08/08/10 20:22:58 IEtqeoW30
「悪い。昨日は結構遅くまで残業しちゃってね……」
「私、なにか冷たいものでも買ってきましょうか?」
「いや、春香にそんなことをさせるのはわるいよ。俺が……」
「いいんです! 気にしないでください! なにがいいですか? アイスコーヒー? お茶? あっ、カキ氷とかっ?」
「……じゃあ……」
【フラッペな。カキ氷じゃなくて】
【アイスコーヒーで】 【冷やし中華で】
「じゃあ、アイスコーヒーで。……気を使わせちゃって悪いな、春香」
「そんなぁ、お礼なんかいいですよ。じゃあ、行ってきますね、プロデューサーさん♪」
「気をつけてな。急がなくてもいいんだから、走るなよ」
「はい! わかってます!」
(言ってるそばから、走っていってしまった。幸いなことに、まわりは砂浜だから、こけても大丈夫かな。
……うーん、安心したら、急に眠気が…………)
(…………冷たっ?)
「ん……あれ? 春香、帰っていたのか?」
「はっ……はいっ……」
「いつの間にか、寝ちゃったみたいだな。ごめんな」
「い、いえ!……その、平気です」
(……? 春香の雰囲気がおかしいけど、なにかあったのかな)
「春香? なにかあった?」
「な、なにも全然ありませんよっ? ホントにホントで……はい。 あっ、これっ、どうぞ!」
「お、ありがとう。……この缶コーヒー、すごく冷えてるな。……あれ? 春香のは?」
「私は、これで……」
「カキ氷か。だからかな、こんなに甘い匂いがしてるのは」
「え……?」
「起きたときからなにか甘い匂いがしてるからさ……。春香?」
(急に春香は顔を真っ赤にして黙ってしまった。……?)
「と、とにかく、ありがたくもらうよ」
─ぱきっ ごくっ ごくっ
「ふう、目が一気に覚めるな……うん?」
(おかしいな、コーヒーとは違う、妙な味が……。甘い? なんだろう、どこか懐かしい甘さが……。
あ!……これってシロップの甘さなのか?……そ、それって!?)
【春香! 俺の顔にこぼしただろ!】
【なにも訊かない】 【この恋泥棒さん!】
「春香……」
(まあ、いいか。結局、その後は天気も持ち直して撮影は無事終了したけど、春香は一度も俺とは顔をあわせなかった。
……二人だけの秘密、大切にしたいな)