07/11/25 12:56:48 akV2Yryd
この流れならいけるっ……!
「ちょっと、そこのあなた」
鈴のなるような声が横に立つ少女から発せられた。歳の頃は見たところ14、5。波打つ金の髪が美しい。
「あなた、冒険者ね? 少し教えて欲しいのだけれど」
しかしこのような酒場(というと親父に殴られそうだが)には似つかわしくない。深青のコートは一目でわかるほどに上質の生地で誂えられていたし、その肌は労働と苦痛とを知らぬ白に染め抜かれていた。
「……お酒ばかり飲んで。聞こえているの? この街で1番のギルドはどこときいているのよ」
眉を潜めて再び問うてきたので、ここでやっと俺が口を開いた。
「うちのギルド」
「え?」
「……になる予定」
ぐっと酒をあおって向き直すと、少女は失笑を隠せないといった様子で俺を見つめていた。
「あなたのギルドですって?」
「何かおかしいか?」
「そうね、おかしいわ」
椅子に座ってスープをすする俺の装備を上から下まで値踏みし、サディスティックな笑みを浮かべて嘲る。
別に俺はマゾというわけではないので、この時間を長引かせたいといった願望はなかった。ここで世間知らずのお嬢さんをどこかへやっても良かったわけだ。
なぜそうしなかったか、というと、その笑みがなんとなく見たことのある--というか、少女の後ろで「静かに」とジェスチャーしながら迫り来る我らがギルマスに似ていたからに他ならない。