07/06/24 04:41:56 ih3RD4/j
>>245
俺にとって、アヤは掛け替えのない女性だ。
それを失う事は、死よりも恐ろしい。
例え悪魔と契約して、この肉体と魂をグラム10円で安売りする事になったとしても、アヤを生き返らせる。
イカレた答えなのは百も承知で、俺は言い切った。
―だが、アヤは悲しそうな顔をするだけだった。
「それも嬉しいけど……私は、あなたの重荷にはなりたくない。その時は、私の事なんか忘れて、他にもっと良い人を」
パァンッ!
アヤの言葉を、乾いた音が遮った。
一瞬の間を置いて、俺は自分がアヤの頬をぶった事に気付いた。
「………」
アヤが頬を押さえ、信じられない物を見るかのような視線を俺に向ける。
「ごめんなさい」
小さく呟くと、彼女はベッドを出て、服を着る。
引き止めようとしたが、上手い言葉が思い付かない。
そんな俺から逃げるように、アヤは部屋を出た。
私の事なんか忘れて、もっと良い人を見つけてほしい。
アヤは多分、そう言いたかったんだろう。
それは純粋に、俺の幸福を願ったからだ。
俺だって、死後もアヤの中で美しい思い出として残るならともかく、亡霊のようにアヤの心を縛り付けたくはない。
だから、立場が逆なら同じ事を言った筈だ。