08/08/27 16:43:11 I6F0gFwq0
鵯の参考
生まれたばかりの我が子に手をそえて
隣で眠っていた貴女の指に触れさせる
自分達の前にうち広げられた未来は揺らぎ歪み
寒さに冷え切った指先に息を吐くことさえ 溜息と区別がつかない
指の先で子をあやす 夫婦の仲がよく微笑ましいことだ
どうなるかわからない未来を思い浮かべ 溢れ出た涙でその瞳は揺らいだ
「ねえ 見て 手を握り返してくれるの」
そう言って嬉しそうに笑う 貴女の手は
まばらに降ってかよわい白波にでさえ消されていってしまう 儚い雪のようだ
夕暮れになって彼は我が子を迎えに行く 我が子を抱いて幸せに過ごしていく筈だった日々を思い浮かべる
理想は立ち並ぶ木々に透けて消えていった
あと少し もう少しだけでいいですから この子と居させてください と神に願う
希望の見えない闇の中を 羽ばたける強さを私に下さい
風が吹く道を抜けて くもりのない太陽のように明るく暖かい妻と子の幻に手を差し伸べ 遙か彼方まで
その先に希望を見つけて初めて 彼らは笑い
幸せの意味に気付く
木立の木々をかき分けて見つけた理想と希望と幸せが
舞い落ちる枯葉のようにすれ違う
あの時見た白い幻の光が広がっていき 重なり連なる自分達家族という羽が
我が子と共に昇っていく しかし現実はただ静かで
彼は我が子の手を握って 問わず語りかけた
我が子は事切れたがその顔の微笑は花が舞っているようだ
ただ虚しく広がるだけの虚無感に捕らわれた溜息に二人の幻はかき消されていく
激しく雨が降りやがてあがり
晴れ渡る空を見て 彼は知った
幸せの在り方を