08/08/02 11:29:04 ibdXv9Xi0
「い、いえ、何でもありません。……そうですよね! 彼女との待ち合わせに、普通はこんな事務所の前なんかを選ばないですよね!」
「うーん、まあ、それ以前に待ち合わせするような女の人なんか、俺にはいないし」
「ええっ!? で、でもプロデューサーさんくらいの年なら、いてもおかしくないんじゃないですか。私、てっきり……」
「いないよ。仕事が忙しくて、そんな暇も気力もないって」
「そ、そうなんですか。……へへ♪。じゃあ、じゃあですよ? プロデューサーさんに彼女がいないのは、私のせい、ってことでしょうか?」
(いつの間にか、女の人が彼女になってるけど……まあいいか)
「そうだなあ……そう言われると、そうかもな。……このまま俺に彼女ができなかったら、春香に責任をとってもらうか」
「ぷ、ぷぷぷぷプロデューサーさん!? せ、責任って、どどどどういう」
ピピピー♪ ピピピー♪ ピピピピーピッピッピッピピッピ♪
「お、わるい春香、ちょっと携帯にでるよ」
(それにしても春香の動きが変なことになってるな。軽い冗談だったのに)
「もしもし、……お、ケイか。今、事務所の前なんだ。……それじゃあ、そっちへ向かうよ……」
ピ!
「わるい。今からあいつを迎えに行くことになったんだけど……って、おい、春香、聞いてるか?」
「え!あ、はいっ。……な、なんでしょう!?」
「だから、今からケイを迎えに行くことになったんだ」
「は、はい。私ももう、お母さんの所に戻らなくちゃいけないんで気にしないでください。で、でも……」
(あれ?急に春香の顔が曇ってきたな……)
「やっぱり、今のって、彼女なんじゃないですか? だったら、隠さないではっきりいってくれたほうが……」
「いや、だから違うって。今のは啓太って男の友達で……なあ、そういえばさっきから、なんでそんなに、気にしてるんだ?」
「へ!?……い、いえ! あの、なんていうかですね、その-……」
「……そうか! もしかして春香、俺のこと……」
「ち、ちちち違いますよ!! わた、私は別にっ、その、なんというか」
「大丈夫だって、ケイはそんなやつじゃないよ。ごめんな、春香、心配かけちゃって」
「し、心配だなんて、そ、そんな、私はっ……ああーっと、も、もうこんな時間!? じゃ、じゃあ、私はこれで! 失礼しましたー!」
「あ! 春香! そんなに急に走ったら……」
「ああっ!? きゃっ!!」
すってーん、どんがらがっしゃーん
「春香ー! 怪我はないかー?」
「だ、大丈夫ですー! それじゃ、ぷ、プロデューサーさん、失礼しましたー!」
「いや、だから、そんなに慌てると……………また、こけた」
(ふう、やっと店に入ってくれたか。明日、春香に怪我のことはしっかり訊いておかなければ。……ああ、あと、ケイは俺に変な勧誘を
してくるようなやつじゃないってことを、春香にちゃんと説明しておくか。でも、16才の女の子に、そんなことを心配されるようじゃ、
俺もまだまだだなあ)