08/07/01 00:49:05 umSc9Zrk0
ん、ん、ん・・・キタキタキタ!俺ならこっちだぜ!
ある雨の日の夜。春香とPは仕事を終えて駅に向かっていた。
ご存知の通り春香は電車で遠距離通勤。駅までとはいえ、その帰り道を
しっかり守るのもPの仕事としては当然であった。
「はぁー、よかったですね。雨やんでますよ。」
仕事中は雨音が聞こえるくらいに降っていた雨だったが、今ではすっかり降り止んで
夜空には少しの星も見える。
「そうだな。流石にあの雨の中は帰りにくいしな。」
そんな他愛もないような会話をしながら二人は駅への道へを歩いていく。
その時、ふと雨が降り止んだ後の独特の冷たい風が二人を包んだ。
その風に当てられたのか、春香はブルッと体を震わせた。
「大丈夫か春香?何だか寒そうだぞ?」
「あ、あはは、ちょっと寒いかもです。うう~、やっぱり馬鹿だなぁ私。
こんな天気なのに薄着で着ちゃうなんて。」
季節的には春香の薄着も間違ってはいないだろう。ただ、天気と噛み合ってないだけで。
そんな春香は寒そうに体を縮こまらせている。それを見たPは、フゥと少し息を吐くと
自分の背広を脱いでそっと春香の肩にかけた。
「ふえっ!?プ、プロデューサーさん!?」
「余りにも寒そうにしてたからな。春香は大事な体なんだぞ?」
そう言ってPは春香に笑みを向ける。春香も、闇夜で分からないが自分の顔が朱に
染まっていくのを感じた。
(やだ、私ったら・・・ドキドキしちゃってる。でも・・・温かいな、Pさんの背広)
春香がそんな感じでヌクヌクしていると、再び冷たい風が二人を包む。大丈夫、今度は
寒くない。だってPさんに包まれてるから。そう思ってる春香の傍では、今度はPが体を震わせていた。
「・・・あの、やっぱり背広お返しした方が・・・」
「いや、それは春香が着ててくれ。俺は風邪ひいても問題ないけどさ、春香は
そうもいかないだろ?俺の事なんか気にするな。」
心配そうにPを見る春香に、Pなりに答えを返す。しかし、その答えに春香は少しムッとする。
「む~・・・あの、Pさん。ちょっとこっちに来てくれませんか?」
「ん?まぁ、いいけど。」
ちょいちょいと自分の方へ手招きをする春香。言われるままに春香に近づくP。
そして、お互いの肩がピタッとなる距離まで来た時。Pの肩にふわっと背広がかかる。
ただし、本来のように体を覆う訳ではなく、およそ半分程度である。では、残り半分はどこか。
「は、春香?」
「えへへぇ~・・・こうやって半分コすればお互い温かいですよね。それに、あの・・・
こうやってくっついてればもっと温かいはずですし。」
そう言って春香は少し照れながらも満面の笑みをPに向けた。
「・・・そうだな。」
そんな顔を見せられては何も言える筈もなく、Pはただただ春香の体温を感じながら道を歩く。
駅までは後わずか。流石にそろそろ離れないと色々と不味い。そう思った矢先に春香が口を開く。
「あの、Pさん。Pさんが私の体が大事だって言ってくれたように、私もPさんの体が
大事です。私、Pさんじゃないときっとダメですから・・・だから、自分の体はどうでも
いいなんて言わないで下さい。それで、ほらこんな風に・・・」
春香はPの足踏みに合わせるように、自らの足を合わせる。それは、そうまるで・・・
「えへへ、二人三脚みたいに。二人一緒に頑張りましょう。私達パートナーですから。」
春香はそこまで言うと、Pの背広を全てPに渡して間近になった駅に走っていく。
そして、一度振り返るとPに向かって言った。
「プロデューサーさん!また、よろしくお願いしますね~!」
そして、ペコリとお辞儀をすると駅の中に消えていった。
Pは、その春香の後姿を最後まで見守ると背広を羽織りなおす。
自分が羽織っていたほうより、春香が羽織っていた方が温かいことを感じると、彼もまた帰路につくのだった。
よし、妄想終わり!