07/12/31 19:10:39
ピジョットが差し出してきたその『モノ』に、私は驚き声を上げそうになる。
その『モノ』は、
金。札束だ。
ざっと見積もっただけでも相当の額はある。50万……60万……いや、100万……?
少なくとも、先ほどピジョットが提示した条件とは『逆に』全く釣り合っていない金額。
このピジョットは先ほど『美味しい話』と言っていたが、美味しい話どころの騒ぎではない。
「本来はこの程度のこと部下に任せるのだが、事情があって現地の者にお願いするほか無かったのだ。
とりあえず、我々は人間を心から欲している。その人間様を我々魔王軍の元へ招待できると考えれば、
それくらいの金額は微々たるもの。我々は資金繰りには特に困っていないのでね」
「……」
ピジョットの羽の上の札束に、目が釘付けになって離れない。
……『電話をかけて教える』……ただそれだけの行為で、これだけの金額を手にしていいものだろうか。
理不尽なまでの『テイク』。お互いに得をするとは言っても、幾らなんでも割合が偏りすぎている。
……明らかにおかしい。どう考えても、これは何かの罠……罠じゃないか……
罠?
普通に考えて、ピジョットからしてみれば私に罠を仕掛ける必要など一つもない。
なにせこちらの『ギブ』は、たとえ報酬がなくとも構わないくらいに低いのだ。
報酬を釣り上げまくって、私の欲を煽る必要は一つもない。
ならば、答えは一つ。このピジョットの金銭感覚がズレにズレまくっているということだ。
……『なにせ相手は魔王軍』……常軌を逸した犯罪集団。それならば、金銭感覚すらも常軌を逸していても不思議ではない。
……え……? ちょっと待てよ……
だとすると、これって……え? もしかして……
私にとって、『ものすごく美味しい話』なのでは……?