07/11/25 13:04:20 akV2Yryd
「お、おおおおおお姉様?」
ぽんぽんと肩を叩かれ、うろんげに後ろを振り向いた少女の変化は見物だった。
顔は青ざめ、瞬間に三歩後ずさり、俺の正面側の椅子に座ったり、また立ってテーブルを去ろうとし、ビタッと止まってまた戻ったり。
挙動不振としかいいようがない。
オタオタとあわてふためく少女が動く勢いで卓から俺の皿と杯が落ちていく。あーあー。
「あら、もしかしてガン子ちゃんじゃない。お家にいるんじゃなかったかしら?」
「お、お姉様こそ! エトリアにいるはずじゃあ……!」
「ああ、ここにはほんの二週間程前に来たばかりなの。迷宮の探索もまだまだってところね。……今度はあなたが質問に答えなさい。なぜここに箱入りのガン子ちゃんがいるのかしら?
それも冒険者を蔑んでたあなたが、そんな物騒なものを引っ提げて? さぁ、お姉様に言ってご覧なさい」
「う、ううぅ……それは……」
いつものつかめない笑顔でケミ姉が問いつめている。可哀相に。
ここで頭に声が響いてきた。冒険者の職業病みたいなもんだ。
~君はギルドマスターを止めてもいいし、放置してもいい。~
無論、放置だ。向かい合う姉妹を余所に、俺は唯一テーブルに残ったスープに集中することにした。