08/07/31 22:29:34 1ygmdRTx0
「参ったな、せっかくのオフを利用したドライブなのに酷い渋滞だ。千早、車酔いしてないか?」
「大丈夫です、プロデューサー。それにお弁当、飲み物だけでなく、地図や薬も持ってきてあります」
千早は荷物を撫でながら答える。今回のお弁当は自分でも力作だ。
「そっか。それにしても全然進まないなぁ。ガソリンが高くなって、交通量は減っているはずなんだが」
「プロデューサー、ラジオでもつけましょうか?」
「近畿地方は雨だから、高校野球は中止だしなぁ。面白そうな番組はなさそうだ」
「それでしたら・・・・・・」
千早は自分のポーチから一枚のMDを取り出す。
「お、なにを持ってきたんだ?」
「私の持ち歌だと仕事を思い出してしまうので・・・・・・」
そこまで言ってから千早は喉の調子を整え、最初の曲を流す。
「あれ、この曲って、確か千早がパーソナリティをしているラジオの・・・・・・」
「如月千早の私を月に連れて行って♪ 番外編、今日はプロデューサーの車からお送りします」
流れ出した曲に合わせ、千早が悪戯ぽく笑いながら言う。
「お~い、まさか録音はしていないだろうな?」
「しませんよ、さすがに。ただ曲を流すだけよりも楽しいかと思いまして。
私もトークの練習になりますし、それにプロデューサーは運転中、無口ですから」
「すまん、運転中はあまり話せないんだ」
「いえ、それだけ安全運転の心掛けていると言うことですから。
ただ私が一方的に話すのも変ですので」
「それもそうだな。じゃあ、番外編を楽しく聞かせてもらうよ」
「はい、それでは・・・・・・暑い日が続きますがプロデューサーはお変わりありませんか?
あなたの心の清涼飲料、如月千早です」
「皆さんの部分をプロデューサーに変えているのか」
「リスナーが一人だけですから。それでは最初のメール。
ハンドルネーム、孤高のピヨピヨさんからです。
千早ちゃん、私、どんな男でも一発で魅了でき・・・・・・
孤高のピヨピヨさん、その方法は自分で自分の意中の方に使われることをお勧めします。
それ以前にオフの日にこのためだけにわざわざメールを送ってこないで下さい」
「途中で終わりかよ!?」
「ここで最初の曲をお送りします。如月千早の歌う『First Stage』です」
千早が再びパネルを操作すると聞き慣れた曲が千早の声で流れ始める。
「ちょっと待て、いつの間に録音したんだ、これ?」
「自主レッスンの際に。他の人の持ち曲を歌うのも良い練習になりますから」
もちろん今日のためにわざわざ録音した。
仕事の移動でもなく、買い物でもなく、久しぶりのオフに二人でおでかけ。
プロデューサーと約束したその日から用意周到に準備してきた。当然、帰路の分も用意してある。
「念のために聞くけど、プログラムはどうなっているんだ?」
「この後は『私を癒して特別編』、次は歌、今度は『魔法をかけて』です。
歌の後はトーク、テーマは『あなたの隣で想うこと』です。
三曲目は『My Best Friend』、再びトーク、テーマは『私の尊敬する人』、
四曲目は『Do-Dai』、次は『こんなプロデューサーは大好き、と言うコーナーが大好き』です。
さらに替え歌コーナーで『9:02pm』の替え歌『9:02am オフの日編』と続きます。
そして、今回の特別プログラム『千早の呟き』、さらに『Here we go! 大増量バージョン』です。
この時点でまだ到着していないようなら、フリートークです」
「なんか選曲が偏っている気がするのは、俺の錯覚か?」
「せっかくですので、まず歌う機会がない歌を選びました。
感想を楽しみにしています」
微笑み、曲の終わりに備え、次のコーナーに備える。
「次は『私を癒して特別編』です。
このコーナーではお世話になっているプロデューサーを癒してみたいと思います」
千早は息を整え、聞いているのは彼だけ、と自分に言い聞かせる。
「まず最初です。ちっちゃくないもん、Dあるんだから!」
「なにがだ!? それに何故、胸を押さえながら言う!?」
「し、質問は禁止です。次は・・・・・・ちはやをお兄ちゃんのお嫁さんにしてね、約束だよ」
「千早、誰に入れ知恵された!?」
「な、内緒です。三つ目は・・・・・・」
その日、ある高速道路でピンク色のオーラに包まれた車が見られたそうな。
こんなサービスがあればなぁ、とコンビニ弁当を車の中で食べながら思った