6:『時詠』を使って首輪が外せないか考える

40:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:47:48 iSjvj6Kj


41:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:48:05 w0emjlKc
 

42:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:49:06 iSjvj6Kj


43: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:49:54 bc1HQD2m
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※トウカの事は確実に信用できると評価しました。
※時詠を使用すれば首輪を外せるんじゃないかと考えています(ただし可能性は低いと考えています)
※千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。 但し魔力・体力の双方を消耗します。
 タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
 タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。
 他のスキルの運用は現時点では未知数です。
 詳しくはwiki参照。
 またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
※未来視は時詠の力ではありません。
※銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
 見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。
※倉成武のPDA
 情報携帯端末。簡単に言えばネット通信機能搭載の超小型パソコン。携帯電話も内臓されている。
 また、静電充電機能で身に着けて歩行などすれば充電可能。ちなみに完全防水である。
※ネリネを危険人物と認識しました

44:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:50:00 iSjvj6Kj


45:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:50:44 iSjvj6Kj


46:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:51:29 w0emjlKc
 

47: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:52:04 bc1HQD2m
【偵察チーム】
【思考、行動】
基本方針1:襲撃者の北上につき急遽予定変更。映画館へ立ち寄ったあと、北上しD-2エリアの公園に移動し首輪チームと合流。
基本方針2:映画館、学校、神社、新市街を経由して参加者の捜索、情報収集を行いながら15時までに工場へ。
ただし時間の経過によっては何箇所か立ち寄らずに、時間までに工場に着くことを優先。

思考1:映画館からD-2の公園へ移動し、ハクオロ達3名と合流。今後について話し合う
思考2:有益な情報を集める、特にタカノの事を知ると思われる4人を重視。また、可能なら鳴海孝之が持っているというノートパソコンを入手。
【備考】
※ハクオロ、観鈴、瑛理子と協力状態。
※北へ向かった車の襲撃者を警戒。探索はキャンセルし、映画館でメモの件を終えたら再度北上してD-2の公園にて三人と合流。
※D-2が禁止エリアに指定された場合は映画館、C-3北のスーパーで合流。
※工場にハクオロ達が居ない可能性も考慮。その場合レジャービル、プラネタリウムの順に移動。
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)
※島内部の電話が使える事を知りました(現在、レジャービルの電話番号を知ってます)。
※車の一団はゲームに乗った者が徒党を組んでいると思ってます。

48:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:52:35 iSjvj6Kj


49:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:52:46 w0emjlKc
 

50:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:53:31 iSjvj6Kj


51: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:53:42 bc1HQD2m
【高嶺悠人@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾14/15+1)】
【所持品:支給品一式×3、バニラアイス@Kanon(残り9/10)、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、
予備マガジン×7、暗視ゴーグル、FN-P90の予備弾、電話帳】
【状態:精神状態は普通、疲労軽程度、左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)】
【思考・行動】
基本方針1:衛と千影を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
0:衛、よかったな……。
1:北上した襲撃者を警戒。三人が心配。
2:アセリアと合流
3:咲耶や千影を含む出来る限り多くの人を保護
4:ゲームに乗った人間と遭遇したときは、衛や弱い立場の人間を守るためにも全力で戦う。割り切って容赦しない。
5:ネリネをマーダーとして警戒(ただし、名前までは知らない)。また、彼女がなぜ永遠神剣第七位“献身”を持っていたのか気になって仕方が無い。
6:地下にタカノ達主催者の本拠地があるのではないかと推測。しかし、そうだとしても首輪をどうにかしないと……
7:エスペリアを殺した相手を積極的に探すつもりはない、但し出会ったら容赦するつもりはない
8:涼宮茜については遙の肉親と推測しているが、マーダーか否かについては保留。

【備考】
※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
※衛と本音をぶつけあったことで絆が強くなり、心のわだかまりが解けました。
※上着は回収しました。
※レオと詩音のディパック及び詩音のベレッタ2丁を回収しています。
※遺体を埋葬、供養したことで心の整理をつけました。
※ハクオロとの会話でトウカをマーダーでないと判断、蟹沢きぬについては保留
※エスペリアを殺した相手を殺すつもりは(一応)ない
※原作の四章、アセリアルートから連れてこられた、アセリアはハイロゥが黒く染まった(感情が無い)状態だと思っている

52:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/07 00:54:24 iSjvj6Kj


53: ◆jWwIlynQcU
07/08/07 00:54:48 bc1HQD2m
【衛@Sister Princess】
【装備:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)】
【所持品:支給品一式、ローラースケート、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:精神状態は正常、疲労軽程度】
【思考・行動】
基本方針1:死体を発見し遙や四葉の死に遭遇したが、ゲームには乗らない。
基本方針2:あにぃに会いたい
基本方針3:これからは自分も悠人さんの支えになってあげたい
0:千影ちゃん、無事でいてくれてよかった……。
1:プラネタリウムで別れた三人が心配。
2:悠人の足手まといにならぬよう行動を共にする。
3:咲耶にも早く会わなきゃと思う。
4:ネリネをマーダーとして警戒(ネリネの名前までは知らない)。
5:鳴海孝之という人を悠人と共に探して遙が死んだことを伝える。


【備考】
※悠人の本音を聞いた事と互いの気持ちをぶつけた事で絆が深まりました。
※遙を埋葬したことで心の整理をつけました。
※瑛理子から、鳴海孝之の情報を得ました。
※TVカメラ付きラジコンカーは一般家庭用のコンセントからでも充電可能です。充電すれば何度でも使えます。
※ラジコンカーには紐でカッターナイフがくくりつけられてます。
※スーパーで入手した食料品、飲み物は二日程度補給する必要はありません。
※医薬品は包帯、傷薬、消毒液、風邪薬など、一通りそろっています。軽症であればそれなりの人数、治療は可能です。
※日用品の詳細は次の書き手さんにまかせます。

54:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:35:54 CZy09TGd

駐車場までなんとか車を移動させた北川は、辿って来た道を振り返ってため息をついた。
あの頭のおかしい男から逃げるときは無我夢中だったが、冷静になると逆に緊張して、同じようなハンドル捌きとはいかない。
未だ慣れない運転席から降りて車のボディを見ると、所々が歪んでいたり塗装が剥げているのが確認できた。
周囲を見渡すと、車のあった位置から駐車場に到着するまでにぶつけたガードレールや電柱が、殆ど黒く擦れているのが良く判る。
(あれ?)
と、その黒い傷を目で追っていて奇妙な違和感を覚える。
こういう状況で一度気になった事は、早いうちに手を打ったほうがいい。
北川はガードレールや電柱に近づいて黒い擦り傷に手を当てた。
「別にどこもおかしくない……よなぁ」
角度を変えて検証するが、どこにも不自然な点が見つからない。
しばらく駐車場を歩き回っていたが、結局なにも閃いたりしなかったため店内に戻ることにした。
放送が終わるまで掛かると思っていた車の移動も、意外と早く済んだのだ。
この違和感はひとまず保留にして、次の行動に移そう。
するべき事は終えたのだから、早く二人に合流したい。
ふと、エントランスに足を踏み入れた北川は、昨夜の出来事を思い出して背中が痒くなった。
あのレナと名乗る少女は放送で名前を呼ばれた。だから、脅威になることはたぶんもうない。
けれども、この狭いフロアで鬼ごっこした恐怖は簡単には抜けない。
(下手に怖がらせる必要はないし……梨花ちゃんにはもう少し黙っておくか)
一瞬エレベーターに乗ることも考えたが、少しばかり躊躇った後、階段を頼ることにした。
二階の踊り場に到着すると、梨花が窓際に望遠鏡を設置して真剣な表情で外を見ていた。方角的には新市街。
「なに見てるんだ?」
「!」
突然声をかけられ、目を大きく見開く梨花。
まさかそこまで驚くとは思っていなかったため、北川もつられて驚いてしまう。

55:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:37:56 CZy09TGd
「ビックリさせないで潤」
ほっと胸をなでおろす。自分にも非があると理解しているのか、文句を言う事はない。
一息入れると、梨花は視線だけで望遠鏡を覗くよう北川に促した。
要領を得ないが、真剣な彼女の視線は遊びでない事を物語っていた。
恐る恐る望遠鏡のレンズに目を重ねて、遠くの景色を眺める。
だが、そこに映っているのはただの街並みでしかない。
細心の注意を払って円状に写る景色を穴が開くまで見つめるが、どこにも異常が見当たらない。
「なあ梨花ちゃん」
「なに?」
「これって新市街の一角しか映ってないんだけど」
「ええ」
「ええ……って。これを見てたの?」
北川の問いに、梨花は真剣な表情のまま沈黙した。
やがて、小さな微笑を浮かべると風子の居る寝具コーナーへと足を向けて歩き出した。
歩き出す直前、北川の方を一瞬振り返り小さく呟いた。
「風子の所に戻りましょう。話はそれからよ」
その艶やかな視線にドキッとしながらも、北川は梨花の後ろに続いて足を進めた。



暫定的に集合場所として利用しているのは、レストラン街を抜けた家具コーナーの一角。
その中の寝具コーナーに向かうと、いつ目を覚ましたのか、小さなテーブルの上で風子が一心不乱に筆を走らせていた。
しかもどこから持ってきたのか、ご丁寧に12色のクレヨンを使い分けている。
そっと後ろから覗き込むと、描いているのは意味不明な線と丸だ。意味不明としか言い様がない。
だがそれより問題なのは、その筆を走らせていた媒体だった。
「俺の地図じゃん!」
風子が熱心に書き込んでいたそれは、どう考えても北川の地図に違いなかった。
その証拠に、地図の端に自分で走り書きしたメモが残されているのが判る。
第一梨花の地図は当人が管理しているし、風子の地図は何も書き込まれていない状態。
風子は北川の視線に気づくと、筆を止めて腕を組んだ。

56:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:41:07 CZy09TGd
「ああ北川さん。これが気になりますか?」
「……ああ。凄く気になる」
疲れた表情で投げやりに答える北川とは裏腹に、風子は得意げに地図を広げてみた。
「風子特製『DX人生ゲーム風子Ver』です!」
北川はもはや言葉が出てこない。
「ちなみに、優勝賞金は一億ペリカです」
誰もそんな事を聞いてもいない。
「これは地下帝国でのみ使える貴重な通貨なんですよ!」
興奮気味に熱弁する風子だったが、やはり二人とも聴いてなどいない。
そんな二人を置き去りにして、風子はこのゲームの素晴らしさを一生懸命説いた。
北川は疲れきった表情で生返事を繰り返し、梨花も風子の言葉を右の耳から左の耳へと聞き流す。
熱弁を止めることに労力を使うより、適当に相槌を打ったほうが得策だろうと考えたのだ。
その判断から、二人は早く風子が飽きるように思いつつ、空返事を続けていた。
「だから、一攫千金のため温泉に向かうのがミソなのです」
「はいはい」
「ですが、困ったことに入り口が二つしかないんです」
「はいはい」
「これでは一発逆転が難しくなってしまうんですよ!」
「はいはい」
「だいたい西口と南口があるのに、どうして東口と北口がないのでしょうか?」
「はいは―え?」
適当に聞き流していたはずの梨花だったが、突然疑問系で語られたことに驚いてしまう。
ここで今まで空返事でしたと悟られるのも面倒なので、興味があるように聞き返す。
「ごめんなさい。もう一度お願いしていいかしら」
「も~! ですから、どうして廃坑の西口と南口はあるのに、東口と北口がないのかという事です」
「廃坑?」
何か考え込む梨花とは対照的に、北川は呆れ顔で地図に指をさす。
「そんなのお前、島の西側と南側に位置するから記しただけだろ?」
「でもそれなら、風子的には北口と南口と記してくれた方が混乱しなくて済みます」
「だから、それだと格好悪いからそれっぽく記したんだろう?」

57:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:47:20 CZy09TGd
「やれやれ。北川さんにはロマンの欠片すらありませんね」
「くぅっ」
肩を竦めて、呆れる様に北川へと視線を投げかける風子。
一方の北川も、今までの経験上言い返しても無駄である事を悟ったのか、怒りを抑えてその視線を流す事にした。
ただ一人、梨花だけが難しい表情で地図と睨み合いを続けていた。
なにか問題が発生したのかもしれないと思い、北川は伺うように声を掛けた。
「梨花ちゃ―」
『参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら? 』
呼びかける北川の声を遮るように、第二回定時放送が流れ始めた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



『―この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』
鷹野の上からものを告げるような放送が終わり、梨花は軽いショックを受けていた。
(大石……)
引退寸前とはいえ、まさか現職の刑事が殺されてしまうとは思わなかった。
周囲に対する警戒心や判断力。単純な身体能力のどれをとっても優れた部類に入る。
そんな男ですら、この島では簡単に殺されてしまうということだろうか。
つまりそれは、赤坂とて例外ではないと言う事に繋がる。
それにもう一つ、死者の数が一回目の放送に比べて増えている事。
減っているならまだしも、増えているということは『殺人否定派』から『殺人肯定派』へと、
その立ち位置を鞍替えした者が居る可能性を秘めているのだ。
自分とて、絶対に殺人を犯さないとは言い切れない。
「じゅ―」
潤に声をかけようとして思い留まる。
彼の顔が普段から考えられないくらい硬直していたからだ。

58:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:47:28 7CMdOfWU
 

59:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:48:04 Ha9sSO4w
   

60:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:51:42 CZy09TGd
放送を聴くまでそんな顔はしていなかった。それが放送後にこうなった理由は一つしかない。
(そう……親しい人物が死んだのね)
詩音やレナを失った時、梨花は酷く取り乱したのをまだ覚えている。
今回はある程度覚悟していたのと仲間がいたという事で、混乱するまでには至らなかった。
だが、もし次に圭一と赤坂が呼ばれた場合、混乱しないという保障はどこにもない。
梨花は無意識内に潤へと視線を送っていた。
「梨花ちゃんは」
「え?」
俯いていた顔を上げ、寂しそうな表情で梨花を見つめる潤。
「知り合いがいたか?」
あえて『死』という単語は省き、淡々と用件を述べた。
「一人いたわ」
「そっか」
それだけ呟くと、潤は天井を見上げ大きく呼吸を吐いた。
自分より大きい背丈なのに、どうしてか小さく見えてしまう。
(ダメっ)
思わず立ち上がり、潤の袖を握り締める。
突然の事に驚いて梨花に視線を落とした潤だったが、ゆっくりと両手を自分の頬に当てると、力強く手の平で叩いた。
「!?」
「っつぅ~……」
頬を真っ赤にして目尻に涙を浮かべた潤は、子供のような顔で笑みを浮かべた。
「心配してくれてありがとな梨花ちゃん。でも、もう大丈夫だ」
「え?」
「今の放送で親友……みたいな奴が呼ばれちまってさ。結構ショック受けてた」
「ぁ」
「けどさ、復讐だのなんだの考える前に、そいつを慕ってた女の子達や風子や梨花ちゃんが心配になってさ」
その言葉が本音かどうかは不明だが、少なくとも潤の瞳からは復讐の二文字は読み取れない。
握っていた袖をゆっくりと離し、梨花は安堵した表情を浮かべた。
「潤は……」
「ん?」

61:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:51:59 7CMdOfWU
  

62:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:52:49 Ha9sSO4w
   

63:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:53:49 Ha9sSO4w
   

64:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:54:46 CZy09TGd
この男は刑事のように危険な事件などに慣れていない。
首輪を何とか出来るような天才少年でもない。身体能力も平均的な男子でしかない。
名探偵の様にどんな難事件でも解決できる明晰な頭脳の持ち主でもない。
それでも……それでもこの男の瞳は心の波紋を鎮めてくれる。
「潤は本当に女たらしね」
梨花は、この北川潤と言う男に出会えた事を心から感謝していた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「そうだッ! 俺なんかより風子だ!」
北川は梨花の「女たらし」発言で傷つきながらも、ずっと気になっていた風子に声をかけた。
あの放送の中に、風子が知り合いであると言う人物が呼ばれていたからだ。
だが、テーブルの向かいに座っている風子は、普段と変わった様子はない。
北川は心配そうに顔を近づけて声を掛けた。
「おい風子、大丈夫か!?」
「北川さん顔を近づけないで下さい。暑苦しいです」
もしかして、座ったまま気を失ったのではないかと心配して顔を近づけたが、見事にそっぽを向かれた。
さすがにこれは予想外の反応である。呆然とする北川を無視して、風子は立ち上がるとベットへ足を進めた。
「おまっ、平気なのか?」
あまりにも冷静過ぎるその様子は、北川に不安を抱かせるのに十分だった。
本当に平気か確かめるため、なんとか寝かせない様にベットの前で通せんぼする。
「何がですか?」
「何ってそりゃ……」
口にして良いものか悩む。事情が解っていない梨花も、北川が何を言いかけているかは分かった。
三人の間に、微妙な沈黙が訪れる。
「北川さん。梨花ちゃん。一つ質問しましょう」
「な、なんだ?」
「私も?」

65:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:56:37 7CMdOfWU
   

66:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:58:06 Ha9sSO4w
   

67:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 10:58:51 Ha9sSO4w
   

68:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 10:59:17 CZy09TGd
沈黙を破った風子は、二人に対して偉そうな態度で質問を投げかけた。
「風子達は死体に遭遇しましたか?」
突然そんな事を聞かれ、虚を突かれたような表情を浮かべる二人。
殺し合いに乗っている人間ならば遭遇したが、確かに死体と遭遇したことは無い。
「俺は……無いけど」
「私も一応」
「風子もありません」
自信満々に言うが、北川には風子がなにを言いたいのかサッパリ理解できなかった。
「実際に見ていない以上、風子は放送なんて信じません」
「それは―」
勢いに任せて「事実から逃げているだけだろ」と言いかけるが、梨花がそれを遮る。
「どうしてそう思うの?」
梨花の問いに、風子は自信満々に答えた。
「風子が信じる事に間違いが無いからです。えっへん」
「信じる……か」
梨花は、その言葉を何度か繰り返し呟いた。
確かに前向きと言えば聞こえがいいが、北川には放送こそが真実と直感で気付いていた。
仮に死んでいないのだとしたら、今まで名前を挙げられた人間はどう思うだろう。
すでに半分に届きそうな数が、放送で読み上げられている。
単独行動しているならまだしも、集団で行動していて、その内の一人だけ読み上げられたら不自然だろう。
それが島に居る参加者を煽る手段であるとしても、すぐにバレるのは時間の問題。
だから、北川は呼ばれた人物は死んでしまったと結論付けている。
(けれど、今はそれでもいいかもしれないな)
言い方は悪いが、どう理由であれ泣き喚くよりもマシだ。
問題は今後誰かの死体を発見してしまう事だが、ここから動かない限りそれはない。
色々考えた末、北川は下手に突っつかずに静観する事を決めた。

69:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:01:03 7CMdOfWU
    

70:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:03:04 CZy09TGd
「そういえば、放送の前に梨花ちゃんは何を言おうとしてたんだ?」
決めた以上、その話題を長引かせるより、新たな話題を作るべきだ。
それに、踊り場でのやりとりもまだ答えてもらっていない。
梨花は禁止エリアを書き留めた地図を手に取ると、席を立ってどこかにいってしまった。
「ついてきて」
「え、ちょ」
テーブルで舟を漕ぐ風子を置いて、北川は梨花の後に続いた。
目的地に向かいながら、梨花は何気ない質問を投げかけた。
「潤。貴方の家に電気やガス。それに水道は来ていたかしら」
「来てたか……って、そりゃ来てるよ」
「水道はどこから?」
「えっと、浄水場から管を通って家に来てたはず」
「ガスは?」
「ガスは定期的にガス販売の人が来てた気がする」
「なら電気は?」
「電気なら、発電所から電線を伝って家に届いてたぞ」
最後の問いの答えが出ると同時に梨花は足を止めた。辿り着いた場所は、望遠鏡のあった踊り場だった。
「そう。その答えを頭に置いて、もう一度この景色を見て頂戴」
意味が解らなかった。この望遠鏡はつい先ほど見たばかりだ。
まさか、この十数分程度で景色が様変わりなどという馬鹿げた事はないはず。
けれども、梨花は先ほどと同じように真剣な表情のままだ。からかっている様子はどこにも無い。
どちらにせよ、覗けば全て判るのだ。意を決して、北川は望遠鏡に目を合わせた。
予想はしていたものの、その景色は先ほどとまったく同じものだった。
いつの間にか隣に立った梨花が、小さな声で呟く。
「潤……どこかおかしくないかしら?」
「そう言われてもなぁ」
「さっきの最後の質問。答えは何だったかしら」
そこに来て、初めて梨花の伝えたかった正体が理解できた。

71:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:03:32 Ha9sSO4w
   

72:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:05:40 Ha9sSO4w
   

73:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:06:34 CZy09TGd
新市街の街並みの中、一定の距離で配置されている電柱。しかし、その電柱と電柱の間には―
「電線が……ない?」
「ええ。私も外を警戒するために見ていたんだけれど、ちょっとしたきっかけで違和感に気付いたの」
そこで北川は駐車場での違和感を思い出す。
あの違和感は車でつけた黒い傷にではなく、その上のほうに位置する電柱の先端から感じていたのだろう。
近づいたら気にならなくなったのも、おそらくは視界から外れたため。
その事実を頭に置いて再びレンズを覗くと、その違和感がハッキリ見て取れた。
一度気付いてしまうと、この気持ち悪い感覚から逃れられないらしい。
(あれ、でも電気は来てるよな)
電線は見当たらないが、電気が供給されている。
もしかしたら、百貨店のどこかで自家発電をしているのかもしれない。
その事を告げる前に、梨花はさっさと風子のもとへと歩き出してしまう。
「あ、おい」
今日は梨花の尻を追いかけてばかりだと思いつつ、北川は梨花の後を付いていった。



     ◇     ◇     ◇     ◇



(思わぬ所でヒントを得られたわね)
風子のもとに向かいながら、梨花は地図を睨んでいた。
バラバラに砕かれた正解に嵌るピースは、確実に揃い始めている。
けれども、これだけではまだ少な過ぎる。行動に移すのはもっと情報を集めてからだろう。
些細なきっかけでも欲しい梨花は、頭の中で考えていた事を口から漏らした。
「もし潤がこの殺し合いを『させる側』だったら、禁止エリアはどうする?」
「どうするって……え~っと、俺だったら反乱に利用されそうな場所を優先的に潰すかな」
「そうね。私も同じ意見よ。けれど見て」
隣を歩く潤に、すでに禁止エリアにされた場所と、今後禁止されるエリアを見せる。
「何もないな」
「ええ。ちょっとした民家や建物はあるかもしれないけれど、地図で示されるような特殊な施設や建物は一つもないの」

74:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:09:38 Ha9sSO4w
   

75:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:10:34 7CMdOfWU
  

76:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:11:44 CZy09TGd
梨花の言葉に、潤は何か閃いたのか、自分なりの意見をそっと述べる。
「う~ん。例えば、他の参加者が集まり過ぎてたとか」
「殺し合いをさせるのに、わざわざ散らすかしら」
「そこにいた全員が反抗的だったとか」
「可能性は否定できないけど、それなら禁止エリアから全員で移動されたら終わりじゃないの?」
「むむむ」
出す案が即効で言い負かされて、潤は両手を突き上げギブアップのジェスチャーを見せた。
頃合良く寝具ルームに到着したため、二人はいったん会話を打ち切る。
荷物を置いた場所まで行くと、風子はすでにテーブルに突っ伏して眠りこけていた。
緊張感の欠片も無いことは、口元から垂れている涎が物語っている。
そんな風子を無視して、二人はテーブルを挟んで会話を再開した。
「この禁止エリアの謎……ある仮定を当てはめれば納得がいってしまうの」
「仮定ねぇ。例えばどんな?」
「例えば、その場所には『地図に記されていない何かがある』とか」
「あいつらが地図には記さなかった場所って事か」
風子のデイパックの中から、派手に塗り潰された地図の裏面が出てきた。
それは、潤の地図を無断で拝借し、カラフルに書き換えられた風子特製の人生ゲームだ。
「風子の言ってた事、覚えているかしら」
「あー、なんとなく」
梨花は頷くと、地図の中の廃坑の入り口を手の甲で叩く。
「この二つの他に入り口があるんじゃないかって事」
「おお。確かそんな感じだったな」
「で、ここからが本題……見てて」
梨花は南口から北に向かって器用に直線を引く。
続けて、西口から東に向かって直線を引いた。
「あ」
何度か角度を変えて交わっているうちに、遂に禁止エリアとぶつかる。
「仮定でしかないけれど、可能性はゼロじゃないわ」
もちろん、この考えが間違っている可能性のほうが高い。
「けれど、あの電線や廃坑。禁止エリアの意味する所が、なぜか重なって見えるのよ」
「なら、早く確認しないと!」
「駄目よ」

77:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:12:33 Ha9sSO4w
   

78:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:13:21 CZy09TGd
立ち上がる潤と違い、梨花の重い腰はあがる事は無かった。
「私達がどんな行動に移るにしても、三人では人数が少な過ぎるわ。
  この拠点を捨てずに、かつ島を探索出来るくらいの人数が欲しいの」
「……」
その言葉に、潤は飛び出しそうな勢いを抑える。
「まずはこの拠点に罠を仕掛けましょう。私は風子と罠を製作するから、潤は使えそうな資材を持ってきて」
「そうだな……」
気持ちを切り替えたのか、潤はやる気に満ちた表情で拳を握った。
「待つしか出来ないなら、やれる事から始めるとするか!」



     ◇     ◇     ◇     ◇



それから数十後、北川達は拠点を寝具ルームから二階の第二守衛室へと移していた。
一階の第一守衛室という案もあったが、万が一来た人物に敵意があった場合の事を考えて却下された。
たとえ設備が整っていても、逃げるには慌し過ぎるのが主な理由だ。
そこで、設備は劣るが防犯扉と監視カメラが備えてある二階の守衛室が繰り上げ当選されたのだ。
部屋で罠を製作する梨花と風子のために、北川は百貨店を走り回って使えそうな物を集めて回っていた。
そして、現在北川がいるのは……非常に危険な場所だった。
(俺の命もここまでか)
目の前に迫る四本の脅威を必死に回避しつつ、北川はどうしてこうなったか思い返す。
少し前までは前向きな展開ばかりで、今回はきっとこれで終わるだろうと油断したのが甘かったのか。
―それは、数分前の出来事だった。




79:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:13:58 Ha9sSO4w
   

80:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:14:43 7CMdOfWU
     

81:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:18:11 CZy09TGd
一階で適当に資材を見繕っていた北川は、階段を往復するのに嫌気がさしていた。
そこで目に付いたのは、今まで使っていなかったエレベーターである。
あれだけ嫌な予感がして避けていたのだが、楽をしたい気持ちが優先され乗り込んでしまったのだ。
箱に乗って二階のボタンを押すと、エレベーターはゆっくりと動き出す。
そして、出入り口の上で点灯する『1』という文字が『2』に変わった瞬間事件は起きた。
エレベーターは突然停止し、明かりも消えてしまったのである。
「うわ、予想はしてたけどやっぱりかよ」
うな垂れつつ、並んだボタンの中から緊急用のボタンを発見し力一杯押し付ける。
だが、ボタンは軽い音しか鳴らず、どう見ても作動したようには見えなかった。
「って事は、やっぱりアレか」
泣きそうな表情で天井を見上げる。視線の先には緊急用の脱出口が備わっていた。
楽をするどころか、とんだ災難である。
とりあえず堅くて安定した資材を土台にして、北川は天井の脱出口から抜け出した。
だが、箱の屋根によじ登ったものの、残念ながら二階のドアには手が届かない。
どこか出られそうな場所はないかと周囲を見渡すと、足元の緊急避難通路が目に付いた。
「他に出られそうな場所もないしなぁ」
諦めた表情で避難通路の網を外す。中は暗いものの、四つん這いで進めば通るのは可能なようだ。
黙々と通路を前進していくと、三方向に別れる分岐点に差し掛かる。
北川は守衛室の位置を必死で思い出して、おそらくこの方向だろうと言う通路に体をねじ込んだ。
しばらく進んでいくと、ようやく頭上から光が漏れている場所に到達する。
(よかったぁ~)
光が漏れているという事は、この上に位置する場所は、少なくとも北川達が通った場所だという証明になる。
早く出たい気持ちが先行していた北川は、深く考えずに頭上の蓋を開けてしまう。
暗い場所から飛び出した北川の、一番最初に写った光景は幼女の生足だった。
(避難通路の長いトンネルを抜けると天国であった。視界一面が絶対領域になった)
著名な作家の一節が北川の頭をよぎる。
(って、まてまてまて!)
目の前に迫る可愛らしい太ももに目が釘付けになりながら、北川はパニックになりかけていた。

82:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:18:51 7CMdOfWU
  

83:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:19:14 Ha9sSO4w
   

84:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:20:20 Ha9sSO4w
   

85:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:21:03 CZy09TGd
「ん?」
生足の主が何かに気づいたのか、体を屈めテーブルの下を覗こうとしている。
(まずッ!)
反射的に、北川は蓋を頭に乗せて避難通路へと身を隠した。タッチの差で発見されるのを回避できたようだ。
だが、よくよく考えてみると、身を隠した事は余計誤解を招いてしまう事に気付き後悔する。
(なんで隠れたんだ俺……)
やましい所は無いのだから、素直に事情を話せばよかった。
けれども、あの眼前に迫った絶対領域は、そんな冷静な判断すら奪い去ってしまうらしい。
(落ち着け俺。KOOLだ……素数を数えてKOOLになるんだ潤!)
どこかで見た漫画を思い出し素数を数える。
が、その度に目に焼きついた太ももが頭から離れない。
(そうだ! 脳内で妄想……じゃなくて、想像するから美化されるんだ。現実を見ろ潤!)
意を決して、もう一度蓋を開ける。今度は音を立てないよう静かに頭を突き出した。
(ふ、太ももが四つになってる)
黒と白の太ももは、北川の想像を遥かに超える代物だった。
太ももの主達は、足元に北川がいることを知らずに無防備な体勢で話を続ける。
「それにしても、潤は遅いわね」
「まったく。どこで道草を食っているのでしょう」
喋るたびに腰を動かすためか、そのさらに奥が見えそうで見えない。
危険だと理解しつつも、北川は血眼になりながらその奥を覗く。
もっと近くで見ようとした瞬間、白い方のふとももが体勢をずらす。
それと同時に床に何かが落ちる音がした。
(こ、これは!)
それに気付かないほど、眼前に広がる新たな景色は北川を虜にしていた。
「潤」

86:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:22:02 CZy09TGd
(ああ、梨花ちゃんって意外と……)
「潤」
(風子は年相応というか、それはそれで素晴らしかったが)
「潤」
(梨花ちゃんのは……こう、幼い姿に似合わないアンバランスな)
「潤」
(だが、それがいい!)
「……潤」
肩を叩かれてようやく気付いた。
北川の眼前にあるのは、大人びた景色でなくこめかみに青筋を立てた梨花の顔。
「あ、いや、その……梨花ちゃんってさ」
「なにかしら」
「意外とセクシーだ―」
「寝てなさい」
親指を立て爽やかに褒め称える北川を、梨花は容赦なく踏み潰した。



     ◇     ◇     ◇     ◇




87:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:23:14 Ha9sSO4w
   

88:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:23:58 7CMdOfWU
  

89:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:25:15 CZy09TGd
北川が折檻されている際、風子は眠いからという理由でその場を離れていた。
守衛室に備えてあったベットに潜り込みながら、小さく息を漏らす。
(第二回の放送に到達できませんでしたか)
二人にはああ言ったが、風子は生きているとは微塵も思っていなかった。
岡崎の事は辛いが、泣き叫べば蘇る訳ではない。
だからと言って、復讐するつもりなど絶対にない。
それがどんな悲劇を引き起こすかは『前回』で痛いほど理解していたから。
部屋の隅で怯える北川と、鬼の形相でお仕置きをする梨花を見つめながら、今まで見せた事のない緊張した表情を浮かべた。
(ちょっと喋りすぎでした。風子はもっとお馬鹿でないといけませんね)
この島に連れて来られた時から決めていた。普通の伊吹風子でいようと。
連れて来られて気付いたが、鷹野と言う女性は風子について特別なにか行動を起こすことはなかった。
それはつまり、あの女でさえ風子が二度目の参加者だと言う事実を知らされていないかもしれないと言う事だ。
だから下手に名乗り出ずに、事情を知らない一人の少女として振舞ってきた。
余計なことは口出さないつもりだったし、能動的な行動を起こすつもりもない。
ただ、北川や梨花が危険な事態になった時だけは、能動的になろうとも考えている。
そんな心情を悟られないために、風子はギリギリまで『天然で自己中心的な伊吹風子』を演じなければならない。
(ごめんなさい北川さん。梨花ちゃん。風子は悪い子です)
何も言えない事を心で詫びつつ、風子は固い決意を胸に誓った。
(今度こそ、風子は『仲間』と一緒に元の世界に還ります)
心に潜む『伊吹風子』を丁寧にしまい、今まで通りの『伊吹風子』を体に馴染ませ、浅い眠りに落ちていった。






【A-3 百貨店二階第二守衛室/1日目 日中】




90:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:26:49 Ha9sSO4w
   

91:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:28:04 Ha9sSO4w
   

92:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:28:20 7CMdOfWU
  

93:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:29:51 CZy09TGd
【北川潤@Kanon】
【装備】:コルトパイソン(.357マグナム弾6/6)、首輪探知レーダー、車の鍵
【所持品】:支給品一式×2(地図は風子に奪われまたまま)、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)
     ノートパソコン(六時間/六時間)、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7
【状態】:お仕置き中
【思考・行動】
基本:殺し合いには乗らない。というかもう乗れねーつーの!
0:ゆ、ゆるじで梨花ぢゃん……
1:百貨店内の探索&トラップ
2:信頼できる仲間が来るのを待つ
3:百貨店を拠点とし、風子と梨花を守る
2:水瀬名雪や信用できそうな人物を捜索したいんだけど、二人(風子達)をわざわざ危険に晒すわけにもいかないからなぁ
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:鳴海孝之(名前は知らない)をマーダーと断定
5:またか!また『童貞男』なのか!
【備考】
※チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明。
※チンゲラーメンを1個消費しました。
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーが人間そのものを探知するのか、首輪を探知するのかまだ判断がついてません。
※車は百貨店の出入り口の前に駐車してあります。(万一すぐに移動できるようにドアにロックはかけていません)
※車は外車で左ハンドル、燃料はガソリン。
※一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスは割れ、右側面及び天井が酷く傷ついています。
※梨花をかなり信用しました。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。
※ノートパソコンの二回目の新機能は確認していません。
※幼女に目覚めました

94:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:31:31 Ha9sSO4w
   

95:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:31:39 CZy09TGd


【伊吹風子@CLANNAD】
【装備】:無し(コルトパイソンは潤に預けたまま)
【所持品】:支給品一式、猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、赤いハチマキ(結構長い)、風子特製人生ゲーム
【状態】:健康。満腹
【思考・行動】
0:今まで通り『伊吹風子』を演じる(受動的)
1:Zzzzzz…
2:北川さんは風子がいないと本当に駄目ですね。やれやれです
【備考】
※状況を理解していないように装っています
※どれだけの知識や経験があるかは、後の書き手さんにお任せします
※北川をかなり信用。梨花も信用しています。



96:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:32:33 Ha9sSO4w
   

97:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/08 11:33:29 7CMdOfWU
 

98:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:33:34 CZy09TGd
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備】:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に 祭
     ヒムカミの指輪(残り2回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
     紫和泉子の宇宙服@D.C.P.S.
【所持品】:支給品一式
【状態】:頭にこぶ二つ。北川をお仕置き中
【思考・行動】
基本:潤と風子を守る。そのために出来る事をする
0:このロリコンめ!
1:捜索、トラップ仕掛けを潤と一緒に始める(風子のトラップ技術を評価)
2:百貨店に誰かが来るのを待っている
3:取り敢えずは潤達と一緒に居る
4:もしも(別の仲間が入る等して)自分がいなくても潤達が安全だと判断出来たら、一人で圭一達を探しに行く(D-2へ)
5:死にたくない(優勝以外の生き残る方法を見付けたい)
【備考】
※皆殺し編直後の転生。
※ネリネを危険人物と判断しました。
※探したい人間の優先順位は圭一→赤坂の順番です。
※北川と風子をかなり信用しています。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。

※ヒムカミの指輪について

ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
ビジュアルは赤い宝玉の付いた指輪で、宝玉の中では小さな炎が燃えています。
原作では戦闘中三回まで使用可能ですが、ロワ制限で戦闘関係無しに使用回数が3回までとなっています。



99:童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s
07/08/08 11:34:30 CZy09TGd
※紫和泉子の宇宙服について

紫和泉子が普段から着用している着ぐるみ。
ピンク色をしたテディベアがD.C.の制服を着ているというビジュアル。
水に濡れると故障する危険性が高いです。
イメージコンバータを起動させると周囲の人間には普通の少女(偽装体)のように見えます。
朝倉純一にはイメージコンバータが効かず、熊のままで見えます。
またイメージコンバータは人間以外には効果が無いようなので、土永さんにも熊に見えると思われます。
(うたわれの亜人などの種族が人間では無いキャラクターに関して効果があるかは、後続の書き手さんにお任せします)


宇宙服データ
身長:170cm
体重:不明
3サイズ:110/92/123


偽装体データ
スレンダーで黒髪が美しく長い美人
身長:158cm
体重:不明
3サイズ:79/54/80

100:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:19:48 teeJ8ptM
住宅街の一角で、未だ周囲に立ち込めているドス黒い煙。
焼け焦げた肉より放たれる、酷く吐き気を催す悪臭。
激戦の傷痕が深く刻み込まれた地で、状況説明を受けた前原圭一は苛立たしげに声を洩らす。

「クソッ! 武さん、一体どうしちまったんだよ……っ」

先の死闘で、自分達は堅い信頼関係を活かして咲耶を打倒し、難敵佐藤良美すらも撤退せしめた。
倉成武は窮地に陥っていた自分を救ってくれたのだ。
その武が突如暴走し、事もあろうに手榴弾まで投げつけてきたと云う事実は、圭一に大きな衝撃を与えていた。

(焦るな……クールになれ、前原圭一!)

圭一は奥歯を噛み締め、ともすれば溢れ出しかねない感情の奔流を必死に抑え込む。
否定したかった。
武が仲間に攻撃を仕掛ける筈が無いと、全力で声を張り上げて主張したかった。
だが出会ったばかりの白鐘沙羅はともかく、遠野美凪が嘘を吐くとは考え難い。
それに何より焼け焦げた大地の惨状が、此処で爆発があったという事実を証明している。
今は目の前の現実を認め、的確に対処しなければならない時だ。

「ク……こうしちゃいられねえ! 早く武さんを探しにいこう!」

武を捜し出し、凶行の理由を聞き出す―それが圭一の判断だった。
だが駆け出そうとした圭一の後ろ手を、しっかりと沙羅が掴み取る。

「ちょっとアンタ、落ち着きなさいよ! 何処に行ったのかも分からないのに、無駄に走り回ってもしょうがないでしょ!」
「っ…………」

沙羅の言葉に対し、圭一は何の反論も返せなかった。
事実自分達は武を完全に見失っており、今何処に居るかまるで把握出来ていない。
そんな状況で闇雲に捜し回った所で、悪戯に体力を浪費するだけなのは明白だった。
圭一は今度こそ頭を冷やし、一つの結論を弾き出す。

101:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:21:45 teeJ8ptM

「なら最初の予定通り神社に向かおう。俺達は、殺し合いに乗った土見禀を止めなくちゃいけない」
「倉成さんはどうするんですか?」
「……行き先が分からない以上、今は探しても仕方無い。神社で合流出来る可能性に賭けよう」
「……分かりました」

不安の種は尽きぬものの、まず神社に向かうという方針で一致する美凪と圭一。
だがそこでまたも沙羅が制止の声を上げる。

「それは危険なんじゃないの? 武は、圭一達が神社に向かおうとしていたのを知っている……。
 もし武が殺し合いに乗ってるなら、待ち伏せされる可能性があるわ」
「な―! 武さんがそんな事する訳……」
「―無いとは言い切れない、でしょ? 私と美凪は実際に攻撃されたんだから」

仮にも探偵助手、予測可能な不安要素は決して見逃さない。
圭一の言葉を途中で遮り、己の心に沸き上がった疑心を吐き出す沙羅。
自分は何もしていないにも関わらず、問答無用に手榴弾で攻撃されたのだ。
運良く無傷で済んだものの、一歩間違えれば殺されてしまっていたかも知れない。
そのような蛮行に及んだ武など、信用出来る筈も無い。
同じ目に遭った美凪もまた、沙羅の言葉を否定出来ないまま俯いている。
だがそんな二人の疑心を吹き飛ばす程の勢いで、圭一は心の奥底から思い切り叫んだ。

「違う――そんな風に考えちゃ駄目だ!! 武さんは殺し合いに乗ったりしない!!!」

圭一の心より溢れ出る怒号が、周囲一帯の空気を振動させる。
その凄まじい剣幕、凄まじい語気を目の当たりにし、思わず沙羅は息を呑んだ。

「いきなり攻撃された沙羅が、武さんを疑いたくなるのも無理は無いさ。でも……それでも!
 皆で力を合わせなきゃ、この殺し合いは止められない! 信じるのは難しいけど、信じなきゃ始まらないんだッ!!」


102:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:23:37 VGUJODsI


103:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:23:53 teeJ8ptM

それはループ世界での経験による恩恵か、もしくは彼自身が元より持ち合わせていた資質なのか。
美凪ですら疑心を捨て切れぬ今も尚、圭一は武を―仲間を信じようとしていた。
そして圭一の言葉は子供のような主張にも聞こえるが、道理が通っている部分もある。
実際問題この殺人遊戯を覆すには、出来るだけ多くの戦力が必要となるだろう。
その為には、己の内に巣食う猜疑心を捨て去らなければならないのだ。
迸る想いを真正面より向けられた沙羅は、呆れたかのような溜息を洩らす。

「はあ……分かったわよ。しょうがないから、アンタのやり方に付き合ってあげる」

未だ武への疑惑が晴れた訳では無いが、今の圭一を説得するのは不可能だろう。
それに何より―何処までも純粋な圭一の想いが、自分もまた人を信じてみようという気にさせる。
親しい人間を殺し尽くされてしまった自分にすら、そう思わせる。

「そうと決まったら、こんな所でグズグズしてても仕方無いよね。急いで神社に行こう」
「……サンキュー、沙羅」
「お礼なんて要らないわ。ほうもう、早く車に乗って!」

ぶっきらぼうな言葉を返す沙羅だったが、その表情は心無しか柔らかくなっている。
それは沙羅が、圭一を仲間として認めた証なのかも知れない。
沙羅達は手早く荷物を纏め、出立の準備を整えた。
まず最初に沙羅が運転席へと乗り込み、遅れて美凪と圭一が車の後部へと移動する。

「救急車なんて運転した事無いけど……何とかやってみる。圭一と美凪は後ろで休んでていいわよ」
「おう、悪いな」
「……ご苦労様で賞、進呈します」

特殊車両の操縦経験がある者など居ないのだから、誰が運転しても大差無いだろう。
故に運転は五体満足である沙羅が請け負い、疲労の色が濃い圭一達は後部座席で休憩するという形になった。
沙羅が慎重にアクセルペダルを踏み込むと、救急車はゆっくりと動き出した。

「ふう……ちょっと疲れたな……」

104:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:24:38 VGUJODsI


105:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:25:33 teeJ8ptM

戦場を離れた事でやっと緊張が解けたのか、圭一は珍しく弱音を零す。
それも仕方の無い事だろう。
思えば第一回放送以降、緊張と戦いの連続だった。
佐藤良美と二度に渡る激闘を行い、病院では土見稟の襲撃を受けた。
その全てを仲間達とのチームワークで乗り切ったものの、流石に無傷という訳にはいかなかった。
ナイフで刺され銃弾で貫かれた左肩は酷く痛み、全身の至る所には細かい傷が刻み込まれている。
限界寸前まで酷使された圭一の身体は、満身創痍と表現するに相応しい状態なのだ。

圭一が憔悴し切った表情を浮かべていると、すぐ横から優しい声が聞こえてきた。

「……大丈夫ですか、前原さん? お疲れのようでしたら、もう少し眠りますか?」
「―遠野さん」

振り向いた圭一の目に飛び込んできたのは、気遣うような視線を送ってくる美凪の姿。
だが良く注視すれば美凪もまた、疲弊の色を隠し切れぬ様子となっている。
それは何故か―考えるまでも無く、先の戦いで名雪との激闘を繰り広げた所為だろう。
美凪は、圭一の周りには居なかったタイプの女の子。
底無しに優しい、お世辞にも戦いに向いているとは言えぬ女の子なのに、それでも懸命に戦ってくれた。

(こりゃヘコたれてる場合じゃないな……。こんなトコをレナや魅音に見られたら、絶対怒られちまう)

そうだ―こんな時こそ男である自分が、周囲を元気付けてやらねばならないのだ。
圭一は己の心を強引に奮い立たせ、にこりと笑ってみせた。
そのままおもむろに手を伸ばし、美凪の艶やかな髪を無造作に撫で回す。

「平気平気。遠野さん、いつも心配してくれて有り難うな」
「え、あの……っ!?」

予期せぬ圭一の行動を受け、美凪は見る見るうちに頬を紅潮させてゆく。
圭一はその事に気付かぬまま、続けざまに口を開く。

106:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:26:41 VGUJODsI


107:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:27:22 VGUJODsI


108:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:27:27 teeJ8ptM

「俺、この島に来てから何度も遠野さんに助けられた。レナや詩音が死んだ時も、遠野さんのお陰で立ち直る事が出来たんだ。
 改まって言うのも何だけど、本当に感謝してる」
「……前原さん」

嘘偽りの一切無い純真な言葉が、疲弊した美凪の心を癒してゆく。
髪の毛越しに伝わる圭一の体温が、美凪の心を暖めてゆく。
美凪は圭一の手を優しく握り締めて、言葉一つ一つの意味を噛み締めるように、ゆっくりと想いを伝える。

「……私だって何度も前原さんに助けられました。
 突然殺し合いを強要されて……それでも前原さんが居てくれたから、これまで生きてこれました。
 だから、感謝してるのは私も一緒です」

殺人遊戯の開始以来、ずっと行動を共にし続けてきた二人。
その道中で二人はお互いに支え合い、庇い合い、信頼を深めていった。
今や圭一も美凪も互いに対して、仲間と云う枠組みを超越した感情を抱きつつある。

「…………」
「…………」

二人は顔を赤らめたまま、それでも笑顔を浮かべて見つめ合う。
互いの手を取り合い、様々な想いが籠められた視線を交錯させる。
それは傍目から見ればきっと、仲睦まじい恋人同士のように映るだろう。

だが―そこで圭一はある事を思い出し、運転席の方へと身体を動かした。
疑問の表情を浮かべる美凪を余所に、圭一はゆっくりと右手を伸ばし、運転中の沙羅の頭を撫で回す。

「沙羅も有り難うな。出会ったばかりなのに、もう何回か助けられちまった」
「ちょちょちょ、ちょっと圭一!? うう、運転中にそんな事したら危ないよ!」
「あ……そうだな。悪い悪い、運転に集中してくれ」

109:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:29:07 VGUJODsI


110:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:30:52 teeJ8ptM

感謝の気持ちを伝えるのは大切な事だが、それが原因で事故を引き起こしてしまっては元も子もない。
運転の邪魔をするのは不味いと判断し、圭一はすぐに手を引き戻した。
再び視線を後方に向けると、そこでは何故か美凪が不機嫌そうな顔をしていた。



土見稟を止める為に、武との再会を果たす為に、神社へと向かう圭一達。
だが圭一達は知らない―武は未だ住宅街で気絶しているという事実を。


 ◇  ◇  ◇


多くの命が散った惨劇の地に、今尚留まり続ける一つの影。
血染めの巫女装束を纏った少女―佐藤良美は足音を押し殺し、住宅街を慎重に進んでいた。
民家の塀を存分に利用し、身を隠しながら目標地点に近付いてゆく。
良美の耳に爆発音が届いたのは、約二十分程前の出来事だった。
聞こえてきた方角、場所は、先程圭一達と一戦交えた地点の辺りだ。

(圭一君達どうしちゃったのかな? 誰か新しい襲撃者が現れたのかな?
 それとも―仲間割れしちゃったのかな?)

可能性は幾つか考えられるが、いずれにせよ爆発音が圭一達に関係しているのは確実。
これは自分にとって、またとない絶好のチャンス。
人数の面では圧倒的に不利だが、今の圭一達はこれ以上無い程に消耗し切っている筈。
そこを漁夫の利の形で急襲すれば、労せずして殲滅する事が出来るだろう。

(待っててね、圭一君。まだ死んじゃ駄目だよ……貴方は私が殺すんだから)

111:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:31:47 VGUJODsI


112:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:33:03 VGUJODsI


113:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:33:10 teeJ8ptM

間もなく訪れるであろう再戦の時に思いを馳せ、良美は凄惨に口元を吊り上げる。
全てを失った良美にとって、未だ仲間と行動を共にする圭一は許し難い存在だった。
自分はもう二度と幸せになれぬと云うのに、何故圭一だけが次々と仲間を得ているのだ。
的確に動いてきた筈の自分だけが不幸になるなど、絶対に認めない。
ただのお人好しに過ぎぬ圭一が幸福になるなど、絶対に許さない。
どのように絶望させてやろうかと、どのように殺してやろうかと、そんな事ばかりが頭に浮かんでくる。
だがそんな良美の思考は、突如視界に入った男の姿によって中断される。

「この人は確か……武さん、かな?」

良美の前方10メートル程の路上に、圭一と行動を共にしていた男―倉成武が倒れていた。
見れば武は身体の至る所に傷を負っているが、生きてはいるようである。
恐らくは先の爆発音がした時に戦闘となり、必死に逃げてきたのだろう。
この男も圭一の仲間である筈だから、優先殺害対象だ。
手早く排除して、本命である圭一を殺しにいかなければならない。
そう判断した良美は鞄の中から地獄蝶々を取り出して、その切っ先を武の首に押し当てた。
そのまま武の首を貫こうとして―刹那のタイミングで、最高の名案を思い付いた。
……思い付いてしまった。

「うん、そうだよね。このまま殺しちゃうなんて勿体無いよね」

自身が考え出した案に満足した良美は、嬉々とした様子で周囲の状況を確認し始めた。
付近を歩き回ってみたが、自分と武以外の人影は見受けられない。
耳を澄ましてみても何も聞こえて来ないのだから、この近辺で戦闘が行われているという事は無い筈。
恐らくはもう皆移動して、何処か別の場所に戦場を移したのだろう。
ならば無理に遠くまで移動する事もあるまい。

「うーんと……、やっぱり拘束する為の道具が欲しいかな」


114:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:34:47 VGUJODsI


115:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:36:15 FISnFABX
   

116:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:36:17 teeJ8ptM

幸い此処は住宅街、一般人が持ち得る範囲の道具ならばすぐ手に入る。
良美は近くにあった民家の小屋に侵入し、程無くしてロープを発見した。
それを用いて、武の両腕両足をしっかりと拘束する。
作業中に意識を取り戻してしまうのでは無いかと云う危惧もあったが、それは杞憂に終わった。
かくして全ての準備を済ませた良美は、おもむろに足を振り上げて―武の顔面を思い切り蹴り飛ばした。


 ◇  ◇  ◇


「……うがあああああッッ!?」

顔面を強打された武が、悲痛な呻き声を洩らしながら跳ね起きようとする。
だが両手両足を拘束されている所為で、起き上がる事は叶わず、ただ地面を転げ回るに留まった。
激痛に悶える武の視界に入ったのは、少し前に戦ったばかりの良美の姿だった。

「ぐっ……お前は、佐藤良美……!」
「―お早う武さん。駄目だよぉ、こんな路上で寝てちゃ」

のた打ち回る武を見下ろしながら、心底愉しげに微笑む良美。
慌てて武は臨戦態勢を取ろうとするが、縛られてしまっている以上それは不可能だ。
キュレイウイルスの恩恵で、常人より多少優れた膂力を持っているとは云え、力任せにロープを引き千切れる程では無い。
精々、倒れたままの態勢で相手を睨み付けるのが精一杯だった。

「畜生、こんな事になるなんてっ! 俺をどうする気だ……このまま嬲り殺すつもりか!?」

117:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:36:49 VGUJODsI


118:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:36:54 FISnFABX
  

119:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:38:08 teeJ8ptM

自分が気絶するまでの経緯は、朧げではあるが覚えている。
自分は一時の激情に身を任せて暴走し、圭一達の下を離れてしまった。
そして酷く消耗した状態での全力疾走が長続きする筈も無く、すぐに意識を失ってしまったという訳である。
恐らくはそこを良美に発見され、無防備のままに縛り上げられてしまったのだろう。
孤立無援、身動きが取れぬ状態での、殺人鬼との対峙。
掛け値無し、正真正銘の絶体絶命的状況だ。
しかし取り乱す武を余所に、良美は冷静な口調で話を進めてゆく。

「落ち着いてよ武さん。私のお願いさえ聞いてくれれば、別に何もしないよ?」
「お願い……? それはどういう事だ……?」

良美の意図を図りかねて、訝しげな表情となる武。
良美にとって自分は邪魔者でしか無い筈なのに、何故すぐ殺そうとしないのか理解出来なかった。
だがそんな武の疑問は、次の良美の言葉で一瞬にして吹き飛ばされる事となる。

「前口上なんて意味が無いし、単刀直入に言うね。武さん――私の下僕として働いてくれないかな?」
「下僕……だと?」
「そう。私の命令通りに人を騙し、裏切り、殺し続ける操り人形になって?
 勿論、ずっととは言わない。圭一君を殺すまでで良いよ」

武を眷族として従え、圭一やその他の邪魔者達を排除する―それが良美の目的だった。
そちらの方が、武一人を殺すよりも遥かに有益だ。
優勝を目指す上でも、圭一を苦しませて殺すといった意味でも、これ以上無いくらい最高の一手だ。
しかし当然武も素直に頷いたりはしない。

「ふん、馬鹿らしい。そんな条件、俺が呑むとでも思ってるのか?」
「まさか断る気? それなら此処で殺しちゃうよ?」
「……殺したきゃ殺せよッ! 俺はお前みたいな奴の悪事に加担する程、落ちぶれちゃいねえんだ!」

120:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:39:03 FISnFABX
   

121:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:39:25 VGUJODsI


122:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:39:49 teeJ8ptM
雛見沢症候群の影響もあり、冷静な判断力を欠いている武だったが、それでも我が身惜しさで屈服したりはしない。
たとえどれだけ痛めつけられようとも、道を曲げるつもりなど毛頭無かった。
だがこの武の反応は、良美の予想通り。
圭一と組むような偽善者の懐柔が容易で無いのは、火を見るより明らかだ。
故に良美は、間髪置かず本命の策を発動させる。
頑強な意思を秘めた人間さえも陥落させ得る、悪魔の策を。

「ふーんそっか、断っちゃうんだあ……。一つ確認するけど、貴方は武さんだよね?」
「ああ、そうだよ! 俺は倉成武、こう見えたって人並み程度の正義感はあるつもりだ! 絶対お前なんかに屈したりしねえ!」

良美の機嫌一つで殺されかねない状況だというのに、気丈に啖呵を切る武。
そして―良美の口より放たれる、武にとって最悪の言葉。


「そんな事言って良いのかな? もうちょっと慎重に発言しないと、貴方の大切な人まで死んじゃうよ?」

紡がれた言葉が鼓膜を震わせ、情報として脳に伝達される。
良美が言わんとする事を正しく把握するや否や、武は掠れた声を絞り出した。

「――な……ん……だと……?」

大切な人とは誰か―そんなの決まっている。
自分にとって大切な人間は、何を差し置いてでも守るべき者は、小町つぐみ以外に存在しない。
良美は、そのつぐみの身に何らかの異変が起きたと示唆しているのだ。
武はカッと目を見開くと、あらん限りの声で絶叫した。

「お前、それはどういう事だッ!!! つぐみに……つぐみに何かしやがったのか!?」
「……だいぶ前に会った時、今の貴方と同じように拘束させて貰ったよ。
 凄い分かり辛い場所に隠してきたから、誰かに発見されて殺されるって事は無い思う。でもね―」

言葉を途中で止めて、良美は鞄の中から島の地図を取り出した。
もう禁止エリアに指定された場所を指差しながら、何処までも愉しげに告げる。

123:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:40:47 VGUJODsI


124:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:40:53 FISnFABX
   

125:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:41:10 teeJ8ptM

「この殺し合いには『禁止エリア』っていうのがあるよねえ? 
 拘束された状態で自分の居る場所が禁止エリアになったら、どうなるかな?」
「――――!!」

そこまで聞いた武は、全身から血の気が引いていく感覚を覚えた。
実際に試した訳では無いが、主催者が嘘をついていない限り、禁止エリアに入れば首輪を爆破されてしまうだろう。
このまま放って置けば、いずれつぐみは禁止エリアにより殺されてしまう筈だった。

「『つぐみ』さんを助ける方法はたった一つ……ここから先は、わざわざ言わなくても分かるよね?
 もう一度言うよ―私の下僕になって。私の命令通りに動いて邪魔な連中を、圭一君を殺してよ」
「…………」

この広大な島の中、巧妙に隠された人間を見つけるのはまず不可能。
そしてつぐみの居場所を知る人物は、今の所良美だけだ。
即ち良美の助力を得ない限り、つぐみは救えないという事になる。
それでも―それでも尚、武は懸命に抗おうとする。

「そんなの出来る訳ねえだろ! 知らない奴を殺すのはまだ良いさ。
 だけど圭一は一緒に行動した仲間なんだ、裏切れねえよ!」
「へえ……」

正義感という名の城壁は、つぐみの命を握られてしまった所為で粉々に打ち砕かれた。
最後に武を支えるのは、これまで圭一と培ってきた信頼関係。
仲間として行動する事により育まれた、掛け替えの無い大切な友情だ。
だが良美は―少女の皮を被った悪魔は、それすらも易々と破壊してのける。

「本当に立派な心掛けだね。でも報われないと思うよ? 何しろ、圭一君は武さんを見捨てたんだから」
「何……? 圭一が俺を見捨てただと?」
「だってそうじゃない。何で武さんは、こんな所で眠ったまま放ったらかしにされていたの?
 何で圭一君は、何時まで経っても助けに来ないの?」
「それ……は……」

126:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:42:04 VGUJODsI


127:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:42:17 FISnFABX
   

128:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:42:38 teeJ8ptM

武はどうにかして反論しようとしたが、適切な言葉が何も思い浮かばなかった。
良美の言う通り、誰も助けに来ないのはおかしいのだ。
確かに自分は信じられないような蛮行をしでかしてしまったし、美凪と沙羅に見限られるのは分かる。
しかし圭一には攻撃を仕掛けていないし、先刻の戦いでは命を救いもしてやった。
それならば当然圭一は、命の恩人である自分を信じようとしてくれる筈だ。
にも関わらずその圭一すらも助けに来ないのは、一体どういう事か。

「ま……まさか……圭一は……」

思い起こされるは、救急車のミラー越しに垣間見た圭一の表情。
悪鬼の如き笑みを湛えた顔。
そうだ―そうだったのだ。
あの時から既に、本当の意味では信用などされていなかった。
自分はこれまでずっと、騙され続けていたのだ。
圭一にとって自分は、生き延びる為の駒でしか無かったのだ。

「ふ、はははははは……そうか……そうだったのかっ…………。圭一は……ずっと俺を騙してたのか……!
 善人面して、莫迦なお人好しを利用し続けてきたって訳か……っ!!」

そこまで気付いてしまえば、怒りよりも寧ろ笑いがこみ上げて来た。
年下の子供にアッサリと騙され、良いように利用された自分自身が、滑稽で仕方無かった。
傷の痛みも気にならなくなる程に、目に映る物全てを破壊し尽くしたくなる程に、可笑しかった。
最早良美の提案を拒む理由など、何処にも存在しない。
所詮こんな島で作り上げられた信頼関係など、偽物に過ぎなかったのだ。
見せ掛けだけで実の伴わぬ、薄っぺらいハリボテのようなものだ。
信じられるのは自分自身と、愛しいつぐみのみ。
つぐみと共に生き延びる為ならば、誰だって殺してやろう。
一頻り笑い終えた武は、もう何の躊躇も無く、それこそ雑草を踏むくらいの気軽さで言い放つ。

129:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:43:03 hNXdYgfu
   

130:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:43:41 VGUJODsI


131:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:43:48 teeJ8ptM

「分かったよ、良美……お前の提案に乗ってやるよ。俺は絶対に圭一を殺す。
 他の連中も全員殺して、つぐみと一緒に生き延びてやるっ……!」

とうとう放たれた服従の言葉に、良美は満面の笑みを以って応える。

「―うん、期待しているよ武さん」

良美は思う―予想以上に上手くいったと。
言うまでも無く良美はつぐみを拘束などしていないし、そもそも出会ってすらいない。
ただ適当な出鱈目を並べただけに過ぎぬ。
良美が行った作戦は、そう複雑なものでは無い。
あたかも相手の想い人の命を握っているかのように振る舞い、上手く行けばそのまま従属させる。
何らかの理由により目論見が失敗したならば、その場で撃ち殺してしまえば良いだけの事。
つまり良美はリスクの無い賭けを行い、そして勝利を掴み取ったのだ。



雛見沢症候群と良美の策略により、決して後戻りの出来ぬ道を選んでしまった武。
武は知らない―圭一は未だに自分を信じてくれているという事実を。

132:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:43:53 FISnFABX
  

133:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:44:41 VGUJODsI


134:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:44:46 FISnFABX
   

135:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:44:52 teeJ8ptM




【F-4左 住宅街/1日目 午後】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、体全体に軽度の打撲と無数の切り傷、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式×2、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残1発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
1:まずは神社に向かう。
2:美凪を守る。
3:土見稟の凶行を止める。
4:倉成武との再会を果たす
5:知り合いとの合流、または合流手段の模索
6:良美を警戒
7:あゆについては態度保留、但し大石を殺したことを許す気は今のところない。
8:土見稟を警戒
9:ハクオロを警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しています。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り1/2くらいです。
※沙羅の事は信用しています

136:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:45:39 teeJ8ptM

【遠野美凪@AIR】
【状態:軽度の疲労】
【装備:包丁】
【所持品:支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
1:まずは神社に向かう
2:知り合いと合流する
3:佐藤良美を警戒
4:土見稟を警戒
※倉成武を信用するかどうかは保留。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※あゆのことは基本的には信用しています
※沙羅と情報交換しました。
※沙羅の事は信用しています

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア -この大地の果てで- ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本】
【状態:軽度の疲労・強い決意・若干の血の汚れ】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
1:まずは神社に移動する。
2:情報端末を探す。
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:前原にタカノの素性を聞く。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。

137:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:46:06 FISnFABX
  

138:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:46:24 VGUJODsI


139:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:46:39 teeJ8ptM
【備考】
※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね~』
『H173を打たれても早めにC120を打てば症状は緩和されます(笑)』
少なくともこの4文はあります。
H173に基本的な情報や症状についての情報が載っています
場合によってはさらに詳しい情報が書いてある可能性もあります
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は暴発しました。
※港には中型クルーザーが停船していますが、エンジンは動きません。
※パソコンに情報端末をつなげるとエンジンが動くというのはあくまでも沙羅の推測です。
※図書館のパソコンにある動画ファイルは不定期配信されます。現在、『開催!!.avi』のみ存在します。
※図書館についてある程度把握しました。
※隠しフォルダの存在を知りました。実際にパソコン内にあるかどうかは書き手さんにおまかせ。
※武たちと情報交換しました。
※圭一と美凪を信用しました。武については保留。

140:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:46:42 2edjgCTF
 

141:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:46:57 FISnFABX
  

142:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:47:22 teeJ8ptM





【F-4 住宅街/1日目 午後】
【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本、永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、貴子のリボン@乙女はお姉さまに恋してる、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【状態:L5侵蝕中。中度の疲労。極度の疑心暗鬼。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷。頚部に痒み。 脇腹と肩に銃傷。刀傷が無数。服に返り血)】
【思考・行動】
基本方針:つぐみ以外誰も信用する気はありませんが、人質を取られている為良美の指示には従う。
1:圭一を殺害する
2:良美の指示に従い、他の参加者達を殺害する
3:圭一の殺害後、つぐみを救い出す
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れています、現在はL3相当の状態で若干症状が進行しています。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも
※永遠神剣第四位「求め」について
「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。
ヘビーアタック:神剣によって上昇した能力での攻撃。
オーラフォトンバリア:マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度)
※沙羅と情報交換しました。
※キュレイにより少しづつですが傷の治療が行われています。


143:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 19:47:55 FISnFABX
   

144:信じる者、信じない者(Ⅱ) ◆guAWf4RW62
07/08/09 19:48:40 teeJ8ptM

佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)、地獄蝶々@つよきす、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)、ハンドアックス(長さは40cmほど)】
【所持品:支給品一式×3、S&W M36(0/5)、錐、食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess、
大石のデイパック、  S&W M627PCカスタムの予備弾53、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、
日本酒x1(アルコール度数は46)、工事用ダイナマイトx1、発火装置、首輪(厳島貴子)】 】
【状態:軽度の疲労、手首に軽い痛み、左肩に銃創(出血は収まりつつある)、重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み】
【思考・行動】
基本方針:あらゆる手段を用いて、優勝する。
1:武を利用し尽くして、優勝を目指す
2:いつか圭一と美凪を自分の手で殺してやりたい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※大空寺あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。
※未成年が日本酒を飲んではいけません。
※大石の支給品は良美の持ってるハンドアックスのみです。

145: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:33:38 vhlLYl0D
「もう少しで、この路地裏抜けて大通りにはいるわよ、後は公園まで一直線よ」
レジャービルを抜けたハクオロ達はD-3の公園に向かい今はD-2の路地裏を進んでいる。
車に乗っている襲撃者の事もあってか3者とも若干緊張していた。

「観鈴大丈夫か? 疲れていないか?」
「はい、大丈夫です……それにしても、もう襲撃者がくるなんて」
歩き続けていた観鈴をハクオロが労わった。
観鈴の疑問に瑛理子が
「メモを残して来たんだもの、それくらいのリスクは承知してたわ。でもこんなに早く襲撃者が来るとは思わなかったわ」
と言い、ため息をついた。
そんな瑛理子を
「こうなってしまえば仕方がない、とりあえず悠人達と合流しよう」
ハクオロは励ました。
「ええ行きましょう……そういえばもう少しで放送ね」
時計をみて瑛理子はいった。
「そうだな、公園に着く前に始まるか……急ごう」
「ええ」
そうして三人はまた進み始めた。

ハクオロ達が知る由もないのだが、
車に乗っていた者―純一とつぐみ―が殺し合いに乗っているのではなくゲームを止めるために動いてている事、
また今工場に向かっている事。
そのことに気付くのはいつだろうか?

146:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:33:48 FISnFABX
   

147: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:35:25 vhlLYl0D





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






「ん?……ちょっと2人とも止まって」
大通りに出ようとした時瑛理子が進むのを止めるように指示した。
「どうしたんですか? 瑛理子さん?」
疑問に思った観鈴に
「大通りに人がいたわ、金髪で。殺し合いに乗っているかもしれない」
「え……!?」
観鈴の顔が緊張と恐怖に染まった。
襲撃者だと思われる者から逃げている最中なのだ。
こう続けばそうなるも当然だろう。
3人に緊張した空気が流れていた。


148:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:36:03 u/InVPDn


149: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:36:29 vhlLYl0D

その中でハクオロが
「私が先にいこう。2人はここで待っていてくれ。安全だったら合図をする」
銃を構えそういった。
観鈴は驚き
「ハクオロさん!? 危ないですよ!」
と言ったが
「だからといってここで止まっているわけにもいかない。この中では私が適任だろう」
ハクオロは毅然と言った。その態度に観鈴と瑛理子は
「……解りました。気をつけて」
「ハクオロ、気を付けて」
「ああ……行ってくる」
ハクオロは笑みを残し大通りへ進んだ。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






150:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:36:56 u/InVPDn


151: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:37:34 vhlLYl0D
(ふう、もう少しでプラネタリウムだね。たぶんいないだろけど、寄ってみなくちゃわからないな)
映画館から離れた陽平はハクオロ達に会うため北へ向かっていった。
(早く合流したい……独りは怖い……そうだ水を飲んで落ち着こう)
そう思いデイバックから水をとりだし飲もうとした時、背後から

「動くな」

その冷たい声を聞いた瞬間、手に持ったペットボトルを落とした。
落ちたペットボトルは地面におち、水がペットボトルからこぼれだしていた。

陽平はデイバックを投げ、手を頭にいた。
「ひいぃぃ! やめてくれ! 僕は殺し合いなんかに乗っていない! だから殺さないでくれ」
そう喚き散らした。
陽平の頭の中にはただ「死にたくない」ということしかなかった。
だから体面なんて気にする余裕などなかった

そんな状態の陽平を見て声をかけた主―ハクオロ―は銃を仕舞い陽平に穏やかに話しかけた。
「驚かしてすまなかった。私も乗っていない。私の名はハクオロ」
ハクオロはそう告げ、観鈴たちがいた方向に振り返り手を振った。
その瞬間、様子を見ていた観鈴と瑛理子は飛び出しハクオロに近づいてきた。
「ハクオロさん! 大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だよ、観鈴」
そういいハクオロは観鈴の頭をそっと撫でた。

152:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:38:01 u/InVPDn


153:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:38:55 u/InVPDn


154: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:38:58 vhlLYl0D

(ハクオロと観鈴だって? メモに書いてあった人達じゃないか。よかった、これで安心だ。)
そう思い振り返るとそこには仮面をした男と金髪の少女、黒髪の少女がいた。
「僕の名は春原陽平、あなた達はハクオロ、神尾観鈴、二見瑛理子だね。メモを見たんだ」
「そうか……メモを見てくれたのか」
ハクオロは感慨深く呟いた。
殺し合いに乗っていない人間がメモを見て来てくれたのだ。
そのことが嬉しかった。

陽平はそして告げる。観鈴に会ったらまず先に伝えようとした事を。

「それで君が神尾観鈴だね? 国崎往人を見たよ」
「え? 本当ですか!?」
「さっき博物館でね。まだ居るかも知れない」
「よかった、無事で……」
観鈴の顔に安堵の表情が浮かぶ。
そんな観鈴の顔を見ながら陽平はただ、と言葉を続け
「殺し合いに乗ってるよ、あいつ」
「え……それ本当なんですか!? 往人さんはそんなことする人じゃないよ……きっと見間違いですよ」
「見間違いなんてあるか! 自分で名乗ったんだ。あいつは青みの混じった銀髪で鋭い目つきしてたんだよ! それに背が高かった」
「それ、往人さんだ……そんな、そんな事ないよ……」
観鈴の顔が絶望に染まり、目を手で押さえた。
信じたくなかった。優しい往人が殺し合いに乗ってる事を。


その一方でハクオロと瑛理子も驚いた。
陽平が語った往人の特徴はエスペリアを殺し、瑛理子を襲った者そのままだったからである。
そう、襲撃者は往人だったのだ。
2人は目で合図をし、互いの考えが同じである事を確かめた。
この事は今の観鈴に伝えてはいけない。
そう2人は思いアイコンタクトだけで済ました。

155:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:40:58 u/InVPDn


156: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:42:07 vhlLYl0D

「瑛理子、観鈴を頼む」
「ええ、わかったわ」
かといって今の観鈴をそのままにする訳には行かない。
そうハクオロは思い瑛理子に観鈴を任せ自分は陽平から往人に出会った経緯を聞くことにした。
(やれやれ、大変なことになったな……)
そうハクオロは嘆息し、陽平に聞き始めた。
「それで、陽平。お前はどうやって国崎往人と会ったのだ?」

陽平はもう自分が安全だと思い話さなければいいのに起きた事、全てをを話してしまった。
「そうだね、僕は瑞穂、茜、アルルゥと一緒に博物館に居たんだ。そこにあいつが来て殺そうとしたから逃げてきたんだ」
「アルルゥ達は!」
「いや、あいつらは逃げられなかった。僕だけ逃げてきたんだ」

ハクオロはその言葉に激昂し
「愚かな!!」
「ひぃぃ」
「貴様、仲間捨てて自分だけ逃げるだと、ふざけるんじゃない!捨てられた仲間はどう思う、貴様は自分だけ助ければいいと思っているのか!」」
ハクオロは普段からは信じられないくらい怒っていた。
捨てられた仲間が生き残る事が難しい。
その中でアルルゥ居たのも怒らせる原因になっていた。

「そうね、あなた最悪よ。自分だけ助かればいいなんて愚の骨頂だわ」
観鈴の傍にいた瑛理子も陽平を非難した。
(この男、鳴海孝之に似ているわね、最悪)

2人の非難を受け陽平は少し後退し、
「だって死にたくなかったんだ。まだしにたくないんだよぉ!!」
そう喚いた。
「どうして、皆、僕を非難するんだよぉ!」
たた死にたくない、どうして誰もが思う事を非難するだろうと陽平は思った。

157:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:42:11 SWCZQOg1
 

158:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:42:57 SWCZQOg1
 

159:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:43:03 w6q78NQD
 

160:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:43:10 FISnFABX
   

161: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:43:37 vhlLYl0D


ハクオロが何か言おうとした時それは始まった。

『―参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら? 』

二回目の放送が。
その瞬間4人とも放送に耳を立てた。



『アルルゥ―オボロ―』
2人の名前が呼ばれた瞬間、ハクオロは息がつまるような感じがした。
(……オボロ、お前は最後までトゥスクルの将軍であったか?……ユズハは任せろ……)
(……アルルゥ、護れなくて、すまない、本当にすまない。どうか向こうでエルルゥと仲良くな……)
おそらく状況的にアルルゥは往人に殺されたのだろう。
そうハクオロは思い悔しく思った。
そんなハクオロを観鈴と瑛理子は
「ハクオロさん……大丈夫ですか?」
「ハクオロ、大丈夫?」
励ました。そんな2人を見て、
(そうだな後悔している暇は無い。この子達を護ろう)
「ああ、大丈夫だよ」
笑顔を返した。

162:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:44:19 u/InVPDn


163:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:44:29 w6q78NQD
 

164:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:45:13 FISnFABX
   

165:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:45:19 u/InVPDn


166: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:45:35 vhlLYl0D




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『―岡崎朋也―』
放送を聴いて陽平は愕然とした。
(え……岡崎が? そんな! あの頼りになる岡崎が……)
朋也が死んだことは陽平には衝撃だった。

(待てよ、岡崎が死んだら誰が僕を護ってくれんだ?)
考えるのは自らの保身のみ。
(いやだ、死にたくない……)
(そうだ、あの人達に護ってもらおう、でもあの人達は僕の事、最悪といった。当然だもんな、仲間を捨てたから……待てよ?)
そこで陽平に一つの疑心が生まれた。
(あの人達はきっと僕を信用してない……きっと同じように捨てられて殺される!)
(いやだ、死にたくない……そうか、この島では人なんか信用しちゃダメなんだ。)
(仲間なんていらない、ただ殺される前に殺さなきゃいけないんだ。殺さなきゃ殺される!)

陽平は狂ってしまった。あまりの死の恐怖に。

(だからあの人達を殺さなきゃいけない! 殺される前に! 僕はまだ、死にたくない!)

そう思い陽平は投げナイフ持ち駆け出した。
「僕はまだ死にたくない! だから!」
狙いはハクオロ。

167:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:45:55 u/InVPDn


168: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:46:06 vhlLYl0D


だが持つ得物と、狙った相手が悪かった。
得物が銃とか、もしくは観鈴、瑛理子だったら結果は違ったかも知れない。

陽平の一撃は難なく避けられ、
「愚か者……」
その言葉と共に大きな衝撃が来た。

(いやだ、死にたくない……死にたくない……)
そう考えているうちに意識は落ちた。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





169:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:46:16 SWCZQOg1
 

170:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:46:37 w6q78NQD
 

171: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:46:38 vhlLYl0D
「殺したの?」
倒れている陽平を見て瑛理子は言った。
「いや、気を失わせただけだ。」
ハクオロは投げナイフを回収して答えた。
「急に襲って来るなんて……」
「大方、放送聞いて錯乱したんだろう。きっと大切な人でも呼ばれたんだろう」
観鈴の問いにハクオロは答えた。
「愚かね……さあ早く公園に行きましょう。」
瑛理子が行くように指示するが、

「待ってください。少し話を聞いてください」
観鈴がそれを止めた。
「どうしたのだ。観鈴?」
「我が侭かもしれないけど私、博物館に行きたいです。往人さんを止めたい」
瑛理子は驚き、
「ちょっと正気なの!? 彼、乗ってるのよ。それにもう居ないかもしれないじゃない」
その問いに観鈴は
「それでもです。少しでいる可能性があるなら私は行きたいです」
「自惚れかもしれないけど、往人さんたぶん私を護るために殺し合いをしているんだと思う」
それはハクオロにも瑛理子にも解った。
往人であった時そのようなことを話していた。
「往人さん、優しい人だもん。人殺しをして平気な訳ないよ。きっと苦しんでる」
「往人さんは人殺しなんか似合わない。人殺しなんかして欲しくない。」
だからと観鈴は言葉を続け

「私は往人さんを止めたい。お願いです。博物館に行かせてください」

少し気弱な少女の明確な意思表示。
観鈴には引く気はない。


172:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:47:09 u/InVPDn


173:名無しくん、、、好きです。。。
07/08/09 23:47:21 FISnFABX
   

174: ◆iWNzks43D6
07/08/09 23:47:45 vhlLYl0D

ハクオロはそんな観鈴に圧倒されつつ
「わかった。とりあえず悠人と合流しよう」
「ハクオロさん!? お願いです!」
観鈴は悲痛な顔をするが、ハクオロは笑顔になり
「その後、博物館に行く隊、工場に行くかもしくは何処かで待機する隊に分けよう。観鈴はもちろん博物館側だ。私も一緒に行く。彼と話がしたいしな」
「それに放送に呼ばれなかった、瑞穂、茜なる者が居るかもしれない」
「ハクオロさん……」
「瑛理子もそれでいいか?」
瑛理子は溜息をつき
「正直、納得できない所はあるけど、でもいいわ、大切な友達の頼みであるしね」
「瑛理子さん……」
瑛理子は美鈴に笑顔で返した。

ハクオロは瑛理子に
「瑛理子はどうする? どっちの隊にするか?」
「そうね……とりあえず待機する方かしら。でも博物館でもいいわ。危険だけどあなた達とは離れたくはないし」
「そうか……では公園に向かうとするか」
そうハクオロはいい、陽平に近づき彼を背負った。

「ちょっと、この人連れて行くの!?」
「こんな所に放置しておくわけないだろう。武器は奪ったしな」
「まあ、いいけど」
瑛理子は不服そうに言った。その理由は
(鳴海孝之に少し似ているのよね、こいつ……)
そんな瑛理子に気付かずハクオロは
「観鈴、彼のデイバックを持ってくれ」
「はい、わかりました」
「では行くか、公園へ」
彼らは公園へ向かった。


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