08/08/13 00:49:19 f5luCopPO
「やめてっ!」
と亜美の手を弾いてしまった。
「ま、真美?」
亜美は驚きながらこっちをみてる。
「……っ!」
気付くと、走ってた。
事務所を飛び出して、近くの公園に走ってた。
ねぇ、兄ちゃんは真美に指輪を買ってくれたんじゃないの?
真美だから買ってくれたんじゃないの?
真美に特別に……買ってくれたんじゃ……ないの?
あの時、真美じゃなく亜美がねだってれば……亜美に指輪を……?
涙が込み上げてきた。
次から次へと、ぽろぽろと。
すごく胸が……苦しい。
だけど、
今までわからなかった、兄ちゃんへのもやもやとしたこの気持ち。
今なら、はっきり分かる。
兄ちゃんは、真美と亜美、どっちが、好きなの?
「ま、真美!どうした!?」
真美の後ろに兄ちゃんがいた。
手を膝に付けて、肩で息をしながら。
兄ちゃんの方へ振り向く。
そして、髪を解いて逆を結ぶ。
これで真美は亜美になった。
「真美……?」
「ううん、亜美は亜美だよ?」
「どうしたんだ?ホントに」
「亜美があの時、指輪をねだってれば……亜美に指輪買った?」
「え……?」
突然の質問に兄ちゃんは戸惑ってるみたい。
「あのさ……兄ちゃん」
今度は髪留めをはずした。
アイドルの亜美じゃなく、亜美と双子の真美でもない。
一人の真美として。
きっとこの気持ちを伝えても兄ちゃんには、まだ早いって言われちゃう。
でもやっと気付いたこの気持ち、我慢できない。
もう「兄ちゃん」じゃ、物足りない。
「兄ちゃん……真美ね、真美、兄ちゃんが……!」
(了)