08/07/15 20:40:06
鎧を脱いでも彼女の肩から背、顔にかけては生来の鎧に守られていた。
ごつごつとした硬質の鱗である。そのところどころからは棘が生えていて、
人間なんかの柔肌ならばたやすく傷つけられそうだ。
けれど、鎧を脱いだ彼女の肌、胸元から首筋、腕の内側は意外にも美しく見えた。真珠のように白くて、まるで絹のようにきめ細かい。
それは彼女が普段僕に見せている姿とは余りにも違っていた。
「……そんなにじろじろと見るな」
「ご、ごめん。……ねぇ、触って、良いかな?」
彼女は決まり悪いのか、少し視線をそらしてけれど、僕をしっかりとみている。
彼女が温血動物ならばきっと赤面していたところだろう。
そして、僕のほうもそんな状況と自分でもなんでそんなことをと言う台詞にどぎまぎして顔が真っ赤になっていた。
気まずい沈黙。彼女の肌が少し震えている。これもなんだか彼女らしくない。
「……あはは、やっぱダメだよね」
「少しだけならば……良いぞ」
彼女の尻尾が床を軽く打つ、その音が沈黙を破るのと合わせて僕は謝っていた。
えっ、良いの!?僕は彼女の気が変わらないうちにと手を伸ばす。(それから、爪先立ちになった全身も)
もしも彼女に触れるならば、初めてはここにしようと思っていたんだ。彼女の喉元の肌には
見かけどおりに絹のようにやわらかく、それでいて哺乳類ではありえないひいやりとした感触があった。
すごい……掌に彼女の存在を感じる。肌の下の筋肉の細かな動きから彼女の強さ、やさしさが伝わってくる。
「あ……」
「ごめん、変なところ触った」
「いや、そうじゃなくてだな……私はあまち触られるのには慣れていない……特に同属以外とはな」
どうしよう、さわられるのは好きじゃないのか……。
さっきからあのひんやりとした体に僕の体をすっかり預けてしまいたいという衝動が止まらないのだが
そんなこと言ったらさすがに怒るだろうなぁ……。